| 1.化学品等及び会社情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学品の名称 | 2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−1,4−ジオキシン(別名 2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン;TCDD) | ||
| 化学品の英語名称 | 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo[b,e][1,4]dioxin | ||
| 製品コード | R06-B-120-JNIOSH | ||
| 供給者の会社名 | ○○○○株式会社 | ||
| 住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
| 電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| ファクシミリ番号 | 03-1234-5678 | ||
| 電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
| 緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| 推奨用途及び使用上の制限 | 非意図的生成物,試薬(NITE-CHRIPより引用) | ||
| 2.危険有害性の要約 | |||
|---|---|---|---|
| GHS分類 | |||
| 分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | 令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、平成18年度(2006年度)、マニュアル(H18.2.10版)(GHS 初版) | ||
| 物理化学的危険性 | - | ||
| 健康に対する有害性 | 急性毒性 (経口) | 区分1 | |
| 急性毒性 (経皮) | 区分1 | ||
| 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2 | ||
| 発がん性 | 区分1A | ||
| 生殖毒性 | 区分1A、授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分 | ||
| 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分1(皮膚、肝臓、腎臓、免疫系、内分泌系、生殖器)、区分3(気道刺激性) | ||
| 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 区分1(神経系、呼吸器、造血系、心血管系、肝臓、腎臓、皮膚、内分泌系、生殖器) | ||
| 分類実施日 (環境有害性) | 平成18年度(2006年度)、マニュアル(H18.2.10版)(GHS 初版) | ||
| 環境に対する有害性 | - | ||
| GHSラベル要素 | |||
|---|---|---|---|
| 絵表示 | ![]() ![]() | ||
| 注意喚起語 | 危険 | ||
| 危険有害性情報 | 飲み込むと生命に危険 皮膚に接触すると生命に危険 強い眼刺激 発がんのおそれ 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ 授乳中の子に害を及ぼすおそれ 皮膚、肝臓、腎臓、免疫系、内分泌系、生殖器の障害 呼吸器への刺激のおそれ 長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、呼吸器、造血系、心血管系、肝臓、腎臓、皮膚、内分泌系、生殖器の障害 | ||
| 注意書き | |||
| 安全対策 | 取扱い後はよく手を洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 眼、皮膚、衣類につけないこと。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 妊娠中及び授乳期中は接触を避けること。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 | ||
| 応急措置 | 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。 口をすすぐこと。 皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。 | ||
| 保管 | 施錠して保管すること。 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 | ||
| 廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | ||
| 他の危険有害性 | 情報なし | ||
| 3.組成及び成分情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学物質・混合物の区別 | 化学物質 | ||
| 化学名又は一般名 | 2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−1,4−ジオキシン | ||
| 慣用名又は別名 | 2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシン 2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン TCDD ダイオキシン | ||
| 英語名 | 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo[b,e][1,4]dioxin | ||
| 濃度又は濃度範囲 | 情報なし | ||
| 分子式 (分子量) | C12H4Cl4O2 (322) | ||
| 化学特性 (示性式又は構造式) | ![]() | ||
| CAS番号 | 1746-01-6 | ||
| 官報公示整理番号 (化審法) | - | ||
| 官報公示整理番号 (安衛法) | - | ||
| GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | - | ||
| 4.応急措置 | |||
|---|---|---|---|
| 吸入した場合 | 新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で安静にさせる。医師に連絡すること。 気分が悪い時や呼吸に関する症状が現れた場合は、医師の診察/手当てを受けること。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 皮膚に付着した場合 | 直ちに医師に連絡すること。 自分自身を保護しながら、被害者を危険源から遠ざける。 直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。 皮膚に付着した部分を流水またはシャワーで洗い流したのち、水と石けん(鹸)で丁寧に洗浄する。 アルコール、ガソリン、その他の溶剤は絶対に使用しない。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 眼に入った場合 | 直ちに医師に連絡すること。 まぶたを大きく広げて流水で少なくとも10分間、患部を洗眼する。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 飲み込んだ場合 | 直ちに医師に連絡すること。 口をすすぎ、液体を吐き出す。 意識がある場合は、コップ1〜2杯の水を飲ませる。 意識がある場合は嘔吐させる。 中毒の症状は、一定期間遅れて現れることがある。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 急性影響: 皮膚疾患(塩素ざ瘡)、一般的な健康状態の重篤な障害。眼、皮膚および気道を刺激する。 心血管系、胃腸管、肝臓、神経系および内分泌系に影響を与えることがある。 これらの影響は、遅れて現われることがある。 慢性影響: 反復または長期の皮膚への接触により、皮膚炎を引き起こすことがある。 塩素座瘡を引き起こすことがある。 骨髄、内分泌系、免疫系、肝臓および神経系に影響を与えることがある。 ヒトで発がん性を示す。ヒトで生殖・発生毒性を引き起こす可能性があることが示されている。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する | ||
| 医師に対する特別な注意事項 | 情報なし | ||
| 5.火災時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 適切な消火剤 | 周辺の火災時には、適切な消火剤を使用する。 以上、ICSC参照。 | ||
| 使ってはならない消火剤 | 火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。 | ||
| 特有の危険有害性 | 火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。 以上、ICSC参照。 | ||
| 特有の消火方法 | 火元への燃焼源を断ち、消火剤を使用して消火する。 延焼の恐れのないよう水スプレーで周囲のタンク、建物等の冷却をする。 消火活動は風上から行う。 火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。 危険でなければ火災区域から容器を移動する。 | ||
| 消火を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。 | ||
| 6.漏出時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置 | 関係者以外の立ち入りを禁止する。 作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。 個人用保護具:自給式呼吸器付化学保護衣 以上、ICSC参照。 | ||
| 環境に対する注意事項 | 周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。 | ||
| 封じ込め及び浄化の方法及び機材 | 少量の物質の収集: 廃棄物を流し台やゴミ箱に入れたり置いたりしないこと。 こぼれた物質を密閉式容器内に収集する。 危険区域から立ち退く。 専門家に相談する。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 二次災害の防止策 | 情報なし | ||
| 7.取扱い及び保管上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 取扱い | |||
| 技術的対策 | 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。 | ||
| 安全取扱い注意事項 | 取扱い後はよく手を洗うこと。 粉じんを発生させないようにする。 | ||
| 接触回避 | 接触すると爆発する危険性: アルカリ/アルカリ土類金属、金属粉末、アミドナトリウム 以上、GESTIS参照。 | ||
| 衛生対策 | 眼、皮膚、衣類への接触を避けること。接触した場合は患部を洗浄する。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。 この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。 使用後は手を洗うこと。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 保管 | |||
| 安全な保管条件 | 高温、多湿を避け室温で保管する。 | ||
| 安全な容器包装材料 | 国連輸送法規で規定されている容器を使用する。 | ||
| 8.ばく露防止及び保護措置 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。 | ||||
| 管理濃度 | - | |||
| 濃度基準値 | ||||
| 八時間濃度基準値 | - | |||
| 短時間濃度基準値 | - | |||
| 許容濃度 | ||||
| 日本産衛学会 (2024年度版) | (吸入性粉じん) 2 mg/m3 (総粉じん) 8 mg/m3 (第3種粉じん) | |||
| ACGIH (2024年版) | PNOS* TLV: 3 mg/m3 (Respirable particles) PNOS* TLV: 10 mg/m3 (Inhalable particles) * Particles (insoluble or poorly soluble) Not Otherwise Specified | |||
| 設備対策 | 粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器または局所換気装置を使用する。 シャワー付きの洗面所と、可能であれば、私服と作業服用の独立した収納を備えた部屋を用意すること。 | |||
| 保護具 | ||||
| 呼吸用保護具 | 適切な制御装置を使用する。 以上、ICSC参照。 | |||
| 手の保護具 | 必要に応じて適切な不浸透性の保護手袋を使用すること。着用する前に締まり具合を確認すること。手袋は取り外す前に十分に清掃し、換気の良い場所に保管すること。 ポリクロロプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、FKM、およびポリ塩化ビニルは、未溶解の固形物から保護するための手袋材料として適している。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 眼の保護具 | 必要に応じて安全眼鏡、保護面、安全ゴーグルなどの眼用保護具を着用する。 以上、ICSC参照。 | |||
| 皮膚及び身体の保護具 | 必要に応じて保護衣、保護エプロン等を着用する。 以上、ICSC参照。 | |||
| 9.物理的及び化学的性質 | |||
|---|---|---|---|
| 物理的状態 | |||
| 物理状態 | 固体 | ||
| 色 | 無色〜白色 | ||
| 臭い | データなし | ||
| 融点/凝固点 | 305 ℃ (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 沸点、初留点及び沸騰範囲 | 500 ℃ (分解) (Patty (6th, 2012)) | ||
| 可燃性 | データなし | ||
| 爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | データなし | ||
| 引火点 | 4 ℃ (Closed cup) (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 自然発火点 | データなし | ||
| 分解温度 | 447 ℃ (GESTIS(2024)) | ||
| pH | データなし | ||
| 動粘性率 | データなし | ||
| 溶解度 | 水:0.0002 mg/L (25℃) (HSDB in PubChem (2024)) メタノール:0.01 g/L (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| n-オクタノール/水分配係数 | log Kow:6.8 (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 蒸気圧 | 0.0000000015 mmHg (25℃) (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 密度及び/又は相対密度 | 1.8 g/cm3 (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 相対ガス密度 | データなし | ||
| 粒子特性 | データなし | ||
| 10.安定性及び反応性 | |||
|---|---|---|---|
| 反応性 | 通常の取扱い条件下では安定である。 | ||
| 化学的安定性 | 通常の取扱い条件下では安定である。 | ||
| 危険有害反応可能性 | 通常の取扱い条件下では危険有害反応を起こさない。 | ||
| 避けるべき条件 | 直射日光を避け、冷暗所に保管する。 | ||
| 混触危険物質 | 接触すると爆発する危険性: アルカリ/アルカリ土類金属、金属粉末、アミドナトリウム 以上、GESTIS参照。 | ||
| 危険有害な分解生成物 | 火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。 750〜800℃で分解する。 紫外線の影響下で、分解する。 塩素を生じる。 以上、ICSC参照。 | ||
| 11.有害性情報 | |||
|---|---|---|---|
| 急性毒性 | |||
| 経口 | 【分類根拠】 (1)〜(5)より区分1とした。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:雄0.022 mg/kg、雌0.045 mg/kg(ATSDR (1998)、EHC 88 (1989)、HSDB (Accessed Oct. 2024)) (2)ラットのLD50:0.164〜0.303 mg/kg [同一著者による4試験](ATSDR (1998)、EHC 88 (1989)) (3)ラットのLD50:雄0.165 mg/kg、雌0.125 mg/kg(ATSDR (1998)、NTP TR209 (1982)) (4)ラットのLD50:0.043 mg/kg(ATSDR (1998)) (5)ラットのLD50:雄0.100、雌:0.060 mg/kg(同上) | ||
| 経皮 | 【分類根拠】 (1)より区分1とした。 【根拠データ】 (1)ウサギのLD50:0.275 mg/kg(ATSDR (1998)、EHC 88 (1989)、GESTIS(Accessed Oct. 2024)) | ||
| 吸入: ガス | 【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 | ||
| 吸入: 蒸気 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | ||
| 吸入: 粉じん及びミスト | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | ||
| 皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。(1)でみられた影響は刺激性による影響かどうか不明であり、旧分類で分類根拠とされた(2)は、GHS分類の判定には不十分な知見である。情報源のデータを精査し、分類結果を変更した(2024年度)。 【参考データ等】 (1)本物質ばく露によるクロルアクネ(塩素ざ瘡)の疫学研究において、5年以上ばく露されたハンブルグの労働者31人中9人には当初、顔面に皮膚炎と炎症が生じ、時に結膜炎を伴い、その後徐々に塩素ざ瘡が発症し、皮膚にまだら状の色素沈着が現れたと報告された(EHC 88 (1989))。 (2)ヘアレスマウスに本物質を0.1μg/匹で経皮適用した結果、適用部位に過角化及び表皮の過形成が生じた。新生児マウスには0.01μg/匹で同様の皮膚変化を生じた(ATSDR (1998))。 | ||
| 眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より、回復性についての情報がないため、細区分せず区分2とした。情報源のデータを精査し、分類結果を変更した(2024年度)。 【根拠データ】 (1)本物質をウサギの眼に適用(2 mg、結膜嚢)した結果、一過性の疼痛とともに結膜の炎症がみられ、遅れて結膜浮腫が認められた。角膜傷害及び虹彩炎は認められなかった(ATSDR (1998))。 (2)事故により本物質にばく露した42人の作業者を対象とした研究において、2例では極めて持続性の高い慢性結膜炎と眼瞼炎が認められた(EHC 88 (1989))。 | ||
| 呼吸器感作性 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | ||
| 皮膚感作性 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | ||
| 生殖細胞変異原性 | 【分類根拠】 (1)〜(3)より区分に該当しない。なお、情報源のデータを精査し、分類結果を変更した(2024年度)。 【根拠データ】 (1)in vivoでは、ラットを用いた優性致死試験で陰性、ラット又はマウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陽性(ラット13週間強制経口投与、マウス腹腔内投与)又は陰性(ラット45週間強制経口投与)、サルの末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験(4年間混餌投与)で陰性、ラットの末梢血リンパ球を用いた染色分体交換試験(単回経口投与)、マウスの骨髄細胞を用いた染色分体交換試験及び小核試験(単回腹腔内投与試験)で陰性の報告がある。一方、ラットの肝細胞又は腹腔内洗浄細胞を用いたDNA鎖切断試験(単回経口投与)で陽性の結果が報告されている(ATSDR (1998)、IARC 69 (1997))。 (2)in vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験で陰性(-/+S9)、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陽性及び弱陽性(-S9)、又は陰性(-/+S9)、ヒトリンパ球を用いた小核試験で陽性(-S9)の報告がある(IARC 69 (1997))。 (3)本物質は直接的な遺伝毒性作用を有さず、催腫瘍活性は体内での長い半減期による持続性のAhR活性化による可能性が考えられている。また、TCDDが酸化ストレスを誘発し、その結果、実験動物や細胞株でDNAの損傷や突然変異を引き起こす可能性も指摘されている(IARC 100F (2012))。 | ||
| 発がん性 | 【分類根拠】 (1)〜(4)より区分1Aとした。 【根拠データ】 (1)ドイツ(2件)、オランダ、アメリカで行われた本物質に高濃度ばく露された4つの産業コホートを対象とした疫学研究において、がんによる総死亡率の増加が認められた。最も被ばく量の多いドイツのコホートでは、ばく露量ー反応関係がみられた。IARC(国際がん研究機関)は1996年までに発表された研究の中で最もばく露量の多いサブコホートのデータを評価し、すべてのがんを合わせたリスク、肺がん、非ホジキンリンパ腫の各リスクに有意な増加がみられることを明らかにした(NTP RoC 15th. (2021))。 (2)本物質の発がん性については、ヒトにおける十分な証拠がある。本物質の発がん性に関するヒトにおける最も強い証拠は、すべてのがんを合わせた場合である。また、本物質へのばく露と、軟部組織肉腫、非ホジキンリンパ腫、肺がんとの間には、正の相関が認められている(IARC 100F (2012))。 (3)マウスを用いた経皮投与(雄:0.05μg/kg/回、雌:0.25μg/kg/回;3回/週、99又は104週間)による発がん性試験で皮膚腫瘍の発生増加が、強制経口投与(雄:0.01〜0.5μg/kg/回、雌:0.04〜2.0μg/kg/回;2回/週、2年間)による発がん性試験で肝細胞がん、甲状腺ろ胞上皮腺腫、皮下組織の線維肉腫、リンパ組織の組織球性リンパ腫の発生増加が認められた(IARC 100F (2012)、ATSDR (1998)、ATSDR Addendum (2012)、EHC 88 (1989))。 (4)ラットを用いた強制経口投与(0.01〜0.5μg/kg/回、2回/週、104週間)による発がん性試験で、肝腫瘍、甲状腺ろ胞上皮腺腫、副腎皮質腺腫、皮下組織線維腫・肉腫などが、雌ラットを用いた強制経口投与(3〜100 ng/kg/日、5日/週、105週間)による発がん性試験では、肝細胞腺腫、胆管がん、肺の嚢胞状角化上皮腫、口腔粘膜(歯肉)の扁平上皮がん、及び子宮の扁平上皮がんが認められた(同上)。 【参考データ等】 (5)国内外の評価機関による発がん性分類では、IARCでグループ1(IARC 100F (2012))、NTPでK(NTP RoC 15th. (2021))、日本産業衛生学会で第1群(産衛学会発がん性物質の提案理由書 (2000))、DFGでカテゴリー4(List of MAK and BAT values (2024))に分類されている。 | ||
| 生殖毒性 | 【分類根拠】 (1)〜(5)より区分1Aとした。(6)の乳汁移行性を考慮し、授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分とした。 【根拠データ】 (1)ラットを用いた混餌投与(0.001〜0.1μg/kg/day、F0:交配前90日間(その他詳細不明))による三世代生殖毒性試験では、F0親動物の高用量(0.1μg/kg/day)群では受胎率が著しく低く、児数が少なく試験の中止を余儀なくされた。それ以外にF0親動物に異常は認められなかった。一方、F1及びF2動物では低用量(0.001μg/kg)群から体重及び摂餌量の低値と受胎率の低値がみられ、中用量(0.01μg/kg)群では同腹児数の減少、胎児及び新生児生存率の減少、生後成長の抑制もみられた。原著者らにより、本物質は0.01及び0.1μg/kg/dayの用量でラットに生殖毒性を生じると結論された(EHC 88 (1989)、ATSDR (1998))。 (2)サルに3週間経口投与(0.1μg/kg)、又は妊娠期間を通して混餌投与(0.0064μg/kg)した試験で流産、繁殖率低下(後者のみ)がみられたとの報告、長期間混餌投与(0.00012及び0.00064μg/kg/day)した試験で子宮内膜症の発生頻度と重篤度の用量相関的な増加がみられたとの報告がある(ATSDR (1989))。 (3)マウス、ラット、又はウサギを用いた妊娠8〜12日のいずれか1日、又は器官形成期に経口投与した発生毒性試験の多くで、胎児に口蓋裂、骨格異常がみられたとの報告、水腎症、胸腺萎縮、外性器奇形(尿道下裂)の報告、新生児死亡率の増加の報告など多数ある。本物質の投与量は広い範囲に及ぶが多くは1〜10μg/kgで明確な母動物毒性を生じない用量での影響であった(ATSDR (1989)、ATSDR Addendum (2012))。 (4)セベソの事故により本物質のばく露を受けた女性の集団に月経周期異常、早期閉経、子宮内膜症、子宮筋腫のリスク増加、不妊症等が認められたとの報告、事故当時若齢であった男性に精子濃度、精子数の減少がみられたとの報告がある。(ATSDR Addendum (2012))。 (5)セベソ事故と関連のない報告として、ベルギーの女性の集団において、脂質1 g当たり10 pgTEQの増加で深部子宮内膜症のリスクが増加する(OR= 3.3)との症例対照研究報告(その他の症例対照研究報告は陰性)、除草剤製造業労働者(n= 35)では性的不能を訴えた割合が対照群を有意に(28.6% vs 5.5%)高かった(同上)。 (6)ダイオキシンおよびダイオキシン様化学物質は親油性で、代謝分解に耐性があり、生体蓄積する傾向がある。母乳には脂肪分が多く含まれているため、ダイオキシンは母乳にかなり多く含まれている。21 人の日本人女性を対象とした研究では、母体血液および母乳 (r=0.695、p=0.0007)、母体脂肪組織 (r=0.913、p<0.0001)、および臍帯血 (r=0.759、p<0.0001) 中の 塩素化ジベンゾ-p-ダイオキシン(CDD) 濃度の間に統計的に有意な相関関係が報告されている (ATSDR Addendum (2012))。 | ||
| 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 【分類根拠】 (1)、(2)より区分1(皮膚、肝臓、腎臓、免疫系、内分泌系、生殖器)、区分3(気道刺激性)とした。なお、新たな知見に基づき分類結果を変更した(2024年度)。 【根拠データ】 (1)マウス及び/又はラットを用いた単回経口投与後に免疫系(胸腺の重量減少・皮質リンパ球著減・胸腺細胞数減少、脾臓の重量減少、リンパ球数減少)、肝臓(肝細胞壊死等)、内分泌系(血清総T4減少、ACTH/コルチコステロン比の減少)、雄性生殖器(1日精子産生量及び精巣上体尾部での精子貯留の減少)への影響が、ラット又はサルを用いた単回経口投与後に腎臓(曲尿細管の拡張(ラット)、腎盂上皮の過形成(サル))、皮膚(眼瞼炎、アクネ、顔面の脱毛(サル))、雌性生殖器(卵巣重量、排卵率の減少、子宮頸部の扁平上皮化生の頻度増加、無排卵、月経周期の喪失(ラット))への影響がみられた。これらはいずれも区分1の用量範囲(≦ 300μg/kg)でみられた影響である(ATSDR Addendum (2012)、ATSDR (1998))。 (2)ヒトでは高濃度の本物質へのばく露により気道刺激性が認められたとの症例報告がある。また、セベソの事故で本物質を大量に浴びた17人中、小児ではばく露3日後から2週間以内にクロルアクネが発症し、8〜26ヵ月間持続した。また、事故後20〜40日後にばく露した多くのヒトに皮膚刺激性病変(紅斑と浮腫、小水疱及び壊死性病変、丘疹性結節性病変など)が認められた(ATSDR (1998))。 | |||
|---|---|---|---|---|
| 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 【分類根拠】 (1)、(2)より、実験動物とヒトに共通の標的臓器として、呼吸器、心血管系、肝臓、皮膚、内分泌系及び生殖器を採用し、さらに(1)より腎臓、(2)より神経系を追加した。よって、区分1(神経系、呼吸器、造血系、心血管系、肝臓、腎臓、皮膚、内分泌系、生殖器)とした。新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2024年度)。 【根拠データ】 (1)ラット及び/又はマウスを用いた反復経口投与試験において、呼吸器(肺胞上皮化生、組織球性浸潤)、心血管系(心筋症、動脈炎、血圧上昇)、肝臓(炎症、脂肪性変化、壊死、肝細胞・胆管過形成等)、腎臓(尿細管細胞傷害、腎症(雌))、内分泌系(甲状腺ホルモンの変動、甲状腺ろ胞上皮の肥大、副腎皮質の過形成、萎縮)、雄性生殖器(精子数及び運動能の減少、形態異常精子比率の増加、精巣及び副生殖器官重量減少等)、雌性生殖器(卵巣重量減少、血清エストラジオール低下)などが認められた。また、サルを用いた反復経口投与試験で皮膚への影響(脱毛、眼周囲の腫れ、皮膚の過角化、皮脂腺の扁平上皮化生)、造血系影響(貧血、汎血球減少症、骨髄の低形成、骨髄萎縮・変性)、ラット又はウサギを用いた反復経皮投与試験でも肝臓影響(脂肪変性、肝細胞壊死、胆管増生等)がみられている。これらの影響は区分1の用量範囲(≦ 10μg/kg/day)での影響である(ATSDR Addendum (2012)、ATSDR (1998))。 (2)ヒトでは、セベソの事故、除草剤製造工場での職業ばく露、戦場で枯葉剤にばく露されたベトナム帰還兵など、本物質に一定期間以上ばく露した集団(血中)を対象とした多くの疫学調査において、主に神経系(多発性神経炎、脳症、脳波・筋電図異常、疲労・頭痛・認知能力低下、睡眠障害)、呼吸器(慢性閉塞性肺疾患による死亡率増加)、心血管系(動脈硬化、血管内皮機能障害、虚血性疾患による死亡リスク増加)、肝臓(慢性肝疾患、機能障害(肝由来酵素活性上昇))、皮膚(クロルアクネ、爪の異常、角質増殖、皮膚アレルギー)、内分泌系(糖尿病、甲状腺関連ホルモン変動)、男性生殖器(インポテンツの主訴、精子濃度及び精子運動能の低下)、女性生殖器(月経周期の延長傾向、早期閉経リスク増加、子宮内膜症)への影響が報告されている(ATSDR Addendum (2012))。 | |||
| 誤えん有害性* | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| * JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。 | ||||
| 12.環境影響情報 | |||
|---|---|---|---|
| 生態毒性 | |||
| 水生環境有害性 短期(急性) | データ不足のため分類できない。 | ||
| 水生環境有害性 長期(慢性) | データ不足のため分類できない。 | ||
| 残留性・分解性 | - | ||
| 生態蓄積性 | - | ||
| 土壌中の移動性 | - | ||
| オゾン層への有害性 | - | ||
| 13.廃棄上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 特別管理産業廃棄物に該当する。 特別管理産業廃棄物処理基準に従って処理を行うか、特別管理産業廃棄物の許可業者に運搬又は処分を委託する。 容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 | ||
| 14.輸送上の注意 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。 | ||||
| 国際規制 | ||||
| 国連番号 | 2811 | |||
| 品名(国連輸送名) | 有毒固体、有機物、他に品名が明示されていないもの | |||
| 国連分類 | 6.1 | |||
| 副次危険 | - | |||
| 容器等級 | I | |||
| 海洋汚染物質 | 該当しない | |||
| MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質 | 該当しない | |||
| 国内規制 | ||||
| 海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う | |||
| 航空規制情報 | 航空法の規定に従う | |||
| 陸上規制情報 | 該当しない | |||
| 特別な安全上の対策 | 該当しない | |||
| その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
| 緊急時応急措置指針番号* | 154 | |||
| * 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。 | ||||
| 15.適用法令 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
| 労働安全衛生法 | 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【333の2 ダイオキシン類】 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降) 【1151 ダイオキシン類】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【333の2 ダイオキシン類】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降) 【1151 ダイオキシン類】 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) がん原性物質(作業記録等の30年保存対象物質)(労働安全衛生規則第577条の2) 【ダイオキシン類】 | |||
| 化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) | 特定第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1、施行令第4条) 【278 ダイオキシン類】 | |||
| 毒物及び劇物取締法 | - | |||
| 水道法 | 水質基準(平15省令101号) 【38 塩化物イオン】 | |||
| 大気汚染防止法 | 有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申) 【113 ダイオキシン類】 | |||
| 廃棄物処理法 | 特別管理産業廃棄物(法第2条第5項、施行令第2条の4) | |||
| 船舶安全法 | 毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1) | |||
| 航空法 | 毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1) | |||
| 港則法 | その他の危険物・毒物類(毒物)(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表) | |||
| ダイオキシン類対策特別措置法 | ダイオキシン類(法第2条)【2 ポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン】 | |||
| 16.その他の情報 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 参考文献 | ||||
| 9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。 ・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP) ・International Chemical Safety Cards (ICSC) ・Hazardous Substances Data Bank (HSDB) ・GESTIS Substance database (GESTIS) ・2024 Emengency Response Guidebook ・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」 ・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」 | ||||