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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン
作成日 2002年12月13日
改訂日 2006年09月11日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン (別名: ディルドリン) (Dieldrin)
製品コードR02-B-043
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限木材用の防腐剤、防虫剤及びかび防止剤、塗料用 (防腐用、防虫用又はかび防止用のものに限る。)、羊毛 (脂付き羊毛を除く。)、殺虫剤 (販売禁止農薬) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分2
急性毒性 (経皮)区分2
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)区分1
発がん性区分1B
生殖毒性区分1B
追加区分: 授乳に対する、又は授乳を介した影響
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (神経系)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系、肝臓、腎臓)
分類実施日
(環境有害性)
平成18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと生命に危険
皮膚に接触すると生命に危険
吸入すると生命に危険
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
授乳中の子に害を及ぼすおそれ
神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、肝臓、腎臓の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
眼、皮膚、衣類につけないこと。
妊娠中及び授乳期中は接触を避けること。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
呼吸用保護具を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン
別名ディルドリン
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C12H8Cl6O (380.91)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号60-57-1
官報公示整理番号
(化審法)
4-299
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
汚染された衣服を脱がせる。
医療機関に連絡する。
眼に入った場合数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医療機関に連絡する。
飲み込んだ場合直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。
吐かせない。
安静。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 「経口摂取」参照。
皮膚: 吸収される可能性あり!「経口摂取」参照。
経口摂取: 痙攣、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐、筋攣縮。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項曝露の程度によっては、定期検診を勧める。
市販の製剤に用いられている溶剤が、この物質の物性および毒性を変化させることがある。

5.火災時の措置
適切な消火剤小火災: 粉末消火剤、二酸化炭素、散水
大火災: 水の散布、噴霧、一般の泡消火剤
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性不燃性。 有機溶剤を含む液体製剤は、引火性のことがある。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
特有の消火方法情報なし
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材下水に流してはならない。
こぼれた物質を、ふた付きの 密閉式容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉塵を避けるために湿らせてから掃き入れる。
残留分を、注意深く集める。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
眼、皮膚、衣類につけないこと。
妊娠中及び授乳期中は接触を避けること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
製剤に溶剤が使用されている場合は、その溶剤のICSCも参照のこと。
作業衣を家に持ち帰ってはならない。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
消火により生じる流出物を収容するための用意
食品や飼料および混触危険物質から離しておく。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
安全な容器包装材料国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)第3種粉じん: その他の無機及び有機粉じん*
吸入性粉じん: 2 mg/m3
総粉じん: 8 mg/m3
* 多量の粉じんの吸入によるじん肺を予防する観点から、この値以下とすることが望ましいとされる濃度。
ACGIH (2020年版)TLV-TWA: 0.1 mg/m3 IFV
(Skin)
設備対策粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器又は局所換気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。(ICSCには、安全ゴーグルまたは顔面シールドを着用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣 (化学防護服) を着用する。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭いナフタレン様の臭い
融点/凝固点175.5℃ (HSDB (Access on May 2020))
沸点、初留点及び沸騰範囲330℃ (U.S.EPA: Mpbpwin v1.43)
可燃性不燃性 (ICSC (1998))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界該当しない
引火点該当しない
自然発火点該当しない
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率該当しない
溶解度水: 0.195 mg/L (25℃) (HSDB (Access on May 2020))
アセトン、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素に可溶 (HSDB (Access on May 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = 5.40 (HSDB (Access on May 2020))
蒸気圧5.89E-006 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020))
密度及び/又は相対密度1.7 g/cm3 (ICSC (1998))
相対ガス密度該当しない
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性加熱すると、分解する。
塩化水素などの有毒なフュームを?じる。
酸化剤および酸と反応する。
保管中、塩化水素を徐々に生成し、?属を侵す。
避けるべき条件加熱、混触危険物質との接触
混触危険物質酸化剤、酸
危険有害な分解生成物塩化水素などの有毒なフューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(9) より,区分2とした。
なお、旧分類はヒトのデータを基に分類されたが、旧分類の根拠データ (LD50: 5 mg/kg) とは異なるLD50推定値もあり、ヒトのLD50値を利用して分類するのは制限があると考え、今回はガイダンスに従い実験動物のデータで分類した。

【根拠データ】
(1) ラット (離乳前児) のLD50: 25 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、ATSDR (2002)、EHC 91 (1989))
(2) ラットのLD50: 24〜167 mg/kg (IPCS PIM (1996))
(3) ラット (成体) のLD50: 37 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))
(4) ラットのLD50: 37〜46 mg/kg (ATSDR (2002))
(5) ラットのLD50: 37〜87 mg/g (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989)、JMPR (1965)、HSDB (Access on May 2020))
(6) ラットのLD50: 37〜167 mg/g (ACGIH (7th, 2010))
(7) ラットのLD50: 46 mg/kg (MOE初期評価第1巻 (2002))
(8) ラットのLD50: 51〜64 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))
(9) ラット (新生児) のLD50: 168 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、ATSDR (2002)、EHC 91 (1989))

【参考データ等】
(10) ヒトの推定LD50: 5 mg/kg (Patty (6th, 2012))
(11) ヒトの推定LD50: 65 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))
(12) ヒトの致死量: 約5 g/kg (約100 mg/kg: 体重50kgとして算出) (ACGIH (7th, 2010))
経皮【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分2とした。
なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 雌: 60 mg/kg (ATSDR (2002)、HSDB (Access on May 2020))
(2) ラットのLD50: 60〜90 mg/kg (ACGIH (7th, 2010)、食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989)、GESTIS (Access on May 2020))
(3) ラットのLD50: 雄: 90 mg/kg (ATSDR (2002)、MOE初期評価第1巻 (2002)、HSDB (Access on May 2020))
(4) ウサギのLD50: < 150 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))

【参考データ等】
(5) ウサギのLD50: 150 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))
(6) ウサギのLD50: 250 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020))
(7) ウサギのLD50: 250〜350 mg/kg (ACGIH (7th, 2010))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1) より、区分1とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (0.0001 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 0.013 mg/L (GESTIS (Access on May 2020))
(2) 本物質の蒸気圧: 5.89E-006 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 0.0001 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ウサギを用いた皮膚刺激性試験において粉体では皮膚には変化が認められず、植物油に溶解することにより軽度の刺激性及びうろこ状の変化が認められた (食安委 農薬評価書 (2013))。
(2) 本物質はウサギの皮膚に軽度〜重度の刺激性を示すが、これは溶媒による影響である (EHC 91 (1989))。
(3) 本物質 (テクニカルグレード) の粉体はウサギの皮膚に数週間適用してもごく軽度の紅斑が観察されることはあるが、殆ど刺激性は示さない (GESTIS (Access on May 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1) の記載はあるが、データ不足のため分類できないとした。

【参考データ等】
(1) 大規模なばく露集団で感作性と思われる反応がみられなかたことから、感作性はないと思われる (EHC 91 (1989)、GESTIS (Access on May 2020))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスを用いた優性致死試験及び相互転座試験、チャイニーズハムスターの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、マウスの骨髄を用いた小核試験において陰性の報告がある (EHC 91 (1989)、JMPR (1977)、ATSDR (2002)、ACGIH (7th, 2001))。
(2) in vitroでは、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陽性、ラットの培養細胞を用いた姉妹染色分体交換試験において陽性、ヒトの末梢血リンパ球又は哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験で陽性又は陰性、マウス又はラットの肝細胞を用いた不定期DNA合成試験において陽性及び陰性の結果が得られた。また、細菌の復帰突然変異試験で陰性、ほ乳類培養細胞を用いた形質転換試験で陰性の結果が得られた (EHC 91 (1989)、JMPR (1977)、ATSDR (2002)、IRIS (1988)、ACGIH (7th, 2001)、CEBS (Access on May 2020))。
(3) 本物質にばく露された労働者において、末梢血リンパ球の染色体に異常は認められなかったとの報告がある (EHC 91 (1989)、ATSDR (2002))。
(4) 食安委農薬評価書において「生体において問題となる遺伝毒性はないものと考えられた」との記載がある (食安委 農薬評価書 (2013))。
発がん性【分類根拠】
(1) のIARCの最新評価及びその根拠となった (2)〜(4) の情報等に基づき、区分1Bとした。IARCの最新の分類結果に基づき分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2A (IARC 117 (2019))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2010))、EPAでB2 (probable human carcinogen) (IRIS (1988))、EU CLPでCarc. 2 (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。
(2) 本物質へのばく露に関連するがんのリスクに関する複数の疫学研究が報告されており、乳がん、非ホジキンリンパ腫、肺がん、白血病について、本物質へのばく露によりリスクが増加したとする報告と、増加しなかったとする報告がある (IARC 117 (2019))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を52週間〜2年間混餌投与した発がん性試験が、複数の系統を用いて多数実施されている。これらの試験のほとんどで、雌雄マウスに肝腫瘍 (肝細胞腺腫及びがん) の有意な発生率の増加が認められた (IARC 117 (2019))。また、雌のトランスジェニックマウスに本物質を交配2週間前から妊娠期及び授乳期を通して離乳まで強制経口投与した試験において、胸部乳腺腫瘍 (主に乳腺腺がん) の発生率の有意な増加が認められた (IARC 117 (2019))。
(4) 雌雄のラット及びハムスターに本物質を2年間混餌投与した発がん性試験では、投与による腫瘍発生の有意な増加は認められなかった (IARC 117 (2019))。
(5) 雄のラット及びマウスに肝発癌物質であるジエチルニトロソアミンを腹腔内投与後、本物質を30日又は60日間混餌投与した肝腫瘍誘発試験では、マウスで肝臓の限局性病変の数、その体積及びDNAラベリング指数に有意な影響が認められた。ラットではこれらに影響は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2013))。

生殖毒性【分類根拠】
(1)〜(5) の繁殖試験において、授乳期の児動物の死亡率増加がみられた。原因として (3)、(4) より、母動物毒性 (知覚過敏、過活動) によって適切な授乳ができない可能性、あるいは、(3)、(5)、(6) 及び (7) より、胎盤移行や母乳を介した児動物毒性の可能性が示された。(8)〜(10) の発生毒性試験において催奇形性を示す明確な証拠は得られていないが、(11) よりアルドリンとの類似性を考慮した。また、(5) より、乳汁移行がみられている。したがって、区分1B、追加区分: 授乳に対する、又は授乳を介した影響とした。なお、授乳影響を加えたことから旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌投与による3世代繁殖試験において、最高用量群のF1b 児動物で死亡率の増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。
(2) ラットを用いた混餌投与による3世代繁殖試験において、授乳期間中の児動物の死亡率増加がみられた (食安委 農薬評価書 (2013))。
(3) ラットを用いた混餌投与による繁殖試験において、離乳期に生存児数の減少がみられ、児動物は痙攣 (43%) 又は飢 え (57%) で死亡した。飢えの原因は、母動物及び児動物の知覚過敏のために適切な授乳ができなかったためと考えられている (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。なお、この試験において、神経障害 (大脳浮腫及び水頭等) が母動物毒性の記載のない最低用量群の児動物で認められたが、より高用量では認められなかったとあり、この変化については影響としなかった。
(4) マウスを用いた混餌投与による繁殖試験においても離乳前の児動物の死亡率の増加がみられ、母動物の過活動が児動物の死亡の原因と考えられている (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。
(5) ラットを用いた混餌投与による繁殖試験において、児動物の生存率減少がみられ、この試験での母乳中のディルドリン濃度は飼料中濃度の17倍高く、乳汁への最大分泌量は授乳期間当たり1〜4 mgであったことが示されている (食安委 農薬評価書 (2013))。
(6) マウスを用いた混餌投与による繁殖試験において、出生前ばく露を受けた児動物を非ばく露群の母動物に哺育させた結果、全ての児動物で4日以内の死亡が確認された (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。
(7) 妊娠ラット、マウス、ウサギを用いて試験において胎盤透過性がある結果が示されている (食安委 農薬評価書 (2013))。
(8) 雌ラット、ウサギの妊娠期に強制経口投与した発生毒性試験において、奇形はみられていない (EHC 91 (1989)).
(9) 雌マウスの妊娠6〜14日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性がみられない用量で胎児に過剰肋骨の増加がみられ、母動物毒性 (体重増加抑制及び肝比重量の増加) がみられた用量の胎児においてはさらに、尾部の骨化中心の数の減少が認められた (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。
(10) 雌ハムスターの妊娠7、8、または9日に、強制経口投与した発生毒性試験において、生存胎児数と胎児の体重が減少し、異常(口蓋裂、眼瞼開存、水かき足)の発生率が増加した。 眼瞼開存、水かき足は、胎児の低体重と頻繁に関連していたため、これらの効果は単に成長遅延の発現である可能性があることが示唆された (EHC 91 (1989))。EHC 91 (1989) では、重度の母体毒性の存在下でのこれらの異常の重要性は疑わしいが、特定の催奇形性の可能性を完全に排除することはできないとしている。
(11) 哺乳類において、催奇形性を示すアルドリンは代謝され本物質となる(食安委 農薬評価書 (2013))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分1 (神経系) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質の中毒症状は、軽症で頭痛、めまい、吐き気、血圧上昇等、中程度では激しい筋痙攣、一時的記憶消失、重症では意識消失、強直性痙攣発作がみられ、呼吸麻痺や心室細動で死亡する場合もある (MOE初期評価第1巻 (2002))。
(2) 中毒症状には (急性) 高刺激性、痙攣、昏睡、吐き気、嘔吐、頭痛を伴うことがある (ACGIH (7th, 2010))。
(3) 中毒症状は、全身倦怠感、頭痛、発汗、めまい、吐き気と嘔吐、心不整脈、筋力低下、運動過興奮、反射亢進、ミオクローヌス性発作、重度では痙攣がある。 (IPCS PIM (1996))。
(4) 典型的な症状は、用量に応じて15分から24時間後に頭痛、めまい、吐き気、脱力感、筋肉の痙攣がおこり、深刻な場合では、強直性間代性 (脳波上のてんかん型活動) が生じる。この段階では、重篤な心血管反応 (頻脈、高血圧/低血圧)、発熱または低体温、肝臓または腎臓の機能への影響及び血液学的パラメーター (白血球増加症) も生じる (GESTIS (Access on May 2020))。
(5) ヒトのLD50は5 mg/kgと推定され、頭痛、めまい、倦怠感、興奮性亢進、筋肉の痙攣、意識喪失、痙攣、うつ病等の中毒の兆候がみられた (Patty (6th, 2012))。
(6) 本物質は、過剰摂取により、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐及び疲労を引き起こし、筋肉の痙攣、ミオクローヌス性発作、突然の転倒及び意識喪失を伴う痙攣等を引き起こし、死亡する場合がある (Patty (6th, 2012))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1) より、ヒトにおいて神経系への影響がみられ、(2)、(3) より、実験動物で神経系、肝臓、腎臓への影響が区分1の範囲でみられた。したがって、区分1 (神経系、肝臓、腎臓) とした。なお、新たな情報を用いたことから旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ヒトの職業ばく露及び偶発的ばく露に関するレビューの結果、本物質は、過敏症及び筋線維束性攣縮を引き起こし、その後、痙攣発作及び脳波パターンのそれぞれの変化が続いたとの報告がある (ACGIH (7th, 2010))。
(2) ラットを用いた混餌投与による慢性毒性/発がん性併合試験において、1 ppm (0.05 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雌で肝臓の絶対及び比重量の増加、10 ppm (0.5 mg/kg/day、区分1の範囲) の雌雄で過敏性、振戦及び痙攣、小葉中心性肝細胞肥大 (雄: 1例、雌: 6例) がみられた (食安委 農薬評価書 (2013))。
(3) ラットを用いた混餌投与による2年間慢性毒性試験において、0.5 ppm (0.025 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雌、10 ppm (0.5 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雄で肝臓の比重量増加、小葉中心性肝細胞肥大、50 ppm (2.5 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で生存率減少、100 ppm (5 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雄で腎炎を伴う膀胱の出血及び/又は膨張がみられた (食安委 農薬評価書 (2013))。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)甲殻類 (ブラウンシュリンプ) の96時間LC50 = 0.4 μg/L (EHC91 (1989)) から、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)急性毒性が区分1、急速分解性がなく (BODによる分解度: 0% (既存化学物質安全性点検データ))、生物蓄積性がある (BCF = 14,500 (既存化学物質安全性点検データ)) ことから、区分1とした。
オゾン層への有害性-

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号2761
国連品名ORGANOCHLORINE PESTICIDE, SOLID, TOXIC
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級I
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報毒物及び劇物取締法、道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策毒物及び劇物取締法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*151
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【506 1,2,3,4,10,10−ヘキサクロロ−6,7−エポキシ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−エキソ−1,4−エンド−5,8−ジメタノナフタレン】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【506 1,2,3,4,10,10−ヘキサクロロ−6,7−エポキシ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−エキソ−1,4−エンド−5,8−ジメタノナフタレン】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)-
毒物及び劇物取締法劇物(指定令第2条)【89 ヘキサクロルエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリンを含有する製剤】
劇物(法第2条別表第2)【75 ヘキサクロルエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリン】
化学物質審査規制法第1種特定化学物質(法第2条第2項・施行令第1条)【5 1,2,3,4,10,10−ヘキサクロロ−6,7−エポキシ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−エキソ−1,4−エンド−5,8−ジメタノナフタレン】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【3 ヘキサクロルエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリンを含有する製剤】
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2761 殺虫殺菌剤(有機塩素系)(固体)(毒性のもの)】
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2761 有機塩素系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2チ 有機塩素系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
海洋汚染防止法個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】2761 有機塩素系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
農薬取締法販売禁止農薬(法第18条第2項、平成15年3月5日省令第11号)【4 1,2,3,4,10,10−ヘキサクロロ−6,7−エポキシ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−エキソ−5,8−ジメタノナフタレン】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用