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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
1−ブタンチオール
作成日 2008年10月06日
改訂日 2015年3月31日
改訂日 2022年03月15日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称1−ブタンチオール
化学品の英語名称1-Butanethiol
製品コードR03-C-048-MHLW
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限界面活性剤・農薬原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.0 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性引火性液体区分2
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(吸入:蒸気)区分4
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
皮膚感作性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性、麻酔作用)
分類実施日
(環境有害性)
ガイダンスVer.1.0 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性-
GHSラベル要素
絵表示炎感嘆符健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性の高い液体及び蒸気
飲み込んだ場合や吸入した場合は有害
強い眼刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
中枢神経系の障害
呼吸器への刺激のおそれ
眠気またはめまいのおそれ
注意書き
 安全対策熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
口をすすぐこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名1−ブタンチオール
慣用名又は別名n−ブチルメルカプタン
英語名1-Butanethiol
n-Butyl mercaptan
Thiobutyl alcohol
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C4H10S (90.18)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号109-79-5
官報公示整理番号(化審法)2-464
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:脱力感。錯乱。咳。めまい。嗜眠。頭痛。吐き気。嘔吐。息切れ。
皮膚: 発赤。痛み。
眼:充血。痛み。
経口摂取:「吸入」参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤小火災:粉末消火剤、二酸化炭素、散水、一般の泡消火剤
大火災:散水、水噴霧、一般の泡消火剤
使ってはならない消火剤棒状注水
火災時の特有の危険有害性引火性が高い。
火災の場合、有害物質(硫黄酸化物、硫化水素、一酸化炭素)が放出される可能性がある。
特有の消火方法安全にできるのであれば、火災の場所から損傷していない容器を移動する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
消火後も大量の水を用いて容器を冷却する。
安全弁から音が発生したり、タンクが変色したときは直ちに避難する。
火災に巻き込まれたタンクから常に離れる。
大火災の場合は、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する;これが不可能な場合にはその場所から避難し、燃えるままにしておく。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具を着用する。
密閉型防護服を着用する。
防火服は、熱に対する防護はするが、化学物質に対しては限定的である。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置適切な呼吸器用保護具を着用する。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
防炎、帯電防止保護服を着用する。
すべての着火源をすぐ近くから取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
漏洩物を取り扱うとき、用いるすべての設備は接地する。
漏出物に触れたり、その中を歩いたりしない。
流出や漏れている場所から、全ての方向に適切な距離をとる。
風下に適切な初期避難距離をとる。
環境に対する注意事項環境汚染を引き起こすおそれがある。
この物質を環境中に放出してはならない。
漏出物が地面や河川や下水に流出することを避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険でなければ、漏れを止める。
排水溝、下水溝、地下室や閉鎖場所への流入を防ぐ。
蒸気抑制泡は蒸気濃度を低下させるために用いる。
乾燥した土、砂や不燃材料で吸収させ、あるいは覆って容器に移す。
吸収したものを集めるとき、きれいな帯電防止工具を用いる。
大量の漏れ
液体漏洩物の前方にせきを作り、後で廃棄する。
散水は蒸気濃度を低下させる;しかし、密閉空間では発火を防止できないおそれもある。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
地域規則に従って保管・処理する。
二次災害の防止策付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火剤を準備する。
火花を発生しない安全な用具を使用する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
安全取扱注意事項熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
充填、取り出し、取り扱い時に圧縮空気を使用してはならない。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
耐火設備。
強酸化剤および酸から離しておく。
安全な容器包装材料消防法及び国連危険物輸送勧告モデル規則で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度等
日本産衛学会(2021年版)未設定
ACGIH(2022年版)TLV-TWA: 0.5 ppm
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
作業場では全体換気を行う。
設備は可能であれば密閉系とし局所排気装置を用いる。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を着用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度に対応した有機ガス用吸収缶を使用する
-作業者が粉塵に暴露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色〜黄色
臭い特異臭、腐敗臭
融点/凝固点-116 ℃(ICSC(2000)、GESTIS(2022)、危険物災害等支援システム(2022))
-115.7 ℃(PubChem(2022))
-119 ℃(PubChem(2022))
沸点、初留点及び沸騰範囲98 ℃(ICSC(2000)、GESTIS(2022)、危険物災害等支援システム(2022))
98.50 ℃(760.00mmHg)(PubChem(2022))
97.2〜101.7 ℃(PubChem(2022))
可燃性引火性(ICSC(2000))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界1.4〜10.2 vol%(空気中)(ICSC(2000))
1.4〜11.3 vol%(GESTIS(2022))
引火点2 ℃(Closed cup)(ICSC(2000))
1 ℃(Closed cup)(GESTIS(2022))
-18〜43 °F(PubChem(2022))
自然発火点<225 ℃(ICSC(2000))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: 0.06 g/100 ml(ICSC(2000))
水: 0.597 g/l(20℃)(GESTIS(2022))
アルコール、エーテル、硫化水素に易溶(PubChem(2022))
n-オクタノール/水分配係数Log Kow: 2.28 (ICSC(2000)、PubChem(2022))
蒸気圧4.0 kPa(20℃)(ICSC(2000)、GESTIS(2022))
45.5 mm Hg(25℃)(PubChem(2022))
密度及び/又は相対密度0.83 (水=1)(ICSC(2000))
0.84 g/cm3(20℃)(GESTIS(2022))
0.83679 (25℃/4℃)(PubChem(2022))
相対ガス密度3.1 (空気=1)(ICSC(2000)、PubChem(2022))
3.11 (同じ温度と圧力での乾燥空気に対する密度の比率)(GESTIS(2022))
1.2 (危険物災害等支援システム(2022))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性引火性が高い。火災時に刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。蒸気/空気の混合気体は、爆発性である。蒸気は空気より重く、地面に沿って移動して、遠距離発火の可能性がある。加熱すると分解する。有毒なイオウ酸化物のフュームを生じる。酸、塩基および強酸化剤、アルカリ金属と反応する。
避けるべき条件熱、発火源
混触危険物質酸、塩基、強酸化剤、アルカリ金属
危険有害な分解生成物硫黄酸化物

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、1,500 mg/kg (SIDS (2012)、DFGOT vol. 21 (2005)、PATTY (5th, 2001))、1,800 mg/kg (DFGOT vol. 21 (2005)、PATTY (5th, 2001)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg との報告 (SIDS (2012)) 及びウサギのLD50値として、> 34,600 mg/kg との報告 (DFGOT vol. 21 (2005)、PATTY (5th, 2001)) に基づき、区分に該当しないとした。
吸入: ガスGHSの定義における液体である。
吸入: 蒸気ラットのLC50値 (4時間) として、4,020 ppm (SIDS (2012)、DFGOT vol. 21 (2005)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (5th, 2001))、及び6,060 ppm (SIDS (2012)、DFGOT vol. 21 (2005)) との報告に基づき、区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (39,487 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入: 粉じん及びミストデータ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質の原液0.5mLを4時間適用した結果、皮膚反応はみられなかったとの報告 (SIDS (2012)) や、刺激性なし (PATTY (5th, 2001))、わずかな刺激性ありとの報告 (PATTY (5th, 2001)) がある。以上の結果から、区分に該当しない (国連分類基準の区分3) とした。ガイダンスの変更に伴い区分を変更した。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性ウサギを用いた眼刺激性試験で軽度から中等度の眼刺激性がみられたとの報告 (ACGIH (7th, 2001)) や、軽度から中等度の結膜炎がみられたとの報告 (PATTY (5th, 2001)) がある。 以上、「中等度の刺激性」との記載から、区分2Aとした。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)より、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。DFG MAK(2019)にて感作性知見が公表されたため、旧分類から皮膚感作性項目のみ見直した(2021年)。

【根拠データ】
(1)マウス(n = 4/群)への局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は0.67(5%)、0.43(10%)、2.45(25%)、5.38(50%)、14.4(100%)、EC3値は30%と算出されたとの報告がある(DFG MAK (2019)、REACH登録情報 (Accessed Dec. 2021))。

【参考データ等】
(2)DFGではShに分類している。
生殖細胞変異原性データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陰性である (SIDS (2012)、DFGOT vol. 21 (2005)、PATTY (5th, 2001))。
発がん性データ不足のため分類できない。
生殖毒性ラットを用いた吸入経路での催奇形性試験においては、母動物毒性がみられる用量においても胎児毒性及び胚毒性はみられていないが、マウスを用いた吸入経路での催奇形性試験においては、重篤な母動物毒性 (8/25例死亡) がみられる用量で胎児・胚の死亡がみられている (SIDS (2012)、DFGOT vol. 21 (2005)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (5th, 2001))。
旧分類の区分2の根拠となったマウスのデータは上記と同じ実験であり、新たに加えた情報源であるDFGOT vol. 21 (2005) には、親動物の一般毒性について詳しく記載されており、重篤な母動物毒性がみられていることから分類に用いなかった。
以上のように、催奇形性試験において明らかな影響はみられていない。しかし、生殖能に関する情報が得られていないことから分類できないとした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質は、気道刺激性がある (SIDS (2012)、ACGIH (7th, 2001))。ヒトにおいては、複数の事故例で疲労感、悪心、頭痛、嘔吐、眠気、衰弱、昏睡、筋力低下、中枢神経系抑制、呼吸数の増加、めまい、散瞳が報告されている (ACGIH (7th, 2001))。
実験動物では、ラットの3,870-9,810 ppm (14.9-37.7 mg/L) 4時間吸入ばく露で努力呼吸、活動低下、衰弱、振戦、マウスの2,500 ppm (9.6 mg/L) 4時間で中枢神経系抑制、筋痙攣、協調運動失調、チアノーゼがみられている。ラットの1,093-3,344 mg/kg経口投与では、不穏、鎮静、協調運動失調の報告がある (SIDS (2012)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 21 (2005)、PATTY (5th, 2001)、HSDB (Access on August 2014))。
実験動物でみられた中枢神経系への影響は区分1のガイダンス値範囲の濃度で認められた。
以上より、区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
なお、旧分類で記載されていた、「PATTY (4th, 1994) のニワトリを用いた経口投与試験において溶血性貧血」については、PATTY (5th, 2001) で確認できなかったため、不採用とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)ヒトでの反復ばく露による有害性知見はない。実験動物ではラットに本物質蒸気を13週間吸入ばく露した試験において、区分2に該当する濃度範囲 (0.26-0.55 mg/L/6時間) で、肺重量の増加 (雄) 及び肺胞マクロファージの増加 (雌雄)、赤血球数の減少など血液パラメータの変動 (雌) がみられたが、血液検査値の変化は背景対照値の範囲内で毒性学的意義はないと記述されている (SIDS (2012))。また、肺の所見は組織傷害を伴うものではなく、肺を含む気道組織全般に明瞭な器質性変化がみられないことから、呼吸器は標的臓器の対象外と考えられた。したがって、本試験からは分類に利用可能な標的臓器を特定できない。一方、経口経路では信頼できるデータはない (SIDS (2012))。すなわち、デ-タ不足のため分類できない。
誤えん有害性*データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の96時間EC50 = 1068300ug/L、魚類(Ictalurus punctatus)の96時間LC50 = 1100000 ug/L(いずれもAQUIRE, 2015)であることから、区分に該当しないとした。
水生環境有害性 長期(慢性)信頼性のある慢性毒性データが得られていない。難水溶性ではなく(水溶解度=597mg/L、PHYSPROP Database, 2009)、急性毒性が区分に該当しないであることから、区分に該当しないとした。
残留性・分解性情報なし
生態蓄積性情報なし
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号2347
品名(国連輸送名)ブチルメルカプタン
国連分類3
副次危険-
容器等級U
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*130
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)該当しない
毒物及び劇物取締法該当しない
消防法第4類 引火性液体 第一石油類 非水溶性(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)
船舶安全法引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)
港則法その他の危険物・引火性液体類(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」