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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
ビス(N,N-ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛
作成日 2008年10月16日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称ビス(N,N-ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛 (別名: ジラム) (Ziram)
製品コードR02-B-042
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限有機ゴム薬品 (加硫促進剤)、農薬 (殺菌剤) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分3
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分1
皮膚感作性区分1
発がん性区分2
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分2 (神経系)
区分3 (麻酔作用、気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系、呼吸器、血液系、肝臓、筋肉、甲状腺、副腎)
分類実施日
(環境有害性)
令和元年度(2019年度)、政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ腐食性健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有毒
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
重篤な眼の損傷
吸入すると生命に危険
呼吸器への刺激のおそれ
眠気又はめまいのおそれ
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
神経系の障害のおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、呼吸器、血液系、肝臓、筋肉、甲状腺、副腎の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
呼吸用保護具を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。気分が悪い時は医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名ビス(N,N-ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛
別名ジラム
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C6H12N2S4Zn (305.83)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号137-30-4
官報公示整理番号
(化審法)
9-607
官報公示整理番号
(安衛法)
2-(5)-71
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪い時は医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咳、咽頭痛、腹痛、吐き気、嘔吐。
皮膚: 発赤、痛み。
眼: 充血、痛み。
経口摂取: 腹痛、吐き気、嘔吐。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、泡消火薬剤、粉末消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性可燃性。 火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
空気中で粒子が細かく拡散して、爆発性の混合気体を生じる。
特有の消火方法情報なし
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に防じんマスクを使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材この物質を環境中に放出してはならない。
こぼれた物質を、ふた付きの容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉塵を避けるために湿らせてから掃き入れる。
残留分を、注意深く集める。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
粉じんの堆積を防ぐ。
製剤に溶剤が使用されている場合は、その溶剤のICSCも参照のこと。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
酸および食品や飼料から離しておく。
安全な容器包装材料国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)未設定
ACGIH (2020年版)未設定
設備対策密閉系、粉塵防爆型電気設備および照明を用いる。
局所排気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に防じんマスクを使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。(ICSCには、漏洩物処理時に呼吸用保護具と併用して、保護眼鏡を使用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
白色
臭い純品は無臭
融点/凝固点246℃ (HSDB (Access on May 2020))
沸点、初留点及び沸騰範囲データなし
可燃性可燃性 (ICSC (2005))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界該当しない
引火点該当しない
自然発火点該当しない
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率該当しない
溶解度水: 65 mg/L (25℃) (HSDB (Access on May 2020))
二硫化炭素、クロロホルムに可溶 (HSDB (Access on May 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = 1.23 (20℃) (HSDB (Access on May 2020))
蒸気圧7.5E-009 mmHg (0℃) (HSDB (Access on May 2020))
密度及び/又は相対密度1.66 (25℃/4℃) (HSDB (Access on May 2020))
相対ガス密度該当しない
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性加熱や燃焼により、分解し、窒素酸化物、イオウ酸化物などの有毒で刺激性のフュームを生じる。
酸と接触すると、分解する。
避けるべき条件加熱、混触危険物質との接触
混触危険物質
危険有害な分解生成物窒素酸化物、イオウ酸化物などの有毒で刺激性のフューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(7) より、区分3とした。
なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 200〜400 mg/kg (JMPR (1996))
(2) ラットのLD50: 267 mg/kg (Canada Pesticides (2016)、MOE初期評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011)、GESTIS (Access on May 2020))
(3) ラットのLD50: 270 mg/kg (JMPR (1996)、MAK (DFG) (2016)、GESTIS (Access on May 2020))
(4) ラットのLD50: 320 mg/kg (Canada Pesticides (2016)、EPA Pesticides RED (2003)、MAK (DFG) (2016)、HSDB (Access on May 2020))
(5) ラットのLD50: 雄: 380 mg/kg (MAK (DFG) (2016)、GESTIS (Access on May 2020))
(6) ラットのLD50: 雄: 1,208 mg/kg、雌: 873 mg/kg (農薬工業会「日本農薬学会誌」第17巻 第2号 (1992))
(7) ラットのLD50: 1,400 mg/kg (MAK (DFG) (2016))
経皮【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2014))
(2) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (農薬工業会「日本農薬学会誌」第17巻 第2号 (1992))
(3) ラットのLD50: > 6,000 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))
(4) ウサギのLD50: > 2,000 mg/kg (MAK (DFG) (2016)、GESTIS (Access on May 2020))
(5) ウサギのLD50: > 5,010 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1)〜(7) より、区分2とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (1.2E-007 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
飽和蒸気圧濃度は0℃のデータを用いて算出した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 雌: 0.06 mg/L (MAK (DFG) (2016))
(2) ラットのLC50 (4時間): 0.08 mg/L (MAK (DFG) (2016))
(3) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): 0.13 mg/L (MAK (DFG) (2016))
(4) ラットのLC50 (4時間): 雄: 0.18 mg/L (MAK (DFG) (2016))
(5) ラットのLC50 (4時間): 0.06〜0.18 mg/L (GESTIS (Access on May 2020))
(6) ラットのLC50 (4時間): 0.081 mg/L (HSDB (Access on May 2020))
(7) ラットのLC50 (4時間): 雄: 0.12 mg/L、雌: 0.16 mg/L (農薬工業会「日本農薬学会誌」第17巻 第2号 (1992))
(8) 本物質の蒸気圧: 7.5E-009 mmHg (0℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 1.2E-007 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分に該当しないとした。旧分類はラットの適用時間不明のデータを基に決定されており、新たなデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ウサギを用いた皮膚刺激性試験で、刺激性を示さない (JMPR (1996)、Canada Pesticides (2016)、EPA Pesticides RED (2003)、GESTIS (Access on May 2020))。
(2) 本物質は皮膚刺激性を示さない (MAK (DFG) (2016))。
(3) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で24/48/72hの平均スコアは全て0であった (REACH登録情報 (Access on July 2020))。

【参考データ等】
(4) 眼を重度に刺激し、皮膚及び気道を刺激する。眼に入ったり、皮膚に付くと発赤、痛みを生じる (MOE初期評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分1とした。新たなデータが得られたことにより、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ウサギを用いた眼刺激性試験で、重度の刺激性を示す (JMPR (1996)、Canada Pesticides (2016)、EPA Pesticides RED (2003)、GESTIS (Access on May 2020))。
(2) 本物質は皮膚刺激性を示さないが、眼に対しては腐食性を示す (MAK (DFG) (2016))。
(3) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で適用24時間後のスコアは角膜混濁 3、虹彩 2、結膜発赤 3、結膜浮腫 4であり、瞬膜の壊死や破壊がみられたことが記載されており、動物は適用24時間後に安楽死させた (REACH登録情報 (Access on July 2020))。
(4) 眼を重度に刺激し、皮膚及び気道を刺激する。眼に入ったり、皮膚に付くと発赤、痛みを生じる (MOE初期評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011))。
(5) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験で角膜、虹彩、結膜に刺激性反応がみられ、角膜及び結膜には高度な壊死性変化が認められた (農薬工業会「日本農薬学会誌」第17巻 第2号 (1992))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分1とした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) モルモットを用いた皮膚感作性性試験で、中等度の感作性を示す (JMPR (1996)、Canada Pesticides (2016)、EPA Pesticides RED (2003)、GESTIS (Access on May 2020))。
(2) OECD TG 406及びEPA OPP 81-6に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (Split adjuvant法) で陽性と報告されている (REACH登録情報 (Access on July 2020))。
(3) 反復または長期の接触により、皮膚感作を引き起こすことがある (MOE初期評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011))。

【参考データ等】
(4) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 5%) で陰性と報告されている (農薬工業会「日本農薬学会誌」第17巻 第2号 (1992))。
(5) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317)に分類されている(EU CLP分類 (Access on July 2020))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(4) より、専門家判断に基づき区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスの骨髄を用いた染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験では陰性の報告がある (EHC 78 (1988)、IARC 53 (1991)、CEBS (Access on May 2020)、MAK (DFG) (2016))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性及び陰性の報告、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験、ほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験において陽性の報告がある。マウス肺細胞を用いた遺伝子突然変異試験、ほ乳類培養細胞を用いた姉妹染色分体交換試験は陰性の報告がある (同上)。MAK (DFG) ではin vitroの染色体損傷試験における陽性は細胞毒性に関連したものとしている (MAK (DFG) (2016))。
(3) 本物質にばく露された労働者の末梢血において、染色体異常の増加が報告されている (IARC 53 (1991))が、MAK (DFG) では遺伝毒性の証拠とはみなせないとしている (MAK (DFG) (2016))。
(4) MAK (DFG) は本物質は非遺伝毒性と見なされるとしている (MAK (DFG) (2016))。
発がん性【分類根拠】
利用可能なヒトを対象とした報告はない。(1) の既存分類結果において、IARCではグループ3に分類しているが、(2) の実験動物の結果及びEPAの分類結果に基づき、区分2とした。情報の再検討により分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ3 (IARC 53 (1991))、EPAでS (Suggestive Evidence of Carcinogenicity, but not Sufficient to Assess Human Carcinogenic Potential) (EPA Cancer Annual Report 2019 (Access on July 2020):2003年分類) に分類されている。
(2) 雌雄のラット及びマウスに本物質 (純度89%、チラム (thiram) 6.5%) を2年間混餌投与した発がん性試験において、ラットの雄で甲状腺のC細胞がんの発生率の有意な増加が、マウスの雌で肺胞/細気管支腺腫及び肺胞/細気管支腺腫とがんの合計の発生率の有意な増加が認められた。ラットの雌及びマウスの雄では腫瘍の発生は認められなかった (NTP TR 238 (1983)、IARC 53 (1991)、EPA Pesticides RED (2003))。
生殖毒性【分類根拠】
(1) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 雌ウサギの妊娠7〜19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加の抑制) がみられる用量で、同腹児数減少、胎児体重及び頭臀長の低下がみられている (MOE初期評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011)、JMPR (1996)、MAK (DFG) (2016))。

【参考データ等】
(2) ラットを用いた混餌投与による2世代生殖毒性試験において、親動物に摂餌量、飲水量の減少、体重増加抑制がみられ、児動物の育成期にも同様の変化がみられたが、繁殖に対する影響及び催奇形性はみられていない (農薬工業会「日本農薬学会誌」第17巻 第2号 (1992))。
(3) ラットを用いた混餌投与による2世代生殖毒性試験において、親動物に体重増加抑制がみられ、児動物にも体重増加抑制がみられるが生殖影響はみられていない (MOE初期評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011)、JMPR (1996)、MAK (DFG) (2016))。
(4) 雌ラットの妊娠6〜15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (流涎、体重増加の抑制) がみられる用量で、胎児に体重の低値がみられたが、催奇形性はみられていない (MOE初期評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011)、JMPR (1996)、MAK (DFG) (2016))。
(5) 雌ウサギの妊娠6〜18日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (摂餌量減少、死亡 (1/15例)、流産 (1例) がみられる用量において、胎児に骨化遅延、骨格変異の増加がみられたが、催奇形性はみられていない (農薬工業会「日本農薬学会誌」第17巻 第2号 (1992))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分2 (神経系)、区分3 (麻酔作用、気道刺激性) とした。なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた本物質 (純度: 98.5%) の単回吸入ばく露試験では、喘ぎ、呼吸数の減少、嗜眠、立毛、運動失調及び眼瞼下垂がみられ、死亡例の剖検では肺の赤色化及び膨化が認められた。4時間LC50 (0.13 mg/L) より、区分2範囲の影響と考えられる (MAK (DFG) (2016))。
(2) ラットの単回経口投与試験では、300 mg/kg以上 (区分2範囲) でチアノーゼ、低体温、眼球陥没、不安定歩行、低活動性、眼瞼下垂、呼吸異常、軟便、FOBの変化 (姿勢の変化、閉眼、流涙、流涎、呼吸数の変化)、自発運動減少、尾刺激と嗅覚刺激に対する感受性低下、驚愕反応なし、雌で前肢と後肢の伸展 (反射)、死亡 (雌)、600 mg/kg (区分2範囲) では筋緊張低下、削痩 (雌)、死亡 (雌雄) がみられた (MAK (DFG) (2016))。
(3) 眼を重度に刺激し、皮膚及び気道を刺激する。眼に入ったり、皮膚に付くと発赤、痛み、吸入すると咳、咽頭痛、腹痛、吐き気、嘔吐、経口摂取すると腹痛、吐き気、嘔吐を生じる (MOE初期評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011))。

【参考データ等】
(4) 0.5 Lの本物質の溶液 (詳細は記載なし) の経口摂取により、数時間以内にヒトが死亡した。病理組織検査では、小腸粘膜の限局性壊死、多臓器の出血と浮腫、肺への損傷 (限局性の無気肺、急性肺気腫、肺胞及び気管支上皮の剥離) を示し、病理学的には非特異的な症状であった (GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
吸入経路では、(1) より、ヒトで神経系、呼吸器への影響がみられ、実験動物では、(2) より、区分1の範囲で呼吸器ヘの影響がみられた。経口経路では、(3)〜(5) より、区分1の範囲で血液、肝臓、筋肉、甲状腺、副腎に影響がみられた。このほか、刺激性によると考えられる胃の非腺上皮の過形成、浮腫がみられている。したがって、区分1 (神経系、呼吸器、血液系、肝臓、筋肉、甲状腺、副腎) とした。なお、新たな情報源を加えて検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ヒトにおいて、長期間の吸入ばく露で神経及び視覚の障害、皮膚炎、上気道の刺激症状が生じたとの報告がある (MOE初期評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011))。
(2) ラットを用いた28日間吸入毒性試験 (6時間/日、5日/週) において、0.3 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.000093 mg/L、区分1の範囲) 以上で喉頭の炎症、扁平上皮化生、過形成及び壊死、MCHC減少、1 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.00031mg/L、区分1の範囲) 以上で肺胞管の線維症及び細気管支の杯細胞の顕在化、肺胞管の細気管支化生及び細気管支炎がみられた (MAK (DFG) (2016))。
(3) ラットを用いた1年間混餌投与試験おいて、3 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で赤血球数減少、9.1/12 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で体重増加抑制、T3、T4減少、血中尿素増加、脂肪組織の置換及び骨格筋の筋線維の狭窄、脾臓のヘモジデローシス、肝臓の胆管過形成及び類洞肝細胞の色素沈着、甲状腺の後鰓体部の嚢胞、胃の非腺上皮の過形成、膵臓の脂肪組織置換、空胞化を伴う副腎肥大、胃の非腺上皮の浮腫、ヘマトクリット値及びヘモグロビン減少、副腎嚢胞性変性、27/38 mg/kg/day (区分2の範囲) で肝臓の類洞細胞の褐色色素沈着、甲状腺C細胞過形成、膵臓の外分泌組織の萎縮、黄体欠損がみられた (MAK (DFG) (2016))。
(4) マウスを用いた80週間混餌投与試験において、3/4 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で小葉中心肝細胞肥大、27/33 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で、体重増加抑制、膀胱の上皮過形成、82 mg/kg/day (区分2の範囲) で脂肪組織の量減少、腎臓の皮質瘢痕、褐色腎臓、95 mg/kg/day (区分2の範囲) で膀胱の上皮過形成がみられた (MAK (DFG) (2016))。
(5) イヌを用いた1年間混餌試験において、6.6/6.7 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で色素沈着した肝臓のクッパー細胞増加、脾臓の色素沈着したマクロファージの増加、ALT、ALP及びAST活性増加、肝臓の小葉中心性線維細胞の増加、17.4/20.6 mg/kg/day (初期24/30mg/kg/day) (区分2の範囲) で変性肝細胞を伴う肝病巣、肝静脈の炎症細胞、肝細胞壊死がみられた (MAK (DFG) (2016))。

【参考データ等】
(6) ラット、マウス、イヌに本物質を経口投与した研究では、主に肝臓、甲状腺、副腎、筋肉、造血及び神経系、精巣への影響が明らかになった (MAK (DFG) (2016)) 。

誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)魚類 (ファットヘッドミノー) 96時間LC50 = 0.008 mg/L (U.S.EPA: RED (2004)) であることから、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)急速分解性がなく (BODによる分解度: 0% (通産省公報 (1994))) 、魚類 (シープスヘッドミノー) の34日間NOEC = 0.027 mg/L (U.S.EPA: OPP Pesticide Ecotoxicity Database (2020)) であることから、区分1とした。
オゾン層への有害性データ不足のため分類できない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号2771
国連品名THIOCABAMATE PESTICIDE, SOLID, TOXIC
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級I
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報-
特別な安全上の対策-
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*151
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法-
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【328 ビス(N,N−ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛】
毒物及び劇物取締法-
化学物質審査規制法旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)【旧番号178 ビス(N,N−ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛(別名ジラム)(平成23年4月1日をもって廃止)】
旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号391 ビス(N,N−ジメチルジチオカルバミド酸)亜鉛(別名ジラム)(平成23年4月1日をもって廃止)】
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2771 チオカーバメート系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】【国連番号】2771 チオカーバメート系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
水道法有害物質(法第4条第2項)、水質基準(平15省令101号)【32 亜鉛及びその化合物】
下水道法水質基準物質(法第12条の2第2項、施行令第9条の4)【30 亜鉛及びその化合物】
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【169 ビス(N,N−ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛】
有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【1 亜鉛及びその化合物】
水質汚濁防止法指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3)【54 亜鉛及びその化合物】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用