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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
無水酢酸
作成日 2002年11月26日
改訂日 2006年09月11日
改訂日 2020年03月13日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称無水酢酸 (Acetic anhydride)
製品コードR01-B-021
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限酢酸繊維素原料、医薬 (アスピリン)・香料原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R2.3.13、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性引火性液体区分3
金属腐食性物質区分3
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分4
急性毒性 (吸入: 蒸気)区分3
皮膚腐食性/刺激性区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分1
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (呼吸器)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (呼吸器)
分類実施日
(環境有害性)
H30年度、政府向けGHS分類ガイダンス (平成25年度改訂版 (Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分3
GHSラベル要素
絵表示炎腐食性どくろ健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性液体及び蒸気
金属腐食のおそれ
飲み込むと有害
重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷
重篤な眼の損傷
吸入すると有毒
呼吸器の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害
水生生物に有害
注意書き
 安全対策熱,高温のもの,火花,裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
他の容器に移し替えないこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
物的被害を防止するためにも流出したものを吸収すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。医師に連絡すること。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水又はシャワーで洗うこと。直ちに医師に連絡すること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
耐腐食性/耐腐食性内張りのある容器に保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名無水酢酸
別名酸化アセチル
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C4H6O3 (102.09)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号108-24-7
官報公示整理番号
(化審法)
2-690
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水又はシャワーで洗うこと。直ちに医師に連絡すること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。コップ1、2杯の水を飲ませる。気分が悪いときは医師に連絡すること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咳、息苦しさ、息切れ、咽頭痛
皮膚: 発赤、皮膚熱傷、痛み、水疱、症状は遅れて現われることがある
眼: 流涙、充血、痛み、熱傷
経口摂取: 腹痛、灼熱感、ショック/虚脱
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤アルコール耐性泡消火薬剤、粉末消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤直接水をかけない。
特有の危険有害性引火性。49℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。
特有の消火方法大規模な火災は、大量の水で遠距離から消火する。
水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護自給式呼吸器、防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材専門家に相談する。
個人用保護具: 化学保護衣、顔面シールド及び空気中濃度に応じた酸性ガス及び蒸気用フィルター付マスク
換気する。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
残留液を、砂又は不活性吸収剤に吸収させる。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項熱,高温のもの,火花,裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
他の容器に移し替えないこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件施錠して保管すること (毒劇物)。
耐火設備で保管する。
耐腐食性/耐腐食性内張りのある容器に保管すること。
換気の良い乾燥した場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
食品や飼料及び混触危険物質から離しておく。
安全な容器包装材料消防法、国連危険物輸送勧告で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2019年度版)5 ppm、21 mg/m3 (最大許容濃度)
ACGIH (2019年版)TLV-TWA: 1 ppm、4 mg/m3
TLV-Ceiling limit: 3 ppm
設備対策容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
保護具
呼吸用保護具呼吸用保護具を使用する。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具呼吸用保護具と併用して、顔面シールド又は眼用保護具を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色 (ホンメル (1991))
臭い特異臭 (ICSC (2006))
融点/凝固点-73℃ (ICSC (2006))
沸点、初留点及び沸騰範囲139℃ (ICSC (2006))
可燃性引火性 (ICSC (2006))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界2.7〜10.3 vol% ICSC (2006)
引火点49℃ (c.c.) (ホンメル (1991))
自然発火点330℃ (ホンメル (1991))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水:反応するし、酢酸が生じる (ホンメル (1991)
エタノール、ベンゼンに可溶、エーテルに混和、四塩化炭素に微溶 (HSDB (Access on May 2019))
n-オクタノール/水分配係数log Pow = -0.58 (EST) (PHYSPROP Database (2019))
蒸気圧0.5 kPa (20℃) (ICSC (2006))
密度及び/又は相対密度1.08 (水 = 1) (ICSC (2006))
相対ガス密度3.5 (空気 = 1) (ICSC (2006))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性燃焼すると分解し、有毒なガス及び酢酸などの有毒なヒュームを生じる。
アルコール、アミン、酸化剤、強塩基及び水と 激しく反応する。
水あるいは乾燥するとの存在下で、多くの金属を侵す。
避けるべき条件混触危険物質との接触
混触危険物質アルコール、アミン、酸化剤、強塩基、水
危険有害な分解生成物有毒なガス及び酢酸などの有毒なヒューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 630 mg/kg (DFGOT vol.13 (1999))
(2) ラットのLD50:1,780 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、ACGIH (7th, 2011)、DFGOT vol.13 (1999)、SIDS (2002)、BUA 70 (1991)、HSDB (Access on June 2019))
(3) ラットのLD50:1,800 mg/kg (SIDS (2002))
経皮【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50:4,000〜4,320 mg/kg (ACGIH (7th, 2011))
(2) ウサギのLD50:4,000 mg/kg (DFGOT vol.13 (1999)、SIDS (2002)、BUA 70 (1991)、HSDB (Access on June 2019))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
(1)、(2) より、区分3とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気濃度 (6,711 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間):1,000 ppm (SIDS (2002)、HSDB (Access on June 2019))
(2) ラットのLC50 (4時間):4.2 mg/L (約1,005.9 ppm) (BUA 70 (1991))

【参考データ等】
(3) ラットの4時間吸入:1,000 ppmで全例生存 (ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1990)、SIDS (2002)、BUA 70 (1991))
(4) ラットの4時間吸入:2,000 ppmで全例死亡 (ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1990)、SIDS (2002)、BUA 70 (1991))
(5) ラットの4時間吸入:1,000 mL/m3 (1,000 ppm) で全例生存 (DFGOT vol.13 (1999))
(6) ラットの4時間吸入:2,000 mL/m3 (2,000 ppm) で全例死亡 (DFGOT vol.13 (1999))
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 本物質は眼、粘膜及び皮膚に重度の刺激を示し、液体の飛沫による重度の火傷および皮膚の水疱形成が報告されている (ACGIH (7th, 2001))。
(2) ウサギに本物質を24時間閉塞適用した皮膚刺激性試験で火傷と水疱形成を示した (ACGIH (7th, 2011))。
(3) 本物質は皮膚、眼、粘膜に対し腐食性を有する (SIDS (2002))。
(4) 本物質は皮膚と眼を激しく刺激し、液体に直接接触すると火傷を生じる (産衛学会許容濃度提案理由書 (1990)、HSDB (Access on June 2019))。

【参考データ等】
(5) ウサギに本物質0.5 mLを24時間適用した皮膚刺激性試験で軽度刺激性 (mildly irritative) と報告されている (DFGOT vol.13 (1999)、SIDS (2002))。
(6) EU-CLP分類でSkin Irrit. 1B (H314) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) ウサギに5%溶液を0.005 mL適用した眼刺激性試験で強度刺激性 (strongly irritative) を示した (DFGOT vol.13 (1999))。
(2) 本物質は眼、粘膜及び皮膚に重度の刺激を示し、液体の飛沫による重度の火傷及び皮膚の水疱形成が報告されている。また、5 ppmの蒸気は眼、上気道を刺激する。眼に対する障害は即時性の火傷として特徴づけられ、その後、角膜及び結膜浮腫の程度が重症化する (ACGIH (7th, 2001))。
(3) 本物質は強刺激性物質あるいは腐食性物質である。ばく露濃度に依存して眼の火傷、流涙、角膜及び結膜の浮腫、角膜混濁を生じる。重度の角膜に対する腐食作用は失明につながる (DFGOT vol.13 (1999))。
(4) 本物質は皮膚と眼を激しく刺激し、液体に直接接触すると火傷を生じる (産衛学会許容濃度提案理由書 (1990)、HSDB (Access on June 2019))。
(5) 皮膚腐食性 (区分1) に分類されている。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)、(2)の記載はあるが、詳細が確認できず、データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1) モルモットを用いた皮膚感作性試験法 (0.05 mLを週2回、2-2.5週間皮内投与、25%溶液で惹起) において感作性反応があったと記載がある (ACGIH (7th, 2011)、SIDS (2002))。
(2)皮膚に対する感作作用が認められる (産衛学会許容濃度提案理由書 (1990))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) よりin vivo、in vitroを含む標準的組合せ試験でいずれも陰性であったことから、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、ラット骨髄の小核試験で陰性の報告がある (SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2001))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、マウスリンフォーマ試験で陰性の報告がある (DFGOT vol.13 (1999)、SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2011)、NTP DB (Access on June 2019))。
発がん性【分類根拠】
(1) の既存分類結果から、ガイダンスに従い分類できないとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2011)) に分類されている。

【参考データ等】
(2) 本物質及び本物質の加水分解生成物である酢酸 (CAS番号 64-19-7) を製造していた化学工場の作業者を対象とした後ろ向きコホート研究の結果、前立腺がんによる死亡のSMR (標準化死亡比) は330 (前立腺がんの死亡期待値1.8人 vs 観察された死亡数6人) であったが、本物質へのばく露は検出限界未満 (酢酸は0.1〜0.2 ppm) とされ、ばく露期間との関連性もみられなかった (ACGIH (7th, 2011))。
生殖毒性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、(3)より加水分解物の酢酸 (CAS番号 64-19-7) は発生毒性を生じないと考えられる。

【参考データ等】
(1) 雌ラットの妊娠6〜15日に吸入ばく露した発生毒性試験のスクリーニング試験において、母動物毒性 (重度の気道刺激性および体重減少) がみられる濃度で、4例中2例に全胚吸収がみられている (SIDS (2002))。このデータは妊娠動物数が4匹と少なく十分なデータではない。
(2) 雌マウスの妊娠11〜13日に腹腔内注射した発生毒性試験において胎児の異常がみられたとの記載があるが、母体への影響、または胎児への特定の影響に関する情報はない (SIDS (2002))。
(3) 無水酢酸の加水分解生成物である酢酸は、ウサギの妊娠6日〜18日に5%酢酸を経口投与した試験で催奇形性を示さなかったとの記載がある (SIDS (2002))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(3) のヒトでの報告より、区分1 (呼吸器) とした。旧分類は (4) の情報に基づいて区分3 (麻酔作用) としていたが、詳細が不明であるため、不採用とした。したがって分類結果を変更した。なお、酢酸 (CAS番号 64-19-7) では (5) のように、ヒトで大量の経口摂取による血液系への影響が報告されているが、本物質に関して同様の影響が生じる可能性は低いと考えられる。

【根拠データ】
(1) ヒトでは濃度5 ppm以上の本物質の蒸気のばく露により、眼と上気道の刺激を生じる。更に高濃度でのばく露により、鼻粘膜の潰瘍と気管支痙攣を起こす可能性がある (DFGOT vol.13 (1999)、ACGIH (7th, 2011))。
(2) 22歳の染色作業労働者 (男性) 1名が、本物質の入ったドラム缶の爆発により、本物質のばく露を受けて、体表の35%に重度の熱傷を生じた。熱傷は3週間以内に治癒したが、肺水腫の発症の後に両側性肺気胸症 と肺気管支性瘻孔を生じた。患者は事故の2ヵ月後に死亡し、剖検で胸膜腔に線維性の癒着が認められた (ACGIH (7th, 2011)、HSDB (Access on June 2019))。
(3) 工場での事故により、本物質と酢酸のエアロゾルのばく露を受けた労働者が、眼と上気道の重度の刺激、激しい咳及び呼吸困難を示した。入院した18名のうち、14名が重度の結膜炎と急性咽喉炎、12名が角膜混濁、11名が鼻の熱傷、12名が反応性気道機能不全症候群を示したが、5〜25日以内に全員が回復した (ACGIH (7th, 2011)、HSDB (Access on June 2019))。
【参考データ等】
(4) ヒトで高濃度の本物質のばく露により眠気、めまい、昏睡を伴う中枢神経系抑制がみられた (SIDS (2002))。
(5) 本物質の加水分解生成物である酢酸では、ヒトで大量の経口摂取により血液系への影響 (播種性血管内凝固障害、重度の溶血) を生じた複数の症例が報告されている (ACGIH (7th, 2004)、PATTY (6th, 2012))。しかしながら吸入ばく露では同様の影響の報告はない。本物質に関しては、ヒトでの経口ばく露の報告はなく、本物質の激しい臭気のために、経口摂取は考えにくいと記載されている (GESTIS (Access on September 2019))。他の経路では、(2)、(3) の事故によるばく露例も含めて血液系への影響の報告はない。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1) より、区分1 (呼吸器) とした。

【根拠データ】
(1) ラットに本物質の蒸気1〜20 ppmを13週間 (6時間/日、5日/週) 吸入ばく露した試験で、5 ppm (ガイダンス値換算: 0.015 mg/L、区分1の範囲) で気道 (鼻腔、喉頭、気管) の軽度の刺激を示す病理組織所見、20 ppm (ガイダンス値換算: 0.06 mg/L、区分1の範囲) で眼及び気道刺激を示す症状、体重減少、気道 (鼻腔、喉頭、気管、肺) の軽度〜中等度の刺激を示す病理組織所見がみられた。観察された病理組織学的変化は、上皮過形成及び/又は扁平上皮化生を伴う主に局所的な炎症性病変であった (SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2011))。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)甲殻類 (オオミジンコ) 24時間EC50 = 55 mg/L (pH未調整、SIDS (1997)) であることから、区分3とした。
水生環境有害性 (長期間)慢性毒性データが得られていない。急速分解性があり (分解性が良好 (化審法DB (1993)))、蓄積性がない (LogKow: -0.58 (EST, PHYSPROP Database (2018))) と予測されることから、区分外とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号1715
国連品名ACETIC ANHYDRIDE
国連危険有害性クラス8
副次危険3
容器等級II
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する(Z)
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、毒物及び劇物取締法、消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、毒物及び劇物取締法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*137
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)【4の4 その他の引火点30℃以上65℃未満のもの】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【552 無水酢酸】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【552 無水酢酸】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)該当しない
毒物及び劇物取締法劇物(指定令第2条)【98の2 無水酢酸及びこれを含有する製剤】
化学物質審査規制法優先評価化学物質(法第2条第5項)【93 無水酢酸】
消防法第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)【4 第二石油類非水溶性液体】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【5 第二石油類非水溶性液体】
航空法腐食性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】1715 無水酢酸】
船舶安全法腐食性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】1715 無水酢酸】
港則法その他の危険物・腐食性物質(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2ヌ 無水酢酸】
海洋汚染防止法有害液体物質(Z類物質)(施行令別表第1)【128 無水酢酸】
麻薬及び向精神薬取締法麻薬向精神薬原料(法第2条(7)、別表第4)【7 無水酢酸】
特定麻薬向精神薬原料(法第2条(40)、施行令第1条)【10 無水酢酸】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用