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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
N−ブチル−N−エチル−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p− トルイジン(別名ベスロジン)
作成日 2025年3月14日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称N−ブチル−N−エチル−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p− トルイジン(別名ベスロジン)
化学品の英語名称N-butyl-N-ethyl-α,α,α-trifluoro-2,6-dinitro-p-toluidine
製品コードR06-S54-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限農薬(除草剤)(NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
令和2年度(2020年度)、ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
皮膚感作性区分1
発がん性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分3(気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1(肝臓、腎臓)
分類実施日
(環境有害性)
令和3年度(2021年度)、ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分1
水生環境有害性 長期(慢性)区分1

GHSラベル要素
絵表示健康有害性感嘆符環境
注意喚起語危険
危険有害性情報皮膚刺激
強い眼刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
発がんのおそれの疑い
呼吸器への刺激のおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による肝臓、腎臓の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策取扱い後はよく手を洗うこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
環境への放出を避けること。
 応急措置皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪いときは,医師の診察/手当てを受けること。
漏出物を回収すること。
 保管施錠して保管すること。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名N−ブチル−N−エチル−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p− トルイジン
慣用名又は別名ベスロジン
ベンフルラリン
英語名N-butyl-N-ethyl-α,α,α-trifluoro-2,6-dinitro-p-toluidine
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C13H16F3N3O4 (335.28)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号1861-40-1
官報公示整理番号
(化審法)
-
官報公示整理番号
(安衛法)
4-(12)-373
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)-

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
症状が続く場合には、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
症状が続く場合には、医師に連絡すること。
眼に入った場合眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
水で15〜20分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
飲み込んだ場合水で口をすすぎ、直ちに医師の診断を受けること
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状情報なし
応急措置をする者の保護に必要な注意事項救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火剤、泡消火剤、二酸化炭素
以上、GESTIS参照。
使ってはならない消火剤火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。
特有の危険有害性一般的な注意として、粉末状物質の場合は、ある条件下では粉じん爆発を起こす可能性がある。
特有の消火方法可能であれば、容器を危険区域から移動すること。
発火源を遮断すること。
流出物が下水道に流れ込まないようにする。
以上、GESTIS参照。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置火災が発生した場合、有毒なガス(亜窒素ガス(一酸化窒素)、フッ化水素、一酸化炭素と二酸化炭素)が放出される可能性がある。
自給式呼吸器と密閉性の高い特殊スーツを着用する。
以上、GESTIS参照。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項環境への放出を避けること。
周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材漏出物を回収すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
廃棄物を流し台やゴミ箱に入れない。
収集容器には、内容物を説明したラベルを貼付する。
個人用保護具を着用する(個人用保護具の章を参照)。
粉じんを発生させずに回収すること。
その後、周囲を換気し、漏出場所を洗浄する。
以上、GESTIS参照。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策食品容器は使用しないこと。
容器にラベルを貼る。
できる限り元の容器に保管する。
以上、GESTIS参照。
安全取扱い注意事項粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
作業場を清潔に保つ。
作業場には、作業を進めるために必要な量を超える物質を持ち込まない。
容器を開いたままにしないこと。
詰め替え、移送、または開放使用の場合は、十分な換気を確保する必要がある。
こぼさない。
ラベルの付いた容器にのみ充填する。
粉じんの舞い上がりを避ける。
壊れやすい容器で輸送する場合は、適切な外部容器を使用する。
以上、GESTIS参照。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
すべての部屋と機器は定期的に清掃する。
必要に応じて、清掃中に保護具を使用する。
ほこりの発生を避ける。避けられないほこりの発生は、定期的に収集する必要がある。
清掃に送風機を使用しないこと。
作業場では飲食禁止。
皮膚との接触を避ける。接触した場合は、皮膚を洗う。
眼との接触を避ける。接触した場合は、患部を洗い流す。
粉じんの吸入を避ける。
衣服との接触を避ける。汚染された衣服は交換し、慎重に洗浄する。
休憩前と作業終了時には、皮膚を石鹸と水で洗う。
以上、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
保管場所には危険・有害物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な照明及び換気の設備を設ける。静電気放電に対する予防措置を講ずること。
容器は密閉する。
乾燥した場所に保管する。
以上、GESTIS参照。
安全な容器包装材料国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度-
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度
日本産衛学会 (2024年度版)(吸入性粉じん)2 mg/m3
(総粉じん)8 mg/m3
(第3種粉じん)
ACGIH (2024年版)PNOS* TLV: 3 mg/m3 (Respirable particles)
PNOS* TLV: 10 mg/m3 (Inhalable particles)
* Particles (insoluble or poorly soluble) Not Otherwise Specified
設備対策作業エリアは、可能であれば物理的に分離する。
作業エリアの換気を良くすること。
床排水溝を設けない。
職場に洗浄設備を設置する。
可能であれば、密閉式装置を使用する。
容器とパイプラインにラベルを貼る。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具緊急時(例:物質の意図しない放出)には、呼吸器の保護具を着用する。
フィルター装置の使用限度を超える濃度、酸素濃度が 18% 未満、または状況が不明な場合は、使用しない。
以上、GESTIS参照。
手の保護具厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」参照のこと。
保護手袋を使用する。手袋の素材は、物質に対して十分な不浸透性と耐性が必要である。着用前に締め付け具合を確認する。手袋は外す前によく洗浄し、換気の良い場所に保管する。
ポリクロロプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリ塩化ビニルは、溶解していない固形物に対する保護用の手袋の素材として適している。
以上、GESTIS参照。
眼の保護具十分な眼の保護具を着用する。
側面保護付きのメガネを着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具リスクに応じて、不浸透性の適切な防護服または適切な化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体
黄色〜橙色
臭い無臭
融点/凝固点65〜66.5 ℃ (GESTIS (2024))
沸点、初留点及び沸騰範囲148〜149 ℃ (9 hPa) (GESTIS (2024))
121〜122 ℃ (0.5 mHg) (HSDB in PubChem (2024))
可燃性可燃性 (GESTIS (2024))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点151 ℃ (GESTIS (2024))
自然発火点データなし
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水:0.1 mg/L (25℃) (GESTIS (2024))
アセトン:> 50 g/100mL (25℃) (HSDB in PubChem (2024))
n-オクタノール/水分配係数log Kow:5.29 (GESTIS (2024))
蒸気圧6.5×10-5 mmHg (25℃) (HSDB in PubChem (2024))
密度及び/又は相対密度データなし
相対ガス密度データなし
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性通常の取扱い条件下では安定である。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性通常の取扱い条件下では危険有害反応を起こさない。
避けるべき条件直射日光を避け、冷暗所に保管する。
混触危険物質感染性、放射性、爆発性の物質。
強酸化性物質。
この物質は、危険な化学反応を起こす可能性のある物質と一緒に保管しないこと。
以上、GESTIS参照。
危険有害な分解生成物火災等の場合は、毒性の強い分解生成物が発生する可能性がある。

11.有害性情報
急性毒性
経口(1)〜(3)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)ラットのLD50:> 10,000 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2010)、EPA Pesticides RED (2004))
(2)ラット(雄)のLD50:> 5,000 mg/kg(OECD TG 401、GLP)(CLH Report (2019)、EPA Pesticides RED (2004))
(3)ラット(雌)のLD50:> 5,000 mg/kg(OECD TG 401、GLP)(CLH Report (2019)、EPA Pesticides RED (2004))
経皮(1)〜(3)の3件の試験結果より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)ウサギのLD50:> 5,000 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2010)、EPA Pesticides RED (2004))
(2)ウサギのLD50:> 5,000 mg/kg(OECD TG 402、GLP)(CLH Report (2019))
(3)ウサギのLD50:> 5,000 mg/kg(OECD TG 402、GLP)(CLH Report (2019))
吸入: ガスGHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト(1)〜(3)より、区分4上限付近の用量における影響が不明のため、分類できない。
【根拠データ】
(1)ラットのLC50:> 2.3 mg/L(食安委 農薬評価書 (2010)、EPA Pesticides RED (2004))
(2)ラット(雄)のLC50:> 2.16 mg/L(OECD TG 403、GLP)(CLH Report (2019))
(3)ラット(雌)のLC50:> 2.16 mg/L(OECD TG 403、GLP)(CLH Report (2019))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性(1)〜(3)より、区分2とした。
【根拠データ】
(1)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、GLP、半閉塞、4時間適用、14日観察)において、3例で15日後まで紅斑が持続した(紅斑・痂皮スコア:1/2/1.7/2/2/2、浮腫スコア:1/1/1/1/1/1.3)との報告がある(CLH Report (2019))。
(2)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、GLP、4時間適用、9日観察)において、9日後に5例で落屑がみられた(紅斑・痂皮スコア:0/0/0.3/0.7/0.7/0.3、浮腫スコア:0.7/0.3/1/2/0.3/1.3)との報告がある(CLH Report (2019))。
(3)ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、中等度の刺激性がみられた(食安委 農薬評価書 (2019)、EPA Pesticides RED (2004))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性(1)より、区分2Aとした。
【根拠データ】
(1)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(OECD TG 405、GLP、14日観察)において、みられた眼刺激性反応の多くは7日以内に回復し、14日後には完全に回復した(角膜混濁スコア:1/1/1/1/1/1.3、虹彩炎スコア:0/1/0.7/0.7/0.3/1、結膜発赤スコア:2.3/2/2/2.3/2.7/2.7、結膜浮腫スコア:2/1.3/3/2/2.3/4)との報告がある(CLH Report (2019))。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性(1)、(2)より、区分1とした。なお、(1)は区分1Bを、(2)は区分1Aを支持しており、細区分せず区分1とした。
【根拠データ】
(1)モルモット(n=20)を用いたMaximisation試験(OECD TG 406、GLP、皮内投与:5%溶液)において、感作率は95%であったとの報告がある(CLH Report (2019))。
(2)モルモット(n=12)を用いた改変Buehler試験(OECD TG 406、GLP、局所投与:5%溶液)において、感作率は75%であったとの報告がある(CLH Report (2019))。
生殖細胞変異原性(1)〜(7)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)マウスの骨髄細胞を用いた小核試験(強制経口投与)において、不確定な結果(equivocal)との報告がある(CLH Report (2019)、Annexes to the CLH Report (2019))。
(2)ラットの骨髄細胞を用いた2つの小核試験(強制経口投与、2回)において、陰性との報告がある(CLH Report (2019)、Annexes to the CLH Report (2019))。
(3)ハムスターを用いた姉妹染色分体交換試験(単回経口投与)において、陰性との報告がある(食安委 農薬評価書 (2010))。
(4)細菌復帰突然変異試験において、3件の陰性との報告がある(CLH Report (2019)、Annexes to the CLH Report (2019))。
(5)マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験において、3件の陰性との報告がある(CLH Report (2019)、Annexes to the CLH Report (2019))。
(6)ヒトリンパ球を用いた小核試験において、2件の陰性との報告がある(CLH Report (2019)、Annexes to the CLH Report (2019))
(7)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)由来細胞を用いた染色体異常試験において、陰性の報告がある(食安委 農薬評価書 (2010))。
発がん性(1)〜(3)より、区分2とした。
【根拠データ】
(1)国内外の分類機関による既存分類としては、EPAがS (Suggestive Evidence of Carcinogenicity, but not Sufficient to Assess Human Carcinogenic Potential:発がん性を示唆する証拠はあるが、ヒトの発がん性を評価するには十分ではない) に分類した(EPA Annual Cancer Report 2018 (Accessed September 2020): 2001年分類)。
(2)ラットを用いた2年間混餌投与による慢性毒性/発がん性併合試験(OECD TG 453、GLP)では、2,500 ppm以上の投与群の雄で肝細胞腺腫の発生率の増加、並びに同雌雄で甲状腺濾胞細胞の腺腫とがんの合計発生率の増加が認められた(食安委 農薬評価書 (2010)、CLH Report (2019))。
(3)マウスを用いた2年間混餌投与による慢性毒性/発がん性併合試験(OECD TG 451、GLP)では、1,500 ppmの雌で肝細胞腺腫とがんの合計発生率の増加が認められた(食安委 農薬評価書 (2010))。CLH Report (2019) では、背景データの解析を踏まえ、雌では肝細胞腺腫(1,500 ppm)及び肝細胞がん(50、300及び1,500 ppm)の発生率増加がみられた。一方、雄マウスでは1,500 ppm投与群で肝臓腫瘍発生数の高値を示したが、対照群における肝臓腫瘍発生率が高かったため統計的有意差が得られなかったとしている。
【参考データ等】
(4)発がん性試験結果からは、結論としてラットでは肝臓及び甲状腺の腫瘍、マウスでは肝臓腫瘍が認められた。これらの腫瘍の発生機序はある程度明らかにされてはいるが、ヒトへの外挿の妥当性がないということは明確には証明できず、したがって分類基準ではカテゴリー2になると思われる(EFSA (2019))。
(5)(3)のマウスの発がん性試験では、被験物質として用いた本物質バッチに不純物として既知発がん物質の構造類似体のEBNA(ethyl-butyl-nitrosamine:CAS番号 4549-44-4) が本物質の変異原性/遺伝毒性評価に用いたられたバッチよりも高レベルで含有していることに留意すべき(CLH Report (2019))。
生殖毒性(1)〜(3)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)ラットを用いた混餌投与による二世代繁殖試験において、親動物に顕著な一般毒性影響(死亡(F0及びF1の雌1又は2/30例)、体重増加抑制、摂餌量減少、肝臓・腎臓の病変(肝細胞肥大、慢性腎症、腎盂腎炎等))がみられる用量で、F0及びF1雌親に腹当たりの産児数の減少、F1雌に妊娠期間延長、生後4日の生存児数/腹の減少及び離乳率の減少、F1児動物に生時体重低値及び生後4日から離乳までの体重低値がみられた。なお、繁殖能に対する影響は認められなかったとの報告がある(CLH Report (2019)、食安委 農薬評価書 (2010))。
(2)ラットを用いた強制経口投与した発生毒性試験(妊娠6〜15日)では、母動物に体重増加抑制がみられる用量で、胎児に軽微な骨格変異(椎骨/胸骨分節の変異)の頻度増加がみられたが、催奇形性は認められなかったとの報告がある(CLH Report (2019)、食安委 農薬評価書 (2010))。
(3)ウサギを用いた強制経口投与した発生毒性試験(妊娠6〜18日)では、母動物に体重増加抑制、摂餌量減少がみられる用量で胎児には無影響であったが、母動物に死亡、流産が認められる高用量で骨格変異(頭蓋骨)頻度の増加がみられたとの報告がある(CLH Report (2019)、食安委 農薬評価書 (2010))。
【参考データ等】
(4)ラットを用いた二世代繁殖試験において、児動物には胃内にミルクがない例数が用量依存的に認められた。CLP分類提案者は、この知見とウシを用いた本物質のADME試験結果から本物質及び代謝物が乳汁中に分泌されることを併せ考え、本物質は乳汁移行性があり、母乳を介して乳児ラットに有害影響として成長抑制を生じたものと考え、追加区分としての授乳影響を提案している(CLH Report (2019))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)(1)より、区分3(気道刺激性)とした。
【根拠データ】
(1)ラットを用いた単回吸入(粉じん)ばく露試験(OECD TG 403、GLP)において、1.12 mg/L(区分2の範囲)で一時的な活動低下・体重減少が、2.16 mg/L(区分2の範囲)で死亡(雄2/5例、雌1/5例、剖検の結果、肝臓・肺にうっ血)、呼吸困難、活動性低下、体重減少がみられたとの報告がある(CLH Report (2019)、EU EFSA (2019))。
【参考データ等】
(2)ラットを用いた強制経口投与による急性経口毒性試験(OECD TG 401、GLP)において、5,000 mg/kg(区分該当しない範囲)で投与後に低活動性、会陰部の尿による汚れ、流涙がみられたが、14日には全例正常であった。剖検の結果、投与に関連した異常はみられなかった。なお、誤投与により雌2/5例が死亡がみられたとの報告がある(CLH Report (2019))。
(3)ウサギを用いた急性経皮毒性試験(OECD TG 402、GLP)において、5,000 mg/kg(区分該当しない範囲)で剥離と皮膚刺激症状(中程度から重度の紅斑及び浮腫)がみられたが28日以内に消失した。その他、投与に関連した影響はみられなかったとの報告がある(CLH Report (2019))。
(4)ウサギを用いた単回経皮投与試験(OECD TG 402、GLP)において、5,000 mg/kg(区分該当しない範囲)で軽度の紅斑及び浮腫、火傷・亀裂(雄)、落屑・痂皮がみられたとの報告がある(CLH Report (2019))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)(1)〜(5)より、区分1(肝臓、腎臓)とした。なお、腎臓に関して、(1)でみられるα2μグロブリン腎症は一般に雄ラット特有の症状ではあるが、雌ラットにも腎臓影響がみられることから、標的臓器として採用した。
【根拠データ】
(1)ラットを用いた混餌投与によるげっ歯類における90日間反復経口投与毒性試験(OECD TG 408、GLP)において、250 ppm(17 mg/kg/day(雄)、20 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で慢性腎症(雄の所見はα2μグロブリン蓄積による二次的影響)、腎皮質尿細管上皮細胞色素沈着(雌)、肝・腎絶対相対重量増加(雌)が、500 ppm(25 mg/kg/day、区分2の範囲)で尿中AST増加(雄)、腎臓影響(硝子滴形成、腎皮質尿細管上皮細胞再生)(雄)、肝臓肥大(雄)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2010)、CLH Report (2019))。
(2)イヌを用いた強制経口投与による90日間反復経口投与毒性試験(OECD TG 409、GLP)において、5 mg/kg/day(区分1の範囲)で検体と同色の嘔吐物(雌)が、25 mg/kg/day(区分2の範囲)で脾臓影響(ヘモジデリン色素沈着)、検体と同色の嘔吐物(雄)が、125 mg/kg/day(区分該当しない範囲)で肝臓影響(細胞肥大、絶対相対重量増加(雄)、ヘモジデリン色素沈着)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2010)、CLH Report (2019))。
(3)イヌを用いた強制経口による慢性毒性試験(OECD TG 452、GLP)において、25 mg/kg/day(区分2の範囲)で肝臓影響(相対重量増加)、ALT増加(雌)、肝臓影響(類洞細胞の色素沈着)(雌)が、125 mg/kg/day(区分該当しない範囲)でALT 増加(雄)、肝臓影響(類洞細胞の色素沈着)(雄)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2010)、CLH Report (2019))。
(4)ラットを用いた混餌投与による慢性毒性/発がん性併合試験(OECD TG 453、GLP)において、100 ppm(5.4 mg/kg/day(雄)、6.8 mg/kg/day(雌)、区分1の範囲)で腎臓影響(硝子滴形成、腎盂結石)、尿細管上皮細胞巨核化(雄)、移行上皮過形成(雄)、肝臓影響(細胞肥大、細胞内色素沈着)(雌)が、2,500 ppm(136 mg/kg/day(雄)、168 mg/kg/day(雌)、区分該当しない範囲)で血液影響(RBC・Hb・Ht減少、PLT増加、BUN・Cre・TP・Alb・Glob 増加)、肝臓影響(絶対相対重量増加・慢性炎症、肝細胞肥大(雄)、肝細胞内色素沈着(雄)、肝単細胞壊死(雄))、慢性腎症、膀胱上皮過形成、坐骨神経及び大腿筋変性、肺慢性炎症がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2010)、 CLH Report (2019))。
(5)マウスを用いた混餌投与による慢性毒性/発がん性併合試験(OECD TG 451、GLP)において、300 ppm(36.4 mg/kg/day(雄)、41.8 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で尿路系障害、肝臓の結節(雌)が、1,500 ppm(185 mg/kg/day(雄)、224 mg/kg/day(雌)、区分該当しない範囲)で明黄色尿、肝臓影響(絶対相対重量増加、多発性巣状過形成(雌))、ALT・ALP増加(雌)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2010)、CLH Report (2019))。
【参考データ等】
(6)ラット、イヌ、マウスに短期及び長期投与後に、本物質は肝臓に標的臓器毒性を示した。ラットでは短期ばく露で赤血球及び腎臓に、長期ばく露では甲状腺に影響がみられ、イヌでは左記に加え赤血球に影響がみられたとの報告がある(EFSA (2019))。

誤えん有害性*データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)甲殻類(ミシッドシュリンプ)96時間LC50 = 0.043 mg/L(EPA Pesticides RED, 2004、EU CLP CLH, 2019、OPP Pesticide Ecotoxicity Database)であることから、区分1とした。
水生環境有害性 長期(慢性)急速分解性がなく(BIOWIN)、魚類(ニジマス)の49日間NOEC = 0.0019 mg/L(EPA Pesticides RED, 2004、EU CLP CLH, 2019、OPP Pesticide Ecotoxicity Database)から、区分1とした。
残留性・分解性情報なし
生態蓄積性情報なし
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。


14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号3077
品名(国連輸送名)環境有害物質、固体、他に品名が明示されていないもの
国連分類9
副次危険-
容器等級III
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う
航空規制情報航空法の規定に従う
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策該当しない
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*171
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第二種指定化学物質(法第2条第3項、施行令第2条別表第2)【96 N−ブチル−N−エチル−アルファ,アルファ,アルファ−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−パラ−トルイジン(別名ベスロジン又はベンフルラリン)】
毒物及び劇物取締法-
水道法水質基準(平15省令101号) 【12 フッ素及びその化合物】
水質汚濁防止法有害物質(法第2条、施行令第2条)【25 ふつ素及びその化合物】
土壌汚染対策法第2種特定有害物質(法第2条第1項、施行令第1条)【22 ふっ素及びその化合物】
下水道法水質基準物質(法第12条の2第2項、施行令第9条の4) 【26 ふっ素及びその化合物】
船舶安全法有害性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法有害性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・2024 Emengency Response Guidebook
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」