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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
メチルイソブチルケトン
作成日 2008年10月06日
改訂日 2016年3月31日
改訂日 2022年03月15日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称メチルイソブチルケトン
化学品の英語名称Methyl isobutyl ketone
製品コードR03-C-054-MHLW
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限硝酸セルロースおよび合成樹脂製造溶剤、溶剤 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性引火性液体区分2
健康に対する有害性急性毒性(吸入:蒸気)区分3
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2B
発がん性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分3(気道刺激性、麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(中枢神経系)
分類実施日
(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性-
GHSラベル要素
絵表示炎どくろ健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性の高い液体及び蒸気
吸入すると有毒
眼刺激
発がんのおそれ
呼吸器への刺激のおそれ
眠気またはめまいのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系の障害
注意書き
 安全対策熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
取扱い後は手をよく洗うこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
 応急措置皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
 保管換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名メチルイソブチルケトン
慣用名又は別名4−メチル−2−ペンタノン
MIBK
英語名Methyl isobutyl ketone
4-Methyl-2-pentanone
4-methylpentan-2-one
MIBK
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C6H12O (100.16)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号108-10-1
官報公示整理番号(化審法)2-542
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
医師に連絡すること。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚に付着した場合皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合情報なし
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咳。下痢。めまい。頭痛。吐き気 咽頭痛。意識喪失。嘔吐。脱力感。
皮膚:皮膚の乾燥。発赤。痛み。
眼:充血。痛み。
経口摂取:腹痛。他の症状については、「吸入」参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤小火災:粉末消火剤、二酸化炭素、散水、耐アルコール泡消火剤
大火災:散水、水噴霧、耐アルコール泡消火剤
使ってはならない消火剤棒状注水
火災時の特有の危険有害性引火性が高い。
火災の場合、有害物質(一酸化炭素)が放出される可能性がある。
特有の消火方法安全にできるのであれば、火災の場所から損傷していない容器を移動する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
消火後も大量の水を用いて容器を冷却する。
安全弁から音が発生したり、タンクが変色したときは直ちに避難する。
火災に巻き込まれたタンクから常に離れる。
大火災の場合は、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する;これが不可能な場合にはその場所から避難し、燃えるままにしておく。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具を着用する。
防火服は、熱に対する防護はするが、化学物質に対しては限定的である。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置適切な呼吸器用保護具を着用する。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
必要に応じて適切な保護服または適切な化学防護服を着用すること。
防炎、帯電防止保護服を着用する。
すべての着火源をすぐ近くから取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
漏洩物を取り扱うとき、用いるすべての設備は接地する。
漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
流出や漏れている場所から、全ての方向に適切な距離をとる。
必要により、風下に適切な初期隔離距離をとる。
環境に対する注意事項環境汚染を引き起こすおそれがある。
漏出物が地面や河川や下水に流出することを避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険でなければ、漏れを止める。
排水溝、下水溝、地下室や閉鎖場所への流入を防ぐ。
蒸気抑制泡は蒸気濃度を低下させるために用いる。
乾燥した土、砂や不燃材料で吸収させ、あるいは覆って容器に移す。
吸収したものを集めるとき、きれいな帯電防止工具を用いる。
大量の漏れ
液体漏洩物の前方にせきを作り、後で廃棄する。
散水は蒸気濃度を低下させる;しかし、密閉空間では発火を防止できないおそれもある。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
地域規則に従って、保管・処理する。
二次災害の防止策付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火剤を準備する。
火花を発生しない安全な用具を使用する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
安全取扱注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
充填、取り出し、取り扱い時に圧縮空気を使用してはならない。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。
容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
耐火設備。
強酸化剤から離しておく。
安全な容器包装材料不適切な材料:銅
消防法及び国連危険物輸送勧告モデル規則で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度20 ppm
許容濃度等
日本産衛学会(2021年版)許容濃度: 50 ppm、205 mg/m3
ACGIH(2022年版)TLV-TWA: 20 ppm
TLV-STEL: 75 ppm
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
作業場では全体換気を行う。
設備は可能であれば密閉系とし局所排気装置を用いる。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を着用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度に対応した有機ガス用吸収缶を使用する
-作業者が粉塵に暴露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い特異臭、甘い臭い
融点/凝固点-84.7 ℃(ICSC(1997))
-80 ℃(GESTIS(2022))
-85 ℃(PubChem(2022))
沸点、初留点及び沸騰範囲117〜118 ℃(ICSC(1997))
116 ℃(GESTIS(2022))
116.50 ℃(760.00mmHg)(PubChem(2022))
可燃性引火性(ICSC(1997))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界1.4〜7.5 vol%(空気中)(ICSC(1997))
1.2〜8 vol%(GESTIS(2022))
引火点14 ℃(Closed cup)(ICSC(1997))
18 ℃(Closed cup)(PubChem(2022))
自然発火点460 ℃(ICSC(1997))
475 ℃(GESTIS(2022))
448 ℃(PubChem(2022))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: 1.91 g/100 ml(20℃)(ICSC(1997))
水: 19 g/l(20℃)(GESTIS(2022))
エタノール、エーテル、アセトン、ベンゼンに易溶(PubChem(2022))
n-オクタノール/水分配係数Log Kow: 1.38(ICSC(1997))
Log Kow: 1.31(GESTIS(2022))
蒸気圧2.1 kPa(20℃)(ICSC(1997))
18.8 hPa(20℃)(GESTIS(2022))
19.9 mm Hg(25℃)(PubChem(2022))
密度及び/又は相対密度0.80 (水=1)(ICSC(1997))
0.80 g/cm3(20℃)(GESTIS(2022))
0.8042 (20 ℃/20 ℃)(PubChem(2022))
相対ガス密度3.45 (空気=1)(ICSC(1997)、危険物災害等支援システム(2022))
3.46 (GESTIS(2022))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性推奨される保管条件下で安定。
危険有害反応可能性引火性が高い。揮発性。蒸気/空気の混合気体は、爆発性である。この蒸気は空気とよく混合し、爆発性混合物を生成しやすい。空気に曝露すると、爆発性過酸化物を生成することがある。強酸化剤および強還元剤と激しく反応する。
避けるべき条件熱、空気
混触危険物質強酸化剤、強還元剤
危険有害な分解生成物情報なし

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、2,080 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2010)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、EHC 117 (1990))、2,780 mg/kg、2,991 mg/kg (SIDS (2011))、3,200 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2011))、4,500 mg/kg、4,570 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2011)、ACGIH (7th, 2010)、EHC 117 (1990))、4,600 mg/kg (SIDS (2011)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、EHC 117 (1990))、1,900-4600 mg/kg (SIDS (2011))、2,080-4,600 mg/kg (NTP TR 538 (2007)、DFGOT vol. 13 (1999)) との報告に基づき、区分に該当しない (国連分類基準の区分5) とした。
経皮ウサギのLD50値として、> 3,000 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008))、> 16,040 mg/kg (SIDS (2011)) との報告に基づき、区分に該当しないとした。
吸入: ガスGHSの定義における液体である。
吸入: 蒸気ラットのLC50値 (4時間) として、8.2〜16.4 g/m3 (1,968〜3,936 ppm) (NTP TR 538 (2007)、DFGOT vol. 13 (1999)、EHC 117 (1990)) 及び3,000 ppm (SIDS (2011)) との報告がある。前者は区分3又は区分4に該当し、後者は区分4に該当する。これらのデータの出典が同一であるので、安全側の区分3とした。LC50値が飽和蒸気圧濃度 (26,184 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入: 粉じん及びミストデータ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質を10時間閉塞適用した結果、紅斑が24時間後まで持続したとの報告がある (SIDS (2011)、EHC117 (1990)、NTP TR 538 (2007))。また、モルモットを用いた皮膚刺激性試験において、本物質 (5又は10 mL) を適用した結果軽度の刺激性がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 13 (1999)、PATTY (6th, 2012))。以上、回復性がみられたとの報告及び軽度の刺激性との報告から区分に該当しない (国連分類基準の区分3) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG 405) において、本物質の原液0.1 mLを適用した結果、角膜混濁、結膜の発赤及び結膜炎がみられたが7日以内に回復したとの報告がある (ECETOC TR48 (1992))。また、ウサギを用いた別の試験において、本物質の原液0.1 mLを適用した結果、適用後10分以内に刺激性がみられ、症状は60時間後に回復したとの報告がある (SIDS (2011)、NTP TR 538 (2007)、EHC117 (1990))。以上から区分2Bとした。なお、本物質はEU CLP分類において「Eye Dam. 1 H318」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いたマキシマイゼーション試験 (OECD TG 406) において感作性は認められなかったとの報告がある (DFGOT vol. 13 (1999)) が、試験の詳細等の情報が得られなかったため区分に該当しないにするには十分な情報でないと判断した。
生殖細胞変異原性ガイダンスの改訂により区分に該当しないが選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性 (IARC 101 (2012)、SIDS (2011)、PATTY (6th, 2012)、EHC 117 (1990)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、DFGOT vol. 13 (1999))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、小核試験、不定期DNA合成試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で不確かな結果があるが、用量依存性がなく陽性の判断は困難である (SIDS (2011)、PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2010)、EHC 117 (1990)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、DFGOT vol. 13 (1999))。
発がん性【分類根拠】
(1)、(2)で動物種2種において悪性を含む腫瘍の発生増加が認められ、動物実験において発がん性の十分な証拠があることから区分1Bとした。なお、新たな評価に基づき、分類結果を変更した。前回分類時に健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質であることをが踏まえていないことから、発がん性項目のみ見直した(2021年)。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた2年間吸入ばく露試験(6 時間/日、5 日/週)において、雄で腎尿細管の腺腫、及び腺腫とがんの合計の頻度増加が、雌(2/50例)で腎臓の間葉系悪性腫瘍がみられた。雄の腎臓腫瘍はα2μ-グロブリン介在性の機序による証拠の強さは弱いとされ、雌の腎臓腫瘍は希少な腫瘍で、自然発生腫瘍の可能性は低いとされた(IARC 101 (2012))。
(2)マウスを用いた2年間吸入ばく露試験(6 時間/日、5 日/週)において、肝細胞腺腫の頻度増加、及び肝細胞腺腫とがんの合計頻度の増加が雌雄いずれにも認められた(IARC 101 (2012))。

【参考データ等】
(3)本物質は、厚生労働省化学物質による健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質である。なお、IARCでグループ2Bに追加されていることががん原性指針の対象物質の指定根拠である(令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第 27号)。
(4)国内外の評価機関による既存分類結果として、(1)(2)より実験動物での腫瘍誘発は確実であるとしたが、ヒトの発がん性に関して利用可能なデータがないため、IARCでグループ2Bに(IARC 101 (2012))、ACGIHでA3に(ACGIH (7th, 2010))、EUでCarc. 2に(CLP分類結果 (Accessed Jan. 2022))それぞれ分類されている。
生殖毒性ヒトの生殖影響に関する情報はない。実験動物ではラットを用いた吸入経路による2世代生殖毒性試験において、F0、F1親動物には主に1,000 ppm以上で、肝臓影響 (重量増加、小葉中心性肝細胞肥大)、腎臓影響 (重量増加、腎症)、中枢神経系影響 (驚愕反応低下) など一般毒性影響がみられたが、各世代の雌雄いずれの投与群にも、性機能及び生殖能への有害影響はみられていない (SIDS (2011)、ACGIH (7th, 2010)、環境省リスク評価第6巻 (2008))。児動物にもF1では1,000 ppmまでの用量では一過性の体重の低値がみられただけであった (SIDS (2011)、ACGIH (7th, 2010)、環境省リスク評価第6巻 (2008)) が、2,000 ppmでは離乳後のF1児動物 (生後22日齢) にばく露を再開した結果、雄1例が死亡したほか、雄7例、雌14例に中枢神経抑制症状がみられた (環境省リスク評価第6巻 (2008)) との記述がある。一方、発生毒性試験では妊娠ラット、又は妊娠マウスに妊娠6〜15日まで、吸入ばく露した結果、ラットで体重増加抑制、腎臓重量増加、マウスで死亡例発現 (3/30例)、肝臓重量増加など母動物毒性がみられる用量 (3,000 ppm) で、胎児に発生毒性影響として両種とも胎児重量の低値及び骨化遅延がみられ、マウスでは加えて吸収胚の増加が認められた (SIDS (2011)、IRIS Tox. Review (2003)、ACGIH (7th, 2010)、環境省リスク評価第6巻 (2008))。
以上、吸入経路のみの動物試験結果において、親動物に肝臓、腎臓への一般毒性影響が発現する用量でも性機能・生殖能への有害影響はみられず、発生毒性試験においても妊娠ラットを用いた試験では母動物毒性が発現する用量で軽微な影響 (胎児重量低値、骨化遅延) がみられたのみであった。同様に、妊娠マウスを用いた試験でも母動物が10%死亡する用量においても、ラットと同様の軽微な影響と吸収胚の増加がみられただけである。したがって、吸入経路では区分に該当しないの可能性があるが、本物質が中枢神経系作用物質であることから、次世代の神経発生発達への有害性影響に関する情報が不足しており、本項は分類できないとした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質は気道刺激性がある (環境省リスク評価第6巻 (2008)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1984)、ACGIH (7th, 2010)、SIDS (2011)、EHC 117 (1990)、IRIS Tox. Review (2003)、DFGOT vol. 13 (1999)、ECETOC JACC (1987)、PATTY (6th, 2012))。ヒトにおいては、吸入ばく露で、咳、頭痛、咽頭痛、眩暈、麻酔作用、中枢神経系抑制、悪心、嘔吐、下痢、脱力感、食欲不振、意識喪失、経口摂取ではこれらの症状に加え腹痛の報告がある (環境省リスク評価第6巻 (2008)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1984)、SIDS (2011)、EHC 117 (1990)、IRIS Tox. Review (2003)、DFGOT vol. 13 (1999)、ECETOC JACC (1987)、PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2010))。
実験動物では、マウス、モルモットの吸入ばく露 (高用量) で麻酔作用、ラットのその他の試験で、中枢神経系抑制、協調運動失調、虚脱の報告がある (ACGIH (7th, 2010)、ECETOC JACC (1987)、PATTY (6th, 2012))。
以上より、本物質は気道刺激性、麻酔作用を有し、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)イタリアの事業所で遠心分離機の操作中に本物質に毎日20〜30分間ばく露された作業者19人を対象とした疫学調査では、本物質の気中濃度は遠心分離機付近で 500 ppm、その他の室内で80 ppmであった。眼、鼻、喉への急性刺激症状以外に、19人中半数以上が自覚症状として頭痛、食欲不振、脱力感、胃痛、悪心、嘔吐を、少数例が不眠、嗜眠、胸痛を訴えたが、臨床検査結果では全員とも数値は正常範囲内であった (ACGIH (7th, 2010))。5年後の追跡調査 (気中本物質濃度: 遠心分離機付近で100〜105 ppm、その他は50 ppm) でも、残留していた14人中数人が中枢神経症状及び消化器症状が持続していると回答したと記述されている (ACGIH (7th, 2010))。
実験動物ではラットに13週間強制経口投与した試験で、区分2を超える用量 (250 mg/kg/day) で肝臓、腎臓重量の軽度増加がみられたのみで、NOAELは250 mg/kg/dayとされている (SIDS (2011))。また、ラット及びマウスに14週間吸入ばく露 (蒸気と推定) した試験では、区分2を超える用量 (250 ppm (1.02 mg/L/6 hr/day)) で、血清コレステロール及び尿糖の増加 (ラット)、肝臓重量の増加 (マウス) がみられたが、1,000 ppm まで標的臓器を特定可能な明瞭な毒性所見はなく、NOAELは1,000 ppmと報告されている (SIDS (2011)、ACGIH (7th, 2010))。その他、本物質の神経毒性を調べた複数の試験では、殆どが神経毒性を検出できなかったが、ラットを用いた2世代生殖毒性試験では、F0及びF1動物で1,000 ppm以上で驚愕反応の低下が示され、中枢神経抑制を示唆する所見と考えられている (SIDS (2011))。
以上、実験動物の既知見からは標的臓器を特定するのは困難であるが、ヒトの疫学研究結果より、本項は区分1 (中枢神経系) とするのが妥当と考えられた。
誤えん有害性*本物質は低粘性のため、飲み込んだ場合に肺にも吸引されて化学性肺炎を生じるおそれがある (EHC 117 (1990)) との記述、液体を飲み込むと肺に吸い込んで化学性肺炎を起こすことがある (環境省リスク評価第6巻 (2008)) との記述があるが、直接的な本物質ばく露による症例報告に基づく知見ではない。ただし、本物質は3以上13を越えない炭素原子で構成されたケトンに属し、動粘性率計算値が 0.691mm2/sec (粘性率: 0.55 mPa・s (25℃) (CRC Handbook of Chemistry and Physics (85th, 2004))、密度 (比重) : 0.796 g/cm3 (25℃) (Thermophysical Properties of Chemicals and Hydrocarbons (2008)) である。以上、国連分類では区分2に該当するが、現行ガイダンスに従い、分類できないとした。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)甲殻類(ブラインシュリンプ)24時間LC50 = 1250 mg/L(SIDS, 2011)、魚類(ファットヘッドミノー)96時間LC50 = 505 mg/L(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分に該当しないとした。
水生環境有害性 長期(慢性)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(14日間でのBOD分解度=84%、TOC分解度=97.1%、GC分解度=100%(通産省公報, 1975))、甲殻類(ミジンコ類)の21日間NOEC (繁殖) = 7.8〜39 mg/L(SIDS, 2011)、魚類(ファットヘッドミノー)の31日間NOEC (成長) = 57 mg/L(環境省リスク評価第6巻, 2008)であることから、区分に該当しないとなる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対しては急性毒性データも得られていない。
以上の結果から、区分に該当しないとした。
残留性・分解性化審法分解度試験:良分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性情報なし
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号1245
品名(国連輸送名)メチルイソブチルケトン
国連分類3
副次危険-
容器等級U
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*127
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法特定化学物質第2類物質、特別有機溶剤等(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号、第3の2号、第3の3号)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)
健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項)
作業環境評価基準(法第65条の2第1項)
化審法優先評価化学物質(法第2条第5項)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)(令和5年度分以降の対象)
毒物及び劇物取締法該当しない
消防法第4類 引火性液体 第一石油類 非水溶性(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)
大気汚染防止法揮発性有機化合物(法第2条第4項)(環境省から都道府県への通達)
海洋汚染防止法有害液体物質(Z類物質)(施行令別表第1)【メチルイソブチルケトン】
船舶安全法引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)
港則法その他の危険物・引火性液体類(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12
悪臭防止法特定悪臭物質(施行令第1条)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」