| 1.化学品等及び会社情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学品の名称 | アントラセン | ||
| 化学品の英語名称 | Anthracene | ||
| 製品コード | R06-B-080-JNIOSH | ||
| 供給者の会社名 | ○○○○株式会社 | ||
| 住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
| 電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| ファクシミリ番号 | 03-1234-5678 | ||
| 電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
| 緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| 推奨用途及び使用上の制限 | アントラキノン・カーボンブラック・染料原料(NITE-CHRIPより引用) | ||
| 2.危険有害性の要約 | |||
|---|---|---|---|
| GHS分類 | |||
| 分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | 令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、平成20年度(2008年度)、ガイダンス(H20.9.5版)(GHS 2版) | ||
| 物理化学的危険性 | - | ||
| 健康に対する有害性 | 皮膚感作性 | 区分1 | |
| 発がん性 | 区分1B | ||
| 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分3(気道刺激性) | ||
| 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 区分2(血液系) | ||
| 分類実施日 (環境有害性) | 平成20年度(2008年度)、ガイダンス(H20.9.5版)(GHS 2版) | ||
| 環境に対する有害性 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分1 | |
| 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分1 | ||
| GHSラベル要素 | |||
|---|---|---|---|
| 絵表示 | ![]() ![]() ![]() | ||
| 注意喚起語 | 危険 | ||
| 危険有害性情報 | アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ 発がんのおそれ 呼吸器への刺激のおそれ 長期にわたる、又は反復ばく露による血液系の障害のおそれ 水生生物に非常に強い毒性 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 | ||
| 注意書き | |||
| 安全対策 | 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 環境への放出を避けること。 | ||
| 応急措置 | 皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。 漏出物を回収すること。 | ||
| 保管 | 施錠して保管すること。 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 | ||
| 廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | ||
| 他の危険有害性 | 情報なし | ||
| 3.組成及び成分情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学物質・混合物の区別 | 化学物質 | ||
| 化学名又は一般名 | アントラセン | ||
| 慣用名又は別名 | パラナフタレン | ||
| 英語名 | Anthracene | ||
| 濃度又は濃度範囲 | 情報なし | ||
| 分子式 (分子量) | C14H10 (178) | ||
| 化学特性 (示性式又は構造式) | ![]() | ||
| CAS番号 | 120-12-7 | ||
| 官報公示整理番号 (化審法) | 4-683 | ||
| 官報公示整理番号 (安衛法) | - | ||
| GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | - | ||
| 4.応急措置 | |||
|---|---|---|---|
| 吸入した場合 | 新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で安静にさせる。医師に連絡すること。 自分自身を保護しながら、危険区域から被害者を取り除き、新鮮な空気な場所に連れて行く。 気分が悪い時や呼吸に関する症状が現れた場合は、医師の診察/手当てを受けること。 呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 皮膚に付着した場合 | 直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。 皮膚に付着した部分を流水またはシャワーで洗い流したのち、水と石けん(鹸)で丁寧に洗浄する。 医師の診察/手当てを受けること。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 眼に入った場合 | まぶたを大きく広げて流水で少なくとも10分間、患部を洗眼する。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 飲み込んだ場合 | 自分自身を保護しながら、危険区域から被害者を非難させ、新鮮な空気に連れて行く。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 急性: 光、特に紫外線(重度の光毒性作用電位)へのばく露によって強まる皮膚へのわずかな刺激作用。 慢性: 紫外線の影響下で反復または長期の皮膚への接触により、皮膚炎を引き起こすことがある。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する | ||
| 医師に対する特別な注意事項 | 情報なし | ||
| 5.火災時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 適切な消火剤 | 水噴霧、乾燥消火剤、泡消火剤、二酸化炭素 以上、GESTIS参照。 | ||
| 使ってはならない消火剤 | 火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。 | ||
| 特有の危険有害性 | 火災の場合、有害物質(一酸化炭素と二酸化炭素)が放出される可能性がある。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 特有の消火方法 | 周囲の容器を水スプレーで冷却する。 可能であれば、容器を危険区域から移動する。 着火(発火)源を遮断する。 流出水が排水システムに入らないようにすること。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 消火を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 6.漏出時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置 | 関係者以外の立ち入りを禁止する。 作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。 | ||
| 環境に対する注意事項 | 容器とパイプラインにラベルを貼ること。 水、排水、下水、または地中への浸透を防ぐ。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 封じ込め及び浄化の方法及び機材 | 少量の物質の収集: 廃棄物を流し台やゴミ箱に入れたり置いたりしないこと。 固体有機残留物の容器に集める。 収集容器にはラベルを貼ること。容器は換気の良い場所に保管すること。 この物質を環境中に放出してはならない。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 二次災害の防止策 | 情報なし | ||
| 7.取扱い及び保管上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 取扱い | |||
| 技術的対策 | 「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する 粉じんの形成を避けること。避けられない粉じんの発生は、定期的に収集する必要がある。 テスト済みの産業用掃除機または吸引装置を使用すること。 掃除中に粉じんを起こさないこと。 清掃にブロワーを使用しないこと。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 安全取扱い注意事項 | 容器を開けたままにしないこと。 ラベルの付いた容器にのみ注入すること。 粉じんが舞い上がるのを避けること。 裸火禁止。 密閉系、粉じん防爆型電気設備および照明の設置。 粉じんの堆積を防ぐ。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 接触回避 | 感染性、放射性、爆発性の物質 ガス 自然発火性物質 水と接触した可燃性ガスを放出する物質 硝酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムを含有する製剤 有機過酸化物および自己反応性物質 危険な化学反応が起こりうる物質と一緒に保管しないこと。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 衛生対策 | 使用後は手を洗うこと。 眼、皮膚、衣類への接触を避けること。眼に入った場合は、影響を受けた眼を洗い流す。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 保管 | |||
| 安全な保管条件 | 容器にはラベルを貼付すること。 できるだけ元の容器に保管すること。 強酸化剤との接触禁止。 容器を密閉し、涼しくて乾燥した換気の良い場所で保管すること。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 安全な容器包装材料 | 国連輸送法規で規定されている容器を使用する。 | ||
| 8.ばく露防止及び保護措置 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。 | ||||
| 管理濃度 | - | |||
| 濃度基準値 | ||||
| 八時間濃度基準値 | - | |||
| 短時間濃度基準値 | - | |||
| 許容濃度 | ||||
| 日本産衛学会 (2024年度版) | (吸入性粉じん) 2 mg/m3 (総粉じん) 8 mg/m3 (第3種粉じん) | |||
| ACGIH (2024年版) | PNOS* TLV: 3 mg/m3 (Respirable particles) PNOS* TLV: 10 mg/m3 (Inhalable particles) * Particles (insoluble or poorly soluble) Not Otherwise Specified | |||
| 設備対策 | 粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器または局所換気装置を使用する。 他の使用する物質に応じて換気対策を選択すること。 粉じんが放出される可能性がある場合は、作業室で十分な換気を提供する必要がある。 床に排水口を設置しない。 作業場での洗浄設備を設置する。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 保護具 | ||||
| 呼吸用保護具 | 緊急時には、呼吸保護具を着用する。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 手の保護具 | 耐性のある保護手袋の使用を推奨する。 次の材料は保護手袋に適している(透過時間>= 8時間): ニトリルゴム/ニトリルラテックス-NBR(0.35 mm)、ブチルゴム-ブチル(0.5 mm)、フルオロカーボンゴム-FKM(0.4 mm) 以上、GESTIS参照。 | |||
| 眼の保護具 | 必要に応じて安全眼鏡、保護面、安全ゴーグルなどの眼用保護具を着用する。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 皮膚及び身体の保護具 | 身体の保護リスクに応じて、不浸透性の適切な防護服または適切な化学防護服を着用する。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 9.物理的及び化学的性質 | |||
|---|---|---|---|
| 物理的状態 | |||
| 物理状態 | 固体 | ||
| 色 | 青〜紫色の蛍光色 | ||
| 臭い | 弱い芳香臭 | ||
| 融点/凝固点 | 216 ℃ (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 沸点、初留点及び沸騰範囲 | 341.3 ℃ (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 可燃性 | 可燃性 (ICSC(1999)) | ||
| 爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | 0.6 vol% No upper limit (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 引火点 | 121 ℃ (Closed cup) (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 自然発火点 | 540 ℃ (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 分解温度 | データなし | ||
| pH | データなし | ||
| 動粘性率 | データなし | ||
| 溶解度 | 水:0.0434 mg/L (24℃) (HSDB in PubChem (2024)) エタノール、エチルエーテル、アセトン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素:わずかに溶ける (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| n-オクタノール/水分配係数 | log Kow:4.45 (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 蒸気圧 | 8.0×10?4 Pa (25℃) (IARC vol.92 (2010)) 1 mmHg (145℃) (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 密度及び/又は相対密度 | 1.25 g/cm3 (27℃/4℃) (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 相対ガス密度 | 6.15 (Air= 1) (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 粒子特性 | データなし | ||
| 10.安定性及び反応性 | |||
|---|---|---|---|
| 反応性 | 物質は可燃性である。 強酸化剤の影響下で、分解する。 刺激性で有毒なフュームを生じる。 火災や爆発の危険を生じる。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 化学的安定性 | 通常の取扱い条件下では安定である。 | ||
| 危険有害反応可能性 | 加熱により分解する。 アントラセンはニトロ化合物と分子付加化合物を形成し、危険な反応を引き起こす可能性がある。 危険な反応をする可能性がある物質: 強力な酸化剤 以上、GESTIS参照。 | ||
| 避けるべき条件 | 可燃性。 空気中で粒子が細かく拡散して、爆発性の混合気体を生じる。 次の条件が満たされると、粉じん爆発の危険性がある: 物質は非常に細かく分布した形(粉末、粉じん)で与えられる。 空気中で十分な量が渦巻いている。 発火源が存在する(炎、火花、静電放電など) 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 混触危険物質 | 接触すると爆発の危険性: フッ素、カルシウム次亜塩素酸クロム、三酸化物 以上、GESTIS参照。 | ||
| 危険有害な分解生成物 | 火災の場合、有害物質(一酸化炭素と二酸化炭素)が放出される可能性がある。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 11.有害性情報 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 急性毒性 | ||||
| 経口 | 【分類根拠】 (1)、(2)より区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:> 16,000 mg/kg(EU RAR (2008)、ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024)、GESTIS (Accessed Sep. 2024)、HSDB (Accessed Sep. 2024)) (2)ラットのLD50:8,120 mg/kg(EU RAR (2008)、GESTIS (Accessed Sep. 2024)) 【参考データ等】 (3)マウスのLD50:> 17,000 mg/kg(EU RAR (2008)、ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024)) | |||
| 経皮 | 【分類根拠】 (1)より区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギのLD50:> 4,000 mg/kg(EU RAR (2008)、GESTIS (Accessed Sep. 2024)) 【参考データ等】 (2)ラットのLD50:> 1,320 mg/kg(EU RAR (2008)、ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024)、GESTIS (Accessed Sep. 2024)、HSDB (Accessed Sep. 2024)) | |||
| 吸入: ガス | 【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 | |||
| 吸入: 蒸気 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| 吸入: 粉じん及びミスト | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| 皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | 【分類根拠】 (1)より、通常の皮膚刺激性試験では本物質は陰性と考えられることから、区分に該当しない。新たな知見に基づき、分類結果を変更した (2024年度)。なお、本物質は光毒性を有し、(2)〜(4)より実験動物とヒトで本物質と紫外線照射との併用により、皮膚刺激性が誘発、増強されることが示されている。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n= 6)を用いた皮膚刺激性試験(原体0.5g、24時間閉塞、72時間観察)では、パッチ除去24及び72時間後の皮膚一次刺激指数(PDII)は0.79/8 で皮膚刺激性なしと判断された(EU RAR (2008)、ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024))。 【参考データ等】 (2)モルモット(n= 6)を光刺激性試験において、本物質0.09、0.9、9及び90μg(≧0.14、1.4及び14μg/cm2)塗布30分後にUV照射(40〜80分間)を行い、照射終了20時間後の皮膚刺激スコアを判定(最大4)した結果、スコアはそれぞれ0、0.2、1.5、3.2と用量依存的に増加した。なお、UV非照射下の本物質ばく露群及びUV照射のみの非ばく露群では、皮膚刺激反応はみられなかった(ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024))。 (3)ヒトボランティア3人に対し、長波長の紫外線(340〜380 nm)を照射する前に、2%アントラセン溶液(溶媒ベンゼン)を1日2回、2日間前腕の皮膚に塗布した。蕁麻疹反応と灼熱感が3人全員に認められ、この症状は数日間持続し、その後色素沈着が生じた。被験者1人には紅斑も出現し数日間持続した(EU RAR (2008))。 (4)男性ボランティア6 人の背中に本物質約25μg/cm2を2時間塗布した後、320〜380 nmの紫外線を照射したところ、照射後数分以内に現れて15分後には消失する即時型紅斑、22〜24時間後に現れる遅延型紅斑、5〜10分後に現れる膨疹・潮紅反応の3タイプがみられ、これらの反応に要する紫外線エネルギーは即時型<遅延型<膨疹・潮紅反応の順で大きく、いずれの反応も360 nmで最も強く現れた(MOE初期評価 (2006))。 | |||
| 眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | 【分類根拠】 (1)より、通常の眼刺激性試験では本物質は陰性と考えられることから、区分に該当しない。新たな知見に基づき、分類結果を変更した (2024年度)。なお、本物質はUV照射下では光毒性により眼刺激性を生じると考えられる。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n= 6)を用いた眼刺激性試験(原体100 mg、非洗浄、7日間観察)において、24及び48時間後の最大合計刺激スコア平均(MMTS)はそれぞれ10及び6であった(フルスコア:110)。観察期間を通して、角膜と虹彩には刺激性影響はなく、結膜に軽微〜中程度の発赤が4/6例、軽微な分泌増加が1例に認められた。観察期間を通しての全体の平均刺激スコアは1.0で、本物質は非刺激性と判断された(EU RAR (2008)、ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024))。 【参考データ等】 (2)本物質はUV光線がない状況では刺激性を示さないが、皮膚と眼に光毒性を示す(ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024))。 (3)作業中にアントラセンのヒュームや粉じんにばく露すると、皮膚、眼、粘膜、呼吸器に軽度の炎症を起こす可能性があるとの報告、及び上気道の刺激、流涙、眼瞼の浮腫、結膜充血を起こすとの報告がある。これらは情報量が少ない上に、おそらく複雑な混合物へのばく露を伴う作業環境での観察に基づいていることから、この報告から結論を導き出すことはできない(EU RAR (2008))。 | |||
| 呼吸器感作性 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| 皮膚感作性 | 【分類根拠】 (1)〜(3)より、本物質は光感作性を示すと考えられることから、区分1とした。 【根拠データ】 (1)本物質には光感作性があり 、反復又は長期間の皮膚への接触は紫外線の影響下で皮膚炎を引き起こすことがある(MOE初期評価 (2006))。 (2)エタノール・N-メチル-2-ピロリドンに溶解した本物質と紫外線照射を組み合わせた乾癬の光線療法で、0.25%の本物質濃度で処置した患者の中で痛みや灼熱感、じんま疹、光アレルギー反応などの顕著な副作用が8 例みられた(同上)。 (3)モルモットを用いた皮膚感作性試験(感作:本物質125μg(生理食塩液とFCAの1:1乳剤)を前肢の足蹠に皮内注射、誘発:本物質1〜0.001%溶液1滴を皮膚に開放適用)では、誘発刺激24時間後の皮膚反応は陰性であった(EU RAR (2008)、ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024))。 【参考データ等】 (4)ヘアレスマウスに40分間紫外線照射を行った後、本物質を背部皮膚に96時間適用した試験において、紫外線照射単独群と比べて本物質併用群では皮膚炎症作用の増強が認められたが、この影響は48時間以内に消失した。この結果から、本物質は光感作性を示す可能性があると考えられた(ATSDR (1995)、EHC 202 (1998))。 | |||
| 生殖細胞変異原性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)in vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた複数の小核試験(腹腔内投与、単回又は2回投与)、マウスの末梢血赤血球を用いた小核試験(腹腔内、4回投与)マウス又はハムスターの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換(SCE)及び染色体異常試験(腹腔内、2回投与)、及びマウスの皮膚を用いたDNA付加体形成試験(経皮(塗布)、32Pポストラベリング法)で、いずれも陰性の結果であった(EU RAR (2008)、MOE初期評価 (2006)、ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024))。 (2)in vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験(多数)で陰性(一部陽性 (+S9))、ほ乳類培養細胞(CHO、ヒトリンパ球、マウスリンパ腫細胞L5178Y)を用いた遺伝子突然変異試験(多数)で陰性(1試験のみ弱陽性 (+S9))、CHO細胞及びラット肝細胞を用いた染色体異常試験3件のうち、2件で陰性、1件で陽性(+S9)の結果が得られている(EU RAR (2008)、EHC 202 (1998))。 | |||
| 発がん性 | 【分類根拠】 ヒトの発がん性に関する情報は限られている。動物試験では、(1)、(2)から2動物種に悪性を含む腫瘍の発生増加がみられていることから区分1Bとした。 【根拠データ】 (1)ラットを用いた2年間混餌投与(8,000〜50,000 ppm)による発がん性試験において、雄では肝細胞腺腫及び肝細胞がんの発生に有意な増加傾向がみられ、これらは20,000 ppm以上の群で有意であった。また、20,000 ppm群では膀胱の移行上皮乳頭腫と移行上皮がんを組合わせた発生率に有意な増加がみられた。雌では乳腺の線維腺腫、子宮内膜間質性肉腫及び腎細胞腺腫と腎細胞がんを組合わせた発生に有意な増加傾向がみられ、このうち、腎細胞腺腫と腎細胞がんを組合わせた発生率には有意な増加が認められた(厚労省委託がん原性試験結果 (1998)、MOE初期評価 (2006))。 (2)マウスを用いた2年間混餌投与(雄:3,200〜32,000 ppm、雌:8,000〜50,000 ppm)による発がん性試験において、雄には腫瘍の発生増加はみられなかったが、雌では肝細胞腺腫及び肝細胞がんの発生に有意な増加傾向がみられた。肝細胞がんの発生率は20,000 ppm以上の群、肝細胞腺腫の発生率は50,000 ppm群で有意に高かった(同上)。 【参考データ等】 (3)アリザリン染料工場で40%の粗製アントラセンを取り扱っていた労働者3人の手、頬、手首にそれぞれ上皮腫が発生したとの報告では、このうち2人へのばく露は30〜32年にわたっていたが、同様にして本物質の純品にばく露されていた労働者で腫瘍の発生はみられなかった(MOE初期評価 (2006)、IARC 32 (1983))。 (4)マウスの皮膚に本物質0.1%溶液(媒体:トルエン)、50μLを2年間塗布した試験において、2年後に生存していたばく露群14匹、及び対照群39匹に良性及び悪性の皮膚腫瘍の発生はみられず、内臓の肉眼検査でも両群に腫瘍は認められなかった(IARC 92 (2010))。 (5)本物質は労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針(がん原性に係る指針)の対象物質である(労働安全衛生法第28条第3項)。 (6)国内外の評価機関による既存分類では、IARCでグループ3(IARC Suppl. 7 (1987); 92 (2010))、日本産業衛生学会で第2群B(産衛学会許容濃度等の勧告 (2023))、EPAでカテゴリーD(IRIS (1990))に分類されているが、いずれの分類にも(1)、(2)のデータは評価に含められていない。 | |||
| 生殖毒性 | 【分類根拠】 分類に利用可能なデータがなく分類できない。 【参考データ等】 (1)妊娠マウスの妊娠期間の最終週に本物質8 mg/匹を毎日皮下投与又は単回投与後し、19〜20 日齢の胎児から摘出した腎臓を組織培養した結果、対照群の胎児細胞に比べて、細胞定着率及び増殖性の増強がみられた(EU RAR (2008)、MOE初期評価 (2006))。 (2)同様の研究において、マウスに本物質を8mg/匹で経口投与し、摘出した胎児腎組織の器官培養を行い、本物質の経胎盤作用を調べた結果、本物質投与動物の組織では15.6%に個別の尿細管の過形成と異型上皮構造の進展がみられたのに対し、対照群の動物の組織では1.8%であった(EU RAR (2008))。 | |||
| 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 【分類根拠】 (1)、(2)より区分3(気道刺激性)とした。なお、本物質は光毒性を有し、(2)〜(4)より実験動物とヒトで本物質と紫外線照射との併用により、皮膚刺激性が誘発、増強されることが示されている。 【根拠データ】 (1)本物質の急性中毒性症状として、上気道の炎症、流涙、羞明、眼瞼浮腫、結膜充血が含まれる。また、頭痛、吐き気、食欲不振、胃腸の炎症、緩慢な反応、脱力感などの影響も報告されている。これらの症状は、接触がなくなると数日で消失すると言われている(EU RAR (2008))。 (2)本物質はわずかに皮膚、気道を刺激する。吸入すると咳、咽頭痛、経口摂取すると腹痛を生じ、皮膚で発赤、眼で発赤、痛みを生じる(MOE初期評価 (2006))。本物質のフュームは皮膚、眼、粘膜及び気道に軽度の刺激を生じるおそれがある(EHC 202 (1998))。 【参考データ等】 (2)モルモット(n= 6)を光刺激性試験において、本物質0.09、0.9、9及び90μg(≧0.14、1.4及び14μg/cm2)塗布30分後にUV照射(40〜80分間)を行い、照射終了20時間後の皮膚刺激スコアを判定(最大4)した結果、スコアはそれぞれ0、0.2、1.5、3.2と用量依存的に増加した(ECHA CHEM (Accessed Sep. 2024))。 (3)ヒトボランティア3人に対し、長波長の紫外線(340〜380 nm)を照射する前に、2%アントラセン溶液(溶媒ベンゼン)を1日2回、2日間前腕の皮膚に塗布した。蕁麻疹反応と灼熱感が3人全員に認められ、この症状は数日間持続し、その後色素沈着が生じた。被験者1人には紅斑も出現し数日間持続した(EU RAR (2008))。 (4)男性ボランティア6 人の背中に本物質約25μg/cm2を2時間塗布した後、320〜380 nmの紫外線を照射したところ、照射後数分以内に現れて15分後には消失する即時型紅斑、22〜24時間後に現れる遅延型紅斑、5〜10分後に現れる膨疹・潮紅反応の3タイプがみられ、これらの反応に要する紫外線エネルギーは即時型<遅延型<膨疹・潮紅反応の順で大きく、いずれの反応も360 nmで最も強く現れた(MOE初期評価 (2006))。 | |||
| 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 【分類根拠】 (1)、(2)のがん原性試験の用量設定のための試験で認められた血液影響とその関連と考えられる脾臓、骨髄の所見から、区分2(血液系)とした。(1)の腎臓は雄ラットのみの所見のため根拠としない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2024年度)。 【根拠データ】 (1)ラットを用いた13週間混餌投与試験(80〜50,000 ppm)では、80 ppm(雄4.97〜7.37、雌3.88〜6.70 mg/kg/day:区分1)以上で雄に腎臓における好酸体の増加、雌に貧血傾向(ヘモグロビン減少、網赤血球比増加)、脾臓のヘモジデリン沈着、400 ppm(雄24.2〜35.9、雌19.0〜33.4 mg/kg/day:区分2)以上で雌雄とも血液(雌雄:赤血球数減少、血小板数増加、雄:ヘモグロビン減少)、脾臓(雌雄:赤血球充満)、骨髄(雌:造血亢進)が認められた。区分2超の2,000 ppm(雄125〜172、雌96.3〜162 mg/kg/day)以上で、雌雄に血液(凝固時間延長)、雄に腎臓(皮髄境界部鉱質沈着)がみられた(厚労省委託がん原性予備試験結果 (1994))。 (2)マウスを用いた13週間混餌投与試験(80〜50,000 ppm)では、400 ppm(雄64.6〜84.4、雌88.9〜109:区分2)以上で雄に脾臓の髄外造血亢進、雌に脾臓のヘモジデリン沈着がみられ、区分2超の2,000 ppm(雄310〜408 mg/kg/day、雌478〜501 mg/kg/day)以上で血液(血小板数増加、白血球数減少、貧血傾向(雄))、膀胱(上皮表層細胞の硝子滴変性)への影響が認められている(同上)。 【参考データ等】 (3)ラット及びマウスを用いた2年間混餌投与による発がん性試験では、ラット、マウスとも最低用量(ラット 8,000 ppm:雄288〜669、雌336〜692 mg/kg/day、マウス 雄 3,200 ppm:305〜573、雌 8,000 ppm:1,029〜1,783 mg/kg/day)から区分2超の用量で実施されており、ラットでは血液、脾臓、マウスでは血液、膀胱への上と同様の影響と、両種ともに肝臓に変性細胞増殖巣の増加がみられている(厚労省委託がん原性試験結果 (1998)、MOE初期評価 (2006))。 (4)マウスを用いた90日間強制経口投与試験(250〜1,000 mg/kg/day)では、生存率や体重、臓器の重量及び組織、血液等の検査で投与に関連した影響は認められなかった(IRIS (1990)、MOE初期評価 (2006))。 | |||
| 誤えん有害性* | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| * JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。 | ||||
| 12.環境影響情報 | |||
|---|---|---|---|
| 生態毒性 | |||
| 水生環境有害性 短期(急性) | 魚類(ブルーギル)の96時間LEC50 = 0.00278 mg/L(環境省初期リスク評価第5巻, 2006)から区分1とした。 | ||
| 水生環境有害性 長期(慢性) | 急性毒性区分1であり、急速分解性がない(難分解性:2週間の標準法でBODによる分解度:1.9%(既存点検, 1977))ことから、区分1とした。 | ||
| 残留性・分解性 | 化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性)) | ||
| 生態蓄積性 | 化審法濃縮度試験:中濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性)) | ||
| 土壌中の移動性 | - | ||
| オゾン層への有害性 | - | ||
| 13.廃棄上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。 廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。 容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 | ||
| 14.輸送上の注意 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。 | ||||
| 国際規制 | ||||
| 国連番号 | 3077 | |||
| 品名(国連輸送名) | 環境有害物質、固体、他に品名が明示されていないもの | |||
| 国連分類 | 9 | |||
| 副次危険 | - | |||
| 容器等級 | III | |||
| 海洋汚染物質 | 該当する | |||
| MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質 | 該当しない | |||
| 国内規制 | ||||
| 海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う | |||
| 航空規制情報 | 航空法の規定に従う | |||
| 陸上規制情報 | 該当しない | |||
| 特別な安全上の対策 | 該当しない | |||
| その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
| 緊急時応急措置指針番号* | 128 | |||
| * 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。 | ||||
| 15.適用法令 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
| 労働安全衛生法 | 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【38の2 アントラセン】 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降) 【150 アントラセン】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【38の2 アントラセン】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降) 【150 アントラセン】 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) がん原性物質(作業記録等の30年保存対象物質)(労働安全衛生規則第577条の2) 【アントラセン】 皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2) 健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項) 【アントラセン】 | |||
| 化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) | 第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1) 【49 アントラセン】 | |||
| 毒物及び劇物取締法 | - | |||
| 船舶安全法 | 有害性物質(危規則第3条危険物告示別表第1) | |||
| 航空法 | 有害性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1) | |||
| 16.その他の情報 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 参考文献 | ||||
| 9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。 ・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP) ・International Chemical Safety Cards (ICSC) ・Hazardous Substances Data Bank (HSDB) ・GESTIS Substance database (GESTIS) ・2024 Emengency Response Guidebook ・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」 ・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」 | ||||