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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
リン化インジウム
作成日 2010年3月31日
改訂日 2022年3月15日
改訂日 2025年3月14日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称リン化インジウム
化学品の英語名称Indium phosphide
製品コードR06-B-170-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限InP単結晶原料(NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、平成21年度(2009年度)、ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性発がん性区分1B
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1(呼吸器、生殖器(男性))
分類実施日
(環境有害性)
令和3年度(2021年度)、ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
環境に対する有害性-

GHSラベル要素
絵表示健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報発がんのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器、生殖器(男性)の障害
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
 保管施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名リン化インジウム
慣用名又は別名インジウムリン
英語名Indium phosphide
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)InP (146)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号22398-80-7
官報公示整理番号
(化審法)
1-1236
官報公示整理番号
(安衛法)
1-(3)-231
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)-

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
症状が続く場合には、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合大量の水で洗うこと。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
眼に入った場合水で15〜20分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
飲み込んだ場合水で口をすすぎ、直ちに医師の診断を受けること
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状情報なし
応急措置をする者の保護に必要な注意事項救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤不燃性である。消火対策は、周囲の状況に合わせて選択すること。
以上、GESTIS参照。
使ってはならない消火剤火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。
特有の危険有害性周囲の火災に含まれると、有害物質(リン酸化物、金属酸化物ヒューム)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。
特有の消火方法火元への燃焼源を断ち、消火剤を使用して消火する。
延焼の恐れのないよう水スプレーで周囲のタンク、建物等の冷却をする。
消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。
以上、GESTIS参照。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置影響を受ける周囲に警告すること。
個人用保護具を着用すること(「個人用保護具」の章を参照)。
以上、GESTIS参照。
環境に対する注意事項発がん性物質および生殖細胞変異原性物質は、密閉装置でのみ使用する必要がある。
容器とパイプラインにラベルを貼ること。
水、排水、下水、または地中への浸透を防ぐ。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材少量の物質の収集:残留物は、数mlのソーダ灰汁を含む氷冷された5%次亜塩素酸ナトリウム溶液でフロントパネルを閉じた強力なフード内で(必要に応じて保護ガスで)酸化することができる。発生する可能性のあるほとんどのリン酸塩は、水酸化カルシウムで沈殿させることができる。
無機固形物の容器に集める。
水相:
塩溶液の収集容器に入れ、pH値を6?8に調整する。
収集容器にはラベルを貼ること。容器は換気の良い場所に保管すること。
以上、GESTIS参照。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策すべての部屋と備品は定期的に清掃する必要がある。
「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する
粉じんの形成を避けること。避けられない粉じんの発生は、定期的に収集する必要がある。
掃除中に粉じんを起こさないこと。
清掃にブロワーを使用しないこと。
以上、GESTIS参照。
安全取扱い注意事項この物質は、作業に必要な量を超えて持ち込まない。
容器を開けたままにしないこと。
こぼさない。
ラベルの付いた容器にのみ注入すること。
粉じんが舞い上がるのを避けること。
以上、GESTIS参照。
接触回避感染性、放射性、爆発性の物質
ガス
強酸化性物質
硝酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムを含有する製剤
有機過酸化物および自己反応性物質
危険な化学反応が起こりうる物質と一緒に保管しないこと。
以上、GESTIS参照。
衛生対策眼、皮膚、衣類への接触を避けること。接触した場合は患部を洗浄する。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
シャワー付きの洗面所と、可能であれば、私服と作業服用の独立した収納を備えた部屋を用意すること。
使用後は手を洗うこと。
以上、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件容器にはラベルを貼付すること。
できるだけ元の容器に保管すること。
容器を密閉すること。
乾燥した場所に保管すること。
容器は換気の良い場所に保管すること。
以上、GESTIS参照。
安全な容器包装材料破損や漏れの無い密閉可能な容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度-
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度
日本産衛学会 (2024年度版)生物学的許容値:3 μg/L (インジウム)
ACGIH (2024年版)TLV-TWA:0.1 mg/m3 (as In)
設備対策粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器または局所換気装置を使用する。
作業場での洗浄設備を設置する。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具緊急時には、呼吸保護具を着用する。
フィルター装置の使用限界を超える濃度、体積18%未満の酸素濃度、または不明な状況では、絶縁装置を使用すること。
以上、GESTIS参照。
手の保護具必要に応じて適切な不浸透性の保護手袋を使用すること。着用する前に締まり具合を確認すること。手袋は取り外す前に十分に清掃し、換気の良い場所に保管すること。
ポリクロロプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、FKM、およびポリ塩化ビニルは、未溶解の固形物から保護するための手袋材料として適している。
以上、GESTIS参照。
眼の保護具必要に応じて安全眼鏡、保護面、安全ゴーグルなどの眼用保護具を着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具身体の保護リスクに応じて、不浸透性の適切な防護服または適切な化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体
灰白色〜暗灰色
臭いデータなし
融点/凝固点1062 ℃ (厚労省初期リスク(2010))
沸点、初留点及び沸騰範囲データなし
可燃性可燃性(粉じんの形で) (HSDB in PubChem (2024))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点データなし
自然発火点データなし
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水:不溶 (HSDB in PubChem (2024))
酸:わずかに溶ける (HSDB in PubChem (2024))
n-オクタノール/水分配係数データなし
蒸気圧データなし
密度及び/又は相対密度4.79 g/cm3 (20℃) (GESTIS (2024))
相対ガス密度データなし
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性不燃性である。他の使用する物質に応じて、火災および爆発防止対策を選択すること。
以上、GESTIS参照。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性不燃性物質。
以上、GESTIS参照。
避けるべき条件直射日光を避け、冷暗所に保管する。
混触危険物質酸化剤、還元剤等
危険有害な分解生成物周囲の火災に含まれると、有害物質(リン酸化物、金属酸化物ヒューム)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)より区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)マウスのLD50: > 5,000 mg/kg(RAC (Background Doc.) (2010)、MOE初期評価 (2013)、MAK(DFG) (2004)、ECHA CHEM (Accessed Aug. 2024))
経皮【分類根拠】
データがなく分類できない。
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データがなく分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データがなく分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
データがなく分類できない。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)本物質の水溶解度は 80 μg/Lとの情報がある(ECHA CHEM (Accessed Aug. 2024))。
(2)水溶性インジウム塩化合物については、眼に対し極めて強い刺激性を示すとの報告がある(ACGIH (2001)、厚労省リスク評価書 (2011))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データがなく分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)水に難溶性のインジウム・スズ酸化物(ITO:CAS登録番号 50926-11-9)では、マウスを用いたLLNA試験(適用濃度2.5〜10%(溶媒のDMSOに溶ける最高濃度))において、EC3= 4.7%という結果が得られた。ACGIHはこれに基づき、ITOをDSENに分類している(ACGIH (2019))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
本物質自体の試験結果については(1)のin vivo小核試験の陰性結果に限られ、in vitroの知見がなく、データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)in vivoでは、マウスに14週間吸入ばく露(1〜30 mg/m3、6時間/日、5日/週)後の末梢血赤血球を用いた小核試験において、雄の高用量(30 mg/m3)群のみで小核を有する多染性赤血球数の増加がみられたが、雌にはみられなかった。多染性赤血球の比率は雌雄で差はなく、NTPは雌では陰性、雄も陽性とは言えないと結論している(IARC 86 (2006)、RAC (Background Doc.) (2010)、MOE初期評価 (2013)、産衛学会発がん性物質の提案理由書 (2013))。
(2)in vitroでは、本物質自体のデータはないが、水に不溶の酸化インジウム(III)(CAS登録番号 1312-43-2)を被験物質とした細菌を用いた復帰突然変異試験で陰性(-/+ S9)の結果が得られている(MOE初期評価 (2013))。
(3)水溶性インジウム化合物の塩化インジウム(III)(同10025-82-8)について、in vivoではマウスの骨髄細胞を用いた小核試験(腹腔内投与)で陽性、in vitroでは細菌を用いた復帰突然変異試験で陰性(-/+ S9)、チャイニーズハムスター肺細胞(CHL及びV79)を用いた小核試験で陽性の結果がある(MOE初期評価 (2013)、産衛学会発がん性物質の提案理由書 (2013))。
発がん性【分類根拠】
ヒトの発がん性に関する情報は不十分である。実験動物では、(1)、(2)より2種で悪性腫瘍を含む腫瘍の発生増加が認められていることから、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた2年間吸入ばく露(エアロゾル粒子、0.03〜0.3 mg/m3:6時間/日、5日/週)による発がん性試験において、雌雄とも0.03 mg/m3以上の各群で細気管支-肺胞上皮腺腫とがんの発生頻度増加が認められ、雄の0.3 mg/m3群では肺の扁平上皮がんも4/50例に認められた。また、雄の0.03及び0.3 mg/m3群では副腎髄質に良性/悪性褐色細胞腫、雌の0.3 mg/m3群では同良性褐色細胞腫の発生増加も認められた。雌雄とも発がん性の明らかな証拠が示された(NTP TR499 (2001)、IARC 86 (2006)、RAC (Background Doc.) (2010)、厚労省リスク評価書 (2010)、MOE初期リスク評価書 (2013)、産衛学会発がん性物質の提案理由書 (2013))。
(2)マウスを用いた2年間吸入ばく露(ラットと同様)による発がん性試験において、雌雄とも0.03 mg/m3以上の各群で細気管支-肺胞上皮がんの発生頻度増加が認められ、雌では同組織の良性腫瘍(腺腫)の増加もみられている。また、雄の0.03及び0.1 mg/m3群、並びに雌の0.03 mg/m3群に肝細胞がんの発生頻度増加が認められた。雌雄とも発がん性の明らかな証拠が示された(同上)。

【参考データ等】
(3)半導体産業におけるコホートを対象とした2つの疫学研究がある。1つはメラノーマと腸がんの過剰リスクの報告で、もう1つは女性における肺がんの有意な過剰と、胃がんと乳がんの過剰(非有意)の報告である。ただし、各コホートの規模が限られていること、ばく露歴や他の有害物質へのばく露の可能性に関する情報が限定的であること、2つのコホート間で結果に一貫性がないことから、ヒトにおける本物質の発がん影響について結論を出すに至っていない(RAC (Background Doc.) (2010)、IARC 86 (2006))。
(4)国内外の評価機関による既存分類では、本物質に対しIARCでグループ2A(IARC 86 (2006))、EUでCarc. 1B(CLP分類結果 (Accessed Aug. 2024))、インジウム化合物(無機、難溶)に対し日本産業衛生学会で2A(産衛学会発がん性物質の提案理由書 (2013))、インジウム及び無機インジウム化合物に対しカテゴリー2(List of MAK and BAT values (2023))にそれぞれ分類されている。
生殖毒性【分類根拠】
(1)より、本物質自体の発生毒性は示されていない。(2)、(3)より、生殖器への影響、(4)より精巣蓄積性が示されているが、区分を付すには十分なデータではなく、受胎能への影響に関する情報もないことから、データ不足で分類できない。

【参考データ等】
(1)妊娠ラット又は妊娠マウスを用いた吸入ばく露(1〜100 mg/m3、妊娠4〜19日(ラット)又は4〜17日(マウス))による発生毒性試験では、ラット及びマウスの試験において、母動物に各々肺重量の増加(ラット)、及び早期死亡例の増加、体重増加抑制と症状(不活発さ、努力呼吸)がみられた最高用量(100 mg/m3)まで、胎児に発生影響は認められなかった(NTP TR499 (2001)、IARC 86 (2006)、MAK(DFG) (2004))。
(2)ラット及びマウスを用いた14週間吸入ばく露試験で、全身毒性が顕著な用量において、ラットでは雄に精巣上体尾部の重量減少、精巣の変性、雌に卵巣及び子宮の萎縮、マウスでは精巣及び精巣上体の重量減少、子宮や卵巣、乳腺脂肪パッドの萎縮がみられた(MOE初期評価 (2013)、NTP TR 499 (2001)、 RAC (Background Doc.) (2010))。
(3)雄ハムスターに8週間(2回/週)にわたり気管内投与後(3 mg/kg/回)に88週間観察した反復ばく露試験において、精巣及び精巣上体重量の減少、精巣上体尾部精子数の減少、及び精細管の組織変化がいずれも16週〜64週にかけて認められたが、88週では回復した。同時期に体重の低値がみられたが、対照群の体重の80〜90%の値での推移であり、生殖器官への影響は全身影響による二次的影響ではないと考えられた(RAC (Background Doc.) (2010))。
(4)ラットに14週間吸入ばく露した試験で、精巣中インジウム濃度はばく露終了後も全ばく露群で増加し続けたことから、インジウムは時間経過につれて精巣内に蓄積することが示唆された(RAC (Background Doc.) (2010))。
(5)具体的な水溶解度は不明だが、本物質は水に不溶との情報がある(HSDB ((Accessed May 2024))。参考情報として、水溶性の塩化インジウム(III)(CAS登録番号 10025-82-8)について、妊娠動物(マウス、ラット及びウサギ)を用いた強制経口投与(一部静脈内投与)による発生毒性試験において、流産(ウサギ)、胚・胎児死亡の増加、骨格変異及び骨化遅延、奇形の増加(外表:口蓋裂、外反足、尾と指の奇形、内臓:腎転移、腎無発生、骨格奇形)が、大部分は母動物毒性(体重増加抑制、肝重量減少)の生じる用量でみられた(MOE初期評価 (2013)、厚労省リスク評価書 (2010)、)。水溶性の硝酸インジウム(III)(CAS登録番号13770-61-1)についても、妊娠ハムスターを用いた静脈内投与による発生毒性試験で、指の奇形(癒合、多指症)がみられたとの報告がある(NTP TR499 (2001)、ACGIH (2001))。
(6)EU CLP (Accessed Aug. 2024) で、本物質はRepr. 2に分類されている。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)マウスを用いた単回経口投与試験において、1,000〜5,000 mg/kg投与後に死亡例も毒性症状も認められなかったが、剖検により肺表面の変色がみられた(用量不明)(ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)〜(3)より区分1(呼吸器、生殖器(男性))とした。なお、旧分類における造血系は二次的影響と考え、削除した。新たな情報源も利用し、分類を変更した(2024年度)。

【根拠データ】
(1)ラット又はマウスを用いた14週間吸入ばく露試験(1〜100 mg/m3、6時間/日、5日/週)において、区分1範囲の1〜10 mg/m3(90日換算:0.00078〜0.0078 mg/L)で、呼吸器の有害性所見(肺:慢性活動性炎症、肺胞上皮過形成、線維化など、喉頭:慢性炎症(ラット)、扁平上皮化生(マウス)、気管支・縦隔リンパ節:過形成)、雄マウスで精巣の重量減少が認められた。また、区分2範囲の30及び100 mg/m3(0.023及び0.078 mg/L)では、死亡や全身症状(呼吸異常、嗜眠など)とともに諸臓器(肝臓、腎臓、心臓など)に全身性ストレスに起因する、又はそれに抗するためと考えられる組織変化が特にラットでより顕著にみられた(MOE初期評価 (2013)、厚労省リスク評価書 (2011)、DFG(MAK) (2004)、RAC (Background Doc.) (2010)、NTP TR499 (2001))。
(2)雄ハムスターに8週間(2回/週)にわたり気管内投与(3 mg/kg/回、90日換算:0.53 mg/kg/日)した後に88週間観察した反復ばく露試験において、肺傷害とは別に精巣及び精巣上体重量の減少(対照群の60〜70%の値)、精巣上体尾部精子数の減少(同40〜50%の値)、及び精細管の組織変化(主に精細管の変性・空胞化、萎縮:精細管の30〜50%)がいずれも16週〜64週にかけて認められたが、88週では回復した。同時期に体重の低値がみられたが、対照群の体重の80〜90%の値での推移で、全身毒性影響が強いとは言えず、生殖器官への影響は全身影響による二次的影響ではないと考えられた(RAC (Background Doc.) (2010))。
(3)インジウム及びその化合物について、労働基準法施行規則35条別表第一の二第四号の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病として、肺障害が記載されている (平成二十五年厚生労働省告示第三百十六号)。

【参考データ等】
(4)ラット又はマウスを用いた105週間吸入ばく露試験(0.03〜0.3 mg/m3、6時間/日、5日/週)では、ばく露を完了できたのは0.03 mg/m3群のみで、0.1及び0.3 mg/Lばく露群は全身毒性のため21ないし22週間のばく露後にばく露中止を決め、その後対照群と同様に105週目まで空気のみをばく露した。その結果、ラット、マウスとも最低用量の0.03 mg/m3から肺(細気管支-肺胞上皮)に腫瘍性変化が認められ、0.3 mg/m3(0.0003 mg/L)までの区分1の用量範囲で両種とも肺に(1)と同様の非腫瘍性変化、ラットに副腎髄質の過形成(雌のみ)、マウスに肝臓の好酸性巣の増加(雌雄)が認められた(同上、産衛学会発がん性物質の提案理由書 (2013))。ラットの副腎及びマウスの肝臓の所見は各々副腎の褐色細胞腫、及び肝細胞がんとの関連が考えられることから、これらは標的臓器から除外した。

誤えん有害性*【分類根拠】
データがなく分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)データがなく分類できない。
水生環境有害性 長期(慢性)データがなく分類できない。
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法濃縮度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性-
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。


14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号該当しない
品名(国連輸送名)該当しない
国連分類該当しない
副次危険該当しない
容器等級該当しない
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報該当しない
航空規制情報該当しない
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策該当しない
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*-
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法特定化学物質第2類物質(施行令別表第3第2号・特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号) 【3の2 インジウム化合物】
特定化学物質第2類物質、管理第2類物質(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2、5号) 【3の2 インジウム化合物】
特定化学物質特別管理物質(特定化学物質障害予防規則第38条の4) 【インジウム化合物】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【58 インジウム及びその化合物】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【7 インジウム及びその化合物】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【58 インジウム及びその化合物】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【7 インジウム及びその化合物】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
特殊健康診断対象物質・現行取扱労働者(法第66条第2項、施行令第22条第1項) 【3 インジウム化合物】
特殊健康診断対象物質・過去取扱労働者(法第66条第2項、施行令第22条第2項) 【9 インジウム化合物】
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1) 【インジウム及びその化合物】
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1) 【62 インジウム及びその化合物】
毒物及び劇物取締法-
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申) 【21 インジウム及びその化合物】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・2024 Emengency Response Guidebook
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」