1.化学品等及び会社情報 | |||
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化学品の名称 | 3-(1-メチル-2-ピロリジニル)ピリジン (別名ニコチン) | ||
化学品の英語名称 | 3-(1-Methylpyrrolidin-2-yl)pyridine (Synonym: Nicotine) | ||
製品コード | R06-C-044-JNIOSH | ||
供給者の会社名 | ○○○○株式会社 | ||
住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
電話番号 | 03-1234-5678 | ||
ファクシミリ番号 | 03-1234-5678 | ||
電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
推奨用途及び使用上の制限 | 医薬,殺虫剤(失効農薬)(NITE-CHRIPより引用) |
2.危険有害性の要約 | |||
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GHS分類 | |||
分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | 令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、令和2年度(2020年度)、ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) | ||
物理化学的危険性 | - | ||
健康に対する有害性 | 急性毒性 (経口) | 区分1 | |
急性毒性 (経皮) | 区分1 | ||
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト) | 区分2 | ||
皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | ||
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 | ||
生殖細胞変異原性 | 区分2 | ||
生殖毒性 | 区分2、授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分 | ||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分1 (神経系、心血管系、消化管) | ||
分類実施日 (環境有害性) | 令和2年度(2020年度)、ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) | ||
環境に対する有害性 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分2 | |
水生環境有害性 長期(慢性) | 区分2 |
GHSラベル要素 | |||
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絵表示 | ![]() ![]() ![]() ![]() | ||
注意喚起語 | 危険 | ||
危険有害性情報 | 飲み込むと生命に危険 皮膚に接触すると生命に危険 吸入すると生命に危険 皮膚刺激 重篤な眼の損傷 遺伝性疾患のおそれの疑い 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い 授乳中の子に害を及ぼすおそれ 神経系、心血管系、消化管の障害 水生生物に毒性 長期継続的影響によって水生生物に毒性 | ||
注意書き | |||
安全対策 | 取扱い後はよく手を洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 眼、皮膚、衣類につけないこと。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 妊娠中及び授乳期中は接触を避けること。 環境への放出を避けること。 | ||
応急措置 | 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 口をすすぐこと。 皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。 皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。 漏出物を回収すること。 | ||
保管 | 施錠して保管すること。 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 | ||
廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | ||
他の危険有害性 | 情報なし |
3.組成及び成分情報 | |||
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化学物質・混合物の区別 | 化学物質 | ||
化学名又は一般名 | 3-(1-メチル-2-ピロリジニル)ピリジン | ||
慣用名又は別名 | ニコチン | ||
英語名 | 3-(1-Methylpyrrolidin-2-yl)pyridine Nicotine | ||
濃度又は濃度範囲 | 情報なし | ||
分子式 (分子量) | C10H14N2 (162) | ||
化学特性 (示性式又は構造式) | ![]() | ||
CAS番号 | 54-11-5 | ||
官報公示整理番号 (化審法) | 9-990 | ||
官報公示整理番号 (安衛法) | 8-(1)-675 ( 8-(1)-1010 ) | ||
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | - |
4.応急措置 | |||
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吸入した場合 | 新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で安静にさせる。 直ちに医療機関 に連絡する。 気分が悪い時や呼吸に関する症状が現れた場合は、医師の診察/手当てを受けること。 意識がないが呼吸がある場合は、横向きに安定した姿勢で寝かせ、低体温症から保護する。 呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。 呼吸が止まっている場合は、呼吸補助具(蘇生バッグなど)や口鼻蘇生法で人工呼吸を行う。口対口蘇生法は緊急事態の場合にのみ行う。 心停止(反応がなく、呼吸が正常でない)の場合は、直ちに胸骨圧迫と人工呼吸を行う。可能な場合は、自動体外式除細動器(AED)を使用する。 医師に連絡すること。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
皮膚に付着した場合 | 直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。 皮膚に付着した部分を流水またはシャワーで洗い流したのち、水と石けん(鹸)で丁寧に洗浄する。 可能であれば、5%酢酸または酢で洗い、水ですすぐ。 医師に連絡をすること。 応急処置を行うときは、保護手袋を着用する。 汚染された衣服を脱がせる。 直ちに医療機関に連絡する。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
眼に入った場合 | まぶたを大きく広げて流水で少なくとも10分間、患部を洗眼する。 数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医療機関に連絡する。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
飲み込んだ場合 | 口をすすぎ、液体を吐き出す。 水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。ただし痙攣を起こしている場合は飲ませない。 意識がある場合は、コップ1~2杯の水を飲ませる。 意識がある場合は嘔吐させる。 心停止のすべてのケースでは、即時の心肺蘇生法を行う。 医師に連絡すること。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 急性影響:粘膜および眼、皮膚に対する刺激性影響。神経系および心血管系の障害。 呼吸抑制および中枢神経系の抑制を生じることがある。 慢性的な影響:同上。さらに、胃腸疾患、生殖毒性の可能性。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。 | ||
医師に対する特別な注意事項 | 情報なし |
5.火災時の措置 | |||
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適切な消火剤 | 水噴霧、乾燥消火剤、泡消火剤、二酸化炭素、粉末消火薬剤、耐アルコール泡消火薬剤 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
使ってはならない消火剤 | 火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。 | ||
特有の危険有害性 | 火災の場合、有害物質(亜硝酸ガス、一酸化炭素と二酸化炭素)が放出される可能性がある。 以上、GESTIS参照。 | ||
特有の消火方法 | 周囲の容器を水スプレーで冷却する。 可能であれば、容器を危険区域から移動する。 加熱すると圧力が上昇し、破裂や爆発の危険がある。 着火(発火)源を遮断する。 流出水が排水システムに入らないようにする。 以上、GESTIS参照。 | ||
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。 以上、GESTIS参照。 |
6.漏出時の措置 | |||
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人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置 | 影響を受ける周囲に警告する。 個人用保護具を着用すること(「個人用保護具」の章を参照)。 こぼれた液体は吸収剤(珪藻土、バーミキュライト、砂など)で吸収し、規制に従って廃棄する。 周囲を換気し、こぼれた場所を洗う。 以上、GESTIS参照。 | ||
環境に対する注意事項 | 容器とパイプラインにラベルを貼る。 水、排水、下水、または地中への浸透を防ぐ。 以上、GESTIS参照。 | ||
封じ込め及び浄化の方法及び機材 | リサイクルの方法がない場合は、それぞれの地域の規制に従って廃棄する必要がある。 有毒で可燃性の化合物の収集容器に集める。 収集容器には、内容物の説明がされているラベルを貼る。容器は換気の良い場所に保管する。それらを適切な当局に委託して処分する。 以上、GESTIS参照。 | ||
二次災害の防止策 | 付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火剤を準備する。 火花を発生しない安全な用具を使用する。 |
7.取扱い及び保管上の注意 | |||
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取扱い | |||
技術的対策 | 「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する 以上、GESTIS参照。 | ||
安全取扱い注意事項 | 機器類は防爆構造とし、設備は静電気対策を実施する。 周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。 静電気放電に対する予防措置を講ずること。 作業場所を清潔に保つ。 この物質は、作業に必要な量を超えて持ち込まない。 容器を開いたままにしない。 補充または移し替えには、排気口付きの漏れ防止機器を使用する。 しぶきを避ける。 ラベルの付いた容器にのみ入れる。 裸火禁止。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
接触回避 | 感染性、放射性、爆発性の物質。 水と接触した場合、可燃性ガスを放出する物質。 強酸化性物質。 硝酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムを含有する製剤 有機過酸化物および自己反応性物質。 可燃性固体。 化学反応が可能な物質と一緒に保存しない。 以上、GESTIS参照。 | ||
衛生対策 | 飲食禁止。 眼、皮膚、衣類への接触を避けること。接触した場合は患部を洗浄する。 眼に入った場合は洗い流す。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。 シャワー付きの洗面所と、可能であれば、私服と作業服用の独立した収納を備えた部屋を用意する。 使用後は手を洗うこと。 以上、GESTIS参照。 | ||
保管 | |||
安全な保管条件 | 鍵のかかった保管場所に保管する。 食品容器は使用しない。 容器にラベルを貼付する。 できるだけ元の容器に保管する。 容器を密閉する。 容器は換気の良い場所に保管する。 以上、GESTIS参照。 | ||
安全な容器包装材料 | 消防法、道路法、毒劇法、国連輸送法規で規定されている容器を使用する。 |
8.ばく露防止及び保護措置 | ||||
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許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。 | ||||
管理濃度 | - | |||
濃度基準値 | ||||
八時間濃度基準値 | - | |||
短時間濃度基準値 | - | |||
許容濃度 | ||||
日本産衛学会 (2024年度版) | - | |||
ACGIH (2024年版) | - | |||
設備対策 | 取り扱いの場所の近くに、洗眼および身体洗浄のための設備を設ける。 高温下や、ミストが発生する場合は換気装置を使用する。 作業場は換気をする。 床に排水口を作らない。 洗浄設備を設置する。 物質を大量に取り扱う場合は、非常用シャワーを設置する。 以上、GESTIS参照。 | |||
保護具 | ||||
呼吸用保護具 | 緊急時には、呼吸保護具を着用する。 フィルター装置の使用限界を超える濃度、18%未満の酸素濃度、または不明な状況では使用しない。 以上、GESTIS参照。 | |||
手の保護具 | 厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」参照のこと。 必要に応じて適切な不浸透性の保護手袋を使用すること。着用する前に締まり具合を確認する。手袋は取り外す前に十分に清掃し、換気の良い場所に保管する。 布製または革製の手袋は不適切である。 次の材料は保護手袋に適している(透過時間>= 8時間): ブチルゴム ブチル(0,5 mm)、フルオロカーボンゴム FKM (0,4 mm)、 以下の材料は、劣化、重度の膨潤または低透過性のために保護手袋には適していない: 天然ゴム/天然ラテックス-NR、ポリクロロプレン-CR、ニトリルゴム/ニトリルラテックス-NBR、ポリ塩化ビニル-PVC 以上、GESTIS参照。 | |||
眼の保護具 | 必要に応じて呼吸用保護具と併用して、安全ゴーグル、保護面または眼用保護具を着用する。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | |||
皮膚及び身体の保護具 | 身体の保護リスクに応じて、不浸透性の適切な防護服または適切な化学防護服を着用する。 以上、GESTIS参照。 |
9.物理的及び化学的性質 | |||
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物理的状態 | |||
物理状態 | 液体 | ||
色 | 無色~淡黄色、茶色 | ||
臭い | 魚臭 | ||
融点/凝固点 | -79 ℃ (HSDB (2024)) | ||
沸点、初留点及び沸騰範囲 | 247 ℃ (HSDB (2024)) | ||
可燃性 | 可燃性 (HSDB (2024)) | ||
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | 0.7~4 Vol% (NFPA (14th, 2010)) | ||
引火点 | 101 ℃ (NFPA (14th, 2010)) | ||
自然発火点 | 246 ℃ (NFPA (14th, 2010)) | ||
分解温度 | 247 ℃ (ホンメル (1991)) | ||
pH | データなし | ||
動粘性率 | データなし | ||
溶解度 | 水:1×106 mg/L (25℃) (HSDB (2024)) アルコール、クロロホルム、エーテル、石油エーテル、灯油、油: 非常に溶けやすい。 (HSDB (2024)) | ||
n-オクタノール/水分配係数 | log Kow:1.17 (HSDB (2024)) | ||
蒸気圧 | 0.038 mmHg (25℃) (HSDB (2024)) | ||
密度及び/又は相対密度 | 1.00925 g/cm3 (20℃/4℃) (HSDB (2024)) | ||
相対ガス密度 | 5.61 (Air = 1) (HSDB (2024)) | ||
粒子特性 | データなし |
10.安定性及び反応性 | |||
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反応性 | 物質は可燃性である。 特定の条件下で可燃性。 火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。111℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
化学的安定性 | 通常の取扱い条件下では安定である。 | ||
危険有害反応可能性 | 加熱により分解する 窒素酸化物および一酸化炭素などの有毒なフュームを生じる。 20℃で気化すると空気は汚染されて、やや急速に、有害濃度に達することがある。 以上、ICSC参照。 | ||
避けるべき条件 | 直射日光を避け、冷暗所に保管する。 火気、加熱、高温、静電気、火花、爆発性混合気の形成 | ||
混触危険物質 | 強酸化剤と激しく反応する。爆発の危険を生じる。 以上、ICSC参照。 | ||
危険有害な分解生成物 | 火災の場合、有害物質(亜硝酸ガス、一酸化炭素と二酸化炭素)が放出される可能性がある。 以上、GESTIS参照。 |
11.有害性情報 | ||||
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急性毒性 | ||||
経口 | 【分類根拠】 ヒトでの経口摂取による致死量は30~60 mg (CLH Report (2015))、50~60 mg (ACGIH (7th, 2001)) または約60 mg (MAK (DFG) (2014)) と概算されると記述があり、ヒトの経口致死量は1 mg/kgを下回ると判断されることから、区分1とした。 【根拠データ】 (1) ヒトの概算致死量: 30~60 mg (CLH Report (2015)) (2) ヒトの概算致死量: 50~60 mg (ACGIH (7th, 2001)) (3) ヒトの概算致死量: 約60 mg (MAK (DFG) (2014)) | |||
経皮 | 【分類根拠】 (1)~(5) より、区分1とした。 【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: 50 mg/kg (EU CLP CLH (2015)、MAK (DFG) (2014)、GESTIS (Access on June 2020)、HSDB (Access on June 2020)) (2) ウサギのLD50: 140 mg/kg (EU CLP CLH (2015)) (3) ラットのLD50: 140 mg/kg (CLH Report (2015)、MAK (DFG) (2014)、HSDB (Access on June 2020)) (4) ラットのLD50: 150 mg/kg (GESTIS (Access on June 2020)) (5) ラットのLD50: > 360 mg/kg (CLH Report (2015)) | |||
吸入: ガス | 【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 | |||
吸入: 蒸気 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。(1) のデータがあるが、タバコを20分間ばく露した試験結果から算出した値であるため、参考データとした。 なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (50 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。 【参考データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): > 0.114 mg/L (> 17 ppm) (EU CLP CLH (2015)) (2) 本物質の蒸気圧: 0.038 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 50 ppm) | |||
吸入: 粉じん及びミスト | 【分類根拠】 (1) より、区分2とした。なお、情報源の情報を精査し、分類結果を変更した (2024年度) 。 【根拠データ】 (1) ニコチンのエアロゾルを被験物質としたラットのLC50 (20分間) :2.30 mg/L (4時間換算:0.19 mg/L)(EPA推奨アップ&ダウン法) 。当該試験はばく露時間がガイダンスで求められる最短30分間より短いが、ニコチンが神経毒性物質で用量-反応 (死亡率) 関係が急峻であるためEPA推奨法が用いられている (RAC Opinion (2015)) 。 【参考データ等】 (2) タバコ抽出製剤 (ニコチン4.1%含有混合物) のエアロゾルを被験物質としたラットのLC50 (4時間、ニコチン当量として) :> 0.114 mg/L (OECD TG403)(同上) 。 (3) EUではAcute Tox.2 (H330: Fatal if inhaled)に分類されている (CLP分類 (Accessed May 2024)) 。 | |||
皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | 【分類根拠】 (1)~(3) より、区分2とした。新しいデータ (1)~(3) が得られたことから分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1) 本物質は局所刺激性を有する (Patty (6th, 2012))。 (2) 本物質は皮膚刺激性を有する (GESTIS (Access on June 2020))。 (3) 本物質のウサギを用いOECD TG 402に準拠した急性経皮投与毒性試験において、軽度~重度の紅斑がみられ、腐食性はないが刺激性を有すると結論されている (REACH登録情報 (Access on September 2020))。 【参考データ等】 (4) 本物質を含むパッチ (禁煙補助薬) により、一部のボランティアに紅斑がみられたと報告されている (MAK (DFG) (2014))。 | |||
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | 【分類根拠】 (1)~(4) より、区分1とした。新しいデータ (1)~(4) が得られたことから分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1) 本物質のOECD TG 405に準拠した眼刺激性試験において、結膜発赤及び浮腫、虹彩炎、角膜混濁がみられ、結膜の炎症及び角膜混濁は適用21日後まで持続し、腐食性物質と結論されている (REACH登録情報 (Access on September 2020))。 (2) 本物質は前眼部の炎症と縮瞳を引き起こす (Patty (6th, 2012))。 (3) 本物質との接触は眼の痛み、顕著な結膜炎、角膜の炎症及び部分的な混濁を引き起す (GESTIS (Access on June 2020))。 (4) OECD TG 492に準拠し、再生ヒト角膜上皮 (EpiOcular TM) を用いたin vitro眼刺激性試験において、平均細胞生存率は3.1%であり、区分1或いは2相当と推察された (REACH登録情報 (Access on September 2020))。 【参考データ等】 (5) OECD TG 437に準拠し、ウシ角膜を用いたin vitro眼損傷性試験 (BCOP) において、平均刺激性スコア (IVIS) は29.518であり、区分1は否定された (REACH登録情報 (Access on September 2020))。 | |||
呼吸器感作性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
皮膚感作性 | 【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1) TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA) においてSI値は3を上回らず、陰性と判定された (REACH登録情報 (Access on September 2020))。 | |||
生殖細胞変異原性 | 【分類根拠】 (1)、(2) より、区分2とした。新たに得られたデータをもとに分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウスの優性致死試験において陰性を示したが、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験において陽性の報告がある (MAK (DFG) (2014)、Patty (6th, 2012))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験において陰性の報告があるが、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験において陽性、陰性の報告がある (同上)。 | |||
発がん性 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
生殖毒性 | 【分類根拠】 (1)~(4) より、区分2とした。また、(5) より「授乳に対する又は授乳を介した影響」を追加した。なお、再検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1) ラットを用いた吸入ばく露による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、親動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少、肝臓の肝細胞壊死、水腫様変性、ストレスによる副腎皮質肥大、胸腺萎縮及び子宮萎縮) がみられる用量で、生殖影響はみられていないが不規則な性周期、児動物の体重低値がみられている (REACH登録情報 (Access on October 2020))。 (2) 雌マウス、ラット及びウサギの器官形成期に皮下投与した試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少) がみられる用量でマウス、ラットでは胎児に未骨化がみられたがウサギでは胎児に影響がみられていない (Patty (6th, 2012))。 (3) 雌ラットの妊娠4~20日に6 mg/kg/dayを皮下投与した結果、母動物に体重増加抑制、児動物に体重減少び脳の未発達がみられた (ACGIH (7th, 2001))。 (4) 雌ラットの交配6週間前から妊娠期間中に6 mg/kg/dayを投与し、生後12時間で対照群の雌で交差飼育した新生児において、雄で副腎重量減少、雌で副腎重量増加、雄で出生児体重減少、胎児/腹減少、活動の低下がみられている (MAK (DFG) (2014))。 (5) ラットでの妊娠・授乳期間に投与した試験では、母乳の分泌が著しく減少したため、大部分の出生児が死亡した (Patty (6th, 2012))。 | |||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 【分類根拠】 (1)~(6) より、区分1 (神経系、心血管系、消化管) とした。なお、標的臓器を再検討し、旧分類から分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1) 急性ニコチン中毒の一種である緑色タバコ病の多数の症例が、タバコの葉を収穫中に労働者が吸収したニコチンへの皮膚ばく露後に報告された。この疾患はわずか数時間後に起こることがあり、短期間みられる。吐き気、嘔吐、脱力、めまい、血圧や心拍数の変化が特徴である (MAK (DFG) (2014))。 (2) 本物質78 mgの経皮パッチを12名の男性ボランティアの腕、胸及び背中に交互に24時間以内適用した結果、心拍数と収縮期血圧は4時間後に有意に増加した (MAK (DFG) (2014))。 (3) 致死的な職業性中毒は比較的まれである。しかし、嘔吐と下痢を主症状とする軽度の症例は、化学加工業者や殺虫剤散布業者では珍しくない。本物質の急性中毒で死亡した患者の剖検では、心臓右側の著明な拡張、軽度の肺水腫、出血性胃炎、大部分の内臓の急性受動性うっ血、脳浮腫、著明な腎充血が認められた (ACGIH (7th, 2001))。 (4) 本物質は心拍数と血圧に影響を与え、低用量では刺激作用が支配的である。さらに、消化管及び中枢神経系に作用する。毒性用量では、中枢刺激に続いて抑制、例えば呼吸の中枢抑制が起こる。約60 mgはヒトに致死的であり呼吸麻痺により数分後に死亡する (MAK (DFG) (2014))。 (5) 本物質は、多くのニューロンに存在するいわゆるニコチン受容体に結合する。そこで、用量に依存して、心血管系、中枢神経系及び消化管に異なる反応を誘導する。ニコチンは血液脳関門を容易に通過できる (MAK (DFG) (2014))。 (6) 本物質の職業ばく露のTLV-TWA 0.5 mg/m3が推奨される。この値は、吐き気、嘔吐、下痢、出血性胃炎等の消化管障害、血圧及び心拍数の増加等の心血管作用、頭痛、めまい、抑うつ、呼吸への影響、高血圧、発汗、流涎等の中枢神経系への有害作用の可能性を最小限に抑えることを目的としている (ACGIH (7th, 2001))。 | |||
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 【参考データ等】 (1) ラットのエアロゾル鼻部吸入ばく露試験 (雄: 最大35日間、雌: 約70日間) では、10 μg/Lで肝細胞の壊死や水腫性変性がみられたとの報告が1件のみある (REACH登録情報 (Access on October 2020))。 (2) 本物質の慢性的な消費は中毒や依存をもたらす可能性がある (HSDB (Access on June 2020))。 (3) ウサギに致死量に近い用量を80日間投与したところ、網膜神経節細胞の変性に起因する散瞳と光に対する瞳孔の反応不良が生じたとの報告がある (HSDB (Access on June 2020))。 | |||
誤えん有害性* | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。 |
12.環境影響情報 | |||
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生態毒性 | |||
水生環境有害性 短期(急性) | 甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 3 mg/L(REACH登録情報, 2020)であることから、区分2とした。新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。 | ||
水生環境有害性 長期(慢性) | 慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BIOWIN)、藻類(イカダモ)の72時間NOEC = 3.2 mg/L(REACH登録情報, 2020)から、区分に該当しないとなる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BIOWIN)、甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 = 3 mg/L(REACH登録情報, 2020)から、区分2となる。 以上の結果を比較し、区分2とした。新たな情報の使用により、旧分類から分類結果が変更となった。 | ||
残留性・分解性 | - | ||
生態蓄積性 | - | ||
土壌中の移動性 | - | ||
オゾン層への有害性 | 当該物質はモントリオール議定書の附属書A~C及びEに列記されていない。 |
13.廃棄上の注意 | |||
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化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。 廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。 容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 |
14.輸送上の注意 | ||||
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本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。 | ||||
国際規制 | ||||
国連番号 | 1654 | |||
品名(国連輸送名) | ニコチン | |||
国連分類 | 6.1 | |||
副次危険 | - | |||
容器等級 | Ⅱ | |||
海洋汚染物質 | 該当する | |||
MARPOL73/78附属書Ⅱ及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質 | 該当しない | |||
国内規制 | ||||
海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う | |||
航空規制情報 | 航空法の規定に従う | |||
陸上規制情報 | 消防法、道路法、毒物及び劇物取締法の規定に従う | |||
特別な安全上の対策 | 消防法、道路法、毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物 | |||
その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
緊急時応急措置指針番号* | 152 | |||
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。 |
15.適用法令 | ||||
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法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
労働安全衛生法 | 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【413 ニコチン】 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降) 【1460 ニコチン】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【413 ニコチン】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降) 【1460 ニコチン】 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) 皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2) 【3(1メチル2ピロリジニル)ピリジン(別名ニコチン)】 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) | |||
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) | - | |||
毒物及び劇物取締法 | 毒物(法第2条別表第1) 【19 ニコチン】 毒物(指定令第1条)【20 ニコチンを含有する製剤】 | |||
消防法 | 第4類 引火性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類) 【第三石油類水溶性液体】 | |||
船舶安全法 | 毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1) | |||
航空法 | 毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1) | |||
港則法 | その他の危険物・毒物類(毒物)(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表) | |||
道路法 | 車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2) |
16.その他の情報 | ||||
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参考文献 | ||||
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。 ・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP) ・International Chemical Safety Cards (ICSC) ・Hazardous Substances Data Bank (HSDB) ・GESTIS Substance database (GESTIS) ・2024 Emengency Response Guidebook ・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ-タシ-ト作成指針」 ・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」 |