職場のあんぜんサイト

安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
trans-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(別名ヘキサヒドロ無水フタル酸のtrans-異性体)
作成日 2023年3月31日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称trans-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物
(別名ヘキサヒドロ無水フタル酸のtrans-異性体)
化学品の英語名称trans-cyclohexane-1,2-dicarboxylic
anhydride
製品コードR04-A-030-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R5.3.31、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用
物理化学的危険性-
健康に対する有害性眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分1
呼吸器感作性区分1
皮膚感作性区分1
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分3(気道刺激性)
分類実施日
(環境有害性)
-
環境に対する有害性-
GHSラベル要素
絵表示健康有害性腐食性感嘆符
注意喚起語危険
危険有害性情報重篤な眼の損傷
吸入するとアレルギー、ぜん(喘)息又は呼吸困難を起こすおそれ
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
呼吸器への刺激のおそれ
注意書き
 安全対策保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
 応急措置眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
直ちに医師に連絡すること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名trans-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物
慣用名又は別名ヘキサヒドロ無水フタル酸のtrans-異性体
英語名trans-cyclohexane-1,2-dicarboxylic
anhydride
rel-(3aR,7aR)-Hexahydroisobenzofuran-1,3-dione
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C8H10O3 (154.16)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号14166-21-3
官報公示整理番号(化審法)3-2416
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させる。呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。できるだけ早く、グルココルチコイド吸入用スプレーで繰り返し深呼吸させる。さらに水で口をすすぐ。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
皮膚に付着した場合汚染された衣服を脱がせる。皮膚に付着した部分を流水で10〜20分洗浄する。医師の診察を受けること。
以上、GESTIS参照。
眼に入った場合できるだけ早く、流水で10分間洗浄する。コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外し、洗浄を続けること。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS、GHS分類結果照。
飲み込んだ場合口をすすぐ。コップ一杯の水(約200mL) を飲ませる。無理に吐かせない。医師を事故現場に呼び、診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:鼻咽頭の不快感、くしゃみ、咳。その後アレルギー化すると急性気管支喘息になる可能性。
皮膚:湿った皮膚(湿った衣服)に触れると、表面的な腐食や傷の治りが悪くなる。
眼:流涙、熱傷、発赤、腐食作用→角膜炎。
経口摂取:粘膜の刺激・腐食、吐き気、嘔吐、下痢が考えられるが、ヒトでの全身への影響は不明。
以上、GESTIS参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、耐アルコール泡消火薬剤、二酸化炭素
以上、GESTIS参照。
使ってはならない消火剤棒状注水
以上、GESTIS参照。
火災時の特有の危険有害性火災の場合、有害物質(一酸化炭素、二酸化炭素)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。
特有の消火方法可能であれば、容器を危険区域外に持ち出す。着火源となるものを遮断する。
以上、GESTIS参照。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置周囲に注意喚起し、避難させる。漏出区域に入るときは保護具を着用すること。
以上、GESTIS参照。
環境に対する注意事項水域に対する危険性は低い。非常に多量に水、排水、下水、または地中に入った場合は、自治体に連絡する。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材粉じんが発生しないように回収する。その後、換気し漏出個所を洗浄する。
以上、GESTIS参照。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項容器を開けたままにしない。こぼれないようにする。粉じんの発生を避ける。汚染された作業衣は作業場から出さないこと。使用時は十分な換気をすること。
以上、GESTIS、GHS分類結果参照。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策皮膚や眼への接触を避ける。接触した場合は洗浄する。粉じんの吸入を避ける。汚染された衣服は慎重に交換、洗浄しなければならない。休憩前や作業終了時には石鹸と水で皮膚を洗い、洗浄後は脂肪分の多いスキンケア製品を塗布する。使用するときには飲食、喫煙をしないこと。
以上、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件施錠して保管する。容器を密閉して涼しくて乾燥した換気の良い場所に保管すること。湿気を避ける。
以上、GESTIS、GHS分類結果参照。
安全な容器包装材料破損や漏れの無い密閉可能な容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度等
日本産衛学会(2022年版)未設定
ACGIH(2022年版)TLV-STEL: C 0.005 mg/m3(IFV (RSEN))
設備対策作業場所には適切な局所排気装置等を設置する。換気が不十分な場合は呼吸用保護具を着用する。排出された空気は作業場所に戻さない。取り扱い場所の近くに洗眼及び身体洗浄のための設備を設けること。
以上、GESTIS、GHS分類結果参照。
保護具
呼吸用保護具緊急時(例:意図しない物質の放出)には、呼吸保護具を着用する。
作業者が粉じんにばく露される場合は呼吸保護具(防じんマスク等)の着用を検討する。
防じんマスクの選択については、以下の点に留意する。
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。また、有害なガスが存在する場所においては防じんマスクを使用せず、その他の呼吸用保護具の利用を検討すること。
-防じんマスクは、日本工業規格(JIS T8151)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
以上、GESTIS参照。
手の保護具保護手袋を着用する。
以上、GESTIS参照。
眼の保護具化学用安全ゴーグルを着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具必要に応じて適切な保護衣または化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体(GHS判定)
データなし
臭いデータなし
融点/凝固点145〜147 ℃(HODOC(1989))
140〜141 ℃(Chapman(1995))
145〜147 (GESTIS(2022))
沸点、初留点及び沸騰範囲データなし
可燃性可燃性は低い(GESTIS(2023))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点データなし
自然発火点データなし
分解温度水の中で分解する。(GESTIS(2022))
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度データなし
n-オクタノール/水分配係数データなし
蒸気圧データなし
密度及び/又は相対密度データなし
相対ガス密度データなし
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性情報なし
避けるべき条件情報なし
混触危険物質酸化剤。(GESTIS)
危険有害な分解生成物一酸化炭素、二酸化炭素。

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
本物質(ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)のtrans-異性体)自体のデータはない。(1)〜(3)より、HHPAのcis-異性体とtrans-異性体の混合物(CAS登録番号:85-42-7)のデータに基づき区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50(HHPA異性体混合物):2,700 mg/kg(AICIS IMAP (2016))
(2)ラットのLD50(HHPA異性体混合物):2,700〜2,800 mg/kg(ACGIH (2015))
(3)ラットのLD50(HHPA異性体混合物):4,040 mg/kg(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))
経皮【分類根拠】
本物質(ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)のtrans-異性体)自体のデータはない。(1)より、HHPAのcis-異性体とtrans-異性体の混合物(CAS登録番号:85-42-7)のデータに基づき区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50(HHPA異性体混合物):> 2,000 mg/kg(ACGIH (2015)、AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))
吸入: ガス【分類根拠】
異性体混合物がGHSの定義における固体であることから、本物質も固体であると考えられ、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
本物質(ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)のtrans-異性体)自体のデータはない。(1)より、HHPAのcis-異性体とtrans-異性体の混合物(CAS登録番号:85-42-7)のデータでは区分を特定できず分類できないとした。

【参考データ等】
(1)ラットのLC50(HHPA異性体混合物)(ダスト、4時間):> 1.1 mg/L(ACGIH (2015)、AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)、(2)より、本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の知見を用い、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)について、ウサギ(n= 6)を用いた皮膚刺激性試験(閉塞、24時間適用、6日間観察)において、24/72hの全例の平均スコアは紅斑0.0、浮腫0.33であったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))。
(2)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の本項は、区分に該当しないと判定している(2016年度GHS分類結果)。

【参考データ等】
(3)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の6.25〜50%溶液について、ウサギを用いた皮膚刺激性試験(24時間適用)において、軽微な刺激性がみられたとの報告がある(ACGIH (2015)、AICIS IMAP (2016))。
(4)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の50%溶液について、ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(24時間適用)において、適用終了直後に3/6例で浮腫がみられたが、72時間後には刺激症状は全くみられなかったとの報告がある(AICIS IMAP (2016))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)、(2)より、本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の知見を用い、区分1とした。

【根拠データ】
(1)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)について、ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(21日観察)において、3例の非洗眼群で21日後まで影響が持続したとの報告がある(AICIS IMAP (2016)、ACGIH (2015)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))。
(2)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の本項は、区分1と判定している(2016年度GHS分類結果)。

【参考データ等】
(3)本物質及び本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)はともにEUでEye Dam. 1に分類されている(CLP分類結果 (Accessed Nov. 2022))。
(4)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)について、ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(14日観察)において、重度の眼刺激性影響がみられた(角膜混濁スコア:1/1/1.3、虹彩炎スコア:1/1/1、結膜発赤スコア:3/3/3、結膜浮腫スコア:2/3/2.3)との報告がある(AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Accessed 2022))。
呼吸器感作性【分類根拠】
(1)、(2)より、本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の知見を用い、区分1とした。

【根拠データ】
(1)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)が鼻炎、結膜炎、喘鳴、咳などの初期症状に続き、胸部締めつけ感、息切れ、夜間の喘息症状を伴う職業喘息を生じ、発症は数年遅れて生じる可能性があるという科学的な証拠がある。HHPAへのばく露はばく露が長期化した後には持続性の呼吸器過敏症を生じるおそれがある。HHPAへの長期ばく露後に職業性喘息を含む呼吸器疾患の発生がいくつかの疫学研究で報告されており、HHPAが重篤かつ持続性の肺機能障害を生じる可能性が高いことが確認されている(EU REACH SVHC (2012)、ACGIH (2015))。
(2)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の本項は、区分1と判定している(2016年度GHS分類結果)。

【参考データ等】
(3)本物質及び本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)について、ACGIHでは呼吸器感作性物質としてRSENに指定している(ACGIH (2015))。
(4)本物質及び本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)について、EUではResp. Sens. 1に分類されている(CLP分類結果 (Accessed Nov. 2022))。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)、(2)より、本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の知見を用い、区分1とした。なお、(1)は区分1Aを示唆する知見であるが、本物質を含む異性体混合物の知見であることから細区分せず、区分1とした。

【根拠データ】
(1)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)について、モルモット(n=20)を用いたMaximisation試験(皮内投与:0.5%)において、惹起24、48時間後の陽性率はそれぞれ19/20例(95%)、16/20例(80%)であった(区分1Aに相当する結果)との報告がある(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))。
(2)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)の本項は、区分1と判定している(2016年度GHS分類結果)。

【参考データ等】
(3)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)について、53名に5%溶液を経皮適用したところ、4名で弱い感作性反応、1名で顕著な反応がみられたとの報告がある。(AICIS IMAP (2015))。
(4)本物質及び本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号:85-42-7)について、EUではSkin Sens. 1に分類されている(CLP分類結果 (Accessed Nov. 2022))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)本物質を含む異性体混合物であるHHPA(CAS登録番号: 85-42-7)について、in vivoデータはないが、HHPAは急速に加水分解され、その加水分解物(HHP酸:CAS登録番号:1687-30-5)は腎臓から半減期2時間で排泄される。そのため、細胞内で遺伝物質と相互作用する可能性は低いと考えられる(AICIS IMAP (2016)、ACGIH (2015)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))。
(2)HHPAについて、in vitroでは、ネズミチフス菌及び大腸菌を用いた復帰突然変異原性試験(OECD TG 471、GLP)、マウスリンパ腫(L5178Y)細胞を用いた遺伝子突然変異試験(OECD TG 476、GLP)及びヒトリンパ球を用いた染色体異常試験(OECD TG 473、GLP)で、代謝活性化の有無に関わらず結果はいずれも陰性であった(AICIS IMAP (2016)、ACGIH (2015)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))。
発がん性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
生殖毒性【分類根拠】
(1)より、本物質を含む異性体混合物であるHHPAでは生殖及び発生に影響はみられていないものの、スクリーニング試験であること、発生毒性試験のデータがないことからデータ不足のため分類できない。

【根拠データ】
(1)HHPA(異性体混合物)について、ラットを用いた強制経口投与による生殖発生毒性スクリーニング試験(OECD TG421、GLP)において、限度量の1,000 mg/kg/dayで親動物には明確な一般毒性影響(体重及び摂餌量の低下、脾臓・卵巣重量増加等)がみられたが、親動物の生殖影響並びに出生児には生後7日まで異常はみられなかったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed 2022))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)より、区分3(気道刺激性)とした。なお、新たな知見に基づき分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1)HHPA(異性体混合物)はヒトにおいて、一過性の影響(皮膚、眼、呼吸器への刺激性)がみられ、貧血、頭痛、発熱、めまいなどの一般的な徴候もみられるとの報告がある。(HSDB in PubChem (Accessed Nov. 2022))

【参考データ等】
(2)HHPA(異性体混合物)を被験物質とした、ラットを用いた単回経口投与試験において、2,520 mg/kgで死亡例はなく、症状として活動性低下、立毛、運動失調がみられた。LD50が2,700 mg/kgの他試験でも活動性低下、尿失禁がみられただけであったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))。
(3)HHPA(異性体混合物)を被験物質とした、ウサギを用いた単回経皮投与試験において、2,000 mg/kgで適用部位の刺激がみられた以外に症状はみられなかったとの報告がある(AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))。
(4)HHPA(異性体混合物)を被験物質とした、ラットを用いた単回吸入ばく露試験(ダスト、4時間)において、達成可能な最高濃度の1.1 mg/Lでばく露中にみられた症状は活動性低下であった(AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)より、HHPA(異性体混合物)のデータでは、経口経路では区分2上限近傍で胃粘膜刺激(局所刺激)のみで、全身毒性は区分に該当しない範囲でみられた。よって異性体混合物では区分2までの範囲では全身毒性を生じないと考え、経口経路では区分に該当しないと判断した。ただし、他経路では分類に十分な情報がなく、データ不足のため分類できない。

【根拠データ】
(1)HHPA(異性体混合物)を被験物質とした、ラットを用いた強制経口投与による28日間反復経口投与試験において、300 mg/kg/day(90日換算:93.3 mg/kg/day、区分2の範囲)以上で胃の刺激性変化(胃底腺部の過形成、腺胃部粘膜下の炎症、非腺胃部の過角化・上皮過形成・血管増生・粘膜及び粘膜下の炎症・潰瘍)、1,000 mg/kg/day(311 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で臨床症状(死亡、顎をこする動作、流涎、鼻甲介上皮の炎症細胞を伴う呼吸障害)、血液系(雄:白血球数増加、好中球・好酸球・単球・巨細胞比率の増加)、腎臓(雌雄:尿量・ナトリウム増加、腎皮質尿細管の塩基性化/皮質尿細管拡張、雄:尿素・クレアチニン増加など)等への影響がみられたとの報告がある(AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2022))。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)-
水生環境有害性 長期(慢性)-
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法分解度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号-
品名(国連輸送名)-
国連分類-
副次危険-
容器等級-
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報該当しない
航空規制情報該当しない
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策該当しない
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*該当しない
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法該当しない
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)該当しない
毒物及び劇物取締法該当しない

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」