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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
2,2,2-トリクロロ-1,1-ビス(4-クロロフェニル)エタノール
作成日 2008年10月03日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称2,2,2-トリクロロ-1,1-ビス(4-クロロフェニル)エタノール (別名: ジコホル) (Dicofol)
製品コードR02-B-061
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限農薬 (殺虫剤) (失効農薬) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分4
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2B
発がん性区分2
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (中枢神経系)
区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (肝臓、副腎)
区分2 (神経系)
分類実施日
(環境有害性)
平成18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示感嘆符健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
皮膚刺激
強い眼刺激
眠気又はめまいのおそれ
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
中枢神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による肝臓、副腎の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名2,2,2-トリクロロ-1,1-ビス(4-クロロフェニル)エタノール
別名ジコホル
ケルセン
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C14H9Cl5O (370.49)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号115-32-2
官報公示整理番号
(化審法)
4-226
官報公示整理番号
(安衛法)
7-(4)-359
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医療機関に連絡する。
皮膚に付着した場合汚染された衣服を脱がせる。
多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合口をすすぐこと。
水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 錯乱、痙攣、咳、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐、脱力感、錯乱。
皮膚: 発赤。
眼: 充血。
経口摂取: 腹痛、下痢、他の症状については、「吸入」参照。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、泡消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性可燃性。
有機溶剤を含む液体製剤は、引火性のことがある。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材こぼれた物質を、ふた付きの容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉塵を避けるために湿らせてから掃き入れる。
残留分を、注意深く集める。
地域規則に従って保管処理する。
この物質を環境中に放出してはならない。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件酸から離しておく。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
安全な容器包装材料国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)第3種粉じん: その他の無機及び有機粉じん*
吸入性粉じん: 2 mg/m3
総粉じん: 8 mg/m3
* 多量の粉じんの吸入によるじん肺を予防する観点から、この値以下とすることが望ましいとされる濃度。
ACGIH (2020年版)PNOS* TLV: 3 mg/m3 (Respirable particles)
PNOS* TLV: 10 mg/m3 (Inhalable particles)
* Particles (insoluble or poorly soluble) Not Otherwise Specified
設備対策粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器又は局所排気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式呼吸器を使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭いわずかに特徴的な臭い
融点/凝固点77〜78℃ (ICSC (2003))
沸点、初留点及び沸騰範囲180℃ (0.1 mmHg) (HSDB (Access on May 2020))
可燃性可燃性 (ICSC (2003))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界該当しない
引火点該当しない
自然発火点該当しない
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率該当しない
溶解度水: 溶けない (ICSC (2003))
アセトン、酢酸エチル、トルエン、メタノール、ヘキサン、イソプロパノールに易溶 (HSDB (Access on May 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Pow = 4.28 (ICSC (2003))
蒸気圧3.98E-007 mmHg (25℃) (technical) (HSDB (Access on May 2020))
密度及び/又は相対密度1.13 g/cm3 (ICSC (2003))
相対ガス密度該当しない
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性燃焼すると、分解する。
酸と接触すると、分解する。
塩化水素を含む、有毒で腐食性のフュームを生じる。
避けるべき条件燃焼、混触危険物質との接触
混触危険物質
危険有害な分解生成物塩化水素を含む、有毒で腐食性のフューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 575 mg/kg (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、GESTIS (Access on May 2020))
(2) ラットのLD50: 578 mg/kg (JMPR (2011))
(3) ラットのLD50: 雌: 578 mg/kg、雄: 595 mg/kg (農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992))
(4) ラットのLD50: 587 mg/kg (EPA Pesticides RED (1998))
(5) ラットのLD50: 雄: 595 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))
(6) ラットのLD50: 684〜809 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))
経皮【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 2,000〜5,000 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))
(2) ウサギのLD50: > 2,000〜< 5,000 mg/kg (農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992))
(3) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (JMPR (2011)、農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (8.0E-006 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): > 5 mg/L (GESTIS (Access on May 2020))
(2) 本物質の蒸気圧: 3.98E-007 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 8.0E-006 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分2とした。旧分類の根拠データが確認できないため、新たに得られた (1)〜(3) のデータを基に分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ウサギを用いた皮膚刺激性試験で、パッチ除去1時間後に極めて軽度〜明瞭な紅斑が2/6例に認められた。明瞭〜中程度ないし重度の紅斑が24、48及び72時間後に認められ、7日後には回復した。浮腫は、極めて軽度〜重度の浮腫がパッチ除去1時間後に全例に認められ、72時間後まで持続したが、7日後には回復していた。皮膚一次刺激指数(PII)は4.8で、軽度〜中程度の刺激性物質と考えられた (JMPR Addendum (2011))。
(2) ウサギを用いたEPA OPP 81-5 に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験において中等度の刺激性を示す (EPA Pesticides RED (1998))。
(3) ヒトにおいて短期間のばく露で眼や皮膚を刺激し、発赤を生じる。長期または反復して皮膚に接触すると皮膚炎を起こすことがある (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。

【参考データ等】
(4) 本物質の乳剤 (有効成分 51%) 及び水和剤 (有効成分 35%) のウサギを用いた皮膚刺激性試験において、中等度〜強度の刺激性と判定されている (農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分2Bとした。旧分類では製剤 (水和剤) の結果を基に区分1としていたため、原体の結果を基に分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ウサギを用いた眼刺激性試験 (点眼24時間後に洗眼) で、角膜、虹彩には無影響であったが、結膜刺激影響が 1及び24時間後に6/6例に、48時間後に5/6例で認められたが、72時間以内に消失し、本物質は軽度〜中程度の眼刺激性物質と考えられた(JMPR Addendum (2011))。
(2) EPA OPP 81-4 に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験において中等度の刺激性を示す (EPA Pesticides RED (1998))。
(3) ヒトにおいて短期間のばく露で眼や皮膚を刺激し、発赤を生じる (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。

【参考データ等】
(4) 本物質の乳剤 (有効成分 51%) のウサギを用いた眼刺激性試験において、角膜、結膜、虹彩に変化がみられたが、7日後までに消失した (農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992))。
(5) 本物質の水和剤 (有効成分 35%) のウサギを用いた眼刺激性試験において、角膜、結膜、虹彩に変化がみられ、結膜及び虹彩の反応は14日後までに消失したが、角膜の変化は21日後まで持続した (農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)〜(3) の記載はあるが、相反するデータが混在し、また、明確な結論が得られないため、分類できない。旧分類と相反するデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) において軽度から中等度の感作性を示すと報告されている (JMPR (2011))。
(2) モルモットを用いた改変ビューラー法による皮膚感作性試験 (感作: 4.2%溶液を6時間/回、3回/週、3.5週間、計10回貼付、最終感作の2週間後に11.7%溶液で惹起、1週間後に再惹起) では、一部の動物に紅斑が認められたが、対照群と明白な差が認められず、感作性に関し、明確な結論は得られていない (JMPR Addendum (2011))。
(3) EPA OPP 81-6 に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験において感作性を示さない (EPA Pesticides RED (1998))。

【参考データ等】
(4) 本物質の乳剤 (有効成分 43.8%) 及び水和剤 (有効成分 36.2%) のモルモットを用いた皮膚感作性試験において、軽度の感作性と判定されている (農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、ラット経口投与の骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性の報告がある (EPA Pesticides RED (1998)、JMPR addendum (2011)、HSDB (Access on May 2020)、農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性の報告がある (EPA Pesticides RED (1998)、JMPR addendum (2011)、HSDB (Access on May 2020)、CEBS (Access on May 2020)、農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992))。哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験で陰性、遺伝子突然変異試験で陰性 (EPA Pesticides RED (1998)、JMPR addendum (2011)、HSDB (Access on May 2020))、姉妹染色分体交換試験で陰性の報告がある (JMPR addendum (2011))。
発がん性【分類根拠】
(1)〜(3) より、IARC (1987年) よりも後 (1998年) に分類されたEPAの既存分類結果に基づき、区分2とした。新たな情報源を用いて検討し分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ3 (IARC Sup7 (1987))、EPAでグループC (possible human carcinogen) (EPA Pesticides RED (1998)) に分類されている。
(2) 雌雄のラット及びマウスに本物質を78週間混餌投与した発がん性試験において、雄のマウスで肝細胞がんの発生率及び肝細胞腺腫とがんの合計の発生率の有意な増加が認められた。雌のマウス及び雌雄のラットでは腫瘍発生率の増加は認められなかった (NTP TR90 (1978)、IARC 30 (1983)、EPA Pesticides RED (1998))。
(3) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験では、投与に関連した腫瘍発生率の増加は認められなかった (JMPR (2011)、EPA Pesticides RED (1998))。
生殖毒性【分類根拠】
(1) より、親動物毒性用量で生殖能に対する影響がみられている。ガイダンスに従い区分2とした。なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌投与による2世代生殖毒性試験において、親動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少、副腎皮質の肥大及び/または空胞化の発生率増加、卵巣間質細胞肥大及び肝細胞の変性) がみられる用量で、児動物の生存率低下がみられている (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、JMPR (1992)、JMPR addendum (2011))。

【参考データ等】
(2) 雌ラットの妊娠6〜15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (唾液分泌過多、体重増加の抑制、肝小葉中心性の肝細胞肥大等) がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992)、JMPR (1992)、JMPR addendum (2011))。
(3) 雌ウサギの妊娠7〜19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重減少、肝細胞の好酸性化、硝子化) がみられる用量において流産はみられたが、児動物に影響はみられていない (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、農薬工業会「農薬時報別冊「農薬技術情報」」第12号 (1992)、JMPR (1992)、JMPR addendum (2011))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分1 (中枢神経系)、区分3 (麻酔作用) とした。なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 急性症状として、眼や皮膚の発赤、錯乱、痙攣、咳、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐、脱力感、見当識障害が現れ、経口摂取で腹痛、下痢もみられる (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。
(2) 本物質を経口摂取 (摂取量不明) した1人で吐き気、めまい、嘔吐がみられた。吸入ばく露 (濃度不明) した3人でめまい、脱力感がみられ、うち2人で嘔吐、うち1人で鼻閉も起きたとの報告がある (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。
(3) 本物質製剤原液 (470 g/L) がこぼれてできた水溜りに12歳の少年が誤って落下し経皮ばく露をした症例で、初期症状として吐き気、めまい、見当識障害、錯乱、嗜眠、頭痛が現れ、水平眼振、平衡感覚の低下も認められたが、これらの症状は3週間で回復した。ばく露から8ヵ月後に神経心理テストを受けた結果、聴覚反射、直接記憶、不適切な反応を抑える能力などの認知機能の障害がみられ、認知障害及び情緒障害は18ヵ月間に亘り続いた (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分1 (肝臓、副腎)、区分2 (神経系) とした。(1) のラットの試験では区分1の範囲で甲状腺への影響もみられているが、肝臓影響の二次性変化 (肝酵素誘導に関連した甲状腺系の生理的変化) と判断し、標的臓器としなかった。また、(3) のイヌの試験では区分2の範囲で中枢神経抑制、心臓、精巣への影響、精子減少症もみられているが、(5) のより長期の試験でこれらの影響はみられていないことから標的臓器としなかった。旧分類の分類根拠データは参照できず、List 1、2の情報源の情報を用いて検討を行った結果、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた13週間混餌投与試験において、10 ppm以上 (雄/雌: 0.64/0.78 mg/kg/day、区分1の範囲) の雄で甲状腺濾胞上皮細胞の肥大が、100 ppm以上 (雄/雌: 6.49/7.84 mg/kg/day、区分1の範囲) の雌雄で肝臓の混合機能オキシダーゼ (MFO) 活性の上昇、肝細胞肥大が、500 ppm以上 (雄/雌: 32.01/36.11 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で肝臓重量増加、血中コルチコステロン濃度の低下、副腎皮質の空胞化、雌で甲状腺濾胞上皮細胞の肥大が、1,500 ppm (雄/雌: 95.84/105.91 mg/kg/day、雄は区分2の範囲、雌は区分2超) の雌雄で死亡 (雄5/10、雌8/10)、運動失調、嗜眠がみられた (EPA Pesticides RED (1998)、MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、JMPR (2011))。
(2) マウスを用いた13週間混餌投与試験において、125 ppm以上 (雄/雌: 18.2/29.3 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で肝臓のMFO活性の上昇、雌で肝臓重量増加が、250 ppm以上 (雄/雌: 38.2/56.2 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で肝細胞肥大、雌でGTP活性の上昇が、500 ppm以上 (雄/雌: 84.4/108.0 mg/kg/day、雄は区分2の範囲、雌は区分2超) の雌雄で副腎皮質細胞の肥大、肝細胞壊死及び空胞化、雌で腎臓の変性がみられた (同上)。
(3) イヌを用いた3ヵ月間の混餌投与試験において、100 ppm以上 (雄/雌: 3.3/3.4 mg/kg/day、区分1の範囲) の雄で副腎皮質刺激 (ACTH) 投与に応答したコルチゾール分泌低下、精子減少症が、300 ppm以上 (雄/雌: 9.9/9.8 mg/kg/day、区分1の範囲) の雌雄で呼吸困難、活動低下、脱水症、下痢、協調運動障害、流涎過多、QT間隔の延長、雄で肝重量の増加、雌でALT及びALP活性の増加が、1,000 ppm (雄/雌: 26/27 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で肝臓、精巣、心臓の病理組織学的変化、雌で肝重量の増加がみられた (EPA Pesticides RED (1998)、JMPR (2011))。
(4) ラットに24ヵ月間混餌投与した結果、50 ppm以上 (雄/雌: 2.23/2.69 mg/kg/day、区分1の範囲) の雌雄で肝臓のMFO活性の上昇、肝小葉中心性肝細胞の肥大、空胞化及び好酸性化、副腎皮質束状帯及び網状帯のびまん性の空胞化、雄で肝重量増加が、250 ppm (雄/雌: 11.34/14.26 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で体重増加の抑制、雌で肝重量増加、限局性の肝細胞過形成や慢性膀胱炎がみられた (EPA Pesticides RED (1998)、MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、JMPR (2011))。
(5) イヌに52週間混餌投与した結果、180 ppm (雄/雌: 5.71/5.42 mg/kg/day、区分1の範囲) の雌雄で肝細胞肥大、副腎の毒性作用、ALP活性のわずかな上昇、アルブミン濃度の低下、ACTH刺激試験においてコルチゾール分泌低下がみられた (IARC (1983)、EPA Pesticides RED (1998)、MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、JMPR (2011))。

【参考データ等】
(6) ラット、ウサギを用いた28日間経皮毒性試験では、ガイダンス値換算で区分2に相当する適用量 (ラット: 12 mg/kg/day: ウサギ: 19 mg/kg/day) では、体重減少、肝臓における小葉中心性肝細胞肥大 (ラット) がみられたのみであった (EPA Pesticides RED (1998))。

誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)甲殻類 (オオミジンコ) の48時間EC50 = 0.096 mg/L (環境省生態影響試験 (1998)) から、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)急性毒性が区分1、急速分解性がなく (BODによる分解度:0% (既存化学物質安全性点検データ)) 、生物蓄積性がある (BCF = 10000 (既存化学物質安全性点検データ)) ことから、区分1とした。
オゾン層への有害性-

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号3077
国連品名ENVIRONMENTALLY HAZARDOUS SUBSTANCE, SOLID, N.O.S.
国連危険有害性クラス9
副次危険-
容器等級L
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報-
特別な安全上の対策-
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*171
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法-
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)-
毒物及び劇物取締法-
航空法有害性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】3077 環境有害物質(固体)】
船舶安全法有害性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】3077 環境有害物質(固体)】
化学物質審査規制法第1種特定化学物質(法第2条第2項・施行令第1条)【14 2,2,2−トリクロロ−1,1−ビス(4−クロロフェニル)エタノール】
農薬取締法販売禁止農薬(法第18条第2項、平成15年3月5日省令第11号)【22 2,2,2−トリクロロ−1,1−ビス(4−クロロフェニル)エタノール】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用