職場のあんぜんサイト

安全データシート
無水マレイン酸
作成日 2002年3月12日
改定日 2014年3月31日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称無水マレイン酸(Maleic anhydride)
製品コードH25-B-026
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限不飽和ポリエステル樹脂、テトラハイドロフラン、フマール酸、コハク酸、リンゴ酸、紙サイズ剤、合成樹脂塗料、塩ビ安定剤、可塑剤、農薬、皮なめし、界面活性剤

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日H25.8.22、政府向けGHS分類ガイダンス(H25.7版)を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
皮膚腐食性及び皮膚刺激性区分1
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性区分1
呼吸器感作性区分1
皮膚感作性区分1
特定標的臓器毒性(単回ばく露)区分1(呼吸器)、区分1(消化管、肝臓)
特定標的臓器毒性(反復ばく露)区分1(呼吸器、血液系)、区分2(腎臓)
分類実施日2006年10月30日
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分3
水生環境有害性 (長期間)区分外
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」に該当する。なお、健康有害性については後述の11項に、「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」の記述がある。
GHSラベル要素
絵表示感嘆符腐食性健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
重篤な眼の損傷
吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ
呼吸器、消化管、肝臓の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器、血液の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による腎臓の障害のおそれ
水生生物に有害
注意書き
安全対策粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。−【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用しても良い
応急措置飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
直ちに医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
口をすすぐこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。
呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
保管施錠して保管すること。
廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名無水マレイン酸
別名2,5-フランジオン(2,5-Furandione)
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C4H2O3
(98.057)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号108-31-6
官報公示整理番号(化審法)(2)-1101
官報公示整理番号(安衛法)既存
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。直ちに医師に連絡すること。
呼吸に関する症状が出た場合には、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合直ちに、汚染された衣類をすべて脱ぐこと、又は取り去ること。
皮膚を速やかに洗浄すること。
多量の水と石鹸で洗うこと。
直ちに医師に連絡すること。
汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 灼熱感、咳、咽頭痛、息切れ、喘鳴
喘鳴の症状は2〜3時間経過するまで現れない場合が多く、安静を保たないと悪化する。したがって、安静と経過観察が不可欠である。
子の物質により喘鳴の症状を示した者は、以後この物質に接触しないこと。
皮膚: 皮膚の乾燥、発赤、痛み
この物質は高温の液体(70℃)としても輸送される;皮膚との接触をさけること。
眼: 発赤、痛み、熱傷
経口摂取: 吐き気、腹痛、灼熱感、嘔吐、下痢
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項安静と医学的な経過観察が必要。

5.火災時の措置
消火剤水噴霧、水溶性液体用泡消火剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤アルカリ金属を含む粉末消火剤(ABC消火器)
特有の危険有害性加熱あるいは水の混入により容器が爆発するおそれがある。
火災によって刺激性、腐食性又は毒性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
容器内に水を入れてはいけない。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣(耐熱性)を着用すること。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
風上に留まる。
低地から離れる。
密閉された場所に立入る前に換気する。
環境に対する注意事項環境中に放出してはならない。
河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
封じ込め及び浄化の方法及び機材回収、中和: 漏洩物は清潔な帯電防止工具を用いて集め、密閉できる非金属製又はステンレス鋼製空容器に回収する。
危険でなければ漏れを止める。
漏出物を取扱うとき用いる全ての設備は接地する。
少量の場合、乾燥土、砂や不燃材料で覆い更にプラスチックシートで飛散を防止し、雨に濡らさない。
二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策技術的対策: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
局所排気・全体換気: 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気・全体換気を行なう。
安全取扱い注意事項周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行うこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
環境への放出を避けること。
接触回避「10.安定性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後はよく手を洗うこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
保管
安全な保管条件技術的対策: 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
混触危険物質: 「10.安定性及び反応性」を参照。
保管条件: 熱、火花、裸火のような着火源から離して保管すること。−禁煙。
混触危険物質から離して保管すること。
容器を密閉して換気の良い冷所で保管すること。
施錠して保管すること。
安全な容器包装材料情報なし

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会(2013年度版)0.1ppm , 0.4mg/m3
ACGIH(2013年版)TLV-TWA 0.01mg/m3(インハラブル粒子)
設備対策防爆の電気・換気・照明機器を使用すること。
気中濃度を推奨された許容濃度以下に保つために、工程の密閉化、局所排気、その他の設備対策を使用する。
高熱取扱いで、工程で粉じん、ヒュームが発生するときは、空気汚染物質を許容濃度以下に保つために換気装置を設置する。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸用保護具適切な呼吸器保護具を着用すること。
防じんマスク、簡易防じんマスク
手の保護具適切な保護手袋を着用すること。
二トリルゴム及び塩ビは適切な保護材料ではない。ネオプレンが推奨される。
眼の保護具適切な眼の保護具を着用すること。
化学飛沫用のゴーグル及び適切な顔面保護具を着用すること。
皮膚及び身体の保護具適切な保護衣、顔面用の保護具、保護靴等を着用すること。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状結晶
白色
臭い刺激臭
臭いのしきい(閾)値情報なし
pH2.42 (1×10-2 mol/L 水溶液):HSDB (2013)
融点・凝固点53℃:ICSC (1997)
沸点、初留点及び沸騰範囲202℃:ICSC (1997)
引火点102℃(密閉式):ICSC (1997)
蒸発速度(酢酸ブチル=1)情報なし
燃焼性(固体、気体)可燃性:ICSC(1997)
燃焼又は爆発範囲1.4-7.1 vol %: ICSC (1997)
蒸気圧25Pa (25℃):ICSC (1997)
蒸気密度3.4(空気=1):ICSC (1997)
比重(相対密度)1.5g/cm3: ICSC (1997)
溶解度水への溶解度 : 40g/100mL(水):HSDB(2013)
エステル形成とアルコールに可溶:ICSC(1997)
n-オクタノール/水分配係数log Pow = 1.62:HSDB (2013)
自然発火温度477℃:ICSC (1997)
分解温度情報なし
粘度(粘性率)情報なし

10.安定性及び反応性
反応性通常の使用条件下では安定。
化学的安定性通常の使用条件下では安定。
危険有害反応可能性アルカリ類、アルコール類、アミン類と反応する。
水の存在下、鉄と反応して低温発火性のマレイン酸鉄塩を生成する。
水と混合すると、水和熱及びフマール酸への転移熱で温度が上がり、発火することがある。

避けるべき条件水、混触危険物質との接触。
混触危険物質アルカリ類、アルコール類、アミン類
危険有害な分解生成物燃焼により、一酸化炭素、二酸化炭素などを生成する。
加水分解により、刺激性・腐食性の強いマレイン酸を生成する。

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として対象とした13件のデータ[ 235 mg/kg (雌) (DFGOT vol.4 (1992))、400 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)、DFGOT vol.4 (1992)、CICAD 75 (2009))、409 mg/kg (雄) (DFGOT vol.4 (1992))、495 mg/kg、824 mg/kg、840 mg/kg、850 mg/kg、900 mg/kg (DFGOT vol.4 (1992))、1.03 g/kg (雄)、1.09 g/kg (SIDS (2007))、1,050 mg/kg (DFGOT vol.4 (1992))、1,100 mg/kg (DFGOT vol.4 (1992))、約1g/kg (ACGIH (7th, 2011)、SIDS (2007)) ]は、1件が区分3、12件が区分4に該当することから、該当数の多い区分4とした。
経皮ウサギを用いた LD50=2,620 mg/kg (DFGOT vol.4 (1992)、ACGIH (7th, 2011)、CICAD 75 (2009)、SIDS (2007)) に基づき、JIS分類基準の区分外 (国連分類基準の区分5) とした。なお、今回の調査で入手した情報 (ACGIH (7th, 2011)、CICAD 75 (2009)、SIDS (2007)) に基づき分類した。
吸入:ガスGHSの定義における固体である。
吸入:蒸気GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミストデータ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性DFGOT vol.4 (1992) のウサギを用いた皮膚刺激性試験データの記述に、4時間適用の結果ではないが、「水で湿潤粉末の適用で壊死を生じた」とある。また、SIDS (2007) には、ウサギを用いた4時間適用の皮膚刺激性試験で「重度の刺激性」との記載がある。さらに、本物質は、EU DSD分類において「C; R34」、EU CLP分類において「Skin Corr. 1B H314」に分類されている。今回の調査で入手した SIDS (2007) と、EU DSD分類及びEU CLP分類を追加した。細区分の情報 (ウサギのドレイズ法またはヒトでの知見が軽微で7日以内に回復することを示す情報) が得られなかったため「区分1」に変更した。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性DFGOT vol.4 (1992) のウサギを用いた眼刺激性試験の結果の記述に「重度の刺激性と、時に非可逆性の損傷がみられた」、及び、ACGIH (7th, 2011) のウサギを用いた眼刺激性試験の結果の記述に「重度で永続的なうっ血と、角膜内血管進入がみられた」との記載がある。また、SIDS (2007) には、ウサギを用いた眼刺激性試験で「重度の刺激性」との記述があり、NITE初期リスク評価書 (2008) には、ウサギを用いた別の眼刺激性試験で、「結膜嚢への適用の結果、腐食性がみられた」との記述がある。さらに、本物質は皮膚腐食性物質であり、EU DSD分類において「C; R34」、EU CLP分類において「Skin Corr. 1B H314」に分類されている。以上の情報に基づき区分1とした。
呼吸器感作性呼吸器感作性: 本物質は産衛学会勧告 (2012) において「呼吸器感作性物質第2群」に、ACGIH (7th, 2011) において「Sensitizer (SEN) 」に、DFG vol.11 (1998) において「Sah」に、EU DSD分類において「R42/43」、EU CLP分類において「Resp. Sens. 1 H334」に分類されている。さらに日本職業・環境アレルギー学会特設委員会 (2004) が気道感作性物質として報告していることから、区分1とした。
皮膚感作性皮膚感作性: 本物質は産衛学会勧告 (2012) において「皮膚感作性物質第2群」に、ACGIH (7th, 2011) において「Sensitizer (SEN) 」に、DFG vol.11 (1998) において「Sah」に、EU DSD分類において「R42/43」、EU CLP分類において「Skin Sens. 1 H317」に分類されている。さらに、CERIハザードデータ集 (2001) のモルモットを用いたマキシマイゼーション法の結果の記述に「陽性」とあり、また、日本職業・環境アレルギー学会特設委員会 (2004) が皮膚感作性物質として報告していることから、区分1とした。
生殖細胞変異原性データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoでは、ラットの骨髄細胞を用いる染色体異常試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2007)、ACGIH (7th, 2011)、DFGOT vol.4 (1992))。一方、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験 (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2007)、ACGIH (7th, 2011)、DFGOT vol.4 (1992)、NTP DB (Access on July 2013)) で陰性であるが、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験で陽性である (SIDS (2007)、NITE初期リスク評価書 (2008))。なお、この陽性結果は詳細不明であり不確かと評価されている (SIDS (2007))。分類ガイダンスの改訂により区分を変更した。
発がん性ACGIHでA4に分類されている (ACGIH (7th, 2011)) ことから、分類できないとした。分類ガイダンスの改訂により区分を変更した。
生殖毒性ラットに経口投与した2世代生殖毒性試験において、親動物に死亡、体重増加抑制など顕著な毒性が発現する用量まで親動物の生殖毒性及び児動物の発生影響は認められなかった (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2007)、DFGOT vol.4 (1992)) との記述、並びにラットの経口投与による催奇形性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、体重減少) が発現する用量でも胎児には影響がみられなかった (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2007)、ACGIH (7th, 2011)、DFGOT vol.4 (1992)) との記述から、区分外とした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)ヒトでは鼻、喉に刺激性を示し (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第2巻:暫定的有害性評価シート (2003))、重篤な症例では気管支炎、気腫 (環境省リスク評価第2巻:暫定的有害性評価シート (2003))、喘息を生じることがある (環境省リスク評価第2巻:暫定的有害性評価シート (2003)、DFGOT vol.4 (1992)) との記述より、区分1 (呼吸器) に分類した。一方、実験動物ではラット又はイヌの経口投与で消化管粘膜刺激による消化管の急性炎症、吐血、血便、並びにラットの経口投与で肺、肝臓の出血が区分1のガイダンス値の用量 (180-256 mg/kg) でみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、DFGOT vol.4 (1992)) との記述から、区分1 (消化管、肝臓) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)ヒトでは吸入による職業ばく露で呼吸器症状 (咳、鼻炎、息苦しさ、喘鳴) が見られたとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)) がある。また、吸入による職業ばく露を受けたヒトで溶血性貧血を生じた症例が報告されており (ACGIH 7th, 2011))、一試験のみの所見であるが、実験動物 (ラット4週間混餌投与) でも貧血所見がみられており (NITE初期リスク評価書 (2008))、ヒトでの溶血性貧血は本物質反復ばく露による影響と判断した。この他、実験動物ではラットの90日間経口 (混餌) 投与試験において、区分2のガイダンス値上限の用量 (100 mg/kg/day) で腎臓への影響 (腎臓の腫大、褪色、尿細管のびまん性拡張、変性など) が、また、ラット、ハムスター、サルの6ヶ月間吸入ばく露試験において、区分1のガイダンス値の範囲内の濃度 (ガイダンス値換算濃度: 0.001 mg/L) で鼻腔粘膜への影響 (粘膜上皮の化生または過形成、炎症) が認められた (NITE初期リスク評価書 (2008))。以上より、区分1 (呼吸器、血液系)、区分2 (腎臓) に分類した。なお、旧分類はList 2, 3の情報源を主体に分類しており、今回はList 1の情報源を基に分類したため、分類結果が一部変更された (旧分類より区分2 (肝臓、脾臓) を削除)。
吸引性呼吸器有害性データ不足のため分類できない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)藻類(セネデスムス)の72時間ErC50 = 29mg/L (CERI・NITE有害性評価書 (2006)) から、区分3とした。
水生生物に有害。
水生環境有害性(長期間)急速分解性があり(TOCによる分解度:85%)(日本化学物質安全・情報センター「化審法既存化学物質安全性点検データ集」) かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Pow = 1.62)(PHYSPROP DB (2005)) ことから、区分外とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄の前に、可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行って危険有害性のレベルを低い状態にする。
廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
燃焼法 可燃性の溶剤等と共に、アフターバーナ及びスクラバ付き焼却炉の火室へ噴霧し、焼却する。
汚染容器及び包装容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、分類実施中の12項の環境影響情報とに、基づく修正の必要がある。
国際規制
国連番号2215
国連品名MALEIC ANHYDRIDE
国連危険有害性クラス8
副次危険
容器等級L
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う
航空規制情報航空法の規定に従う
陸上規制情報規制なし
特別安全対策輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
他の危険物や燃えやすい危険物に上積みしない。
他の危険物のそばに積載しない。
移送時にイエローカードの保持が必要。
緊急時応急措置指針番号156

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
大気汚染防止法有害大気汚染物質
揮発性有機化合物 法第2条第4項
海洋汚染防止法有害液体物質
航空法腐食性物質、輸送禁止
船舶安全法腐食性物質
港則法その他の危険物・腐食性物質
労働基準法疾病化学物質

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
<モデルSDSを利用するときの注意事項>
本安全モデルデータシートは作成年月日時点における情報に基づいて記載されておりますので、事業場においてSDSを作成するに当たっては、新たな危険有害性情報について確認することが必要です。さらに、本安全データシートはモデルですので、実際の製品等の性状に基づき追加修正する必要があります。また、特殊な条件下で使用するときは、その使用状況に応じた情報に基づく安全対策が必要となります。