ビス(2‐クロロエチル)スルフィド
(別名:マスタードガス)
| 1.化学物質等及び会社情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学物質等の名称 | ビス(2‐クロロエチル)スルフィド、(別名:マスタードガス)、(Bis(2-chloroethyl)sulfide)、(Mustard gas) | ||
| 製品コード | 21B3048 | ||
| 会社名 | ○○○○株式会社 | ||
| 住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
| 電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| 緊急時の電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| FAX番号 | 03-1234-5678 | ||
| メールアドレス | |||
| 推奨用途及び使用上の制限 | 第1次大戦、ならびにイランイラク戦争で化学兵器(毒ガス)に使用、少量がアルキル化剤のモデル物質として研究材料に利用、抗がん剤として検討されたが高い毒性ため成功しなかった、医学分野において角質細胞(psoratic keratinocytes)の過剰増殖調整剤として使用される。 | ||
| 2.危険有害性の要約 | |||
|---|---|---|---|
| GHS分類 | |||
| 分類実施日 | H22.2.19、政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)を使用 | ||
| 物理化学的危険性 | 火薬類 | 分類対象外 | |
|---|---|---|---|
| 可燃性・引火性ガス | 分類対象外 | ||
| 可燃性・引火性エアゾール | 分類対象外 | ||
| 支燃性・酸化性ガス類 | 分類対象外 | ||
| 高圧ガス | 分類対象外 | ||
| 引火性液体 | 区分外 | ||
| 可燃性固体 | 分類対象外 | ||
| 自己反応性化学品 | 分類対象外 | ||
| 自然発火性液体 | 分類できない | ||
| 自然発火性固体 | 分類対象外 | ||
| 自己発熱性化学品 | 分類できない | ||
| 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | ||
| 酸化性液体 | 分類対象外 | ||
| 酸化性固体 | 分類対象外 | ||
| 有機過酸化物 | 分類対象外 | ||
| 金属腐食性物質 | 分類できない | ||
| 健康に対する有害性 | 急性毒性(経口) | 区分2 | |
| 急性毒性(経皮) | 区分1 | ||
| 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | ||
| 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分1 | ||
| 急性毒性(吸入:粉じん) | 分類対象外 | ||
| 急性毒性(吸入:ミスト) | 分類できない | ||
| 皮膚腐食性・刺激性 | 区分1 | ||
| 眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 | 区分1 | ||
| 呼吸器感作性 | 分類できない | ||
| 皮膚感作性 | 分類できない | ||
| 生殖細胞変異原性 | 区分1B | ||
| 発がん性 | 区分1A | ||
| 生殖毒性 | 区分1B | ||
| 特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露) | 区分1(神経系、呼吸器系、循環器系、消化器系、造血系、泌尿器系) | ||
| 特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露) | 区分1(呼吸器) | ||
| 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | ||
| 環境に対する有害性 | |||
| 分類実施日 | 急性毒性:H22.2.19、政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)を使用 | ||
| 慢性毒性:H18.3.31、GHS分類マニュアル(H18.2.10)を使用 | |||
| 水生環境急性有害性 | 分類できない | ||
| 水生環境慢性有害性 | 分類できない | ||
| ラベル要素 | |||
|---|---|---|---|
| 絵表示又はシンボル | ![]() ![]() ![]() | ||
| 注意喚起語 | 危険 | ||
| 危険有害性情報 | 飲み込むと生命に危険 | ||
| 皮膚に接触すると生命に危険 | |||
| 吸入すると生命に危険 | |||
| 重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷 | |||
| 重篤な眼の損傷 | |||
| 遺伝性疾患のおそれ | |||
| 発がんのおそれ | |||
| 生殖能または胎児への悪影響のおそれ | |||
| 神経系、呼吸器系、循環器系、消化器系、造血系、泌尿器系の障害 | |||
| 長期にわたる、または、反復ばく露により呼吸器の障害 | |||
| 注意書き | |||
| 【安全対策】 | |||
| 取扱い後はよく手を洗うこと。 | |||
| この製品を使用する時に、飲食または喫煙をしないこと。 | |||
| 眼、皮膚、または衣類に付けないこと。 | |||
| ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。 | |||
| 屋外または換気の良い場所でのみ使用すること。 | |||
| 呼吸用保護具を着用すること。 | |||
| 適切な保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用すること。 | |||
| 使用前に取扱説明書を入手すること。 | |||
| すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 | |||
| 適切な個人用保護具を使用すること。 | |||
| 【応急措置】 | |||
| 飲み込んだ場合、直ちに医師に連絡すること。 | |||
| 飲み込んだ場合、口をすすぐこと。 | |||
| 皮膚に付着した場合、多量の水と石鹸でやさしく洗うこと。 | |||
| 皮膚に付着した場合、直ちに医師に連絡すること。 | |||
| 直ちに、汚染された衣類をすべて脱ぐこと、取り除くこと。 | |||
| 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯すること。 | |||
| 吸入した場合、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 | |||
| 吸入した場合、直ちに医師に連絡すること。 | |||
| 飲み込んだ場合、口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。 | |||
| 皮膚または髪に付着した場合、直ちに、汚染された衣類をすべて脱ぐこと、取り除くこと。皮膚を流水、シャワーで洗うこと。 | |||
| 眼に入った場合、水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 | |||
| 眼に入った場合、直ちに医師に連絡すること。 | |||
| ばく露またはばく露の懸念がある場合、医師の診断、手当てを受けること。 | |||
| ばく露した場合、医師に連絡すること。 | |||
| 気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。 | |||
| 【保管】 | |||
| 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 | |||
| 施錠して保管すること。 | |||
| 【廃棄】 | |||
| 内容物、容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託すること。 | |||
| 国・地域情報 | |||
| 3.組成及び成分情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学物質 | |||
| 化学名又は一般名 | ビス(2‐クロロエチル)スルフィド | ||
| 別名 | マスタードガス、(Mustard gas)、イペリット、1,1’‐チオビス(2‐クロロエタン)(1,1'-Thiobis(2-chloroethane))、硫化ジクロロエチル、(Di-2-chloroethyl sulfide) | ||
| 分子式 (分子量) | C4H8Cl2S(159.08) | ||
| 化学特性 (示性式又は構造式) | ![]() | ||
| CAS番号 | 505-60-2 | ||
| 官報公示整理番号(化審法・安衛法) | 化審法: 安衛法: | ||
| 分類に寄与する不純物及び安定化添加物 | データなし | ||
| 濃度又は濃度範囲 | 100% | ||
| 4.応急措置 | |||
|---|---|---|---|
| 吸入した場合 | 空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 | ||
| 直ちに医師に連絡すること。 | |||
| 皮膚に付着した場合 | 多量の水と石鹸でやさしく洗うこと。 | ||
| 直ちに医師に連絡すること。 | |||
| 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯すること。 | |||
| 直ちに、汚染された衣類をすべて脱ぐこと、取り除くこと。 皮膚を流水、シャワーで洗うこと。 | |||
| 眼に入った場合 | 直ちに医師に連絡すること。 | ||
| 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 | |||
| 飲み込んだ場合 | 口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。 | ||
| 直ちに医師に連絡すること。 | |||
| 予想される急性症状及び遅発性症状 | 吸入 : 咳、灼熱感、咽頭痛、息切れ、息苦しさ。 | ||
| 皮膚 : 痛み、発赤、水疱、重度の皮膚熱傷。 | |||
| 眼 : 催涙性。発赤、痛み、重度の熱傷、永久的な視力喪失。 | |||
| 経口摂取 : 腹痛、吐き気、嘔吐、灼熱感、ショック/虚脱。咳、灼熱感、咽頭痛、息切れ、息苦しさ。 | |||
| 最も重要な兆候及び症状 | 吸入すると、肺水腫を起こすことがある。 眼に影響を与え、機能障害を生じることがある。 人で発がん性を示す。 | ||
| 応急措置をする者の保護 | データなし | ||
| 医師に対する特別注意事項 | 症状は遅れて現われることがあり、医学的な経過観察が必要である。 ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。 | ||
| 5.火災時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 消火剤 | 泡消火剤、粉末消火剤、炭酸ガス、乾燥砂類 | ||
| 使ってはならない消火剤 | 棒状放水、水噴霧 | ||
| 特有の危険有害性 | 熱、火花及び火炎で発火するおそれがある。 | ||
| 激しく加熱すると燃焼する。 | |||
| 火災時に刺激性、腐食性及び毒性のガスを発生するおそれがある。 | |||
| 特有の消火方法 | 危険でなければ火災区域から容器を移動する。 | ||
| 容器が熱に晒されているときは、移動させない。 | |||
| 安全に対処できるならば着火源を除去すること。 | |||
| 消火を行う者の保護 | 適切な空気呼吸器、防護服(耐熱性)を着用する。 | ||
| 6.漏出時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 人体に対する注意事項、保護具および緊急措置 | 全ての着火源を取り除く。 | ||
| 直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。 | |||
| 関係者以外の立入りを禁止する。 | |||
| 密閉された場所に立入る前に換気する。 | |||
| 環境に対する注意事項 | 環境中に放出してはならない。 | ||
| 回収・中和 | 不活性材料(例えば、乾燥砂又は土等)で流出物を吸収して、化学品廃棄容器に入れる。 | ||
| 封じ込め及び浄化方法・機材 | 危険でなければ漏れを止める。 | ||
| 二次災害の防止策 | すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。 | ||
| 排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。 | |||
| 7.取扱い及び保管上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 取扱い | |||
| 技術的対策 | 『8.ばく露防止及び保護措置』に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。 | ||
| 局所排気・全体換気 | 『8.ばく露防止及び保護措置』に記載の局所排気、全体換気を行う。 | ||
| 安全取扱い注意事項 | 取扱い後はよく手を洗うこと。 | ||
| この製品を使用する時に、飲食または喫煙をしないこと。 | |||
| 眼、皮膚、または衣類に付けないこと。 | |||
| ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。 | |||
| 屋外または換気の良い場所でのみ使用すること。 | |||
| 使用前に取扱説明書を入手すること。 | |||
| すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 | |||
| 飲み込まないこと。 | |||
| 皮膚と接触しないこと。 | |||
| 眼に入れないこと。 | |||
| 接触回避 | 『10.安定性及び反応性』を参照。 | ||
| 保管 | |||
| 技術的対策 | 消防法の規定に従う。 | ||
| 混触危険物質 | 『10.安定性及び反応性』を参照。 | ||
| 保管条件 | 容器を密閉して冷乾所にて保存すること。 | ||
| 施錠して保管すること。 | |||
| 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 | |||
| 容器包装材料 | データなし | ||
| 8.ばく露防止及び保護措置 | |||
|---|---|---|---|
| 管理濃度 | 未設定 | ||
| 許容濃度 (ばく露限界値、生物学的ばく露指標) | |||
| 日本産衛学会 | 未設定 (2009年版) | ||
| ACGIH | 未設定 (2009年版) | ||
| 設備対策 | この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。 | ||
| ばく露を防止するため、装置の密閉化又は局所排気装置を設置すること。 | |||
| 保護具 | |||
| 呼吸器の保護具 | 適切な呼吸器保護具を着用すること。 | ||
| 手の保護具 | 適切な保護手袋を着用すること。 | ||
| 眼の保護具 | 適切な眼の保護具を着用すること。 | ||
| 皮膚及び身体の保護具 | 適切な保護衣を着用すること。 | ||
| 衛生対策 | 取扱い後はよく手を洗うこと。 | ||
| 9.物理的及び化学的性質 | |||
|---|---|---|---|
| 物理的状態 | |||
| 形状 | 液体 | ||
| 色 | 無〜黄色 | ||
| 臭い | 特徴臭 | ||
| pH | データなし | ||
| 融点・凝固点 | 13〜14℃ : Merck (14th, 2006) | ||
| 沸点、初留点及び沸騰範囲 | 215〜217℃ : Merck (14th, 2006) | ||
| 引火点 | 221°F (105℃) : Sax (8th、1992) | ||
| 自然発火温度 | データなし | ||
| 燃焼性(固体、ガス) | データなし | ||
| 爆発範囲 | データなし | ||
| 蒸気圧 | 0.11mmHg (25℃) : Howard (1997) | ||
| 蒸気密度 | 5.4 (空気 = 1) : HSDB (2008) | ||
| 蒸発速度(酢酸ブチル=1) | データなし | ||
| 比重(密度) | 1.2741 (20℃/4℃) : HSDB (2008) 1.2741g/cm3 (20℃) : Lide (88th, 2008) | ||
| 溶解度 | 水 : 0.684mg/L (25℃) : HSDB (2008) | ||
| 脂肪溶媒、有機溶媒 : 可溶 : Merck (14th, 2006) 石油エーテル : 混和 : HSDB (2008) | |||
| オクタノール・水分配係数 | log P = 2.41 (推定値) : SRC (Access on May. 2009) | ||
| 分解温度 | データなし | ||
| 粘度 | データなし | ||
| 粉じん爆発下限濃度 | データなし | ||
| 最小発火エネルギー | データなし | ||
| 体積抵抗率(導電率) | データなし | ||
| 10.安定性及び反応性 | |||
|---|---|---|---|
| 安定性 | 法規制に従った保管及び取扱においては安定と考えられる | ||
| 危険有害反応可能性 | 加熱すると分解し、有毒なヒュームを生じる。水と反応する。金属を侵す。 | ||
| 避けるべき条件 | 加熱 | ||
| 混触危険物質 | 金属、水 | ||
| 危険有害な分解生成物 | 有毒なヒューム | ||
| 11.有害性情報 | |||
|---|---|---|---|
| 急性毒性 | |||
| 経口 | ラットLD50値:17mg/kg(ATSDR, 2003)に基づき、区分2とした。 | ||
| 経皮 | ウサギLD50値:100mg/kg(DFGOT vol.4, 1992)、ラットLD50値:18mg/kg(DFGOT vol.4, 1992)および9mg/kg(DFGOT vol.4, 1992)より、危険性の高い方のラットのデータに基づき区分1とした。 | ||
| 吸入 | 吸入(ガス): | GHSの定義における液体である。 | |
| 吸入(蒸気): | ラットLC50=100mg/m3/10min.(15ppm/10min.)、280mg/m3/10min.(43ppm/10min.)(HSDB (2008))のデータは、10min.ばく露であるが、区分1の基準値(飽和蒸気圧濃度0.94mg/Lよりガスの基準値100ppm)以下で致死性を示していることから区分1とした。 | ||
| 吸入(ミスト): | データなし | ||
| 皮膚腐食性・刺激性 | ヒトの皮膚へのばく露が紅斑と水疱形成、または熱傷と水疱形成を起こす(ATSDR (2003))こと、病理組織学的には化学熱傷と同一である(HSDB (2008))と述べられている。実際に第一次大戦中に志願して皮膚へのばく露を受けた兵士達に紅斑と熱傷が報告されている(ATSDR (2003))。ばく露後4〜6日で壊死が現れ、16〜20日までに壊死組織の脱落と上皮再生、治癒には3〜8週間かかると(HSDB (2008))の記述により、区分1とした。 | ||
| 眼に対する重篤な損傷・刺激性 | ヒトでのばく露により、結膜炎、眼瞼角結膜炎、灼熱感、光恐怖、眼瞼浮腫、角膜浮腫と剥離、霧視、一時的盲が報告され(DFGOT vol.4 (1992) 、ATSDR (2003))、さらに当該物質がばく露時に液体の場合は蒸気に比べ強い傷害を起こし、角膜穿孔のリスクが増し、永続的視力喪失に至る(HSDB (2008))との記述に基づき、区分1とした。なお、ウサギ眼に液体をばく露した場合の組織学的変化として、6〜9時間後に角膜上皮基底細胞の核濃縮、壊死、極性消失、24時間後に下層の基底膜からの剥離を伴う角膜上皮細胞の変性が認められている(HSDB (2008))。 | ||
| 呼吸器感作性又は皮膚感作性 | 呼吸器感作性:データなし | ||
| 皮膚感作性:データなし | |||
| 生殖細胞変異原性 | ラットを用い吸入または経口投与による優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)において、いずれも陽性の結果(DFGOT vol.4 (1992)、ATSDR (2003)) が得られていることから、区分1Bとした。なお、モルモットを用いたDNA付加体形成試験(体細胞in vivo遺伝毒性試験)は陽性(HSDB (2008))であり、またin vitro試験については、エームス試験(ATSDR (2003))、マウスのリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験および染色体異常試験(ATSDR (2003)、DEFGOT vol.4 (1992))、ラットのリンパ肉腫細胞を用いた染色体異常試験(IARC 9 (1975))は、いずれも陽性である | ||
| 発がん性 | IARCによりグループ1(IARC Suppl.7 (1987))、日本産業衛生学会により第1群(産衛学会勧告 2005)、NTPではK (NTP ROC No.11 (2005))に分類されていることから、区分1Aとした。なお、第一次および第二次大戦中に戦場あるいは生産工場でマスタードガスのばく露を受けたヒトを対象として、複数の疫学調査が国内外で実施されている(IARC vol.9 (1987))。それらの報告によれば、マスタードガスのばく露と呼吸器がんとの間には関連があり、ばく露による呼吸器がんのリスクの増加を示唆、あるいは明示する結果が得られている。一方、動物試験のデータは少ないが、マウスに吸入ばく露により、対照群に比べ肺腫瘍の有意な発生増加が見られたとの報告がある(IARC Suppl.7 (1987))。 | ||
| 生殖毒性 | イランイラク戦争でマスタードガスを含む化学兵器攻撃を受けたイラン人生存者の子孫で胎児死亡率の増加、先天異常の発生頻度の増加、精巣生検で無精子症または重度の精子過少と診断されたヒトが多かったことが報告されている(ATSDR (2003)、HSDB (2008))。これらのヒトのばく露例ではマスタードガス以外の物質のばく露の可能性もあるとされているので(ATSDR (2003)、ヒトに対し生殖毒性が既知とは言えないが、少なくとも生殖・発生毒性があると推定されるので区分1Bとした。なお、ラットを用いた優性致死試験において、経口ばく露の雄と非ばく露の雌の交配により、平均早期吸収数の有意な増加、着床後胚損失率の有意な増加、異常精子率の有意な増加を示し、雄で優性致死作用が認められた(ATSDR (2003))。 | ||
| 特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露) | 第一次大戦とイランイラク戦争でマスタードガスのばく露を受けたヒト(主に兵士)に関する症例があり、また、疫学調査の結果が多数報告されている(DFGOT vol.4 (1992)、ATSDR (2003)、HSDB (2008))。それらの報告における重大な毒性症状として、めまい、角膜反射の消失、不安、激越、求心性神経の持続的障害、呼吸困難、慢性気管支炎、肺炎、呼吸不全、循環器障害、チアノーゼ、赤血球破壊、ヘモジデリン沈着、白血球増加と減少、骨髄不全、出血性腎炎、乏尿、腎不全、下痢、臓器出血(脳、・胃・膵臓・心内膜および外膜幕など)、角膜炎、皮膚傷害などが記され、器官別にも神経系、呼吸器系、循環器系、消化器系、造血系、泌尿器系、皮膚、眼と多岐にわたる。以上の報告により区分1(神経系、呼吸器系、循環器系、消化器系、造血系、泌尿器系)とした。 | ||
| 特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露) | 戦前に主にマスタードガスを製造していた毒ガス工場でばく露された多くの作業者が咳や痰を生じ(DFGOT vol.4 (1992) )、さらに製造工場でばく露を受けた作業者において、慢性気管支炎、重度の慢性咳、気道閉塞、肺炎など呼吸器疾患の有意な増加が報告されている(DFGOT vol.4 (1992) 、ATSDR (2003)、HSDB (2008))ことから、区分1(呼吸器)とした。なお、ラットに0.3〜0.003 mg/kg/dayを13週間経口投与した試験では、呼吸器系への影響は示されていない(ATSDR (2003))。 | ||
| 吸引性呼吸器有害性 | データなし | ||
| 12.環境影響情報 | |||
|---|---|---|---|
| 水生環境急性有害性 | データがなく分類できない。 | ||
| 水生環境慢性有害性 | データ不足のため分類できない。 | ||
| 13.廃棄上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 残余廃棄物 | 廃棄の前に、可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行って危険有害性のレベルを低い状態にする。 | ||
| 廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。 | |||
| 汚染容器及び包装 | 容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 | ||
| 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 | |||
| 14.輸送上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 国際規制 | |||
| 海上規制情報 | IMOの規定に従う。 | ||
| UN No. | 2927 | ||
| Proper Shipping Name. | TOXIC LIQUID, CORROSIVE, ORGANIC, N.O.S. | ||
| Class | 6.1 | ||
| Sub Risk | 8 | ||
| Packing Group | J | ||
| Marine Pollutant | Not Applicable | ||
| 航空規制情報 | ICAO・IATAの規定に従う。 | ||
| UN No. | 2927 | ||
| Proper Shipping Name. | Toxic liquid, corrosive, organic, n.o.s. | ||
| Class | 6.1 | ||
| Sub Risk | 8 | ||
| Packing Group | J | ||
| 国内規制 | |||
| 陸上規制情報 | 消防法の規定に従う。 | ||
| 海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う。 | ||
| 国連番号 | 2927 | ||
| 品名 | その他の毒物(有機物)(液体) (腐食性のもの) | ||
| クラス | 6.1 | ||
| 副次危険 | 8 | ||
| 容器等級 | J | ||
| 海洋汚染物質 | 非該当 | ||
| 航空規制情報 | 航空法の規定に従う。 | ||
| 国連番号 | 2927 | ||
| 品名 | その他の毒物(液体)(有機物)(腐食性のもの) | ||
| クラス | 6.1 | ||
| 副次危険 | 8 | ||
| 等級 | 1 | ||
| 特別安全対策 | 移送時にイエローカードの保持が必要。 | ||
| 食品や飼料と一緒に輸送してはならない。 | |||
| 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 | |||
| 重量物を上積みしない。 | |||
| 緊急時応急措置指針番号 | 153 | ||
| 15.適用法令 | |||
|---|---|---|---|
| 労働安全衛生法 | 名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9) 名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9) リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3) | ||
| 消防法 | 第4類引火性液体 第3石油類 | ||
| 船舶安全法 | 毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1) | ||
| 航空法 | 毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1) | ||
| 16.その他の情報 | |||
|---|---|---|---|
| 参考文献 | 各データ毎に記載した。 | ||