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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
4,6-ジニトロ-o-クレゾール
作成日 2003年05月06日
改訂日 2006年11月01日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称4,6-ジニトロ-o-クレゾール (4,6-Dinitro-O-cresol)
製品コードR02-B-005
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限有機合成原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分2
急性毒性 (経皮)区分3
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)区分2
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分1
皮膚感作性区分1
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (中枢神経系、心血管系)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (中枢神経系、眼、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、皮膚)
分類実施日
(環境有害性)
平成26年度、政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ腐食性健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと生命に危険
皮膚に接触すると有毒
皮膚刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
重篤な眼の損傷
吸入すると生命に危険
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
中枢神経系、心血管系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系、眼、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、皮膚の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
呼吸用保護具を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名4,6-ジニトロ-o-クレゾール
別名2-メチル-4,6-ジニトロフェノール
3,5-ジニトロ-2-ヒドロキシトルエン
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C7H6N2O5 (198.13)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号534-52-1
官報公示整理番号
(化審法)
3-2769
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。直ちに医師に連絡すること。
人工呼吸が必要なことがある。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 発汗、発熱、吐き気、息切れ、息苦しさ、頭痛、痙攣、意識喪失。
皮膚: 吸収される可能性あり!皮膚の黄染。他の症状については、「吸入」参照。
眼: 充血、痛み。
経口摂取: 腹痛、嘔吐。他の症状については、「吸入」参照。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、泡消火薬剤、乾燥粉末消火剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性可燃性。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
空気中で粒子が細かく拡散して、爆発性の混合気体を生じる。
酸化剤と接触すると、火災および爆発の危険性がある。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護自給式呼吸器を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材この物質を環境中に放出してはならない。
こぼれた物質を、ふた付きの密閉式容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉塵を避けるために湿らせてから掃き入れる。
残留分を、注意深く集める。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
環境への放出を避けること。
酸化剤との接触禁止。
粉塵の堆積を防ぐ。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
強酸化剤および食品や飼料から離しておく。
安全な容器包装材料国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)未設定
ACGIH (2020年版)TLV-TWA: 0.2 mg/m3
(Inhalable fraction and vapor)(Skin)
設備対策密閉系、粉塵防爆型電気設備および照明を用いる。
適切な局所排気装置・換気装置等を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器を使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡/保護面を着用すること。
皮膚及び身体の保護具保護衣 (化学防護服) を着用する。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
黄色
臭い無臭
融点/凝固点87.5℃ (ICSC (2004))
沸点、初留点及び沸騰範囲312℃ (ICSC (2004))
可燃性可燃性 (ICSC (2004))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点データなし
自然発火点340℃ (ICSC (2004))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度0.694 g/100 mL (20℃) (ICSC (2004))
n-オクタノール/水分配係数log Pow=2.56 (ICSC (2004))
蒸気圧0.00012 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020))
密度及び/又は相対密度1.58 g/cm3 (20℃) (HSDB (Access on April 2020))
相対ガス密度6.8 (空気=1) (ICSC (2004))
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性燃焼すると分解し、窒素酸化物などの有毒なフュームを生じる。
強酸化剤と激しく反応する。
避けるべき条件混触危険物質との接触
混触危険物質強酸化剤
危険有害な分解生成物窒素酸化物などの有毒なフューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(8) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 7 mg/kg (MOE初期評価第10巻 (2012)、GESTIS (Access on April 2020))
(2) ラットのLD50: 10 mg/kg (HSDB (Access on April 2020))
(3) ラットのLD50: 20〜85 mg/kg (EHC 220 (2000))
(4) ラットのLD50: 25〜85 mg/kg (MAK (DFG) vol.19 (2003))
(5) ラットのLD50: 25 mg/kg (ATSDR (2018))
(6) ラットのLD50: 30 mg/kg (ATSDR (2018))
(7) ラットのLD50: 31 mg/kg (ACGIH (7th, 2019))
(8) ラットのLD50: 40 mg/kg (MOE初期評価第10巻 (2012))
経皮【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分3とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 200 mg/kg (MOE初期評価第10巻 (2012)、ATSDR (2018)、HSDB (Access on April 2020))
(2) ラットのLD50: 200〜600 mg/kg (MAK (DFG) vol.19 (2003))
(3) ラットのLD50: 600〜2,000 mg/kg (EHC 220 (2000))
(4) ウサギのLD50: 1,000 mg/kg (MOE初期評価第10巻 (2012)、ATSDR (2018)、EHC 220 (2000)、MAK (DFG) vol.19 (2003)、GESTIS (Access on April 2020)、HSDB (Access on April 2020)
(5) ウサギのLD50: 1,671 mg/kg (ATSDR (2018))
(6) ウサギのLD50: 1,732 mg/kg (ATSDR (2018))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1) より、区分2とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (0.0013 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 230 mg/m3 (0.23 mg/L) (EHC 220 (2000)、MAK (DFG) vol.19 (2003))
(2) 本物質の蒸気圧: 0.00012 mmHg (25℃) (飽和蒸気圧濃度換算値: 0.0013 mg/L) (HSDB (Access on April 2020))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(4)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 本物質はヒトの皮膚を刺激し、皮膚に付くと皮膚の黄変を生じる (MOE初期評価第10巻 (2012))。
(2) 本物質 (0.5 g) をウサギの皮膚に4時間半閉塞適用した皮膚刺激性試験において紅斑と軽度の浮腫を生じ、刺激性を示した (EHC 220 (2000)、GESTIS (Access on April 2020))。
(3) 本物質は眼に対し、刺激性あるいは腐食性を示し、皮膚に対し刺激性を示す。また、感作性を示す可能性がある (GESTIS (Access on April 2020))。
(4) 本物質はウサギの皮膚に浮腫を生じさせ、ウサギの眼に腐食性を示す (EHC 220 (2000))。

【参考データ等】
(5) EU CLP分類でSkin Irrit. 2 (H315) に分類されている (EU CLP分類 (Access on May 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 本物質はヒトの眼に対して腐食性を示し、眼に入ると発赤、痛みを生じる (MOE初期評価第10巻 (2012))。
(2) 本物質はウサギの皮膚に浮腫を生じさせ、ウサギの眼に腐食性を示す (EHC 220 (2000))。

【参考データ等】
(3) EU CLP分類でEye Dam. 1 (H318) に分類されている (EU CLP分類 (Access on May 2020))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1とした。新しいデータが得られたことから区分を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質はモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) において感作性を示す (EHC 220 (2000))。
(2) 本物質はモルモットに対し皮膚感作性を示す (HSDB (Access on April 2020))。

【参考データ等】
(3) EU CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on May 2020))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(3) より、旧分類の主な根拠が本物質を50%含む農薬を被験物質としたものであることから、今回根拠として採用しなかった。新たな情報を追加したが、明確な陽性知見はAmesのみで、in vivoにおける遺伝子突然変異の知見がなく、データ不足で分類できないとした。旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) in vivoにおいて、腹腔内投与したラットの骨髄細胞で染色体異常が陽性 (EHC 220 (2000)、 ATSDR (2018))、腹腔内投与したラットの肝細胞でDNA二重鎖切断を誘発 (EHC 220 (2000)、ATSDR (2018)、MOE初期評価第10巻 (2012)) の報告がある。一方、経口投与したラットや腹腔内投与したマウスの骨髄細胞で染色体異常が陰性、腹腔内投与したマウスの骨髄細胞で小核が陰性、経口投与したラットの肝細胞で不定期DNA合成が陰性 (EHC 220 (2000)、MOE初期評価第10巻 (2012)) の報告がある。
(2) in vitroにおいて、細菌の復帰突然変異試験 (Ames) 及びほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験で陰性又は陽性の報告がある (EHC 220 (2000)、 ATSDR(2018)、MAK (DFG) vol.19 (2003)、MOE初期評価第10巻 (2012))。
(3) EHC 220 (2000) では、「結論として、いくつかの陽性がサルモネラ、ショウジョウバエ、哺乳類細胞のin vitro及びin vivoで認められた。しかし、in vivoでのGLP試験は陰性であった。入手可能なすべてのデータに基づくと、本物質の変異原性は曖昧なままである。」の報告がある (EHC 220 (2000))。

【参考データ等】
(4) 本物質を50%含む 「KrezonitE」 という農薬を被験物質とした場合、in vitroにおいて、S9無添加のヒト白血球 (初代培養) で染色体異常が陽性、in vivoにおいて、マウスの生殖細胞経世代変異原性試験 (優性致死突然変異、減数分裂染色体、F1胎仔 (胚) の染色体異常) で陽性 (EHC 220 (2000)、MAK (DFG) vol.19 (2003)、MOE初期評価第10巻 (2012)) という知見がある。EHC 220 (2000)では、このin vivoの陽性結果は 「KrezonitE」 に含まれる本物質とは別の成分によるものと考えられている。
(5) EU CLP分類 (Access on April 2020): Muta.2 に分類されている。

発がん性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、本物質の既存分類結果はない。また、ラットの試験結果は参考データ (1) が得られているが、マウスの試験結果は得られていない。

【参考データ等】
(1) 雌雄のラットに本物質を104週間混餌投与 (0.00025、0.0015、0.01%) した試験で、腫瘍発生率の増加はなかった (MOE初期評価第10巻 (2012))。
生殖毒性【分類根拠】
(1) より、母動物に一般毒性がみられる用量で授乳期同腹児数の減少がみられていることを分類根拠として、ガイダンスに従い区分2とした。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌投与による二世代生殖毒性試験において、母動物毒性のみられない用量 (30 ppm) 以上で授乳期の同腹児数の減少がみられ、母動物毒性 (妊娠期、授乳期の体重増加抑制) のみられる用量 (100 ppm) で児動物の体重減少がみられている (EHC 220 (2000)、MOE初期評価第10巻 (2012))。しかし、EHC220 (2000) では、高用量での影響 (母動物毒性のみられる用量での授乳期の児動物の体重減少、授乳期の同腹児数減少) は限定的であるとしており、中用量での影響 (母動物毒性のみられない用量での授乳期の同腹児数の減少) は有害影響としていない。結論として、本物質は体重減少や児の授乳期の同腹児数減少という形でわずかな生殖影響を与えるが、その他の生殖パラメータに影響はないとしている。一方、MOE初期評価第10巻 (2012) では、母動物毒性のみられない用量でみられた授乳期の同腹児数の減少を有害影響としている。

【参考データ等】
(2) 雌ラットの妊娠6〜15日に飲水投与した発生毒性試験において、母動物毒性、胚/胎児毒性はみられていない (EHC 220 (2000)、MOE初期評価第10巻 (2012))。
(3) 雌ウサギの妊娠6〜18日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物に投与と関連しない死亡 (投与開始後5日までに4/16例)、努力性呼吸のみられる用量で、胎児に奇形 (小眼球症又は無眼球症、水頭症又は小頭症) がみられている。また、この試験では妊娠26日、27日に各1匹が死亡したが、剖検で肺と腸の感染症を認めている (EHC 220 (2000)、MOE初期評価第10巻 (2012))。感染症や投与と関連しない死亡が多くみられ試験の質が低いと考えられることから参考情報とした。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分1 (中枢神経系、心血管系) とした。List 1の情報源の情報を中心に見直しを行い、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ヒトにおける急性毒性の症状は細胞代謝への影響に起因し、激しい喉の渇き、疝痛、下痢及び嘔吐が含まれる。呼吸困難、チアノーゼ、頻脈、無呼吸、狭心症を伴う心不全も報告されている。中枢神経系への影響の初期症状は、通常、多幸感であり、その後、めまい、虚脱傾向、不安と落ち着きのなさ、混乱、意識消失、終末期痙攣が生じる (MAK (DFG) vol.19 (2003))。
(2) 4歳の男児の中毒事故では、皮膚から吸収後、初期症状として嘔吐、頭痛がみられ、黄疸 (特に腕)、頻呼吸、心拍の減弱、重篤な一般状態の悪化がみられた。検死の結果、腸粘膜の限局性の出血、脳、肝臓、肺、腸壁、心筋、腎臓におけるうっ血 (capillary blood (plethora))、肺水腫及び脳の浮腫がみられた (ACGIH (7th, 2019))。
(3) 1例の中毒例では、気中濃度4.7 mg/m3で本物質による中毒が生じた。気中濃度が2.5 mg/m3に低下すると症状はなくなった。主な症状は発熱、基礎代謝率の増加、頻拍、頻呼吸、多汗症、息切れ、咳であった (ACGIH (7th, 2019))。

【参考データ等】
(4) 本物質は基礎代謝率の増加作用を有し、かつてはやせ薬として使用されていた (ATSDR (2018))。
(5) 本物質は酸化的リン酸化を遮断し、エネルギーが熱として放出され体温が上昇する。体温を下げるために、体は代償メカニズムの一部として脈拍数と呼吸数を増加させる。急性、中間、または慢性ばく露から生じる最も重要で鋭敏な影響は、基礎代謝率の増加に関連したものである (ATSDR (2018))。
(6) 実験動物では、経口または経皮摂取後の主な影響は、無気力、協調性障害、四肢の麻痺を伴う中枢神経抑制であるとの記載がある (ACGIH (7th, 2019))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)、(2) より、ヒトの経口摂取後の主影響は肝臓傷害であり、この他に中枢神経系、眼、心血管系、血液系、腎臓、皮膚への影響が考えられることから、区分1 (中枢神経系、眼、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、皮膚) とした。List 1の情報源の情報を中心に見直しを行い、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ヒトでの慢性中毒症状は頭痛、虚弱、食欲不振及び顕著な体重減少である。後期には心筋、肝臓、腎臓に変性様変化、神経炎、白血球減少、ハインツ小体、メトヘモグロビン血症の進行がみられる。時には無顆粒球症、重度の中毒性皮膚炎もみられる。経口摂取後の主影響は肝臓傷害である (MAK (DFG) vol. 19 (2003))。
(2) 本物質を3年間服用した女性の左眼に真珠大に腫脹した白内障の症例、白内障の診断後に右眼に点状のレンズの混濁が現れ最終的に失明した症例の報告がある (ATSDR (2018))。

【参考データ等】
(3) 本物質は基礎代謝率の増加作用を有し、かつてはやせ薬として使用されていた (ATSDR (2018))。
(4) 本物質は酸化的リン酸化を遮断し、エネルギーが熱として放出され体温が上昇する。体温を下げるために、体は代償メカニズムの一部として脈拍数と呼吸数を増加させる。急性、中間、または慢性ばく露から生じる最も重要で鋭敏な影響は、基礎代謝率の増加に関連したものである (ATSDR (2018))。
(5) ジニトロフェノール類はヒトで白内障形成作用を示すことが知られている。白内障形成の機序は本物質の作用機序である酸化的リン酸化の阻害に関連していると考えられている (ATSDR (2018))。
(6) ラットに90日間混餌投与した結果、2.5 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で甲状腺ホルモンの減少、脂質代謝の亢進、5 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上でヘモグロビン、ヘマトクリット値、MCH/MCVの増加、BUN増加、尿中クレアチニン減少、10 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で脳の相対重量の増加、20 mg/kg/day (区分1の範囲) で死亡 (5/20例)、ALT増加、唾液腺と眼底の病理組織学的変化、副腎と膵臓の病変、胸腺、脾臓、リンパ節の萎縮または発育不全、循環リンパ球の減少、卵巣における黄体の消失、子宮の発育不全 (juvenile uteri)、精子無形成症がみられた (ATSDR (2018))。

誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)甲殻類 (ミジンコ) での48時間EC50 = 0.145 mg/L (環境省リスク評価第10巻 (2012) 、EHC 220 (2000)) であることから、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (BODによる分解度:4% (既存点検 (2004)) 、魚類 (ファットヘッドミノー) の31-34日間NOEC = 0.18 mg/L (環境省リスク評価第10巻 (2012)) であることから、区分2となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (BODによる分解度:4% (既存点検 (2004)) 、甲殻類 (ミジンコ) での48時間EC50 = 0.145 mg/L (環境省リスク評価第10巻 (2012) 、EHC 220 (2000)) であることから、区分1となる。
以上の結果を比較し、区分1とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号1598
国連品名DINITRO-o-CRESOL
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級II
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報毒物及び劇物取締法、道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策毒物及び劇物取締法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*153
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【578 2−メチル−4,6−ジニトロフェノール】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【578 2−メチル−4,6−ジニトロフェノール】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)-
毒物及び劇物取締法毒物(法第2条別表第1)【10 ジニトロクレゾール】
毒物(指定令第1条)【11 ジニトロクレゾールを含有する製剤】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【3 4,6−ジニトロ−o−クレゾール】
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】1598 ジニトロオルトクレゾール(固体)】
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】1598 ジニトロオルトクレゾール】
海洋汚染防止法個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】1598 ジニトロオルトクレゾール】
下水道法水質基準物質(法第12条の2第2項、施行令第9条の4)【28 フェノール類】
水質汚濁防止法指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3)【55 フエノール類及びその塩類】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用