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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
m−ジビニルベンゼン
作成日 2008年10月10日
改訂日 2020年3月13日
改訂日 2023年3月31日
改訂日 2025年3月14日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称m−ジビニルベンゼン
化学品の英語名称1,3-divinylbenzene
製品コードR06-C-076-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限イオン交換樹脂・合成ゴム・イオン交換膜・ABS樹脂・MBS樹脂・不飽和ポリエステル樹脂などスチレン系樹脂架橋剤(NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、平成18年度(2006年度)、マニュアル(H18.2.10版)(GHS 初版)
物理化学的危険性引火性液体区分4
自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性皮膚腐食性/刺激性区分2
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分3 (麻酔作用、気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (呼吸器)
誤えん有害性区分1
分類実施日
(環境有害性)
平成26年度(2014年度)、ガイダンスVer.1.0 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分2
水生環境有害性 長期(慢性)区分2

GHSラベル要素
絵表示健康有害性感嘆符環境
注意喚起語危険
危険有害性情報可燃性液体
皮膚刺激
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
呼吸器への刺激のおそれ
眠気又はめまいのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害
飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ
水生生物に毒性
長期継続的影響によって水生生物に毒性
注意書き
 安全対策熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
取扱い後はよく手を洗うこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
環境への放出を避けること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
無理に吐かせないこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。
施錠して保管すること。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名m−ジビニルベンゼン
慣用名又は別名ジビニルベンゼン
m−ビニルスチレン
英語名1,3-divinylbenzene
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C10H10 (130)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号108-57-6
官報公示整理番号
(化審法)
3-14
官報公示整理番号
(安衛法)
-
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)-

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で安静にさせる。
意識がないが呼吸がある場合は、横向きに安定した姿勢で寝かせ、低体温症から保護する。
呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。
呼吸が止まっている場合は、呼吸補助具(蘇生バッグなど)や口鼻蘇生法で人工呼吸を行う。口対口蘇生法は緊急事態の場合にのみ行う。
気分が悪い時や呼吸に関する症状が現れた場合は、医師の診察/手当てを受けること。
医師に連絡すること。
以上、GESTIS、ICSC参照。
皮膚に付着した場合皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。
皮膚に付着した部分を流水またはシャワーで洗い流したのち、水と石けん(鹸)で丁寧に洗浄する。
眼に入った場合まぶたを大きく広げて流水で少なくとも10分間、患部を洗眼する。
飲み込んだ場合無理に吐かせないこと。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
口をすすぎ、吐き出す。
自然嘔吐の場合は、嘔吐物が呼吸器に侵入するのを防ぐため、頭を胸より低くし、うつぶせの姿勢にする。
以上、GESTIS参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状急性: 眼や気道への刺激、中枢神経系の障害
慢性: 粘膜への刺激作用
以上、GESTIS参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火剤、泡消火剤、二酸化炭素。
使ってはならない消火剤火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。
特有の危険有害性火災等の場合は、毒性の強い分解生成物が発生する可能性がある。
特有の消火方法火元への燃焼源を断ち、消火剤を使用して消火する。
延焼の恐れのないよう水スプレーで周囲のタンク、建物等の冷却をする。
消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項環境への放出を避けること。
周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材漏出物を回収すること。
危険でなければ漏れを止める。
少量の場合、ウエス、雑巾等でよく拭き取り適切な廃棄容器に回収する。
大量の場合、盛土等で囲って流出を防止する。
取扱いや保管場所の近傍での飲食の禁止。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。。
安全取扱い注意事項粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
取扱い後はよく手を洗うこと。
容器を接地すること、アースをとること。
防爆型の電気機器、換気装置、照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
接触回避酸化剤、還元剤等
衛生対策この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
換気の良い場所で保管すること。
直射日光を避け、冷暗所に保管する。高温物を近づけない。
安全な容器包装材料消防法、国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度-
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度
日本産衛学会 (2023年度版)-
ACGIH (2024年版)TLV-TWA: 0.5 ppm(ジビニルベンゼン-エチルスチレン混合物、ジビニルベンゼン異性体の合計として [69011-19-4; 7525-62-4; 108-57-6; 105-06-6])(DSEN)
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼および身体洗浄のための設備を設ける。
高温下や、ミストが発生する場合は換気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具必要に応じて保護マスクや呼吸用保護具を着用する。
手の保護具手に接触する恐れがある場合、保護手袋を着用する。
眼の保護具眼に入る恐れがある場合、保護眼鏡やゴーグルを着用する。
皮膚及び身体の保護具必要に応じて保護衣、保護エプロン等を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体
無色
臭い不快臭
融点/凝固点-67 ℃ (ホンメル(1991))
-52.2 ℃ (MOE初期評価第14巻 (2016))
沸点、初留点及び沸騰範囲200 ℃ (GESTIS (2024))
約180 ℃ (ホンメル(1991))
121 ℃ (76 mmHg) (MOE初期評価第14巻 (2016))
可燃性可燃性
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界約1.1 Vol% (ホンメル(1991))
引火点> 50 ℃ (closed cup) (ホンメル(1991))
自然発火点データなし
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率1.09 cP (20℃) (HSDB in PubChem (2024))
溶解度水:不溶 (ホンメル(1991))
水:53 mg/L (25℃、推定値) (MOE初期評価第14巻 (2016))
n-オクタノール/水分配係数log Kow:3.8 (推定値) (MOE初期評価第14巻 (2016))
蒸気圧0.772 hPa (25℃) (GESTIS (2024))
0.58 mmHg (=77 Pa) (25℃) (MOE初期評価第14巻 (2016))
密度及び/又は相対密度0.9294 g/cm3 (20℃) (MOE初期評価第14巻 (2016))
0.93 (水=1) (ホンメル(1991))
相対ガス密度4.48 (空気=1) (ホンメル(1991))
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性通常の取扱い条件下では安定である。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性通常の取扱い条件下では危険有害反応を起こさない。
避けるべき条件火気、加熱、高温、静電気、火花、爆発性混合気の形成
混触危険物質酸化剤、還元剤等
危険有害な分解生成物火災等の場合は、毒性の強い分解生成物が発生する可能性がある。

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
本物質自体のデータはなく、分類できない。

【参考データ等】
(1)ラットのLD50 (OECD TG401、GLP):> 2,000 mg/kg (被験物質: ジビニルベンゼン (DVB) 96.2% (不純物としてエチルビニルベンゼン3.2%、p-tert-ブチルカテコール1010 ppm、その他0.6%含有))(既存点検結果 (Accessed May, 2024)、ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))
(2)ラットのLD50 (OECD TG401相当、非GLP) :> 2,000 mg/kg (被験物質: DVB-HP (m-DVBとp-DVBの混合物 (70-85%), その他エチルビニルベンゼン等))(ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))
(3)ラットのLD50 (OECD TG401相当、非GLP) :4,100 mg/kg (被験物質: DVB-55 (DVB 55.7%, エチルビニルベンゼン 40.4%, その他ジエチルベンゼン 4.5%等)(ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))
経皮【分類根拠】
本物質自体のデータはなく、分類できない。

【参考データ等】
(1)ウサギのLD50 (OECD TG402相当、非GLP) :7,950 mg/kg (被験物質: DVB-HP (m-DVBとp-DVBの混合物 (70-85%), その他エチルビニルベンゼン等))(ACGIH (2022)、GESTIS (Accessed July 2024)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
本物質自体のデータはなく、分類できない。

【根拠データ】
(1)ラットLC50 (6h) (OECD TG403相当、非GLP):>5 mg/L (4時間換算値: >6.1 mg/L)、マウスのLC50 (6h) (OECD TG403相当、非GLP): >0.8 - <2.3 mg/L (4時間換算値: >1.0 - <2.8 mg/L (区分2または区分3の範囲)) (被験物質: DVB-55 (DVB 55.7%, エチルビニルベンゼン 40.4%, その他ジエチルベンゼン 4.5%等))(ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データがなく分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、本物質を含むジビニルベンゼン (CAS登録番号 1321-74-0) のデータも含め検討した。(1)より区分2とした。

【根拠データ】
(1)DVB-HP (m-DVBとp-DVBの混合物 (70-85%), その他エチルビニルベンゼン含有) を用いたウサギ(n= 1)の反復経皮適用試験(OECD TG404相当、非GLP:原体 0.1 mL (耳の内側皮膚)、0.5 mL (腹部)、耳の内側皮膚: 10日間に10回半閉塞適用、腹部無傷皮膚: 14日間に10回開放適用、腹部有傷皮膚: 連続3日間開放適用、21日間観察)において、耳の内側皮膚、腹部無傷皮膚で軽度の発赤、軽度の腫脹、軽度の剥離、中等度の火傷、瘢痕形成が、腹部有傷皮膚で顕著な発赤、軽度〜中等度の腫脹、中等度の剥離、中等度の火傷、瘢痕形成がみられた(ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))。24/48/72時間の紅斑スコアは無傷皮膚で>=4-<=5 (14日以内に回復)、有傷皮膚で>=3-<=5 (21日以内に回復)、浮腫スコアは無傷皮膚で>=2-<=3 (14日以内に回復)、有傷皮膚で>=3-<=4 (10日以内に回復)とされている(ECHA CHEM (Accessed July 2024))。

【参考データ等】
(2)ジビニルベンゼンは、吸入、摂取、皮膚や眼との接触により、眼、皮膚、呼吸器系に中程度の刺激を及ぼす (Patty (6th, 2012))。
(3)DVB-55 (DVB 55.7%, エチルビニルベンゼン 40.4%, その他ジエチルベンゼン 4.5%等) を用いたウサギ(n= 3)の反復経皮適用試験(OECD TG404相当、非GLP:原体1〜2 mL、耳の内側皮膚: 5日/週で2週間半閉塞適用、腹部無傷皮膚: 5日/週で2週間開放適用、腹部有傷皮膚: 3日間開放適用、21日間観察)において、24時間適用で耳の内側皮膚で軽度の刺激、腹部で軽度の紅斑が、反復適用でわずかな紅斑、浮腫、ごく軽度の壊死(有傷皮膚では中等度の壊死)、中等度の剥離がみられた(ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)ジビニルベンゼンは、吸入、摂取、皮膚や眼との接触により、眼、皮膚、呼吸器系に中程度の刺激を及ぼす (Patty (6th, 2012))。
(2) DVB-HP (m-DVBとp-DVBの混合物 (70-85%), その他エチルビニルベンゼン等) を用いたウサギ(n= 1)の眼刺激性試験(OECD TG405相当、非GLP:原体0.1 mL)の結果、一過性のごく軽度の結膜発赤がみられたが1時間後に回復した(ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))。24/48時間の結膜スコア、角膜混濁スコア、虹彩スコアはいずれも1 (72時間後に回復) とされている(ECHA CHEM (Accessed July 2024))。
(3)DVB-55 (DVB 55.7%, エチルビニルベンゼン 40.4%, その他ジエチルベンゼン 4.5%等) を用いたウサギ(n= 3)の眼刺激性試験(OECD TG405相当、非GLP:原体0.1 mL)の結果、中等度の疼痛反応、結膜の軽度の炎症がみられた(ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データがなく分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)DVB-55 (DVB 55.7%, エチルビニルベンゼン 40.4%, その他ジエチルベンゼン 4.5%等) について、マウス(5匹/群)を用いた局所リンパ節試験 (LLNA)(OECD TG429、GLP、適用濃度:25〜100%)の結果陽性 (EC値 = 10.9%) の報告がある(ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))。
(2)ACGIHでは、divinylbenzene-ethylstyrene mixture (CAS登録番号 none) についてDSENに分類している (ACGIH (2022))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、本物質を含むジビニルベンゼン (CAS登録番号 1321-74-0) のデータも含め検討した。(1)、(2)より区分に該当しないとした。なお、情報源の情報を精査し、分類結果を変更した (2024年度)。

【根拠データ】
(1)in vivoでは、DVB-HP (ジビニルベンゼン80% (m-体 約60%; p-体 約20%)、エチルビニルベンゼン20%) を用いたマウス小核試験 (3ヶ月間吸入ばく露、12.5〜200 ppm) で陰性であった (NTP TR534 (2006))。
(2)In vitroでは、DVB-HP (ジビニルベンゼン80% (m-体 約60%; p-体 約20%)、エチルビニルベンゼン20%) を含む種々のグレードのDVBを用いた細菌の復帰突然変異試験でいずれも陰性であった (NTP TR534 (2006)、ACGIH (2022)、MOE初期評価第14巻 (2016)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))。

【参考データ等】
(3)DVB-55 (DVB 55.7%, エチルビニルベンゼン 40.4%, その他ジエチルベンゼン 4.5%等) についてマウス小核試験 (3日間吸入ばく露) が2件報告されており、1件では75 ppmまでの試験で弱陽性を示したが、もう1件の150 ppmまでの試験では陰性であった (ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))。
(4)DVB-55 (DVB 55.7%, エチルビニルベンゼン 40.4%, その他ジエチルベンゼン 4.5%等) について、脾臓細胞を用いた染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験で陽性の報告がある (NTP TR534 (2006)、ACGIH (2022)、MOE初期評価第14巻 (2016)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))。
発がん性【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、本物質を含むジビニルベンゼン (CAS登録番号 1321-74-0) のデータも含め検討した。ヒトの発がん性に関する情報はない。動物試験では(1)、(2)の報告があるが、不確かな証拠と考えられ、分類できないとした。

【参考データ等】
(1)ラットに DVB-HP (ジビニルベンゼン80% (m-体 約60%; p-体 約20%)、エチルビニルベンゼン 20%) を2年間吸入ばく露させた試験で、雄で尿細管がん及び脳に悪性神経膠細胞腫瘍 (2匹が星状膠細胞腫、1匹が乏突起膠細胞腫) がみられ、これらは自然発生率の範囲を超えていた。これより、NTPは雄ラットには発がん性の曖昧な証拠 (equivocal evidence) があると結論した (NTP TR534 (2006)、ACGIH (2022)、環境省リスク評価書第14巻 (2016))。
(2) マウスに DVB-HP (ジビニルベンゼン80% (m-体 約60%; p-体 約20%)、エチルビニルベンゼン 20%) を2年間吸入ばく露させた試験で、雌で肺腫瘍の発生率が自然発生率の範囲を超えていた。これより、NTPは雌マウスには発がん性の曖昧な証拠 (equivocal evidence) があると結論した (NTP TR534 (2006)、ACGIH (2022)、MOE初期評価第14巻 (2016))。
(3)国内外の評価機関による発がん性分類では、ACGIHでA3 (ACGIH (2022)) に分類されている。
生殖毒性【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、本物質を含むジビニルベンゼン (CAS登録番号 1321-74-0) のデータも含め検討した。(1)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1)ジビニルベンゼン (96.2% (不純物としてエチルビニルベンゼン3.2%、p-tert-ブチルカテコール1010 ppm、その他0.6%含有)) を被験物質としたラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422、GLP) において、1,000 mg/kg/dayで親動物の一般毒性として雌雄で体重増加抑制、雄でALT、GGT増加等、雌で死亡あるいは瀕死 (各1例)、腎臓の皮髄境界部尿細管の変性・壊死等がみられ、乳腺の発育不良及び巣作り不良、7/9例で新生児が全例死亡、黄体数及び着床痕数、出生児数の有意な減少がみられ、100 mg/kg/day 以上の群で出生児の体重は有意に低かった。また総出産児数、哺育0日の新生児数、出生率、哺育4日の生存児数及び生存率の低値、分娩率及び児の産出率の低値傾向がみられた (既存点検結果 (Accessed May 2024))。

【参考データ等】
(2)ジビニルベンゼンとエチルビニルベンゼンを主成分とする反応生成物 (ジビニルベンゼンとエチルビニルベンゼンの含有率: 98.3%) を被験物質とした ラットを用いた強制経口投与による拡張一世代試験 (OECD TG433、GLP) の結果、P0親動物は最高用量の500 mg/kg/dayまで一般毒性、生殖毒性はみられなかったが、F1動物では500 mg/kg/dayで出生4日までの生存率低下がみられた。F1動物の発達神経毒性、発達免疫毒性への影響はみられなかった (ECHA CHEM (Accessed July 2024))。
(3)ジビニルベンゼンとエチルビニルベンゼンを主成分とする反応生成物 (ジビニルベンゼンとエチルビニルベンゼンの含有率: 98.3%) を被験物質とした ラットを用いた出生前発生毒性試験 (OECD TG414、GLP) の結果、母動物では100 mg/kg/day以上で甲状腺濾胞細胞肥大、350 mg/kg/day以上で小葉中心性肝細胞肥大、650 mg/kg/dayで体重増加抑制、摂餌量減少、肝臓および甲状腺/副甲状腺重量の増加がみられ、胎児では650 mg/kg/dayで平均体重の低値がみられた (ECHA CHEM (Accessed July 2024))。
(4)ジビニルベンゼンとエチルビニルベンゼンを主成分とする反応生成物 (ジビニルベンゼンとエチルビニルベンゼンの含有率: 98.3%) を被験物質とした ウサギを用いた出生前発生毒性試験 (OECD TG414、GLP) の結果、母動物では100 mg/kg/day以上で甲状腺濾胞細胞肥大、350 mg/kg/day以上で摂餌量減少、排便量の減少、650 mg/kg/dayで流産 (2例)、体重減少がみられ、胎児では350 mg/kg/dayで平均体重の低値がみられた (ECHA CHEM (Accessed July 2024))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、本物質を含むジビニルベンゼン (CAS登録番号 1321-74-0) のデータも含め検討した。(1)、(2)より、区分3(麻酔作用、気道刺激性)とした。

【根拠データ】
(1)DVB-HP (m-DVBとp-DVBの混合物 (70-85%), その他エチルビニルベンゼン含有)) を用いた急性経口毒性試験において、630 mg/kg (区分2の範囲) で中枢神経抑制がみられた (ACGIH (2022))。
(2)ジビニルベンゼンは、作業環境濃度が4 ppmに達する職場の作業者に軽度の呼吸器刺激を引き起こし、蒸気の全身的影響として、めまいやぼんやりした感じ (dazed feelning) が報告された (GESITS (Accessed July 2024))。

【参考データ等】
(3)ジビニルベンゼンは、吸入、摂取、皮膚や眼との接触により、眼、皮膚、呼吸器系に中程度の刺激を及ぼす (Patty (6th, 2012))。
(4)DVB-55 (DVB 55.7%, エチルビニルベンゼン 40.4%, その他ジエチルベンゼン 4.5%等) について加温による重合と毒性影響を調査した試験で、温度の上昇により重合度が増すと濃度依存的な毒性がみられた。DVB-55及びジビニルベンゼンポリマーの蒸気 (蒸気/ミストが混合した状態と考えられる) をラットに7時間単回吸入ばく露した結果、2340 ppm (60℃、ヒューム生成)で鼻腔の変化が、3,312 ppm (80℃、ヒューム生成)で運動失調、頻呼吸、眼の刺激、鼻炎が、4835 ppm (100℃、ヒューム生成)で雄の死亡 (3/5例)、血尿、体重減少が、27317 ppm (120〜130℃、ヒューム生成) で雌の死亡 (1/5例)、末梢血管拡張、無気力、流涎、間質性および上皮性角膜炎を伴う両眼角膜混濁、呼吸困難、ばく露14日後に気管支および肺胞の炎症を伴う局所性無気肺および肺胞膨張が、80000 ppm (120〜130℃、ヒューム生成)雌の死亡 (5/5例) がみられた (ACGIH (2022)、ECHA CHEM (Accessed July 2024))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
本物質自体のデータはないが、本物質を含むジビニルベンゼン (CAS登録番号 1321-74-0) のデータも含め検討した。(1)より、経口経路では区分に該当しないと考えられるが、(2)〜(5)の吸入ばく露試験結果より、区分1 (呼吸器) とした。なお、情報源のデータを見直し、分類結果を変更した(2024年度)。

【根拠データ】
(1) ジビニルベンゼン (96.2% (不純物としてエチルビニルベンゼン3.2%、p-tert-ブチルカテコール1010 ppm、その他0.6%含有)) を用いた強制経口投与 (雄: 49日間、雌: 41〜53日間、30〜1000 mg/kg/day) によるラットの反復・生殖発生毒性スクリーニング併合試験 (OECD TG422、GLP) において、1,000 mg/kg/day (90日換算値: 456〜589 mg/kg/day、区分2超) で親動物の一般毒性として雌雄で体重増加抑制、雄でALT、GGT増加等、雌で死亡あるいは瀕死 (各1例)、腎臓の皮髄境界部尿細管の変性・壊死等がみられた (既存点検結果 (Accessed May 2024))。
(2) DVB-HP (ジビニルベンゼン80% (m-体 約60%; p-体 約20%)、エチルビニルベンゼン20%) を用いたラットの14週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、25 ppm (0.13 mg/L)(ガイダンス値換算: 0.10 mg/L、区分1の範囲)以上で肝臓、腎臓重量の増加、胸腺重量の減少、100 ppm (ガイダンス値換算: 0.41 mg/L、区分2の範囲) 以上で嗅上皮の基底細胞過形成、200 ppm (0.8 mg/L、区分2の範囲) で嗅上皮の変性がみられた (NTP TR534 (2006)、ACGIH (2022)、MOE初期評価第14巻 (2016)、ECHA CHEM (Accessed July 2024)、Patty (6th, 2012))。
(3) DVB-HP (ジビニルベンゼン80% (m-体 約60%; p-体 約20%)、エチルビニルベンゼン20%) を用いたマウスの14週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、全てのばく露群 (12.5 ppm (ガイダンス値換算: 0.07、区分1の範囲) 以上) の雌雄で鼻腔側壁、嗅上皮と嗅腺の壊死がみられ、雌では嗅上皮と嗅腺の萎縮を伴っていた。200 ppm (ガイダンス値換算: 0.83 mg/L、区分2) の雄全例 (10/10) と雌9/10例が死亡し、肝臓と腎臓の壊死がみられた (同上)。
(4) DVB-HP (ジビニルベンゼン80% (m-体 約60%; p-体 約20%)、エチルビニルベンゼン20%) を用いたラットの105週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、100 ppm (ガイダンス値換算: 0.53 mg/L、区分2の範囲) 以上の全ばく露群で鼻腔嗅上皮の変性及び再生様変化、400 ppm (2.13 mg/L、区分2超) の雄では肺の限局性慢性炎症の増加、腎尿細管の過形成及び腎症の頻度増加がみられた (同上)。
(5)DVB-HP (ジビニルベンゼン80% (m-体 約60%; p-体 約20%)、エチルビニルベンゼン20%) を用いたマウスの105週間吸入暴露試験 (6時間/日、5日/週) では、10 ppm (ガイダンス値換算: 0.05 mg/L、区分1の範囲) 以上の雌雄で鼻腔への影響(化膿性炎症など)、異型性の細気管支過形成の増加、100 ppm (ガイダンス値換算: 0.41 mg/L、区分2の範囲) の雄で肺胞上皮の過形成の増加がみられた (同上)。

誤えん有害性*【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)炭化水素である。
(2)動粘性率が20℃で1.17 mm2/s (20℃での粘性率1.09 mPa・s (HSDB (Accessed August 2024)) と密度0.9294 g/cm3 (HSDB (Accessed August 2024)) から算出) であることから、40℃の動粘度が20.5 mm2/s以下である。

【参考データ等】
(3)反応性ジビニルベンゼン (reactive DVBs) は重度の肺損傷を引き起こす可能性があり、少量でも液体を吸引すると生命を脅かす可能性がある (GESTIS (Accessed May 2024))。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間ErC50=1.83mg/L(環境庁生態影響試験, 1997、環境省リスク評価第7巻, 2009)であることから、区分2とした。
水生環境有害性 長期(慢性)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(既存点検, 1988)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC=0.353 mg/L(環境庁生態影響試験, 1997、環境省リスク評価第7巻, 2009)であることから、区分2となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(既存点検, 1988)、魚類(メダカ)の96時間LC50=4.16mg/L(環境庁生態影響試験, 1997、環境省リスク評価第7巻, 2009)であることから、区分2となる。
以上の結果から、区分2とした。
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法濃縮度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性-
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。


14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号3082
品名(国連輸送名)環境有害物質、液体、他に品名が明示されていないもの
国連分類9
副次危険-
容器等級III
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う
航空規制情報航空法の規定に従う
陸上規制情報消防法の規定に従う
特別な安全上の対策消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*171
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【276 ジビニルベンゼン】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降) 【940 ジビニルベンゼン】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【276 ジビニルベンゼン】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降) 【940 ジビニルベンゼン
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号) 【4の4 その他の引火点30℃以上65℃未満のもの】
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)-
毒物及び劇物取締法-
消防法第4類 引火性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類) 【4 第三石油類非水溶性液体】
船舶安全法有害性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法有害性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申) 【89 ジビニルベンゼン】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・2024 Emengency Response Guidebook
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」