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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル
作成日 2017年03月17日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル (別名: マラチオン) (Malathion)
製品コードR02-B-057
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限農薬 (殺虫剤) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2B
皮膚感作性区分1
発がん性区分1B
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (神経系、呼吸器、心血管系)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系)
区分2 (呼吸器)
分類実施日
(環境有害性)
平成28年度、GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
強い眼刺激
発がんのおそれ
神経系、呼吸器、心血管系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
漏出物を回収すること。
 保管施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル
別名マラチオン
マラソン
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C10H19O6PS2 (330.36)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号121-75-5
官報公示整理番号
(化審法)
2-1963
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
半座位。
直ちに医療機関に連絡する。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣服を脱がせる。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合口をすすぐ。
直ちに医療機関に連絡する。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状情報なし
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。
この物質により中毒を起こした場合は、特別の処置が必要であるため、指示のもとに適切な手段をとれるようにしておく。

5.火災時の措置
適切な消火剤泡消火薬剤、粉末消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性可燃性。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
製剤が引火性/爆発性溶剤を含む場合火災および爆発の危険性がある。
特有の消火方法情報なし
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。
(ICSCには、漏洩物処理時に防毒マスクを使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材この物質を環境中に放出してはならない。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
残留液を、砂または不活性吸収剤に吸収させる。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
製剤に溶剤が使用されている場合は、その溶剤のICSCも参照のこと。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件施錠して保管すること。
元の包装でのみ貯蔵。
強酸化剤および食品や飼料から離しておく。
換気のよい部屋に保管。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
安全な容器包装材料国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)10 mg/m3
ACGIH (2020年版)TLV-TWA: 1 mg/m3
(Inhalable fraction and vapor) (Skin; BEIC)
設備対策適切な局所排気装置・換気装置等を使用する。
取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。
(ICSCには、漏洩物処理時に防毒マスクを使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。(ICSCには、呼吸用保護具と併用して、安全ゴーグルまたは保護眼鏡を使用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
黄色〜茶色
臭い特徴的な臭気
融点/凝固点3.85℃ (HSDB (Access on May 2020))
沸点、初留点及び沸騰範囲156〜157℃ (0.7 mmHg) (U.S.EPA: Mpbpwin v1.43)
可燃性可燃性 (ICSC (2019))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点163℃ (c.c.) (ICSC (2019))
自然発火点データなし
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率37.1 dynes/cm (24℃) (HSDB (Access on May 2020))
溶解度水: 143 mg/L (20℃) (HSDB (Access on May 2020))
エタノール、ベンゼン、エチルエーテルに可溶 (HSDB (Access on May 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = 2.36 (HSDB (Access on May 2020))
蒸気圧3.97E-005 mmHg (30℃) (HSDB (Access on May 2020))
密度及び/又は相対密度1.2076 g/cm3 (20℃) (HSDB (Access on May 2020))
相対ガス密度データなし
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性加熱や燃焼により、分解する。
リン酸化物およびイオウ酸化物などの有毒なフュームを生じる。
強酸化剤と 激しく反応する。
火災や爆発の危険を生じる。
鉄、ある種の他の金属、ある種のプラスチックおよびゴムを侵す。
避けるべき条件加熱
混触危険物質強酸化剤
危険有害な分解生成物リン酸化物およびイオウ酸化物などの有毒なフューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 8,000 mg/kg (純度: 98.2%) (Canada Pesticides (2010))
(2) ラットのLD50: 8,200 mg/kg (純度: 99.1%) (Canada Pesticides (2010))
(3) ラットのLD50: 8,227 mg/kg (純度: 99.1%) (JMPR (2016))
(4) ラットのLD50: 9,500 mg/kg (純度: 99.3%) (ATSDR (2003)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))
(5) ラットのLD50: 10,700 mg/kg (再結晶) (産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))

【参考データ等】
(6) ラットのLD50: 2,100 mg/kg (IPCS PIM G001 (1989))
(7) ラットのLD50: 2,800 mg/kg (EHC 63 (1986)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))
(8) ラットのLD50: 2,830 mg/kg (ACGIH (7th, 2003))
経皮【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (JMPR (2016)、EPA Pesticides RED (2009)、Canada Pesticides (2010))
(2) ラットのLD50: > 4,444 mg/kg (ATSDR (2003))
(3) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2014)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))
(4) ウサギのLD50: 4,100 mg/kg (EHC 63 (1986)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))
(5) ウサギのLD50: 8,790 mg/kg (JMPR (2016))
(6) ウサギのLD50: 8,900 mg/kg (Canada Pesticides (2010))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (7.1E-004 mg/L) よりも高いため、ミストとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): > 5.2 mg/L (JMPR (2016)、Canada Pesticides (2010)、US AEGL (2009)、Patty (6th, 2012))
(2) 本物質の蒸気圧: 4.0E-005 mmHg (30℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 7.1E-004 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験で軽度刺激性あるいは非刺激物と報告されている (JMPR (2016))。
(2) ウサギを用いた皮膚刺激性試験においてごく軽度の刺激性が認められ (食安委 農薬評価書 (2014))。
(3) EPA OPPTS 870.2500に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で軽度刺激性と報告されている (EPA Pesticides (2009))。
(4) ウサギを用いた皮膚刺激性試験において軽度の刺激性が認められた (ACGIH (7th, 2003)、Canada Pesticides (2010)、Patty (6th, 2012))。
(5) 本物質及び本物質の製剤の皮膚刺激性は低い (GESTIS (Access on May 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分2Bとした。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギを用いた眼刺激性試験で軽度刺激性と報告されている (JMPR (2016))。
(2) ウサギを用いた眼刺激性試験において軽度の刺激性が認められた (食安委 農薬評価書 (2014)、ACGIH (7th, 2003)、Canada Pesticides (2010)、Patty (6th, 2012))。
(3) EPA OPPTS 870.2400に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で軽度の結膜刺激性が観察され、7日以内に消失したと報告されている (EPA Pesticides RED (2009))。
(4) 16人のボランティアによる本物質のエアロゾルによるばく露実験で結膜の刺激性がみられたという報告がある (ATSDR (2003))。
(5) ウサギにおいて本物質のばく露により、即時に刺激を示し、結膜炎及び眼瞼の浮腫を示す (GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 87名のボランティアによる実験で本物質 (10%) は約半数に感作性反応を誘発した (ATSDR (2003))。
(2) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) において陽性と報告されている (食安委 農薬評価書 (2014))。
(3) 本物質はモルモットを用いた皮膚感作性試験において、ビューラー法 では陰性、マキシマイゼーション法 では陽性と報告されている。また、マウス局所リンパ節試験 (LLNA) では陰性と報告されている (JMPR (2016))。
(4) 本物質は高濃度においてモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) において、13/24例 (陽性率 54%) に感作性反応を誘発した (GESTIS (Access on May 2020))。

【参考データ等】
(5) 本物質はモルモットに対して感作性を示さない (ACGIH (7th, 2003)、Canada Pesticides (2010)、Patty (6th, 2012))。
(6) EPA OPPTS 870.2600に準拠した モルモットを用いた皮膚感作性試験 において陰性と報告されている (EPA Pesticides RED (2009))。
(7) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317)に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2020))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(4) より、専門家判断に基づき、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスを用いた優性致死試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、ラット肝UDS試験で陰性の報告がある(IARC 112 (2017)、JMPR (2016)、ATSDR (2003)、食安委 農薬評価書 (2014))。
(2) in vitroでは、ヒトの末梢血リンパ球あるいはほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験、遺伝子突然変異試験において陽性、細菌の復帰突然変異試験で陰性の報告がある (同上)。
(3) 本物質の製剤あるいは原体を用いた多くの試験が実施され、陽性結果も多数認められているが、不純物の少ない原体を用い、テストガイドラインに従いGLPで実施されたin vivo試験では陰性知見が得られている(JMPR (2016)、Canada pesticide (2010), EPA Pesticides RED (2009), ATSDR (2003)、食安委 農薬評価書 (2014))。
(4) 食安委、JMPR、Canada、EPAではマラチオンに生体において問題となる遺伝毒性は認められないとしている(JMPR (2016)、Canada pesticide (2010), EPA Pesticides RED (2009)、食安委 農薬評価書 (2014))。
発がん性【分類根拠】
(2)〜(4) の結果及び (1) のIARCの分類に基づき区分1Bとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2A (IARC 112 (2017))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2018年提案))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2003))、EPAでS (Suggestive Evidence of Carcinogenicity, but not Sufficient to Assess Human Carcinogenic Potential) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on July 2020):2000年分類) に分類されている。
(2) IARCはヒトにおいて本物質へのばく露と非ホジキンリンパ腫及び前立腺がんとの間で正の相関がみられ、ヒトで発がん性の限定的な証拠 (limited evidence) があるとしている (IARC 112 (2017))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を混餌投与した2つの発がん性試験において、肝細胞腺腫、及び肝細胞の腺腫とがんの合計頻度の増加 (1件は雄のみ、他1件は雌雄で増加) が認められた (IARC 112 (2017))。
(4) 雌雄のラットに本物質を混餌投与した2つの発がん性試験において、雌で肝臓腫瘍 (肝細胞腺腫、及び肝細胞腺腫と肝細胞癌の合計)、乳腺の線維腺腫及び子宮ポリープの発生頻度の有意な増加が認められた。また雄では鼻咽頭腔に2つの非常に稀な腫瘍が確認された (IARC 112 (2017))。
生殖毒性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌投与による2世代繁殖試験において、親世代に影響はなく、F1、F2児動物で軽微な影響 (離乳時の体重低値) のみであった (食安委 農薬評価書 (2014))。
(2) ラットを用いた混餌投与による3世代繁殖試験において、P、F1及びF2親動物に交配時の低体重、P親動物に呼吸困難、死亡 (雄: 3/16例、雌: 1/16例) 、F3親動物の雌に呼吸困難、死亡 (1/16) がみられ、P親動物で受胎率低下、出産率低下、F1及びF3児動物に離乳時の低体重、F1児動物で哺育率低下がみられた。なお、受胎率低下、出産率低下、哺育率低下は母動物の毒性に起因するものであり、繁殖能に対する検体の直接的な影響とは考えられていない (食安委 農薬評価書 (2014))。
(3) 妊娠ラット、妊娠ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験において、母動物毒性がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2014))。

【参考データ等】
(4) ラットを用いた発達神経毒性試験 (母動物に妊娠 6 日〜出産後 10日、及び児動物には生後 11〜21日に強制経口投与) において、母動物毒性はみられず、児動物では生後11〜21日に振戦及び活動性低下が、生後11日に平面立ち直り反応の遅れが認められたが、これらは検体投与の直接的な影響であり、発達神経毒性影響を示すものではないと考えられている (食安委 農薬評価書 (2014))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(5) より、ヒトにおいて神経系、心血管系、呼吸器への影響、(6) より、実験動物においても区分1の用量で神経系への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (神経系、呼吸器、心血管系) とした。情報の再検討により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 一般的な徴候や症状として、副交感神経の自律神経刺激で典型的にみられる腹部痙攣、下痢、吐き気、嘔吐、縮瞳、かすみ目、流涎、流涙、呼吸困難、筋痙攣があり、赤血球及び血漿中コリンエステラーゼ (ChE) 活性の阻害がみられたとの報告もある (ATSDR (2003))。
(2) 本物質の中毒による死亡例では、心膜血管の拡張と周囲の組織の顕著な出血、間質性浮腫、炎症性細胞、ヘモジデリン含有マクロファージ及び心筋の脂肪浸潤と心筋への損傷がみられたとの報告がある。高用量での急性中毒では、低用量での反復ばく露と同様に脳波図 (EEG) の変化もみられ、この症状はわずかな追加ばく露で悪化するとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。
(3) 本物質の中毒症例のほぼ全て (推定投与量: 214〜2,117 mg/kg) で、迷走神経刺激による徐脈や低血圧、ばく露後数日以内に出現する房室伝導障害などの心血管系への影響がみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。
(4) 複数の本物質による中毒症例 (ばく露量は推定可能例で214〜1,071 mg/kg) では呼吸困難が報告されている。低用量ばく露と推定される例でも、呼吸困難及び気管支炎が一般的にみられ、多くの患者で人工呼吸器の補助を必要とした。2例では、中毒事故の2週間後に肺線維症の発症もみられた (ATSDR (2003))。本物質の投与に関連した呼吸器影響としては、吸入後の鼻腔及び喉頭の病理組織学的病変の報告もある (EPA Pesticides RED (2009))。
(5) 4人/群の男性被験者を濃度0、5.3、21または85 mg/m3の本物質のエアロゾルに1日につき1時間を2回、42日間ばく露したところ、85 mg/m3群で各ばく露の開始後5〜10分間における鼻刺激性の訴えがあった (ATSDR (2003))。
(6) 純度95%の本物質を用いたラットの経口投与試験では、12 mg/kg (区分1の範囲) 以上で赤血球ChE阻害作用、純度不明の本物質を用いた別の試験では約411 mg/kg (区分2の範囲) で重度の呼吸困難がみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。

【参考データ等】
(7) ヒトでは、殺虫剤用途で製造された市販品に含まれる複数の不純物により本物質の正常な代謝が阻害され、毒性が増強されるとの報告がある。これは不純物のカルボキシルエステラーゼ阻害作用によると考えられている。本物質の製剤に含まれるイソマラチオン (CAS番号 3344-12-5) が毒性の増強に影響するとの報告があるが、他の不純物の影響も示唆されている (EHC 63 (1986))。
(8) 本物質は、哺乳類や昆虫で代謝によりマラオクソン (CAS番号 1634-78-2) に変換される。マラオクソンは本物質よりも強力なChE阻害作用を示すことが知られている (EPA Pesticides RED (2006))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)〜(3) より、ヒトにおいて死亡例を含む神経系への影響がみられるとの情報があり、(4)、(5) より、実験動物においては区分2の用量で神経系及び呼吸器への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (神経系)、区分2 (呼吸器) とした。新たな情報を加えて検討を行い、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質の水溶性製剤を使用した蚊の防除プログラムに参加した噴霧作業従事者5,350人、混合作業従事者1,070人及び監督者1,070人で大規模な職業中毒が発生し、少なくとも5人が死亡した。ばく露経路は主に経皮で、ばく露濃度は1〜200 μg/cm3と推定された。コリンエステラーゼ (ChE) の抑制作用は労働期間とともに進行し、症状はかすみ目、めまい、吐き気、嘔吐、腹部痙攣等で有機リン酸塩中毒と一致していた。イソマラチオン (CAS番号 3344-12-5) やその他の不純物を高濃度に含む製剤で最も重篤な症状がみられ、イソマラチオンを2〜3%含有する製剤を使用した作業者では作業終了時に赤血球ChE活性が11〜20%、39〜47%減少したが、イソマラチオンを含まない製剤を使用した作業者では0.8〜3.0%の減少にとどまった (ACGIH (7th, 2001)、ACGIH (7th, 2003)、EHC 63 (1986))。
(2) 生後18ヵ月の子供が庭のスプレーで本物質に6週間毎日経皮・吸入ばく露された結果、コリン作動性中毒症状に至り、数日間にわたる広範な弛緩性麻痺を含む長期間の脱力状態が続いた。この症状はアトロピン投与と安静により4週間以内に回復した (ATSDR (2003))。
(3) 5人の男性被験者に純度不明の本物質約0.11 mg/kg/dayを32日間、続いて約0.23 mg/kg/dayを47日間カプセル投与したところ、血漿及び赤血球ChE活性の低下はみとめられず、臨床症状も誘発されなかった。別の5人の被験者に約0.34 mg/kg/dayを56日間投与したところ、臨床症状はみられなかったが、投与終了から約3週間後の血漿中ChE活性が最大25%低下し、その後赤血球ChE活性の低下もみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。
(4) ラットの90日間経口投与試験では、75 mg/kg (区分2の範囲) で脳波 (EEG)、筋電図 (EMG) において興奮性亢進を示す変化がみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。
(5) ラットの13週間エアロゾル吸入ばく露試験では、0.1 mg/L (90日換算値: 0.0722 mg/L、区分2の範囲) 以上で赤血球のChE活性阻害、鼻腔及び喉頭の病理組織学的病変、2.01 mg/L (90日換算値: 1.45 mg/L、区分2超の範囲) で流涎がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2003))。

【参考データ等】
(6) ヒトでは、殺虫剤用途で製造された市販品に含まれる複数の不純物により本物質の正常な代謝が阻害され、毒性が増強されたとの報告がある。これは不純物のカルボキシルエステラーゼ阻害作用によると考えられている。本物質の製剤に含まれるイソマラチオンが毒性の増強に影響するとの報告があるが、他の不純物の影響も示唆されている (EHC 63 (1986))。
(7) 本物質は、哺乳類や昆虫で代謝によりマラオクソン (CAS番号 1634-78-2) に変換される。マラオクソンは本物質よりも強力なChE阻害作用を示すことが知られている (EPA Pesticides RED (2006))。

誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)甲殻類 (オオミジンコ) 48時間EC50 = 1.0 ppb (U.S.EPA: RED (2006) , (2009)) であることから、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (難分解性、BODによる分解度:22% (既存点検 (2002))) 、甲殻類 (オオミジンコ) の21日間NOEC = 0.06 ppb (U.S.EPA: RED (2006) , (2009)) であることから、区分1とした。
オゾン層への有害性データなし

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号3082
国連品名ENVIRONMENTALLY HAZARDOUS SUBSTANCE, LIQUID, N.O.S.
国連危険有害性クラス9
副次危険-
容器等級L
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報-
特別な安全上の対策-
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*171
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【268 ジチオりん酸O,O−ジメチル−S−1,2−ビス(エトキシカルボニル)エチル】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【268 ジチオりん酸O,O−ジメチル−S−1,2−ビス(エトキシカルボニル)エチル】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【197 ジチオりん酸O,O−ジメチル−S−1,2−ビス(エトキシカルボニル)エチル】
毒物及び劇物取締法-
化学物質審査規制法旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)【旧番号181 ジチオりん酸O,O−ジメチル−S−1,2−ビス(エトキシカルボニル)エチル(別名マラソン又はマラチオン)(平成23年4月1日をもって廃止)】
航空法有害性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】3082 環境有害物質(液体)】
船舶安全法有害性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】3082 環境有害物質(液体)】
海洋汚染防止法個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】3082 環境有害物質(液体)】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用