職場のあんぜんサイト

安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
オキシラン−2−イルメタノール
作成日 2003年12月5日
改訂日 2010年3月31日
改訂日 2024年3月29日
化学品の名称オキシラン−2−イルメタノール
化学品の英語名称Oxiran-2-ylmethanol
製品コードR05-B-010-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限医薬中間原料,ハロゲン化合物の安定剤 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R6.3.29、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用
物理化学的危険性引火性液体区分4
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(経皮)区分4
急性毒性(吸入:蒸気)区分3
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
生殖細胞変異原性区分1B
発がん性区分1B
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(呼吸器)、区分2(中枢神経系)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(呼吸器)、区分2(肝臓)
分類実施日
(環境有害性)
H22.3.31、ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分3
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報可燃性液体
飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合は有害
吸入すると有毒
強い眼刺激
遺伝性疾患のおそれ
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
呼吸器の障害
中枢神経系の障害のおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による肝臓の障害のおそれ
水生生物に有害
注意書き
 安全対策熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
環境への放出を避けること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けんで洗うこと。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
 保管換気の良い場所で保管すること。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性-

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名オキシラン−2−イルメタノール
慣用名又は別名2,3−エポキシ−1−プロパノール
グリシド
グリシドール
英語名Oxiran-2-ylmethanol
2,3-Epoxy-1-propanol
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C3H6O2 (74)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号556-52-5
官報公示整理番号(化審法)2-2389
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動させる。呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。できるだけ早く、グルココルチコイド吸入用スプレーで繰り返し深呼吸させる。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
皮膚に付着した場合汚染された衣服を脱がせる。皮膚に付着した部分を多量の流水で少なくとも10〜20分間洗浄する。医師の診察/手当を受けること。
以上、GESTIS、ICSC参照。
眼に入った場合多量の流水で10分間洗浄する。できればコンタクトレンズを外す。その後も洗浄を続けること。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GHS分類結果、GESTIS、ICSC参照。
飲み込んだ場合口をすすぐ。意識があればコップ1〜2杯の水を飲ませる。嘔吐させないこと。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS、ICSC参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:鼻/喉の炎症、咳、咽頭痛、めまい、嗜眠、高濃度では肺損傷(肺水腫、肺気腫)。
皮膚:発赤、中程度の刺激。
眼:充血、痛み、灼熱感、流涙、角膜混濁。
経口摂取:腹痛、下痢、吐き気、むかつき、嘔吐、粘膜への刺激。
吸収:中枢神経に対する用量依存性の興奮性/抑うつ効果 (混乱、めまい、眠気、混濁から意識喪失まで)、腎臓および泌尿生殖器系の他の器官の機能障害/損傷。
以上、GESTIS、ICSC参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、耐アルコール泡消火薬剤、二酸化炭素。
以上、GESTIS参照。
使ってはならない消火剤棒状注水
以上、GESTIS参照。
火災時の特有の危険有害性火災の場合、有害物質(一酸化炭素、二酸化炭素)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。
特有の消火方法周囲の容器を水スプレーで冷却する。可能であれば、容器を危険区域外に持ち出す。加熱により圧力が上昇し破裂する恐れがある。着火源となるものを遮断する。
以上、GESTIS参照。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護具を着用する。
以上、GESTIS参照。
環境に対する注意事項水域に対する危険性は大きい。地面や河川、下水への流出を避ける。少量でも流出した場合は、自治体に連絡する。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての着火源を取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
危険でなければ漏れを止める。
少量の場合、ウエス、雑巾等でよく拭き取り適切な廃棄容器に回収する。
大量の場合、盛土等で囲って流出を防止する。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。
二次災害の防止策付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火剤を準備する。
火花を発生しない安全な用具を使用する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
容器を開けたままにしない。飛沫を避ける。接触を避ける。補給または移送には排気装置付きの漏れ防止装置を使用すること。床への浸透を避ける(鉄製パンの使用)。
機器類は防爆構造とし、設備は静電気対策を実施する。
周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
以上、GHS分類結果、GESTIS、日化協発行ガイドライン参照。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策皮膚や眼への接触を避ける。接触した場合は洗浄する。蒸気またはミストの吸入を避ける。休憩前や作業終了時には石鹸と水で皮膚を洗い、洗浄後は脂肪分の多いスキンケア製品を塗布する。衣服との接触を避ける。汚染された衣類は交換し、注意深く洗うこと。休憩前に着替えが必要になる場合がある。使用するときには飲食、喫煙をしないこと。
以上、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件施錠して保管するか、権限のある者のみが管理する。容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管すること。推奨保管温度: 2 〜 8℃。
以上、GESTIS参照。
安全な容器包装材料国連輸送法規、消防法で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度-
濃度基準値
八時間濃度基準値-(発がん性が明確であるため、長期的な健康影響が生じない安全な閾値としての濃度基準値を設定できない物質である。事業者は、この物質に労働者がばく露される程度を最小限度にしなければならない。)
短時間濃度基準値-(発がん性が明確であるため、長期的な健康影響が生じない安全な閾値としての濃度基準値を設定できない物質である。事業者は、この物質に労働者がばく露される程度を最小限度にしなければならない。)
許容濃度等
日本産衛学会(2023年版)-
ACGIH(2023年版)TLV-TWA: 2 ppm(A3)
設備対策作業場所には換気設備を設置する(特に高温時)。排出された空気は作業場所に戻さない。取り扱い場所の近くに洗眼及び身体洗浄のための設備を設け、標識を付ける。床に排水溝を設けないこと。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具必要に応じて状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、電動ファン又は面体が国家検定合格品であることを確認し、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度に対応した・・・用吸収缶を使用する
注) ”…”の吸収缶は国家検定合格品又は日本産業規格(JIS T8152)に適合した物質に対応した吸収缶を記載します。SDS作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
-作業者が粉じんにばく露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
手の保護具適切な不浸透性の保護手袋を着用する。
保護手袋の選択については、厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」を参照のこと。
眼の保護具サイドガード付きの保護眼鏡を着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具適切な保護衣または化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体
無色
臭い無臭
融点/凝固点-54 ℃(GESTIS(2023))
-45 ℃(ICSC(2005))
沸点、初留点及び沸騰範囲166 ℃(分解する)(ICSC(2005))
167 ℃(分解する)(SAX(2000))
54 ℃(13.3 hPa)(GESTIS(2023))
可燃性可燃性、低引火性(GESTIS(2023))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点66 ℃(密閉式)(GESTIS(2023))
72 ℃(密閉式)(ICSC(2005))
73 ℃(密閉式)(PubChem(2023))
自然発火点415 ℃(GESTIS(2023)、ICSC(2005))
分解温度163 ℃(GESTIS(2023))
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: 1.0×10+6 mg/L(混和)(HSDB in PubChem(2023))
水:(混和)(GESTIS(2023))
アルコール、エーテル:(混和)(SAX(2000))
n-オクタノール/水分配係数データなし
蒸気圧120 Pa(25℃)(ICSC(2005))
1.2/3.3 hPa(25℃/66℃)(GESTIS(2023))
0.9 mmHg(25℃)(HSDB in PubChem(2023))
密度及び/又は相対密度112 g/cm3(20℃)(GESTIS(2023))
相対ガス密度2.15 (空気=1)(ICSC(2005))
2.56 (GESTIS(2023))
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性重合することがある。
危険有害反応可能性バリウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、チタンと接触すると重合する可能性がある。
避けるべき条件火気、加熱、高温、静電気、火花、爆発性混合気の形成。
混触危険物質強酸、強塩基、金属塩または金属と接触すると分解する。
危険有害な分解生成物情報なし

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(4)より、区分4とした。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:420 mg/kg(MOE 初期評価 (2013)、厚労省 リスク評価書 (2008))
(2)ラットのLD50:450 mg/kg(DFG MAK (2003))
(3)ラットのLD50:464 mg/kg(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))
(4)ラットのLD50:420〜850 mg/kg(AICIS IMAP (2015)、食安委 FACTS (2021))
経皮【分類根拠】
(1)より、区分4とした。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50:1,980 mg/kg(MOE 初期評価 (2013)、厚労省 リスク評価書 (2008)、DFG MAK (2003)、ACGIH (2001)、AICIS IMAP (2015))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
(1)より、区分3とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (1,188 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmVを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1)ラットのLC50(8時間):580 ppm(4時間換算:820 ppm)(MOE 初期評価 (2013)、ACGIH (2001)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、(1)の試験は適用時間が長いため、本分類では採用しなかった。用いる知見を精査し、分類結果を見直した。

【参考データ等】
(1)ウサギを用いた皮膚刺激性試験(閉塞、24時間適用、72時間観察)において、中程度の刺激性が観察された(皮膚一次刺激指数(PII):4.5/8)との報告がある(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023)、AICIS IMAP (2015)、DFG MAK (2003)、ACGIH (2001))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)より、区分2Aとした。

【根拠データ】
(1)ウサギを用いた眼刺激性試験において、重度の刺激性と判断されたが、非可逆的な損傷はみられなかった(急性眼刺激指数(AOI):68/110)との報告がある(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023)、AICIS IMAP (2015)、DFG MAK (2003)、ACGIH (2001))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)マウス(n=4)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、25、50、100%溶液に対し刺激指数(SI値)は0.5、1.2、1.6(<3で区分に該当しない)との報告がある(REACH登録情報(Accessed Nov. 2023))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(3)より、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、マウスの骨髄を用いた小核試験(単回腹腔内投与、37.5〜150 mg/kg)で陽性、ラットを用いた単回経口(600 mg/kg)又は単回腹腔内投与(150〜340 mg/kg)による染色体異常試験で陽性(用量相関なし)であったが、マウスを用いた2回強制経口投与(50〜200 mg/kg、24時間間隔)による小核試験で陰性(中用量(100 mg/kg)のみ陽性)の結果がみられたと判定された(DFG MAK (2003; 2015)、EFSA (2016))。
(2)本物質はラットへの経口ばく露で雄の生殖系組織に到達することが示されている(DFG MAK(2015))。
(3)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験で概ね陽性、マウスリンフォーマ試験で陽性、CHO細胞を用いた染色体異常試験で陽性又は陰性の報告がある(DFG MAK (2003、2015)、NTP TR374 (1990)、MOE 初期評価 (2013)、EFSA (2016))。

【参考データ等】
(4)雄ラットに本物質を5日間吸入ばく露後に非ばく露雌と交配させ、雌の受胎への影響を評価した優性致死試験において、一般毒性影響(雄2例死亡、体重増加抑制(130 ppm以上))がみられる高用量(400 ppm)で、雌に受胎率及び子宮内着床物数の有意な減少(投与後1〜5週)、死亡着床物数の増加(投与後1及び2週目)が認められた。この結果は曖昧な(equivocal)結果と報告されたが、陽性対照(MMS:メチルメタンスルホネート)の観察結果から、評価に用いた試験系が優性致死作用を証明するのに適切であると結論され、本物質の400 ppmでの影響は優性致死作用による(陽性)と最終的に判断された(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
発がん性【分類根拠】
(1)〜(4)の動物試験結果において、経口及び吸入の2経路でラット、マウスの2種の雌雄にいずれも複数の臓器に腫瘍(良性、悪性)の誘発が認められたこと、(6)の既存分類結果から、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1)マウスを用いた2年間強制経口投与による発がん性試験では、雌の低用量(25 mg/kg/day)群及び雌雄の高用量(50 mg/kg/day)でハーダー腺(腺腫及び腺がん)、雄の高用量群で前胃(扁平上皮乳頭腫)、肝臓(肝細胞腺腫及び肝細胞がん)、肺(細気管支-肺胞の腺腫又はがん)、皮膚(扁平上皮乳頭腫)、雌の高用量群で乳腺(腺がん)、皮下組織(肉腫及び線維肉腫)に腫瘍の発生率に有意な増加が認められた(IARC 77 (2000)、NTP TR374 (1990)、ACGIH (2001)、DFG MAK (2003)、厚労省 リスク評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2013)、AICIS IMAP (2015))。
(2)ラットを用いた2年間強制経口投与(37.5及び75 mg/kg/day)による発がん性試験では、雌雄の低及び高用量群で脳(グリオーマ)、雄の高用量群及び雌の両投与群で前胃(扁平上皮乳頭腫及びがん)、乳腺(線胃腺腫及び腺がん)、雄の両投与群で中皮腫(精巣鞘膜/腹膜)、皮膚(皮脂腺の腺腫及びがん又は基底細胞腫)、雄の高用量群で腸(腺腫様ポリープ及び腺がん)、甲状腺(ろ胞上皮腺腫及びがん)、ジンバル腺(がん)、雌の高用量群で陰核腺(腺腫及びがん)、造血組織(白血病)、口/舌(扁平上皮乳頭腫及びがん)に腫瘍の発生率に有意な増加が認められた(IARC 77 (2000)、NTP TR374 (1990)、ACGIH (2001)、DFG MAK (2003)、厚労省 リスク評価書 (2008)、MOE 初期評価 (2013)、AICIS IMAP (2015))。
(3)マウスを用いた2年間吸入ばく露(4〜40 ppm)によるがん原性試験において、雄では鼻腔腫瘍(血管肉腫、血管腫、腺がん、腺腫、扁平上皮がん、扁平上皮乳頭腫)、皮下組織及び末梢神経の組織球性肉腫の発生増加が認められた。雌でも雄と同様の鼻腔腫瘍、子宮(組織球性肉腫)、乳腺(腺がん)に腫瘍の発生率増加が認められた(厚労省がん原性試験 (2003)、MOE 初期評価 (2013))。
(4)ラットを用いた2年間吸入ばく露(3〜30 ppm)によるがん原性試験において、雄では鼻腔腫瘍(扁平上皮がん、腺腫、腺がん、基底細胞がん)、腹膜の中皮腫、雌でも鼻腔(腺腫、腺がん、扁平上皮がん)と子宮(内膜間質性肉腫)に腫瘍の発生率の増加が認められた(厚労省がん原性試験 (2003)、MOE 初期評価 (2013))。
(5)本物質は、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針に指定されている(令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号 (2020))。
(6)国内外の評価機関による既存分類では、IARCでグループ2A(IARC 77 (2000))、日本産業衛生学会で2A(産衛学会 許容濃度提案理由書 (2022))、ACGIHでA3(ACGIH (2001))、NTPでR(NTP RoC 15th. (2014))、EUでCarc. 1B(CLP分類結果 (Accessed Nov. 2023))、DFGでカテゴリー2(List of MAK and BAT values (2022))に分類されている。
生殖毒性【分類根拠】
(1)〜(3)より、本物質の精巣・精子への有害性影響により雄性不妊を示唆する知見が得られていること、(4)より、母動物毒性のない用量から児動物の海馬に免疫組織学的変化がみられたことから、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)ラット又はマウスを用いた13週間強制経口投与試験(5日/週)において、ラットの試験では25 mg/kg/day以上の雄で精子運動性の低下と精巣上体尾部精子数の減少、200 mg/kg/day以上で精巣萎縮の発生率の有意な増加が認められた。マウスの試験では19 mg/kg/day以上で用量相関性の精子運動性の低下及び精巣上体尾部精子数の減少がみられ、75 mg/kg/day以上で統計的に有意な差がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2013)、DFG MAK (2003)、DFG MAK (2003)、厚労省 リスク評価書 (2008)、AICIS IMAP (2015)、EFSA (2016))。
(2)雄ラットに5日間経口投与後に未処置雌と交配させた生殖毒性試験において、100 mg/kg/dayでは精子の運動性や交尾行動に影響はなかったが、最初の2週間は不妊状態にあり3週目から受胎能の回復がみられたが、出生児数は4週目まで少なかった。200 mg/kg/dayでは3週目まで不妊状態にあり、4週目から受胎能の回復がみられたが、精巣上体には精液瘤がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2013)、EFSA (2016))。
(3)雄ラットに40 mg/kg/dayで5日間経口投与しながら、3日目に未処置雌と交配を開始させた結果、その週の着床前胚損失率は40%に達し、翌週には95%にまで増加した(MOE 初期評価 (2013))。
(4)雌妊娠ラット用いた飲水投与(妊娠6日〜F1離乳(生後21日))による神経発達毒性試験において、母動物に中枢神経影響(中枢・末梢神経系の軸索変性症)によると推測される歩行障害がみられる高用量(100.8 mg/kg/day)で、胎児に低体重及び海馬の病理組織学的・免疫組織学的変化(雌雄:歯状回の顆粒細胞下帯の未熟顆粒細胞の可逆性消失、雄:歯状回門のNeuN陽性及びReelin陽性細胞及び成熟神経細胞の増加)がみられ、雄胎児の海馬歯状回門の免疫組織学的変化は母動物毒性のない中用量(48.8 mg/kg/day)からみられたとの報告がある(EFSA (2016))。

【参考データ等】
(5)妊娠マウスを用いた強制経口投与(妊娠6〜15日)による発生毒性試験では、著しい母動物毒性がみられる高用量(200 mg/k/day)まで、胎児に検体投与による発生影響はみられなかったとの報告がある(MOE 初期評価 (2013)、ACGIH (2001)、DFG MAK (2003))。
(6)妊娠ラットを用いた吸入ばく露(妊娠6〜16日)による発生毒性試験において、著しい母動物毒性(4例死亡、全身状態悪化)がみられた高用量(300/250 ppm)では交尾率の著しい低下(4例のみ)、妊娠率の低下、生存胎児数の減少、着床後胚損失の増加が認められたが、中用量では母動物に一過性に全身状態の悪化がみられたが、母体の生殖能及び胎児への影響はみられなかったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
(7)EUでは、Repr. 1Bに分類されている。(CLP分類結果(Accessed Nov. 2023))
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)より、LD50の値より主に区分2の範囲で、中枢神経系の影響がみられており、また(2)(3)より、LC50の値より主に区分1の範囲で肺への影響がみられていることから、区分1(呼吸器)、区分2(中枢神経系)とした。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた単回経口投与試験でみられた症状は中枢神経抑制(運動失調、非協調性運動、自発運動減少)、呼吸困難(息切れ)、流涙であった。LD50値は420〜850 mg/kgとの報告がある(AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
(2)ラットを用いた単回吸入ばく露試験(4時間)において、呼吸困難、流涙、流涎、鼻汁、嚥下障害、中枢神経抑制/刺激、死亡例では肺水腫を伴う、肺刺激、肺炎、肺気腫がみられた。LC50値は580 ppm(1.75 mg/L)との報告がある(ACGIH (2001)、AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
(3)マウスを用いた単回吸入ばく露試験(8時間)において、呼吸困難、流涙、流涎、鼻汁、嚥下障害、中枢神経抑制/刺激、死亡例では肺水腫を伴う、肺刺激、肺炎、肺気腫がみられた。LC50値は450 ppm(1.38 mg/L)との報告がある(ACGIH (2001)、AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)、(2)より、吸入経路では鼻腔のみが標的臓器、(3)、(4)より、経口経路ではラットの長期投与試験における肝臓(重篤な凝固壊死)が標的臓器として採用し、区分1(呼吸器)、区分2(肝臓)とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた2年間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、10及び30 ppm(0.03及び0.09 mg/L、区分1の範囲)で、非腫瘍性病変として鼻腔(移行上皮及び/又は呼吸上皮の過形成、扁平上皮化生、扁平上皮過形成、呼吸上皮の炎症、甲介骨の肥厚、嗅上皮の萎縮)への影響がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2013)、厚労省がん原性試験結果 (2003))。
(2)マウスを用いた2年間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、4〜40 ppm(0.01及び0.12 mg/L、区分1の範囲)で、非腫瘍性病変として鼻腔(異型化を伴う呼吸上皮の扁平上皮化生と扁平上皮過形成、粘膜下の腺及び嗅上皮の呼吸上皮化生)への影響がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2013)、厚労省がん原性試験結果 (2003))。
(3)ラットを用いた2年間間強制経口投与試験(5日/週)において、37.5及び75 mg/kg/day(区分2の範囲)で、前胃(角化亢進、上皮異形成、潰瘍)、脾臓(線維増多)、肝臓(凝固壊死)、ジンバル腺(嚢胞)への影響がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2013)、NTP TR374 (1990)、ACGIH (2001)、DFG MAK (2003)、厚労省 リスク評価書 (2008)、AICIS IMAP (2015))。
(4)マウスを用いた2年間強制経口投与試験(5日/週)において、25及び50 mg/kg/day(区分2の範囲)で、前胃(上皮過形成)、腎臓(雄:嚢胞)、包皮線(雄:嚢胞)、脾臓(雌:赤脾髄の過形成)への影響がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2013)、NTP TR374 (1990)、ACGIH (2001)、DFG MAK (2003)、厚労省 リスク評価書 (2008)、AICIS IMAP (2015))。

【参考データ等】
(5)ラットを用いた13週間強制経口投与試験(5日/週)において、200 mg/kg/day(90日換算:144 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で小脳顆粒層の壊死、脳髄質の脱髄がみられたとの報告がある(MOE初期評価 (2013)、NTP TR374 (1990)、ACGIH (2001)、DFG MAK (2003)、厚労省 リスク評価書 (2008)、AICIS IMAP (2015))。
(6)マウスを用いた13週間強制経口投与試験(5日/週)において、150 mg/kg/day(90日換算:108 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で脳髄質及び視床の脱髄がみられたとの報告がある(MOE 初期評価 (2013)、NTP TR374 (1990)、ACGIH (2001)、DFG MAK (2003)、厚労省 リスク評価書 (2008)、AICIS IMAP (2015))。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足ため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)での96時間EC50=53310μg/L(AQUIRE, 2010)であることから、区分3とした。
水生環境有害性 長期(慢性)急速分解性があり(BODによる分解度:85%(既存点検, 2002))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=-0.95(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分に該当しないとした。
残留性・分解性化審法分解度試験:良分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性情報なし
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号2810
品名(国連輸送名)その他の毒物(有機物)(液体)、n.o.s.
国連分類6.1
副次危険-
容器等級V
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*153
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達)
健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項)
作業場内表示義務(法第101条の4)
がん原性物質(作業記録等の30年保存対象物質)(労働安全衛生規則第577条の2)
皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第二種指定化学物質(法第2条第3項、施行令第2条別表第2)
毒物及び劇物取締法-
消防法第4類 引火性液体 第二石油類 水溶性(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)
船舶安全法毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1)
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」
修正履歴
R6.3.29:
・危険有害性の分類について物理化学的危険性、健康に対する有害性を見直した。
・SDS全般について表記の見直し・改訂をした。