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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
水酸化カドミウム
作成日 2008年11月25日
改訂日 2010年3月31日
改訂日 2019年3月15日
改訂日 2023年3月31日
改訂日 2025年3月14日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称水酸化カドミウム
化学品の英語名称Cadmium hydroxide
製品コードR06-B-169-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限ニッケル・カドミウム電池負極用,示温顔料,(NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、令和4年度(2022年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性生殖細胞変異原性区分1B
発がん性区分1A
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1(呼吸器)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1(呼吸器、腎臓、骨)
分類実施日
(環境有害性)
令和4年度(2022年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
環境に対する有害性-

GHSラベル要素
絵表示健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報遺伝性疾患のおそれ
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
呼吸器の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器、腎臓、骨の障害
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
 保管施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名水酸化カドミウム
慣用名又は別名-
英語名Cadmium hydroxide
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)CdH2O2 (146)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号21041-95-2
官報公示整理番号
(化審法)
1-1047
官報公示整理番号
(安衛法)
-
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)-

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
症状が続く場合には、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合大量の水で洗うこと。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
眼に入った場合水で15〜20分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
飲み込んだ場合水で口をすすぎ、直ちに医師の診断を受けること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状情報なし
応急措置をする者の保護に必要な注意事項救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤周辺火災に応じて水噴霧、粉末消火剤、泡消火剤、二酸化炭素を使用する。
使ってはならない消火剤火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。
特有の危険有害性火災等の場合は、毒性の強い分解生成物が発生する可能性がある。
特有の消火方法消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な保護具や耐火服を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8. ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材飛散した物を掃き集めるか、真空掃除機で吸引する等できるだけ飛散発じんしないようにして、空容器等に回収する。
取扱いや保管場所の近傍での飲食の禁止。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項吸入した場合: 新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で安静にさせる。直ちに医師に連絡すること。
ばく露または懸念がある場合:医師の診察を受けてること。
以上、GESTIS参照。
接触回避酸化剤、還元剤等
衛生対策取扱い後はよく手を洗うこと。 取扱いや保管場所の近傍での飲食の禁止。
保管
安全な保管条件直射日光を避け、冷暗所に保管する。
安全な容器包装材料毒劇法で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度Cdとして0.05 mg/m3
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度
日本産衛学会 (2024年度版)許容濃度:0.05 mg/m3 (Cdとして)
ACGIH (2024年版)TLV-TWA:0.01 mg/m3 (as Cd)
     0.002 mg/m3 (R) (as Cd)
設備対策粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器または局所換気装置を使用する。
作業場での洗浄設備を設置する。
保護具
呼吸用保護具粉じんが発生する場合、必要に応じて保護マスクや呼吸用保護具を着用する。
手の保護具必要に応じて適切な不浸透性の保護手袋を使用すること。
眼の保護具眼に入る恐れがある場合、保護眼鏡やゴーグルを着用する。
皮膚及び身体の保護具身体の保護リスクに応じて、不浸透性の適切な防護服または適切な化学防護服を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体
緑がかった白色
臭い無臭
融点/凝固点188 ℃ (分解) (EU CLP CLH (2015))
沸点、初留点及び沸騰範囲データなし
可燃性不燃性 (GESTIS (2024))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点データなし
自然発火点データなし
分解温度186〜220 ℃ (GESTIS (2024))
188 ℃ (EU CLP CLH (2015))
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水:69.5 mg/L(20℃) (GESTIS (2024))
n-オクタノール/水分配係数データなし
蒸気圧データなし
密度及び/又は相対密度4.73 g/cm3 (22℃) (GESTIS (2024))
相対ガス密度データなし
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性通常の取扱い条件下では安定である。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性不燃性物質。
以上、GESTIS参照。
避けるべき条件直射日光を避け、冷暗所に保管する。
混触危険物質酸化剤、還元剤等
危険有害な分解生成物火災等の場合は、毒性の強い分解生成物が発生する可能性がある。

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
データがなく分類できない。

【参考データ等】
(1)EU CLP (Accessed Aug. 2024) ではAcute Tox. 4に分類されているが、根拠は不明である。
経皮【分類根拠】
データがなく分類できない。

【参考データ等】
(1)EU CLP (Accessed Aug. 2024) ではAcute Tox. 4に分類されているが、根拠は不明である。
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データがなく分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)EU CLP (Accessed Aug. 2024) ではAcute Tox. 4に分類されているが、根拠は不明である。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)、(2)より区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2024年度)。

【分類根拠】
(1)ヒト皮膚モデル(EpiSkin)を用いたin vitro皮膚腐食性試験(OECD TG 431、GLP)において、4時間(240分間)ばく露後の細胞生存率は88.2%で、区分1に該当しないと判定された(ECHA CHEM (Accessed Aug. 2024))。
(2)ヒト皮膚モデル(EpiSkin)を用いたin vitro皮膚刺激性試験(OECD TG 439、GLP)において、15分間ばく露後、42時間インキュベーション後の細胞生存率は93.1%で、区分に該当しないと判定された(同上)。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。(2)の長時間ばく露の適用限界も含め、明確に刺激性を示すとは判断できない。

【参考データ等】
(1)摘出ニワトリ眼球(n= 3)を用いたin vitro眼刺激性試験(OECD TG438、GLP)では、4時間インキュベーション後の角膜腫脹スコア1(4.2%(≦5):ICEスコアI)、角膜混濁スコア1(軽度の混濁:ICEスコアII)、フルオレセイン染色スコア1(ICEスコアII)で、全体判定ではII×2、I×1であった。角膜標本(6切片)の病理組織検査では、ごく軽度の上皮のびらん(6/6)、ごく軽度及び/又は軽度の上皮の空胞化(6/6)が認められた。以上より、本試験において本被験物質は腐食性物質ではないが、非刺激性物質とは確定できないと結論された(ECHA CHEM (Accessed Aug. 2024))。
(2)再構築ヒト角膜様上皮(RhCE、EpiOcular)を用いたin vitro眼刺激性試験(OECD TG 492、GLP)において、標準のばく露時間の6時間よりも長い27時間ばく露を行った結果、被験物質適用群の組織生存率は1%で陰性対照群(100%)より低かった。この結果について、被験物質が適用後に上皮表面にこびりついて、試験中を通して除去できなかったことが結果に大きく影響したと考えられ、本試験系に適用するには制限がある。しかし、本物質は恐らく眼刺激性を有すると考えられた(同上)。
呼吸器感作性【分類根拠】
データがなく分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)より区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2024年度)。

【根拠データ】
(1)モルモット(n= 10)を用いたマキシマイゼーション試験(OECD TG406、GLP:皮内感作:1%、経皮感作:75%、惹起:75%)で、陰性(惹起終了24及び48時間後の陽性:0%(0/10))の報告がある(ECHA CHEM (Accessed Aug. 2024))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、(1)〜(3)より、本物質の全身影響の評価には可溶性カドミウム塩であるの塩化カドミウムのデータが利用可能であることが示された。したがって、(4)、(5)より区分1Bとした。新たな情報源も利用し分類を変更jした(2024年度)。

【根拠データ】
(1)本物質は水に難溶(水溶解度:69.5 mg/L)であるが、同様の酸化カドミウム(CAS登録番号 1306-19-0、同2.1 mg/L)、炭酸カドミウム(CAS登録番号 513-78-0、同3.2 mg/L)は、人工胃液(pH= 1.47)を用いた37℃、2時間のインキュベーションで良く溶ける(溶解率:各々94%及び87%)ことから、これらのカドミウム塩は経口投与後に胃酸により溶け、遊離したCd2+イオンが小腸から吸収され、生物学的利用能を発揮すると考えられており、この論理は本物質にも適用可能と考えられる(RAC (Background Doc.) (2015))。
(2)本物質と同様、水に難溶の酸化カドミウムを用いた吸入毒性試験において全身影響が示されていることから、Cd2+イオンの生物学的利用能は明白である。影響と考えられる。よって、本物質も吸入経路においてもCd2+イオンを介した全身影響を生じるものと推測される(同上)。
(3)(1)、(2)より、本物質は経口及び吸入経路で吸収されると考えられることから、可溶性の塩化カドミウム(CAS登録番号 10108-64-2)のin vivoのデータの利用が可能と考えられる(同上)。
(4)塩化カドミウムについて、in vivoではラットあるいはマウスによる小核試験、染色体異常試験、コメット試験で陽性の結果が得られている。さらに、生殖細胞では、ハムスターの卵母細胞、マウスの精母細胞あるいは精原細胞を用いた染色体異常試験での陽性の報告がある。一方、優性致死試験では陰性であった(同上)。

【参考データ等】
(5)EU CLP分類 (Accessed Aug. 2024) で、本物質はMuta. 1Bに分類されている。
発がん性【分類根拠】
(1)より、カドミウム及びカドミウム化合物にはヒトの発がん性に関して十分な証拠があるとの見解が示され、実験動物では、本物質自体のデータはないが、(2), (3)より生体内でnCd2+イオンを遊離する無機カドミウム化合物による発がん性が示されていることから、区分1Aとした。

【根拠データ】
(1)カドミウム及びカドミウム化合物へのばく露はヒトの肺がんリスクの増加に関連し、また、腎臓がん及び前立腺がんとも関連がみられることから、カドミウム及びカドミウム化合物はヒトで発がん性を有するとの十分な証拠があると結論された(IARC 100C (2012))。
(2)本物質は水に難溶(水溶解度:69.5 mg/L)だが、人工胃液(pH=1.47)を用いた37℃、2時間のインキュベーションで良く溶けることから、経口投与後は胃酸に溶け、遊離したCd2+イオンが小腸から吸収され、生物学的利用能を発揮すると考えられる。同様に、吸入ばく露においても、Cd2+イオンの生物学的利用能が実験的に裏付けられており、したがって、本物質自体のデータはないが、水溶性カドミウムを含むカドミウム化合物の発がん性試験結果が利用可能と判断される(RAC (Background Doc.) (2015))。
(3)塩化カドミウム(CAS登録番号 10108-64-2)の雄ラットを用いた飲水投与発がん性試験で精巣腫瘍の増加傾向、副腎褐色細胞腫の有意な発生増加がみられ、また、吸入ばく露発がん性試験では、肺腺がんの有意な発生増加が認められた。さらに、塩化カドミウム、硫酸カドミウム(同10124-36-4)、酸化カドミウム(同 1306-19-0)の吸入ばく露試験では、いずれの化合物も、肺腫瘍の発生頻度が増加した(IARC 100C (2012)、RAC (Background Doc.) (2015))。

【参考データ等】
(4)EUはIARCが指摘した疫学研究における欠点及び交絡因子の問題はカドミウムばく露のヒトにおける発がんリスクを結論づける上で制限となること、肺がん以外の他のがんについても、それを報告した研究には同様の問題があり、疫学データは分類の目的には利用できないと判断し、実験動物のみの結果から分類を行った(RAC (Background Doc.) (2015))。
(5)国内外の評価機関による既存分類は、カドミウム及び(無機)カドミウム化合物について、IARCでグループ1(IARC 100C (2012))、ACGIHでA2(ACGIH (2001))、NTPでK(NTP RoC 15th. (2021))、日本産業衛生学会で第1群(産衛学会許容濃度等の勧告 (2023))、DFGでカテゴリー1(List of MAK and BAT values (2023))に分類されている。一方、EUは本物質についてCarc. 1Bに分類している(CLP分類結果 (Accessed Oct. 2024))。

生殖毒性【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、(1)〜(3)より本物質もCd2+イオンによる生殖発生影響を有すると考えられ、さらに催奇形性影響が懸念されることから、区分1Bとした。新たな情報源も利用し分類を変更した(2024年度)。

【根拠データ】
(1)ラット及びマウスを用いた多数の発生毒性試験結果から、カドミウム化合物の妊娠前及び妊娠中の経口ばく露により胎児毒性を示すことが示されている。この胎児毒性は多くの場合、胎児又は児動物の体重減少として現れるが、一部の試験では主に骨格奇形がみられている(ATSDR (2012)、MAK (DFG) (2006))。
(2)数種の実験動物において、妊娠後期のカドミウム塩の大量投与では胎盤の損傷と胎児死亡がみられ、妊娠初期の投与では脳ヘルニア、水頭症、口唇裂、口蓋裂、小眼球症、小顎症等の催奇性が報告されている(産衛学会生殖毒性物質の提案理由書 (2013)、EHC 134 (1992))。
(3)本物質は水に難溶(水溶解度:69.5 mg/L)であるが、同様の酸化カドミウム(CAS登録番号 1306-19-0、同2.1 mg/L)、炭酸カドミウム(CAS登録番号 513-78-0、同3.2 mg/L)は、人工胃液(pH= 1.47)を用いた37℃、2時間のインキュベーションで良く溶けることから、これらのカドミウム塩は経口投与後に胃酸により溶け、遊離したCd2+イオンが小腸から吸収され、生物学的利用能を発揮すると考えられている(RAC (Background Doc.) (2015))。

【参考データ等】
(4)母親の尿中又は血中カドミウム濃度と出生児の体重及び/又は頭囲との間に逆相関がみられるなどのヒトの知見とカドミウム化合物を用いた動物試験結果に基づき、日本産業衛生学会はカドミウム(CAS登録番号 7440-43-9)及びカドミウム化合物を生殖毒性第1群に分類した(産衛学会生殖毒性物質の提案理由書 (2013))。
(5)ATSDRによるヒト健康影響評価では、カドミウムへの吸入ばく露と生殖影響との間の関連性を決定するには証拠は不十分である、ヒトにおけるカドミウムの発達への影響に関するデータは非常に限られるとされ、カドミウムに経口ばく露された母親の血中又は尿中カドミウム濃度と出生児の体格指標には関連がみられないとの報告が多数あげられているなど、カドミウムばく露によるヒトの生殖発生影響については、情報不足でまだ判断できないとの見解である(ATSDR (2012))。
(6)食品安全委員会はカドミウムの食品健康評価を行い、生殖、子供の成育・成長への影響については、近年の我が国のエコチル調査や海外の疫学調査で、カドミウムばく露による影響が示唆されているが、鉄欠乏などの交絡因子の調整が不十分である可能性がある。また、カドミウムばく露との関連が認められなかった文献も散見されることから、結果は一致していなかったと報告している(食安委 汚染物質評価書 (2024))。
(7)EUでは、本物質の分類はないが、塩化カドミウムについてRepr. 1B、酸化カドミウムについてRepr. 2に分類されている(CLP分類 (Accessed Aug. 2024))。また、本邦GHSの既存分類で、塩化カドミウムは区分1Aに分類されている(政府GHS分類結果 (2022年度))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、カドミウム化合物に関する(1)〜(3)の情報より、区分1(呼吸器)とした。

【根拠データ】
(1)急性カドミウム中毒では、金属カドミウムやカドミウム含有物が高温に加熱された時に発生するヒュームにばく露された後短時間で作業者が死亡した例が報告されている。急性症例では、肺炎や肺水腫によって呼吸困難となる。加熱炉から放出された酸化カドミウムヒュームによる致死的な急性中毒として、気中濃度50 mg/m3のカドミウムに1時間ばく露された例及び8.6 mg/m3に5時間ばく露された例があった。このことから、5 mg/m3に8時間ばく露されると死に至ると考えられている(食安委 汚染物質評価書 (2024)、AICIS IMAP (2014)、ATSDR (2012)、EHC 134 (1992))。
(2)1940〜1950年代に食品や飲料の摂取後にひどい吐気や嘔吐、腹痛を伴う急性食中毒が発生した。これは、当時、クロムの不足により調理用器具や容器のメッキにカドミウムを用い、酸性食品や飲料が接した表面からカドミウムが溶出したことによって発生したものであった(同上)。
(3)カドミウム及びその化合物について、労働基準法施行規則35条別表第一の二第四号の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病として、気道・肺障害、腎障害又は骨軟化が記載されている (平成二十五年厚生労働省告示第三百十六号)。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、(1)〜(3)のカドミウムばく露によるヒトの有害影響の知見、及び(4)のカドミウム化合物の動物試験結果より、区分1(呼吸器、腎臓、骨)とした。

【根拠データ】
(1)職業ばく露、又は一般環境からのばく露にかかわらず、体内に取り込まれたカドミウムにより、慢性影響として腎機能障害が生じることが知られている(食安委 汚染物質評価書 (2024))。
(2)海外のカドミウム非汚染地域での疫学調査や動物実験の結果から、腎機能障害を介さずにカドミウムが骨へ直接的に影響して、骨量減少、骨粗しょう症や骨折の増加が生じることが示唆されている。スウェーデンで実施された疫学調査において、尿中カドミウム濃度0.5μg/gクレアチニン (Cr) 以上で骨折発生率が増加したとの知見に基づき、フランスのANSES(食品環境労働衛生安全庁)は、カドミウムの健康影響評価におけるcritical effectは骨密度の低下と骨折の増加と判断し、尿中カドミウム濃度 0.5μg/g Crが骨密度の低下や骨折率の増加が起こるcritical doseとしている(同上)。
(3)EUにおける本物質の有害性影響の分類に際してのカドミウムのヒトでの慢性影響の調査では、腎臓と骨への影響は毒性学的にカドミウムばく露と関連性があり、腎臓の機能(蛋白尿とカルシウム排泄の増加を誘発した)及び骨の形態(骨粗鬆症と骨軟化症を引き起こした)に影響を及ぼしたことから、これらが特定標的臓器(反復ばく露)分類の対象臓器と結論づけている(RAC (Background Doc.) (2015))。
(4)実験動物では、酸化カドミウムを被験物質としたラット、マウスを用いた13週間吸入ばく露試験において、ラット及びマウスの雌雄いずれにも鼻腔や肺に炎症性変化が認められており、これらの影響は0.022〜0.88 mg Cd/m3(酸化カドミウム・90日ばく露換算:0.000018〜0.000726 mg CdO/L:区分1範囲)でみられている(ATSDR (2012))。また、塩化カドミウムのエアロゾルをラットに反復吸入ばく露後に肺気腫の徴候が認められた(ATSDR (2012)、EHC 134 (1992))。既に、他の項目で記述したとおり、酸化カドミウムのデータは体内で遊離されるCd2+イオンを介した生物学的作用の共通性から、本物質の毒性データとして利用が可能と判断した。
(5)カドミウム及びその化合物について、労働基準法施行規則35条別表第一の二第四号の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病として、気道・肺障害、腎障害又は骨軟化が記載されている (平成二十五年厚生労働省告示第三百十六号)。

【参考データ等】
(6)EUではSTOT RE1 (腎臓、骨) に分類されている (CLP分類 (Accessed Aug. 2024))。

誤えん有害性*【分類根拠】
データがなく分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)データがなく分類できない。
水生環境有害性 長期(慢性)データがなく分類できない。
残留性・分解性-
生態蓄積性-
土壌中の移動性-
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報特別管理産業廃棄物に該当する。
特別管理産業廃棄物処理基準に従って処理を行うか、特別管理産業廃棄物の許可業者に運搬又は処分を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。


14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号該当しない
品名(国連輸送名)該当しない
国連分類該当しない
副次危険該当しない
容器等級該当しない
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報該当しない
航空規制情報該当しない
陸上規制情報毒物及び劇物取締法の規定に従う
特別な安全上の対策毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*-
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法特定化学物質第2類物質(施行令別表第3第2号・特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号) 【10 カドミウム及びその化合物】
特定化学物質第2類物質、管理第2類物質(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2、5号) 【10 カドミウム及びその化合物】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【129 カドミウム及びその化合物】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【9 カドミウム及びその化合物】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【129 カドミウム及びその化合物】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【9 カドミウム及びその化合物】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
がん原性物質(作業記録等の30年保存対象物質)(労働安全衛生規則第577条の2) 【水酸化カドミウム】
特殊健康診断対象物質・現行取扱労働者(法第66条第2項、施行令第22条第1項) 【3 カドミウム及びその化合物】
作業環境評価基準(法第65条の2第2項)【10 カドミウム及びその化合物)】
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1) 【カドミウム及びその化合物】
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)特定第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1、施行令第4条) 【99 カドミウム及びその化合物】
毒物及び劇物取締法劇物(指定令第2条)【22 カドミウム化合物】
水道法水質基準(平15省令101号) 【3 カドミウム及びその化合物】
大気汚染防止法有害物質 (法第2条第1項3、施行令第1条) 【1 カドミウム及びその化合物】
水質汚濁防止法有害物質(法第2条、施行令第2条) 【1 カドミウム及びその化合物】
土壌汚染対策法第2種特定有害物質(法第2条第1項、施行令第1条) 【1 カドミウム及びその化合物】
廃棄物処理法特別管理産業廃棄物(法第2条第5項、施行令第2条の4)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・2024 Emengency Response Guidebook
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」