化学品の名称 | ニトリロ三酢酸三ナトリウム一水和物 | ||
---|---|---|---|
化学品の英語名称 | Nitrilotriacetic acid, trisodium salt, monohydrate | ||
製品コード | R05-A-030-JNIOSH | ||
供給者の会社名 | ○○○○株式会社 | ||
住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
電話番号 | 03-1234-5678 | ||
ファクシミリ番号 | 03-1234-5678 | ||
電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
推奨用途及び使用上の制限 |
2.危険有害性の要約 | |||
---|---|---|---|
GHS分類 | |||
分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | R6.3.29、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用 | ||
物理化学的危険性 | - | ||
健康に対する有害性 | 急性毒性(経口) | 区分4 | |
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2A | ||
発がん性 | 区分1B | ||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分2(腎臓)、区分3(気道刺激性) | ||
分類実施日 (環境有害性) | - | ||
環境に対する有害性 | - | ||
GHSラベル要素 | |||
絵表示 | |||
注意喚起語 | 危険 | ||
危険有害性情報 | 飲み込むと有害 強い眼刺激 発がんのおそれ 腎臓の障害のおそれ 呼吸器への刺激のおそれ | ||
注意書き | |||
安全対策 | 取扱い後は手をよく洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 | ||
応急措置 | 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。 口をすすぐこと。 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 | ||
保管 | 施錠して保管すること。 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 | ||
廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | ||
他の危険有害性 | - |
3.組成及び成分情報 | |||
---|---|---|---|
化学物質・混合物の区別 | 化学物質 | ||
化学名又は一般名 | ニトリロ三酢酸三ナトリウム一水和物 | ||
慣用名又は別名 | トリグリコラミン酸三ナトリウム一水和物 トリナトリウム=2,2’,2’’−ニトリロトリスアセタート一水和物 | ||
英語名 | Nitrilotriacetic acid, trisodium salt, monohydrate Trisodium nitriloacetate monohydrate Trisodium 2,2',2''-nitrilotriacetate monohydrate N,N-Bis(carboxymethyl)glycine trisodium salt monohydrate | ||
濃度又は濃度範囲 | 情報なし | ||
分子式 (分子量) | C6H6NNa3O6.H2O (-) | ||
化学特性 (示性式又は構造式) | |||
CAS番号 | 18662-53-8 | ||
官報公示整理番号(化審法) | 2-1277 | ||
官報公示整理番号(安衛法) | 情報なし | ||
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | 情報なし |
4.応急措置 | |||
---|---|---|---|
吸入した場合 | 新鮮な空気のある場所で安静にさせる。呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。必要な場合は人工吸入を行う。医師の診察/手当てを受けること。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
皮膚に付着した場合 | 汚染された衣服を脱がせる。皮膚に付着した部分を水と石けんで丁寧に洗浄する。炎症がある場合は、医師の診察/手当を受けること。 以上、GESTIS参照。 | ||
眼に入った場合 | 多量の流水で10分間洗浄する。できればコンタクトレンズを外す。その後も洗浄を続けること。医師の診察/手当てを受けること。 以上、GHS分類結果、GESTIS、ICSC参照。 | ||
飲み込んだ場合 | 口をすすぐ。意識があればコップ1〜2杯の水を飲ませる。嘔吐させないこと。医師の診察/手当てを受けること。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 吸入:灼熱感、咽頭痛、咳、息苦しさ、切れ、上気道 (鼻、喉、気管支) の炎症。 皮膚:発赤、弱い刺激、皮膚熱傷、痛み。 眼:充血、痛み、重度の熱傷、流涙、結膜炎。 経口摂取:腹痛、灼熱感、ショック/虚脱、嘔吐、胃粘膜の炎症、出血の可能性。 吸収:腎臓の機能障害または損傷、尿路の損傷。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 情報なし | ||
医師に対する特別な注意事項 | 情報なし |
5.火災時の措置 | |||
---|---|---|---|
適切な消火剤 | 水噴霧、粉末消火薬剤、耐アルコール泡消火薬剤、二酸化炭素。 以上、GESTIS参照。 | ||
使ってはならない消火剤 | 棒状注水 以上、GESTIS参照。 | ||
火災時の特有の危険有害性 | 火災の場合、有害物質(亜硝酸ガス;窒素酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素、金属酸化物フューム)が放出される可能性がある。 以上、GESTIS参照。 | ||
特有の消火方法 | 周囲の容器を水スプレーで冷却する。可能であれば、容器を危険区域外に持ち出す。着火源となるものを遮断する。大量の粉塵が舞い上がった場合は、直ちに避難すること。 以上、GESTIS参照。 | ||
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。 |
6.漏出時の措置 | |||
---|---|---|---|
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置 | 保護具を着用する。 以上、GESTIS参照。 | ||
環境に対する注意事項 | 水域に対する危険性がある。水、排水、下水、または地中への浸透を防ぐ。多量の場合は、自治体に連絡する。 以上、GESTIS参照。 | ||
封じ込め及び浄化の方法及び機材 | すべての着火源を取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。 こぼれた物質を密閉式容器内に掃き入れる。 残留分を注意深く集め、安全な場所に移す。 粉塵の拡散を防ぐ。 この物質を環境中に放出してはならない。 | ||
二次災害の防止策 | 情報なし |
7.取扱い及び保管上の注意 | |||
---|---|---|---|
取扱い | |||
技術的対策 | 「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。 | ||
安全取扱注意事項 | 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 容器を開けたままにしない。漏出を避ける。粉じんの発生を避ける。使用する場合は十分な換気を確保すること。 以上、GHS分類結果、GESTIS参照。 | ||
接触回避 | 「10. 安全性及び反応性」を参照。 | ||
衛生対策 | 眼への接触を避ける。接触した場合は洗浄する。粉じんの吸入を避ける。休憩前や作業終了時には石鹸と水で皮膚を洗い、洗浄後は脂肪分の多いスキンケア製品を塗布する。衣服との接触を避ける。汚染された衣類は交換し、注意深く洗うこと。使用するときには飲食、喫煙をしないこと。 以上、GESTIS参照。 | ||
保管 | |||
安全な保管条件 | 施錠して保管する。容器を密閉し、涼しくて乾燥した換気の良い場所に保管すること。強酸化剤および強酸から離しておく。 以上、GHS分類結果、GESTIS、ICSC参照。 | ||
安全な容器包装材料 | 破損や漏れの無い密閉可能な容器を使用する。 |
8.ばく露防止及び保護措置 | ||||
---|---|---|---|---|
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。 | ||||
管理濃度 | - | |||
濃度基準値 | ||||
八時間濃度基準値 | - | |||
短時間濃度基準値 | - | |||
許容濃度等 | ||||
日本産衛学会(2023年版) | - | |||
ACGIH(2023年版) | - | |||
設備対策 | 作業場所には換気設備を設置する。取り扱い場所の近くに洗眼及び身体洗浄のための設備を設け、標識を付ける。床に排水溝を設けないこと。 以上、GESTIS参照。 | |||
保護具 | ||||
呼吸用保護具 | 緊急時(例:意図しない物質の放出)には、呼吸保護具を着用する。 作業者が粉じんにばく露される場合は呼吸保護具(防じんマスク等)の着用を検討する。 防じんマスクの選択については、以下の点に留意する。 -酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。また、有害なガスが存在する場所においては防じんマスクを使用せず、その他の呼吸用保護具の利用を検討すること。 -防じんマスクは、国家検定合格品であることを確認し、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。 | |||
手の保護具 | 必要に応じて保護手袋を使用すること。手袋の材質は、物質に対する十分な不浸透性と耐性を備えていなければならない。 以上、GESTIS参照。 | |||
眼の保護具 | 必要に応じてサイドガード付きの保護眼鏡を着用する。 以上、GESTIS参照。 | |||
皮膚及び身体の保護具 | 必要に応じて適切な保護衣または化学防護服を着用する。 以上、GESTIS参照。 |
9.物理的及び化学的性質 | |||
---|---|---|---|
物理的状態 | |||
物理状態 | 固体 | ||
色 | 白色 | ||
臭い | わずかなアンモニア臭 | ||
融点/凝固点 | 約 770 °F(HSDB in PubChem(2023)) | ||
沸点、初留点及び沸騰範囲 | データなし | ||
可燃性 | 可燃性、低引火性(GESTIS(2023)) | ||
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | データなし | ||
引火点 | データなし | ||
自然発火点 | データなし | ||
分解温度 | >340 ℃(GESTIS(2023)) 340 ℃(ICSC(2021)、HSDB in PubChem(2023)) | ||
pH | 10.5-11.5 (20℃、濃度:10g/L-水和物)(GESTIS(2023)) 約 11 (1%水溶液)(HSDB in PubChem(2023)) 11-13 (40%水溶液)(HSDB in PubChem(2023)) | ||
動粘性率 | データなし | ||
溶解度 | 水: 約 640 g/L(20℃)(GESTIS(2023)) 水: 50 g/100mL(25℃)(ICSC(2021)、HSDB in PubChem(2023)) | ||
n-オクタノール/水分配係数 | データなし | ||
蒸気圧 | データなし | ||
密度及び/又は相対密度 | 1.77 g/cm3(20℃)(GESTIS(2023)) 1.782 g/cm3(25℃)(ICSC(2021)、HSDB in PubChem(2023)) | ||
相対ガス密度 | データなし | ||
粒子特性 | データなし |
10.安定性及び反応性 | |||
---|---|---|---|
反応性 | 「危険有害反応可能性」を参照。 | ||
化学的安定性 | 強酸化剤と反応する。 | ||
危険有害反応可能性 | 粉末や顆粒状で空気と混合すると粉じん爆発の可能性がある。燃焼すると分解し、窒素酸化物などの有毒で刺激性のフュームを発生する。 | ||
避けるべき条件 | 加熱、高温、火気 | ||
混触危険物質 | 強酸化剤 | ||
危険有害な分解生成物 | 窒素酸化物 |
11.有害性情報 | ||||
---|---|---|---|---|
急性毒性 | ||||
経口 | 【分類根拠】 (1)〜(5)のうち、現行基準に基づく試験の結果から区分4とした。 【根拠データ】 (1)ラット(雄)のLD50:1,600 mg/kg (DFG MAK (2008)) (2)ラット(雌)のLD50:1,300 mg/kg (DFG MAK (2008)) 【参考データ等】 (3)ラットのLD50:3,710 mg/kg (DFG MAK (2008)) (4)ラット(雄)のLD50:5,300 mg/kg (DFG MAK (2008)) (5)ラット(雌)のLD50:3,800 mg/kg (DFG MAK (2008)) | |||
経皮 | 【分類根拠】 本物質自体のデータはないが、(1)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ニトリロ三酢酸ナトリウム(CAS登録番号:5064-31-3)の25%水溶液によるウサギのLD50:> 10,000 mg/kg(DFG MAK (2008)) | |||
吸入: ガス | 【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 | |||
吸入: 蒸気 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
吸入: 粉じん及びミスト | 【分類根拠】 本物質自体のデータはないが、(1)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ニトリロ三酢酸三ナトリウム(CAS登録番号:5064-31-3)のラットにおけるLC50(ダスト、4時間):> 5.0 mg/L(DFG MAK (2008)) | |||
皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n=3)を用いた皮膚刺激性試験(閉塞、24時間適用、7日観察、純度不明、乾燥粉末)において、3例とも皮膚刺激性はみられなかったとの報告がある(SCCS (2010))。 (2)ウサギ(n=3)を用いた皮膚刺激性試験(閉塞、24時間適用、25%水溶液)において、軽度の刺激性がみられたが5日以内に回復したとの報告がある(SCCS (2010))。 【参考データ等】 (3)ニトリロ三酢酸三ナトリウム(CAS登録番号:5064-31-3)77%溶液における、ウサギを用いた皮膚刺激性試験(20時間適用、8日観察)において、軽微な発赤が見られたが8日以内に回復したとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (4)ニトリロ三酢酸(CAS登録番号:139-13-9)80%溶液における、ウサギを用いた皮膚刺激性試験(20時間適用、8日観察)において、軽微な発赤が見られたが8日以内に回復したとの報告がある(DFG MAK (2008))。 | |||
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | 【分類根拠】 (1)より、区分2Aとした。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n=3)を用いた眼刺激性試験(24時間後洗浄、7日間観察)において、点眼1時間後に眼瞼の部分反転、夥しい分泌液の放出を伴う結膜浮腫、中程度の結膜発赤と虹彩を覆ううっ血が報告された。分泌物と浮腫は24時間後に軽減し、浮腫は5日後には回復したが、軽微な結膜発赤と軽微な角膜混濁は7日後まで残存したとの報告がある(DFG MAK (2008)、SCCS (2010))。 【参考データ等】 (2)ニトリロ三酢酸三ナトリウム(三ナトリウムNTA、CAS登録番号:5064-31-3)の38%水溶液を用いたウサギの眼刺激性試験(OECD TG405、三ナトリウム NTAの38%水溶液、8日観察)では、刺激性スコアで約4(フルスケール:110)の刺激性に該当し、刺激性なしと判断されたとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (3)三ナトリウムNTAを用いたウサギの眼刺激性試験(8日間観察)では、1時間後に軽微な結膜発赤と重度の結膜浮腫を生じたが、24時間後には軽微な結膜発赤のみみられ、8日後に瞬膜の出血がみられたとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (4)三ナトリウムNTAを用いたウサギの眼刺激性試験(8日観察)では、1時間後に結膜の重度の発赤と軽微な浮腫、並びに軽微な角膜混濁がみられ、影響は24時間継続した。8日後には軽微な結膜発赤がみられた。その他、分泌液と出血(適用1時間後)及び角膜の粘液層(24時間後)がみられたとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (5)三ナトリウムNTAを用いた、ウサギ(n=3)を用いた眼刺激性試験(0.1mL溶液)において、角膜および虹彩には影響は見られなかったものの、結膜発赤においては、点眼1時間後3 匹すべてでグレード 2が観察され、うち1匹は24時間持続した。また、結膜浮腫については、点眼1時間後 3 匹中 2 匹でグレード 2 の診断がなされたが、24 時間以内にグレード 1 または 0に症状は改善した。点眼4日後までにすべての刺激性影響は回復したとの報告がある(DFG MAK (2008))。 | |||
呼吸器感作性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
皮膚感作性 | 【分類根拠】 (1)、(2)について諸外国で採用されていないという(3)の知見から、データ不足のため分類できない。 【根拠データ】 (1)ニトリロ三酢酸三ナトリウム (CAS登録番号:5064-31-3) 20%を含む液体洗浄剤の1%水溶液を被験物質とし、ボランティア66人を用いた反復侵襲パッチテスト(感作誘導:被験液0.5 mL、3回/週×3週間(計9回)、惹起:被験液0.5 mL)では、感作性の証拠はみられなかったとの報告がある(SCCS (2010)、DFG MAK (2008)、MOE 初期評価(2005))。 (2)ニトリロ三酢酸三ナトリウムにおける、モルモット(n=20)を用いたBuehler試験(OECD TG 406)において、皮膚における感作性反応は見られなかったとの報告がある(SCCS (2010)、DFG MAK (2008))。 (3)SCCS (2010)、DFG MAK (2008)は(1)の知見は被験者数が不十分である点、(2)の知見は試験方法が適切でない点を指摘し、双方の知見を採用していない(SCCS (2010)、DFG MAK (2008))。 | |||
生殖細胞変異原性 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。(1)〜(4)より、ニトリロ三酢酸及びその塩についてのデータから、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)In vivoでは、ニトリロ三酢酸(NTA)(CAS登録番号:139-13-9)のラット腎臓を標的とした小核試験及びコメットアッセイ(3日間経口投与、490 mg/kg/day)で陽性、NTAの三ナトリウム塩(三ナトリウムNTA)(CAS登録番号:5064-31-3)のマウス精母細胞を用いた染色体異常(倍数性)試験(単回腹腔内投与、275 mg/kg)で陽性の報告がある。一方、三ナトリウムNTAのマウス優性致死試験(経口(1,000 mg/kg)、腹腔内(125 mg/kg))、NTAのラット腎臓を用いた小核試験(単回経口投与、735 mg/kg)、三ナトリウムNTAのマウスの骨髄細胞を用いた小核試験、染色分体交換試験及び染色体異常(倍数性)試験(経口(〜2,000 mg/kg)、腹腔内(275 mg/kg))、二ナトリウムNTA(CAS登録番号:15467-20-6)のラットの腎臓を標的とした酸化的DNA傷害性試験で陰性の報告がある(DFG MAK (2008))。 (2)In vitroでは、NTAのヒト腎細胞初代培地又はラットの腎細胞初代培地を用いた小核試験で陽性の結果(-S9)が示されたが、前者は細胞毒性濃度で陽性であった。三ナトリウムNTAのハムスターのC1-1細胞を用いた小核試験で弱陽性以外は、細菌を用いた複数の復帰突然変異試験(三ナトリウム NTA・H2O又は三ナトリウム NTA)、ヒトリンパ球、CHO細胞を用いた染色体異常試験(三ナトリウム NTA又はNTA)、マウスリンパ腫細胞を用いた複数の遺伝子突然変異試験(三ナトリウム NTA)は陰性(+S9のデータ欠損が多い)、ラットの腎由来細胞を用いた本物質の染色体異常試験で不確定な結果等の報告がある(DFG MAK (2008))。 (3)ニトリロ三酢酸(NTA)及びその塩類はカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などの多価金属と水溶性のキレート複合体を形成する。In vitro試験の一部の陽性の結果は三ナトリウム塩とNTAは培地中の二価の必須イオンとの複合体形成により、必須イオン濃度を低下させ、間接的な遺伝毒性影響を生じる可能性がある(DFG MAK (2008))。 (4)ヒトにおけるNTAの遺伝毒性および関連する影響に関するデータはないが、in vitro で哺乳動物細胞に対してほとんど遺伝毒性がなく、細菌における突然変異もなく、ニトリロ三酢酸一水和物がマウス生殖細胞において異数性を誘導したことを除いて、生体内実験系において遺伝毒性を示さなかった ことから変異原性や遺伝毒性はないと判断されている(DFG MAK (2008)、SCCS (2010))。 | |||
発がん性 | 【分類根拠】 (1)〜(4)より、ニトリロ三酢酸及びその塩類は動物種2種において泌尿器の悪性腫瘍の誘発が報告されていることから、動物での発がん性の証拠が十分であると判定できるため、区分1Bとした。 【根拠データ】 (1)ニトリロ三酢酸三ナトリウム一水和物(CAS登録番号:18662-53-8)について、ラットを用いた2年間混餌投与(200〜20,000 ppm)、又はマウスを用いた18ヵ月間混餌投与による発がん性試験において、ラットでは20,000 ppmで腎臓腫瘍(尿細管腺腫/腺がん)、腎盂の移行上皮がん(雄のみ)、尿管の移行上皮がん、膀胱の移行上皮がん(雌のみ)、マウスの試験では尿路系上皮の腫瘍は認められなかったが、雄に造血系腫瘍の増加が認められた(IARC 48 (1990)、DFG MAK (2008))。 (2)ニトリロ三酢酸三ナトリウム(CAS登録番号:5064-31-3)について、ラットを用いた2年間(704日間)飲水投与による発がん性試験では、0.1%投与群で腎臓腫瘍(腺腫/がん:計29/183 vs 対照群5/186)の発生増加が認められた(IARC 48 (1990)、DFG MAK (2008)、SCCS (2010))。 (3)遊離酸であるニトリロ三酢酸(NTA、CAS登録番号:139-13-9)について、ラット及びマウスを用いた18ヵ月間混餌投与(6ヵ月後にと殺)による発がん性試験においても、ラットでは雄に腎尿細管腫瘍、雌に膀胱腫瘍(移行上皮がん、扁平上皮がん)、副腎褐色細胞腫などが、マウスでは腎臓腫瘍(主に腎臓腺がん)の発生増加が認められた(IARC 48 (1990)、DFG MAK (2008)、SCCS (2010))。 (4)IARCの評価において、溶液中のニトリロ三酢酸塩からニトリロ三酢酸が遊離される事実から、ニトリロ三酢酸塩類及びニトリロ三酢酸をグループとして評価をした(IARC 48 (1990))。 【参考データ等】 (5)国内外の発がん性評価機関による既存分類では、ニトリロ三酢酸及びその塩に対して、IARCでグループ2Bに(IARC 73 (1999))、日本産業衛生学会で2Bに、DFGでカテゴリ4に(List of MAK and BAT values (2022))分類されている。 | |||
生殖毒性 | 【分類根拠】 本物質自体のデータはないが、(1)〜(4)より、ニトリロ三酢酸及びその塩類の試験データでは生殖発生影響はみられていない。よって、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)本物質の無水物(三ナトリウムNTA、CAS登録番号:5064-31-3)について、ラットを用いた混餌投与による二世代生殖毒性試験(90〜450 mg/kg/day)において、親動物に一般毒性(体重増加抑制(F0及びF1雌雄)、摂餌量低下(F0雄))が生じた高用量(450 mg/kg/day)まで、F0及びF1親動物の生殖能に有害影響はみられず、児動物にはF1a児の低体重以外にF1b及びF2a児に異常はみられなかったとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (2)三ナトリウムNTAについて、妊娠ラットを用いた混餌投与による発生毒性試験(90〜450 mg/kg/day)において、母動物毒性(詳細不明)がみられる高用量(450 mg/kg/day)まで胎児に発生影響はみられなかったとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (3)ニトリロ三酢酸(NTA、CAS登録番号:139-13-9)について、妊娠ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験(2.5〜250 mg/kg/day)において、最高用量(250 mg/kg/day)まで母動物、胎児ともに有害影響はみられなかったとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (4)NTAについて、妊娠マウスを用いた飲水投与による発生毒性試験(400 mg/kg/day)において、母動物、胎児ともに異常はみられなかったとの報告がある(DFG MAK (2008))。 | |||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 【分類根拠】 本物質自体のデータはないが、(1)〜(3)より、区分2(腎臓)、区分3(気道刺激性)とした。なお、(1)でみられた影響は死戦期特有のものと考えられるため、標的臓器として採用していない。 【根拠データ】 (1)ニトリロ三酢酸三ナトリウム(CAS登録番号:5064-31-3)のラットを用いた単回経口投与試験において、1,250 mg/kg(1,349 mg/kg、区分2範囲)で死亡例(雄:5例中1例、雌:5例中2例)がみられ、症状としては、運動失調、振戦、活動性の低下、低体温、呼吸数の減少、側臥位、口腔および鼻汁がみられたとの報告がある。なお、死亡例で消化管粘膜に対する刺激影響がみられたとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (2)ニトリロ三酢酸(CAS登録番号:139-13-9)のラットを用いた単回経口投与試験において、300 mg/kg(本物質換算:432 mg/kg、区分2の範囲)以上で近位尿細管の細胞質の空胞化がみられたとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (3)ニトリロ三酢酸三ナトリウムのラットを用いた単回吸入ばく露試験(ダスト、4時間)においては、最高濃度の5.0 mg/Lまで死亡は生じなかったとの報告がある。3.3〜5.0mg/Lでばく露中に流涎、呼吸困難、喘鳴、口呼吸、部分閉眼、活動性低下がみられたが、ばく露終了後に回復し、以後異常はみられなかったとの報告がある(DFG MAK (2008))。 | |||
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分2の用量範囲で重篤な標的臓器毒性はみられず、区分2超の用量範囲で泌尿器への影響がみられたが、区分2上限でのデータがなく、分類できない。 【根拠データ】 (1)雄ラットを用いた30週間混餌投与試験において、500 mg/kg/day(区分に該当しない範囲)以上で腎盂移行上皮の過形成(用量依存性)がみられたとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (2)ラットを用いた2年間混餌投与試験において、200 ppm (ガイダンス換算:14 mg/kg/day、区分2の範囲)以上で雄に膀胱上皮の過形成(雄)、2,000 ppm(ガイダンス換算:137 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)以上で雌に膀胱上皮の過形成・異形成、雄に尿管移行上皮の過形成(雄)がみられたとの報告がある。最高用量の20,000 ppm(ガイダンス換算:1,007 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)では雌雄ともに体重増加抑制、腎臓、尿管及び膀胱の腫瘍発生頻度の増加、雄に死亡率の増加などがみられたとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (3)本物質の無水物(三ナトリウムNTA、CAS登録番号:5064-31-3)について、イヌを用いた90日間混餌投与試験において、38 mg/kg/day(本物質換算:41 mg/kg/day、区分2の範囲)から最高用量の125 mg/kg/day(本物質換算:134 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)まで、尿中亜鉛濃度及び骨中NTA含量の増加が用量依存性にみられたが、臨床検査、病理組織検査を含めて有害影響は検出されなかったとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (4)三ナトリウムNTAについて、ラットを用いた2年間混餌投与試験では、0.15%(本物質換算:80.6 mg/kg/day、区分2の範囲)以上で腎炎及び腎症の頻度と程度の増加、0.5%(本物質換算:250 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で雌に死亡率の増加が見られたとの報告がある(DFG MAK (2008))。 (5)三ナトリウムNTAについて、ウサギを用いた91日間経皮投与試験(5日/週)において、50 mg/kg/day(本物質換算:53.5 mg/kg/day、区分2の範囲)で有害影響はみられなかったとの報告がある(DFG MAK (2008))。 【参考データ等】 (6)ニトリロ三酢酸(NTA、CAS登録番号:139-13-9)について、サル(2匹)、ラット(6匹)及びモルモット(6匹)を用いた4週間吸入ばく露試験(10〜342 mg/m3、6時間/日、5日/週)において、全ての動物種で呼吸器への影響が示唆されたが、例数が少なく、統計解析が実施されなかったこと、肺を含めて主要臓器の病理組織検査が実査されなかったなど方法論的な欠陥のため、結論を導くことができない(DFG MAK (2008))。 (7)三ナトリウムNTAについて、発がん以外のエンドポイントについてはNOAELを92 mg/kg/day(本物質換算:98 mg/kg/day)とすることが提案されている(SCCS (2010))。 | |||
誤えん有害性* | 【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 | |||
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。 |
12.環境影響情報 | |||
---|---|---|---|
生態毒性 | |||
水生環境有害性 短期(急性) | データなし。 | ||
水生環境有害性 長期(慢性) | データなし。 | ||
残留性・分解性 | 情報なし | ||
生態蓄積性 | 情報なし | ||
土壌中の移動性 | 情報なし | ||
オゾン層への有害性 | 当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。 |
13.廃棄上の注意 | |||
---|---|---|---|
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。 廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。 | ||
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 |
14.輸送上の注意 | ||||
---|---|---|---|---|
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。 | ||||
国際規制 | ||||
国連番号 | - | |||
品名(国連輸送名) | - | |||
国連分類 | - | |||
副次危険 | - | |||
容器等級 | - | |||
海洋汚染物質 | 該当しない | |||
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質 | 該当しない | |||
国内規制 | ||||
海上規制情報 | 該当しない | |||
航空規制情報 | 該当しない | |||
陸上規制情報 | 該当しない | |||
特別な安全上の対策 | 該当しない | |||
その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
緊急時応急措置指針番号* | 該当しない | |||
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。 |
15.適用法令 | ||||
---|---|---|---|---|
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
労働安全衛生法 | - | |||
化審法 | 優先評価化学物質(法第2条第5項) | |||
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) | 第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1) | |||
毒物及び劇物取締法 | - | |||
水道法 | 有害物質(法第4条第2項)【ナトリウム及びその化合物】 水質基準(平15省令101号)【ナトリウム及びその化合物】 |
16.その他の情報 | ||||
---|---|---|---|---|
参考文献 | ||||
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。 ・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP) ・International Chemical Safety Cards (ICSC) ・Hazardous Substances Data Bank (HSDB) ・GESTIS Substance database (GESTIS) ・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用 ・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」 |