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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
酢酸コバルト(II)・四水和物
作成日 2017年3月17日
改訂日 2025年3月14日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称酢酸コバルト(II)・四水和物
化学品の英語名称Cobalt(II) acetate tetrahydrate
製品コードR06-C-134-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限ワニス塗料乾燥剤,ワニス原料,陶器顔料,液相酸化触媒,アルミニウム表面処理剤,医薬中間体(NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、平成28年度(2016年度)、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分4
呼吸器感作性区分1A
皮膚感作性区分1A
発がん性区分1B
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分2 (中枢神経系、消化管)、区分3 (気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系、呼吸器、心血管系、甲状腺、血液系)、区分2 (生殖器(男性))
分類実施日
(環境有害性)
平成28年度(2016年度)、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性-

GHSラベル要素
絵表示健康有害性感嘆符
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
吸入するとアレルギー、ぜん(喘)息又は呼吸困難を起こすおそれ
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
中枢神経系、消化管の障害のおそれ
呼吸器への刺激のおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、呼吸器、心血管系、甲状腺、血液系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による生殖器(男性)の障害のおそれ
注意書き
 安全対策取扱い後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
 応急措置飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。
口をすすぐこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
 保管施錠して保管すること。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名酢酸コバルト(II)・四水和物
慣用名又は別名酢酸コバルト(II)=四水和物
酢酸第一コバルト・4水和物
英語名Cobalt(II) acetate tetrahydrate
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C4H6CoO4.4H2O (249)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号6147-53-1
官報公示整理番号
(化審法)
既存2-693
官報公示整理番号
(安衛法)
-
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)-

4.応急措置
吸入した場合呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
意識がないが呼吸がある場合は、横向きに安定した姿勢で寝かせ、低体温症から保護する。
気分が悪い時や呼吸に関する症状が現れた場合は、医師の診察/手当てを受けること。
気道/呼吸器疾患の刺激が発生した場合:できるだけ早く、グルココルチコイド吸入スプレーを吸入する。
以上、GESTIS、ICSC参照。
皮膚に付着した場合皮膚に付着した部分を流水またはシャワーで洗い流したのち、水と石けん(鹸)で丁寧に洗浄する。
刺激を感じたり、広範囲にわたる接触の後に刺激を感じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。 直ちに皮膚に付着した部分を流水またはシャワーで少なくとも10〜20分間洗浄する。
以上、GESTIS、ICSC参照。
眼に入った場合眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
以上、GESTIS、ICSC参照。
飲み込んだ場合意識がある場合は、コップ1〜2杯の水を飲ませる。
口をすすぎ、吐き出す。
意識がある場合は嘔吐させる。
自然嘔吐の場合は、嘔吐物が呼吸器に侵入するのを防ぐため、頭を胸より低くし、うつぶせの姿勢にする。
以上、GESTIS、ICSC参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状急性: 眼、皮膚および気道に対する感作作用
慢性: 皮膚および気道のアレルギー性疾患、肺を損傷する可能性
高用量レベルでは、心臓への損傷、血液形成および甲状腺機能への影響
ヒトで発がん性を示す可能性がある。 ヒトで生殖・発生毒性を引き起こす可能性があることが示されている。
以上、GESTIS、ICSC参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤周辺火災に応じて水噴霧、粉末消火剤、泡消火剤、二酸化炭素を使用する。
使ってはならない消火剤火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。
特有の危険有害性周囲の火災に含まれると、有害物質(金属酸化物ヒューム、一酸化炭素と二酸化炭素)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。
特有の消火方法火災の場合:区域から退避させ、爆発の危険性があるため、離れた距離から消火すること。
消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。
以上、GESTIS参照。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
影響を受ける周囲に警告すること。
個人用保護具を着用すること(「個人用保護具」の章を参照)。
周囲を換気し、こぼれた場所を洗浄する。
以上、GESTIS参照。
環境に対する注意事項発がん性物質および生殖細胞変異原性物質は、密閉装置でのみ使用する必要がある。
容器とパイプラインにラベルを貼ること
水、排水、下水、または地中への浸透を防ぐ。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材こぼれた物質を密閉容器内に収集する。
湿らせてもよい場合は、粉じんを避けるために湿らせてから掃き入れる
収集容器にはラベルを貼ること。容器は換気の良い場所に保管すること。
この物質を環境中に放出してはならない
以上、GESTIS、ICSC参照。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策毎日掃除すること。
「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
粉じんを発生させないこと。避けられない粉じんの発生は、定期的に収集すること。
掃除中に粉じんを起こさないこと。
清掃にブロワーを使用しないこと。
容器やラインは、十分にすすいだ後にのみ作業すること。
以上、GESTIS参照。
安全取扱い注意事項粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
密閉状態での加熱又は鈍性化剤の減少を避けること。
熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
作業場所を清潔に保つこと。
この物質は、作業に必要な量を超えて持ち込まない。
容器を開けたままにしないこと。
補充または移し替えには、排気口付きの漏れ防止機器を使用すること。
こぼれないようにすること。
ラベルの付いた容器にのみ注入すること。
粉じんを発生させないこと。
以上、GESTIS参照。
接触回避感染性、放射性、爆発性の物質。
ガス。
強酸化性物質。
硝酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムを含有する製剤
有機過酸化物および自己反応性物質。
危険な化学反応が起こりうる物質と一緒に保管しない。
以上、GESTIS参照。
衛生対策この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
眼、皮膚、衣類への接触を避けること。接触した場合は患部を洗浄する。
眼に入った場合は、影響を受けた眼を洗い流す。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
シャワー付きの洗面所と、可能であれば、私服と作業服用の独立した収納を備えた部屋を用意すること。
以上、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件施錠して保管すること。
国又は都道府県の規則に従って保管すること。
容器を密閉しておくこと。
排水溝のない場で貯蔵する。
容器にはラベルを貼付すること。
できるだけ元の容器に保管すること。
涼しい場所に保管すること。
乾燥した場所に保管すること。
物質は吸湿性のため、湿気を避ける。
以上、GESTIS、ICSC参照。
安全な容器包装材料破損や漏れの無い密閉可能な容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度-
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度
日本産衛学会 (2023年度版)0.05 mg/m3 (コバルト及びコバルト化合物として)
ACGIH (2024年版)-
設備対策粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器または局所換気装置を使用する。
作業場は、可能であれば物理的に分離する必要がある。
作業場は換気をすること。
床に排水溝を設置しない。
作業場での洗濯設備を設置する。
洗眼設備を設置し、標識を付ける。
取り扱い場所の近くに洗浄のための設備を設ける。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
緊急時には、呼吸保護具を着用する。
フィルター装置の使用限界を超える濃度、体積18%未満の酸素濃度、または不明な状況では、絶縁装置を使用すること。
以上、GESTIS参照。
手の保護具必要に応じて適切な不浸透性の保護手袋を使用すること。着用する前に締まり具合を確認すること。手袋は取り外す前に十分に洗浄し、換気の良い場所に保管すること。
布製または革製の手袋は不適切である。
以下の情報は、物質の飽和水溶液に有効である。
次の材料は保護手袋に適している(透過時間>= 8時間):天然ゴム/天然ラテックス-NR(0,5 mm)(非粉末およびアレルゲンフリー製品を使用)、ポリクロロプレン-CR(0,5 mm)、ニトリルゴム/ニトリルラテックス-NBR(0,35 mm)、ブチルゴム-ブチル(0,5 mm)、フッ素炭素ゴム-FKM(0,4 mm)、ポリ塩化ビニル-PVC(0,5 mm)
記載されている時間は、22°Cでの測定と一定の接触によって示されている。温められた物質や体温などによる温度の上昇や、膨張による有効層厚の弱化により、透過時間が大幅に短縮される可能性がある。層の厚さが1.5倍に増減すると、透過時間が2倍/半減する。このデータは純物質にのみ適用される。
以上、GESTIS参照。
眼の保護具必要に応じて安全眼鏡、保護面、安全ゴーグルなどの眼用保護具を着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具身体の保護リスクに応じて、不浸透性の適切な防護服または適切な化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体
ピンク色、赤色〜紫色
臭いデータなし
融点/凝固点140 ℃ (ICSC (2013))
沸点、初留点及び沸騰範囲データなし
可燃性不燃性
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点データなし
自然発火点データなし
分解温度270 ℃ (GESTIS (2024))
pH7.2 (20℃、50 g/L) (GESTIS (2024))
動粘性率データなし
溶解度水:354 g/L (20℃) (ECHA CHEM (2024))
水:380 g/L (25℃) (GESTIS (2024))
n-オクタノール/水分配係数データなし
蒸気圧データなし
密度及び/又は相対密度1.7 g/cm3 (20℃) (GESTIS (2024))
相対ガス密度データなし
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性不燃性である。他の使用する物質に応じて、火災および爆発防止対策を選択すること。
消火対策は、周囲の状況に合わせて選択すること。
以上、GESTIS参照。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性不燃性物質。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
加熱により分解する 刺激性のフュームを生じる。 強酸化剤と反応する。 火災や爆発の危険を生じる。
以上、GESTIS、ICSC参照。
避けるべき条件直射日光を避け、冷暗所に保管する。
混触危険物質接触すると爆発する危険性:酸化剤
以上、GESTIS参照。
危険有害な分解生成物周囲の火災に含まれると、有害物質(金属酸化物ヒューム、一酸化炭素と二酸化炭素)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値 (OECD TG 401) として、708 mg/kg (SIAP (2014)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮データ不足のため分類できない。
吸入: ガスGHSの定義における固体である。
吸入: 蒸気GHSの定義における固体である。
吸入: 粉じん及びミストデータ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性データ不足のため分類できない。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性データ不足のため分類できない。
呼吸器感作性日本産業衛生学会・許容濃度勧告では、コバルト及びその化合物として、気道感作性物質第1群に掲載されている (産衛学会勧告 (2015)) ことから、区分1Aとした。
皮膚感作性日本産業衛生学会・許容濃度勧告では、コバルト及びその化合物として、皮膚感作性物質第1群に掲載されている (産衛学会勧告 (2015)) ことから、区分1Aとした。
生殖細胞変異原性本物質のデータはない。In vivoでは、可溶性コバルト化合物(U) の塩化コバルトを用いたマウス骨髄細胞の小核試験、染色体異常試験で陽性の報告がある (ATSDR (2004)、CICAD 69 (2009)、環境省リスク評価第11巻 (2013)) ものの、これらのデータは信頼性や妥当性が十分ではない。また、作業者ばく露では、末梢血の有意な小核及びDNA傷害は検出されていないとの報告がある (SIAP (2014))。In vitroでは、可溶性コバルト化合物(U) は、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の報告、哺乳類培養細胞の小核試験、染色体異常試験、遺伝子突然変異試験で陽性である (ATSDR (2004)、CICAD (2009)、環境省リスク評価書第11巻 (2013)、IARC 52 (1991)) が、上記のin vivo小核試験の報告の中で、分離したマウス骨髄細胞を用いて行ったin vitro小核試験ではS9の有無にかかわらず陰性であった。SIAP (2014) では、可溶性コバルトは変異原性 (突然変異) を細菌、細胞に示さないが、in vitroでは染色体損傷を示し、これは活性酸素種 (ROS) によるものと推察され、Weight of evidenceによれば、in vivo染色体損傷試験での陰性知見およびヒト職業暴露での陰性知見から、in vivoでは保護作用が機能するとしている。以上より、可溶性コバルト化合物はin vivoでの影響はなく、分類できないとした。
発がん性【分類根拠】
ヒトの発がん性に関する情報はない。動物試験では、本物質自体のデータはないが、(1)より本物質が属する二価の可溶性コバルト化合物には動物試験において発がん性の十分な証拠がある物質(硫酸コバルト(II)七水和物)があり、また(2)よりコバルトイオンが発がん性の主な原因であることが報告されていることから、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2024年度)。

【根拠データ】
(1)二価の可溶性コバルト化合物である硫酸コバルト(II)七水和物は動物試験において発がん性の十分な証拠があることに加え、作用機序の面で二価の可溶性コバルト化合物は発がん性のキーとなる性質を示す強い証拠がヒト初代細胞と実験系で得られている(NTP TR471(1998)、IARC 131 (2023))。
(2)生体内でコバルトイオンを遊離するコバルト金属およびコバルト化合物(水への溶解度に関係なく)が、同様の作用機序を介して細胞死、DNA損傷、がんなどの同様の種類の影響を引き起こすことから、コバルトイオンが毒性と発がん性の主な原因であることを示している(NTP (2021)、IARC 131 (2023))。

【参考データ等】
(3)国内外の評価機関による発がん性分類では、本物質を含む可溶性コバルト(II)塩に対しIARCでグループ2A(IARC 131 (2023))に、本物質自体に対しEUでCarc. 1B(CLP分類 (Accessed July 2024))に、コバルト及び(無機)コバルト化合物に対しACGIHでA3(ACGIH (2019))、日本産業衛生学会で2B(産衛学会許容濃度等の勧告 (2023))、DFGでカテゴリー2(List of MAK and BAT values (2023))に分類されている。
生殖毒性本物質自体の生殖影響に関する情報はないが、可溶性コバルト化合物の情報が利用可能と考えられる、すなわち、雄ラットに塩化コバルト六水和物を混餌投与 (265 ppm: 20 mg Co/kg/day) した試験では、35日間投与後に精巣に中等度から重度のうっ血がみられ、70日間投与後には精巣の胚上皮及びセルトリ細胞における退行性ないし壊死性の変性に加えて、精原細胞や精母細胞、精子細胞への著しい影響が認められた (環境省リスク評価第11巻 (2013))。また、塩化コバルトを雄マウスに12週間飲水投与後に無処置雌と交配させた試験では、200 mg/L 以上で、精巣上体精子数の減少及び生存胎児数の減少、400 mg/L 以上で妊娠動物数の減少 (雄の受胎能低下)、精巣重量の減少、精巣精子数の減少及び精子形成能の低下がみられ、精巣の組織検査ではライディッヒ細胞の肥大、うっ血した血管、精原細胞の変性、精細管及び間質組織の壊死などが認められた (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006))。さらに、硫酸コバルトを妊娠雌ラットに強制経口投与 (妊娠1〜21日) した試験では、母動物毒性発現量 (100 mg/kg/dayで肝臓・副腎・脾臓相対重量の減少) より低い50 mg/kg/dayから、胎児に奇形発生 (頭蓋、脊柱、腎盂、尿細管、卵巣、精巣の奇形) が報告され、妊娠マウスへの経口投与 (妊娠6〜15日) でも 50 mg/kg/day で、胎児の眼瞼、腎臓、頭蓋、脊椎に奇形発生がみられたと報告されている (環境省リスク評価第11巻 (2013))。
以上、可溶性コバルト化合物では経口経路で雄生殖器官への有害性影響とそれによる受胎能の低下、並びに母動物毒性のない用量で催奇形性を示すことが報告されている。本物質も無機コバルト化合物であり、同様の生殖発生毒性を生じる可能性が十分にあると考えられ、本項は区分1Bとした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質は水に可溶との記載がある (CICAD 69 (2006))。
本物質を含む四種類の可溶性コバルト塩 (硫酸コバルト(U)、硝酸コバルト(U)、塩化コバルト(U)、酢酸コバルト(U)) の全てに関する結果として、ラットの急性経口投与試験で、投与の最高用量 (区分2相当の用量)で鎮静、下痢、死亡前の振戦と痙攣、体温低下、心拍数増加及び立毛を惹起したが、主要臓器には肉眼的な変化はみられず、ほとんどの影響は72時間後には消失したとの記載がある (SIAP (2014))。
更に塩化コバルト(U) (CAS番号 7646-79-9) は、ラットの単回経口投与試験において区分1相当の用量で、自発運動低下、筋緊張低下、呼吸数減少、胃腸管への影響が報告されており (ATSDR (2004))、GHS分類では区分1 (中枢神経系、消化管) として分類されている (平成27年度)。
以上の情報を総合すると、本物質は中枢神経系と消化器への影響が考えられる。SIAPに記載された症状が区分2相当の用量でみられたことから区分2 (中枢神経系、消化管) とした。また本物質は気道刺激性を示すとの記載がある (環境省リスク評価第11巻 (2013))。したがって区分2 (中枢神経系、消化管)、区分3 (気道刺激性) とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)本物質は水に非常によく溶けるとの情報がある (CICAD 69 (2006))。
本物質についてヒト及び実験動物において関連する情報はない。
可溶性コバルトの情報として、ヒトにおいて、貧血の治療用に塩化コバルト又は硫酸コバルトを投与した際の過剰障害として、神経系 (食欲不振、吐き気、耳鳴り、難聴、神経障害)、甲状腺 (甲状腺腫、甲状腺へのヨウ素の取り込み阻害) への影響、ボランティアに塩化コバルトを経口投与した結果、赤血球系の造血亢進がみられた他、自覚症状として頭痛、腹部不快感の主訴が多かったとの報告がある (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006))。また、かつてビールの泡の安定化目的で、硫酸コバルトが添加されており、多量にコバルトを含むビールの大量消費者に心筋症による死亡例が報告され、コバルトの心筋障害作用が懸念され (CICAD 69 (2006)、ACGIH (7th, 2001))、コバルトの添加制限を行うことにより、心筋症の発生とそれによる死亡例は消失したとされる (環境省リスク評価第11巻 (2013))。以上より、ヒトでの本物質を含む可溶性コバルト化合物の反復ばく露による標的臓器として、神経系、心血管系、甲状腺、血液系が挙げられる。
実験動物ではラットに塩化コバルトを7ヵ月間強制経口投与した試験において、0.5 mg Co/kg/day以上の用量で、赤血球数及びヘモグロビン量の増加が認められている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、ATSDR (2004))。また、塩化コバルトの六水和物をラットに8週間強制経口投与した試験でも血液影響がみられている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、ATSDR (2004))。この他、硫酸コバルト七水和物のラット、又はマウスを用いた13週間、又は2年間吸入ばく露試験において、ラット、マウスともに0.3 mg/m3 (コバルトとして0.11 mg/m3) の低濃度から、呼吸器に炎症性組織変化がみられ、ラット13週間ばく露では、加えて血液影響 (多血症、血小板数減少、網状赤血球数増加) もみられている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006))。この他、雄マウスに塩化コバルトを200〜800 ppmの濃度で12週間飲水投与した試験で、400〜800 ppm (47〜93 mg/kg/day、コバルトとして21〜42 mg/kg/day) (90日間換算値:コバルトとして19.6〜39.2 mg/kg/day) で精巣重量減少、精巣上体精子数の減少、精子形成能の低下、精細管及び間質組織の変性がみられたとの報告がある (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006))。以上より、実験動物での可溶性コバルト化合物の標的臓器は呼吸器、血液系、精巣と考えられ、精巣は区分2、他は区分1の用量範囲での影響であった。
以上、ヒト及び実験動物での可溶性コバルト化合物の反復ばく露影響に関する情報に基づき、本項は区分1 (神経系、呼吸器、心血管系、甲状腺、血液系)、区分2 (生殖器 (男性)) とした。
誤えん有害性*データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)データなし
水生環境有害性 長期(慢性)データなし
残留性・分解性-
生態蓄積性-
土壌中の移動性-
オゾン層への有害性-

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。


14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号該当しない
品名(国連輸送名)該当しない
国連分類該当しない
副次危険該当しない
容器等級該当しない
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報該当しない
航空規制情報該当しない
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策該当しない
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*-
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【172 コバルト及びその化合物】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【12 コバルト及びその化合物】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【172 コバルト及びその化合物】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【12 コバルト及びその化合物】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2)
変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達) 【酢酸コバルト(U)=四水和物】
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1) 【コバルト及びその化合物】
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1) 【156 コバルト及びその化合物】
毒物及び劇物取締法-
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申) 【60 コバルト及びその化合物】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・2024 Emengency Response Guidebook
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」