| 1.化学品等及び会社情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学品の名称 | メチル=2−ヒドロキシベンゾアート(別名サリチル酸メチル) | ||
| 化学品の英語名称 | methyl 2-hydroxybenzoate | ||
| 製品コード | R06-S59-JNIOSH | ||
| 供給者の会社名 | ○○○○株式会社 | ||
| 住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
| 電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| ファクシミリ番号 | 03-1234-5678 | ||
| 電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
| 緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| 推奨用途及び使用上の制限 | 医薬(消炎・鎮痛剤),化粧品原料,香料(口腔剤)(NITE-CHRIPより引用) | ||
| 2.危険有害性の要約 | |||
|---|---|---|---|
| GHS分類 | |||
| 分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | 令和2年度(2020年度)、ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) | ||
| 物理化学的危険性 | - | ||
| 健康に対する有害性 | 急性毒性 (経口) | 区分4 | |
| 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 | ||
| 皮膚感作性 | 区分1B | ||
| 生殖毒性 | 区分1B | ||
| 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分1(中枢神経系、消化管)、区分3(麻酔作用) | ||
| 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 区分1(中枢神経系) | ||
| 分類実施日 (環境有害性) | 令和2年度(2020年度)、ガイダンスVer.2.0 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) | ||
| 環境に対する有害性 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分2 | |
| 水生環境有害性 長期(慢性) | 区分2 | ||
| GHSラベル要素 | |||
|---|---|---|---|
| 絵表示 | ![]() ![]() ![]() ![]() | ||
| 注意喚起語 | 危険 | ||
| 危険有害性情報 | 飲み込むと有害 重篤な眼の損傷 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ 中枢神経系、消化管の障害 眠気又はめまいのおそれ 長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系の障害 水生生物に毒性 長期継続的影響によって水生生物に毒性 | ||
| 注意書き | |||
| 安全対策 | 取扱い後はよく手を洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 環境への放出を避けること。 | ||
| 応急措置 | 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。 口をすすぐこと。 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 気分が悪い時は医師に連絡すること。 漏出物を回収すること。 | ||
| 保管 | 施錠して保管すること。 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 | ||
| 廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | ||
| 他の危険有害性 | 情報なし | ||
| 3.組成及び成分情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学物質・混合物の区別 | 化学物質 | ||
| 化学名又は一般名 | メチル=2−ヒドロキシベンゾアート | ||
| 慣用名又は別名 | サリチル酸メチル | ||
| 英語名 | methyl 2-hydroxybenzoate | ||
| 濃度又は濃度範囲 | 情報なし | ||
| 分子式 (分子量) | C8H8O3 (152.15) | ||
| 化学特性 (示性式又は構造式) | ![]() | ||
| CAS番号 | 119-36-8 | ||
| 官報公示整理番号 (化審法) | 3-1585 | ||
| 官報公示整理番号 (安衛法) | - | ||
| GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | - | ||
| 4.応急措置 | |||
|---|---|---|---|
| 吸入した場合 | 空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 呼吸困難の場合は、被害者に酸素を吸入させる。 意識がないが呼吸がある場合は、横向きに安定した姿勢で寝かせる。 呼吸が止まっている場合は、呼吸補助具等を用いて人工呼吸を行う。口対口の人工呼吸は緊急の場合のみ行う。 医療機関に連絡する。 以上、ICSC、GESTIS参照。 | ||
| 皮膚に付着した場合 | 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 汚染された衣服を脱がせる。洗い流してから水と石鹸で皮膚を洗浄する。ポリエチレングリコール400で交互にすすぐことを推奨する。 以上、ICSC、GESTIS参照。 | ||
| 眼に入った場合 | 水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 医療機関に連絡する。 以上、ICSC、GESTIS参照。 | ||
| 飲み込んだ場合 | 口をすすぐこと。 直ちに医師に連絡すること。 嘔吐させない。 以上、ICSC、GESTIS参照。 | ||
| 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 吸入:咳。咽頭痛。 経口:吐き気。嘔吐。耳鳴り。中枢神経系および体内の酸?塩基バランスに影響を与えることがある。せん妄、振戦および昏睡を生じることがある。 反復または長期の接触により、皮膚感作を引き起こすことがある。 以上、ICSC参照。 | ||
| 応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。 | ||
| 医師に対する特別な注意事項 | 情報なし | ||
| 5.火災時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 適切な消火剤 | 水噴霧、粉末消火剤、アルコール耐性泡消火剤、二酸化炭素。 以上、ICSC、GESTIS参照。 | ||
| 使ってはならない消火剤 | 火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。 | ||
| 特有の危険有害性 | 火災の場合、有害物質(一酸化炭素および二酸化炭素)が放出される可能性がある。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 特有の消火方法 | 周囲の容器を水スプレーで冷却する。 可能であれば、容器を危険区域から出す。 加熱すると圧力が上昇し、破裂、爆発の危険がある。 爆発の危険性がある。 着火源を遮断する。 流出物を下水システムに流入させないこと。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 消火を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 自給式呼吸器を着用すること。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 6.漏出時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置 | 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 その地域から避難する。影響を受ける周囲に警告する。 適切な保護措置が実施された場合のみ、危険区域に立ち入ることができる。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 環境に対する注意事項 | 環境への放出を避けること。 周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。 | ||
| 封じ込め及び浄化の方法及び機材 | 漏出物を回収すること。 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。 こぼれた液体は吸収剤 (珪藻土、バーミキュライト、砂など) で吸収し、法規制に従って廃棄すること。 その後、その場所を換気し、こぼれた場所を洗浄する。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 二次災害の防止策 | 情報なし | ||
| 7.取扱い及び保管上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 取扱い | |||
| 技術的対策 | 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。 | ||
| 安全取扱い注意事項 | 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 使用前に取扱説明書を入手すること。 機器類は防爆構造とし、設備は静電気対策を実施する。 可燃性。 裸火禁止。 作業場所を清潔に保つよう注意すること。 作業場には、作業の進行に必要な量を超える物質を持ち込まない。 容器を開けたままにしないこと。 詰め替え、移動、開放使用には十分に換気をすること。 飛散を避けること。 ラベルのある容器にのみ充填すること。 物質を取り扱う際には接触を避けること。 床材への浸透を防止する。清掃中は、必要に応じて保護具を使用すること。 以上、ICSC、GESTIS参照。 | ||
| 接触回避 | 「10. 安全性及び反応性」を参照。 | ||
| 衛生対策 | 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 取扱い後はよく手を洗うこと。 蒸気またはミストの吸入を避けること。 シャワー付きの洗面所を用意し、可能であれば、外出着と作業着を別々に収納できる部屋を用意する。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 保管 | |||
| 安全な保管条件 | 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 施錠して保管すること。 食品容器は使用しないこと。 容器にラベルを貼ること。 できるだけ元の容器で保管すること。 物質は光に弱いので、光に当たらないように保護すること。 この物質は、危険な化学反応が起こり得る物質と一緒に保管してはならない。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 安全な容器包装材料 | 消防法、国連輸送法規で規定されている容器を使用する。 | ||
| 8.ばく露防止及び保護措置 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。 | ||||
| 管理濃度 | - | |||
| 濃度基準値 | ||||
| 八時間濃度基準値 | - | |||
| 短時間濃度基準値 | - | |||
| 許容濃度 | ||||
| 日本産衛学会 (2024年度版) | - | |||
| ACGIH (2024年版) | - | |||
| 設備対策 | 作業区域は、可能であれば物理的に隔離すべきである。 作業場所の換気をよくすること。 床には排水溝を設けないこと。 作業場に洗浄設備を設置すること。 可能であれば密閉式器具を使用すること。 高温の場合は特に排気が必要である。 容器やパイプラインにラベルを貼る。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 保護具 | ||||
| 呼吸用保護具 | フィルター装置の使用限度を超える濃度、体積18%未満の酸素濃度、または不明確な状況では、使用しない。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 手の保護具 | 厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」参照のこと 保護手袋を使用すること。手袋の材質は、その物質に対して十分な不浸透性と耐性を備えていなければならない。 物質に対する耐性がなければならない。着用前に締め付け具合を確認すること。手袋は取り外す前によく洗浄し、換気の良い場所に保管すること。 以下の材料は保護手袋に適している(透過時間 >= 8 時間):ブチルゴム - ブチル(0.5 mm)、フッ素ゴム - FKM (0.4 mm) 浸透時間が短いため、保護手袋には適していない:天然ゴム/天然ラテックス - NR、ポリクロロプレン - CR、ニトリルゴム/ニトリルラテックス - NBR、ポリ塩化ビニル - PVC 以上、GESTIS参照。 | |||
| 眼の保護具 | 十分な眼の保護具を着用すること。 化学用安全ゴーグルを着用すること。 眼を傷害する可能性のある蒸気やエアロゾルが発生した場合、完全なマスクを着用すること。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 皮膚及び身体の保護具 | リスクに応じて、不浸透性の適切な保護衣または適切な化学防護服を着用する。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 9.物理的及び化学的性質 | |||
|---|---|---|---|
| 物理的状態 | |||
| 物理状態 | 液体 | ||
| 色 | 無色〜淡黄色 | ||
| 臭い | ヒメコウジ様 | ||
| 融点/凝固点 | -8 ℃ (GESTIS (2024)) | ||
| 沸点、初留点及び沸騰範囲 | 222 ℃ (NFPA (14th, 2010)) | ||
| 可燃性 | 可燃性 (GESTIS (2024)) | ||
| 爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | 89 ℃ (GESTIS (2024)) | ||
| 引火点 | 96 ℃ (NFPA (14th, 2010)) | ||
| 自然発火点 | 454 ℃ (NFPA (14th, 2010)) | ||
| 分解温度 | データなし | ||
| pH | データなし | ||
| 動粘性率 | 1.535 mPa/s (25℃)、粘度 (ICSC(2023)) | ||
| 溶解度 | 水:0.74 g/L (30℃) (GESTIS (2024)) 有機溶剤:可溶 (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| n-オクタノール/水分配係数 | log Kow:2.55 (GESTIS (2024)) | ||
| 蒸気圧 | 0.13 hPa (20℃) (GESTIS (2024)) 1.3 hPa (54℃) (GESTIS (2024)) 0.0343 mmHg (25℃) (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 密度及び/又は相対密度 | 1.184 g/cm3 (25℃) (GESTIS (2024)) | ||
| 相対ガス密度 | 5.25 (空気=1) (NFPA (14th, 2010) | ||
| 粒子特性 | データなし | ||
| 10.安定性及び反応性 | |||
|---|---|---|---|
| 反応性 | 通常の取扱い条件下では安定である。 | ||
| 化学的安定性 | 通常の取扱い条件下では安定である。 | ||
| 危険有害反応可能性 | 通常の取扱い条件下では危険有害反応を起こさない。 | ||
| 避けるべき条件 | 直射日光を避け、冷暗所に保管する。 火気、加熱、高温、静電気、火花、爆発性混合気の形成 | ||
| 混触危険物質 | 感染性物質、放射性物質、爆発性物質 強酸化剤および強塩基 以上、ICSC、GESTIS参照 | ||
| 危険有害な分解生成物 | 火災等の場合は、毒性の強い分解生成物が発生する可能性がある。 | ||
| 11.有害性情報 | |||
|---|---|---|---|
| 急性毒性 | |||
| 経口 | (1)〜(5)より、区分4とした。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:887 mg/kg(CLH Report (2017)、EPA Pesticides RED (2005)) (2)ラットのLD50:2,820 mg/kg (雄:3,050 mg/kg、雌:2,640 mg/kg) (CLH Report (2017)) (3)ラットのLD50:1,250 mg/kg(CLH Report (2017)、EPA Pesticides RED (2005)) (4)ラット(雄)のLD50:1,220 mg/kg(CLH Report (2017)) (5)ラット(雌)のLD50:1,060 mg/kg(CLH Report (2017)) | ||
| 経皮 | (1)、(2)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:> 2,500 mg/kg(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)) (2)ウサギのLD50:> 5,000 mg/kg(EPA Pesticides RED (2005)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)) | ||
| 吸入: ガス | GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 | ||
| 吸入: 蒸気 | データ不足のため分類できない。なお、(1)、(2)は、ばく露時間が不明であり分類に利用できない。 【参考データ】 (1)ラットのLC50:> 400 mg/m3(> 64.4 ppm)(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)) (2)ラットのLC50:> 100 mg/m3(> 16.1 ppm)(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)) | ||
| 吸入: 粉じん及びミスト | データ不足のため分類できない。 | ||
| 皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | (1)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n=4)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、GLP、半閉塞、4時間適用、14日観察)において、1%溶液、5%溶液、10%溶液、25%溶液、100%溶液を適用したところ、10%以下の濃度で反応はみられなかった。25%溶液を適用した場合の紅斑の平均スコアは0.2、浮腫の平均スコアは0であり、100%溶液を適用した場合の紅斑の平均スコアは1.3、浮腫の平均スコアは0.6であった。すべての反応は14日以内に完全に回復したとの報告がある(ECHA RAC Background Document (2019)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 | ||
| 眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | (1)より、区分1とした。 【根拠データ】 (1)In vitro 眼刺激性試験(OECD TG 491、GLP)において、5%濃度の細胞生存率は25.5%、26.8%、31.0%であり、0.05%濃度の細胞生存率は11.6%、3.9%、19.9%であったとの報告がある(REACH登録情報情報 (Accessed Oct. 2020))。 | ||
| 呼吸器感作性 | データ不足のため分類できない。 | ||
| 皮膚感作性 | (1)〜(5)より、区分1Bとした。 【根拠データ】 (1)湿疹患者585名に対するパッチテスト(本物質2%剤)において、1978〜1979年の調査で陽性率は1%、1979〜1980年の調査で陽性率は2%であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018))。 (2)1,825名に対するパッチテスト(多施設調査、本物質2%剤)において、陽性率は0.4%(7/1,825名)であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018))。 (3)本物質は(1)(2)を含む複数の診断研究から、非選別の患者では1%未満、選別した患者では2%以下の頻度で皮膚感作性を生じる物質であると結論した(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018))。 (4)マウス(n=4/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429相当、溶媒:DMF)において、刺激指数(SI値)は1.5(12.5%)、1.7(25%)、5.9(50%)、7.1(100%)、EC3値は33%と算出されたとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 (5)マウス(n=4/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429相当、溶媒:MEK)において、刺激指数(SI値)は2.0(12.5%)、2.4(25%)、7.6(50%)、9.4(100%)、EC3値は28%と算出されたとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 | ||
| 生殖細胞変異原性 | (1)、(2)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)細菌を用いた復帰突然変異試験(OECD TG 471相当)において、陰性の報告がある(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)、RIFM Expert Panel Report (2007)、Patty (6th, 2012))。 (2)ほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験(OECD TG 473相当)において、陰性の報告がある(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)、RIFM Expert Panel Report (2007)、Patty (6th, 2012))。 | ||
| 発がん性 | データ不足のため分類できない。 【根拠データ】 (1)ラットの混餌投与による2年間慢性毒性試験結果からは発がん性の証拠はみられなかった(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020)、RIFM Expert Panel Report (2007))。しかし、これは古い慢性毒性試験であって、例数的にも少なく、発がん性試験の規準を満たさない。標準的な発がん性試験結果は、18種のサリチル酸(塩・エステル)のいずれについてもない(RIFM Expert Panel Report (2007))。 (2)肺腫瘍発生に敏感なA系マウスを用いたスクリーニング試験において、本物質は試験条件下(最大500 mg/kgを3回/週、8週間腹腔内投与)で肺腫瘍の発生増加を生じなかった(RIFM Expert Panel Report (2007))。 (3)本物質の加水分解物であるサリチル酸の発がん性ポテンシャル検討のためのスクリーニング試験として、ラットにサリチル酸ナトリウムを混餌または注射により投与した結果、いずれの臓器にも腫瘍発生を示した動物はみられなかった(REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 (4)ラット2年間慢性毒性試験及びA系マウスを用いた試験では、本物質の発がん性はみられなかった。遺伝毒性試験結果、サリチル酸及びその関連物質のよく知られている代謝機構を考慮すると、本物質が発がん性を有するとは考えにくい(RIFM Expert Panel Report (2007))。 | ||
| 生殖毒性 | (1)〜(2)より、区分1Bとした。なお、(1)では軽度な母体毒性がみられる用量で、児動物に奇形や内臓異常がみられ、(2)では出生率減少等の影響がみられている。 【根拠データ】 (1)ラットを用いた皮下投与による発生毒性試験(GLP、妊娠6〜17日)において、200 mg/kg/dayで親動物に体重増加抑制、摂餌量減少、児動物に体重の低値、外表奇形(頭蓋脊椎破裂・腹壁破裂)及び内臓異常(心室中隔欠損・尿管拡張・頸部における胸腺の残滓)の発生頻度がみられたとの報告がある(CLH Report (2018))。 (2)ラットを用いた皮下投与による発生毒性試験(GLP、妊娠6〜哺育21日)において、200 mg/kg/dayで親動物に一般毒性影響(死亡(2/20例)、体重減少、摂餌量減少)、児動物に出生率減少、包皮分離遅延、切歯萌出の遅延、骨格変異及び異常(頸椎骨の癒合・胸椎分節欠損)の増加がみられたとの報告がある。(CLH Report (2018))。 【参考データ等】 (3)ウサギを用いた皮下投与による発生毒性試験(GLP、妊娠6〜18日)において、発生毒性はみられなかったとの報告がある。(CLH Report (2018))。 (4)本物質のヒトへの影響に関するデータはないが、類似物質のアセチルサリチル酸(ASA)では多くの報告がある。ASAも本物質も体内では急速にサリチル酸に分解する。多くの報告は低濃度のASAがヒトの妊娠への有害影響はないとしているが、母体の出血、妊娠期間及び分娩への影響を示唆する報告もある。ただし、詳細な情報が不明なため、ヒトのデータからは結論を導けないと考えられる。(CLH Report (2018))。 (5)ASAについて、米国で実施された大規模コホート研究の結果、妊娠期に服用した妊婦と服用しなかった妊婦の間で、奇形児出産頻度は統計的に差異がなく催奇形性を有しないと考えられた。なお、ASAは子癇前症に予防効果が認められ、そのリスクがあると判断される妊婦には低用量のアスピリンを予防的に常用することが今日では推奨されるようになっており、ASAの類薬である本物質も実験動物でみられるような催奇形性はヒトでは生じないと考えられる(ECHA RAC Opinion (2019))。 (6)ラットの発生毒性試験では、母動物毒性が軽度な状況において、胎児に外表奇形、内臓異常が認められたことや、ハムスターでも本物質大量投与で奇形がみられた(Patty (2012))などから、生殖毒性の分類はRepr. 1Bが妥当であるとCLH Reportでは結論された。なお、RACはヒトではASAの事例からヒトでは催奇形性は生じないと判断し、証拠の重み付け評価として、実験動物での陽性の結果とヒトの陰性の結果に基づき、Repr. 2に分類すべきと結論している(ECHA RAC Opinion (2019))。 | ||
| 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | (1)〜(4)より、中枢神経系及び消化管が主標的臓器と考えられ、区分1(中枢神経系、消化管)に分類できる。また嗜眠、昏睡がみられていることから区分3(麻酔作用)を追加し、区分1(中枢神経系、消化管)、区分3(麻酔作用)とした。 【根拠データ】 (1)本物質の大量使用による副作用として、頭痛、悪心・嘔吐、食欲不振、頻脈等が生じるとの報告がある(JAPIC (2019))。 (2)本物質は経口経路ではよく吸収される。本物質は迅速かつ大半が加水分解され、サリチル酸とメタノールになる。本物質はヒトの場合、経口投与後に80%が90分以内に加水分解されるとの報告がある(CLH Report (2018))。 (3)サリチル酸の急性中毒は、アセチルサリチル酸(アスピリン)の過剰量、局所薬の過剰適用、サリチル酸軟膏の摂取等多くの症例報告がある。2004年だけでもサリチル酸のヒトばく露が米国のpoison control centerに40,405件報告されている。これらのうち、本物質の関与が12,500件(30%)含まれる。サリチル酸中毒の典型的な症状は吐血、頻呼吸、過呼吸、呼吸困難、耳鳴り、難聴、嗜眠、発作、錯乱等であるとの報告がある(CLH Report (2018))。 (4)経口摂取後のサリチル酸中毒の主症状は悪心・嘔吐、上腹部痛であり、時には吐血がみられる。また、軽度〜中程度のサリチル酸中毒の共通的な臨床症状には過呼吸、発汗、紅潮、発熱、被刺激性亢進、耳鳴り、難聴が含まれる。重篤な中毒症例では、呼吸困難、卒倒、幻覚、痙攣、乳頭浮腫及び昏睡が特に小児に発生するおそれがある。代謝性アシドーシス、非心原性肺水腫、肝毒性及び心リズム障害をきたすおそれもあるとの報告がある(IPCS PIM 642 (Accessed Oct. 2020)。 【参考データ等】 (5)ラットの単回経口投与試験において、投与後すぐに鎮静(depression)がみられ、死亡例は4〜18時間後に生じた。LD50値(887 mg/kg)と報告されている(CLH Report (2018)、REACH登録情報情報 (Accessed Oct. 2020))。 | |||
|---|---|---|---|---|
| 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | (1)、(2)より、区分1(中枢神経系)とした。なお(3)、(4)より、実験動物では区分2までの用量範囲内で標的臓器毒性はみられなかった。 【根拠データ】 (1)本物質は経口経路ではよく吸収される。本物質は迅速かつ大半が加水分解され、サリチル酸とメタノールになる。本物質はヒトの場合、経口投与後に80%が90分以内に加水分解されるとの報告がある(CLH Report (2018))。 (2)慢性サリチル酸中毒の徴候として、代謝性アシドーシス、低血糖、嗜眠、昏睡及び痙攣などである。との報告がある(IPCS PIM 642 (Accessed Oct. 2020))。 (3)ラットを用いた混餌投与による2年間経口投与試験において、50 mg/kg/day(区分2の範囲)で影響がみられず、250 mg/kg/day(区分該当しない範囲)で毒性所見がみられるが、標的臓器は明確ではないとの報告がある(RIFM Expert Panel Report (2007)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 (4)イヌを用いた強制経口による2年間経口投与試験において、50 mg/kg/day(区分2の範囲)で影響がみられず、150 mg/kg/day(区分該当しない範囲)で肝臓影響(相対重量増加、肥大、肝細胞肥大)がみられたとの報告がある(RIFM Expert Panel Report (2007)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2020))。 | |||
| 誤えん有害性* | データ不足のため分類できない。 | |||
| * JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。 | ||||
| 12.環境影響情報 | |||
|---|---|---|---|
| 生態毒性 | |||
| 水生環境有害性 短期(急性) | 藻類(デスモデスムス属)72時間ErC50 = 1.6 mg/L(EU CLP CLH, 2018)であることから、区分2とした。 | ||
| 水生環境有害性 長期(慢性) | 慢性毒性データを用いた場合、急速分解性に関する十分なデータが得られていない。藻類(デスモデスムス属)の72時間NOErC = 0.79 mg/L(EU CLP CLH, 2018)から、区分2となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性に関する十分なデータが得られていない。魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50 = 19.8 mg/L(EU CLP CLH, 2018)から、区分3となる。 以上の結果を比較し、区分2とした。 | ||
| 残留性・分解性 | 化審法分解度試験:良分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性)) | ||
| 生態蓄積性 | 情報なし | ||
| 土壌中の移動性 | 情報なし | ||
| オゾン層への有害性 | 当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。 | ||
| 13.廃棄上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。 廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。 容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 | ||
| 14.輸送上の注意 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。 | ||||
| 国際規制 | ||||
| 国連番号 | 3082 | |||
| 品名(国連輸送名) | 環境有害物質、液体、他に品名が明示されていないもの | |||
| 国連分類 | 9 | |||
| 副次危険 | - | |||
| 容器等級 | III | |||
| 海洋汚染物質 | 該当する | |||
| MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質 | 該当する | |||
| 国内規制 | ||||
| 海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う | |||
| 航空規制情報 | 航空法の規定に従う | |||
| 陸上規制情報 | 消防法の規定に従う。 | |||
| 特別な安全上の対策 | 消防法の規定によるイエローカード携行の対象物 | |||
| その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
| 緊急時応急措置指針番号* | 171 | |||
| * 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。 | ||||
| 15.適用法令 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
| 労働安全衛生法 | 皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2) | |||
| 化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) | 第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【161 サリチル酸メチル】 | |||
| 毒物及び劇物取締法 | - | |||
| 消防法 | 第4類 引火性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類) 【5 第三石油類非水溶性液体】 | |||
| 海洋汚染防止法 | 有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1) 【(174) サリチル酸メチル】 | |||
| 船舶安全法 | 有害性物質(危規則第3条危険物告示別表第1) | |||
| 航空法 | 有害性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1) | |||
| 16.その他の情報 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 参考文献 | ||||
| 9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。 ・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP) ・International Chemical Safety Cards (ICSC) ・Hazardous Substances Data Bank (HSDB) ・GESTIS Substance database (GESTIS) ・2024 Emengency Response Guidebook ・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」 ・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」 | ||||