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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
酢酸ビニル
作成日 2002年12月25日
改訂日 2010年03月31日
改訂日 2019年03月15日
改訂日 2020年03月13日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称酢酸ビニル (Vinyl acetate)
製品コードR01-B-087
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限酢酸ビニル樹脂・共重合樹脂原料、ポリビニルアルコール・ガムベース原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R2.3.13、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性引火性液体区分2
自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性急性毒性 (吸入: 蒸気)区分4
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分3 (気道刺激性)
区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分2 (呼吸器)
分類実施日
(環境有害性)
H21年度、政府向けGHS分類ガイダンス (H21.3版) (R1年度、分類実施中)
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分2
GHSラベル要素
絵表示炎感嘆符健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性の高い液体及び蒸気
皮膚刺激
強い眼刺激
吸入すると有害
呼吸器への刺激のおそれ
眠気又はめまいのおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害のおそれ
水生生物に毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱,高温のもの,火花,裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。気分が悪い時は医師に連絡すること。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水又はシャワーで洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注)”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名酢酸ビニル
別名ビニル=アセタート
酢酸ビニルモノマー
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C4H6O2 (86.09)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号108-05-4
官報公示整理番号
(化審法)
2-728
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物添加された安定剤や抑制剤がこの物質の毒性に影響を与える可能性がある。

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。気分が悪い時は医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水又はシャワーで洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合口をすすぐこと。コップ1、2杯の水を飲ませる。気分が悪い時は医師に連絡すること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咽頭痛、咳、息切れ
皮膚: 発赤、皮膚の乾燥
眼: 充血
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤アルコール耐性泡消火薬剤、泡消火薬剤、粉末消火薬剤、二酸化炭素、細噴霧水
使ってはならない消火剤情報なし
特有の危険有害性引火性が高い。蒸気/空気の混合気体は、爆発性である。加熱すると、破裂の危険を伴う圧力上昇が起こる。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護自給式呼吸器、防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての発火源を取り除く。
危険区域から立ち退く。
専門家に相談する。
個人用保護具: 自給式呼吸器
下水に流してはならない。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
残留液を、砂又は不活性吸収剤に吸収させる。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱,高温のもの,火花,裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
充填、取り出し、取り扱い時に圧縮空気を使用してはならない。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
作業衣を家に持ち帰ってはならない。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件施錠して保管すること。
耐火設備で保管する。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
強酸化剤、酸及び塩基から離しておく。
安定化した状態でのみ貯蔵する。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
安全な容器包装材料消防法、国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2019年度版)未設定
ACGIH (2019年版)TLV-TWA: 10 ppm、35 mg/m3
TLV-STEL: 15ppm、53 mg/m3
設備対策容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
全体換気装置又は局所排気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具必要に応じて保護マスクや呼吸用保護具を着用する。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具呼吸用保護具と併用して、安全ゴーグル又は眼用保護具を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色 (ホンメル (1991))
臭い甘ったるいにおい (ホンメル (1991))
融点/凝固点-93.2℃ (HSDB (Access on October 2019))
沸点、初留点及び沸騰範囲72℃ (NFPA (2010))
可燃性可燃性液体 (ホンメル (1991))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界2.6〜13.4 vol% (NFPA (2010))
引火点-8℃ (c.c.) (NFPA (2010))
自然発火点402℃ (NFPA (2010))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率0.43 cPs (20℃) (HSDB (Access on November 2019))
溶解度水:2 g/100 mL (20℃) (ICSC (2014))
有機液体溶媒に可溶 (HSDB (Access on November 2019))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = 0.73 (HSDB (Access on September 2019))
蒸気圧90.2 mmHg (20℃) (HSDB (Access on November 2019))
密度及び/又は相対密度0.93 (水=1) (ICSC (2014))
相対ガス密度3.0 (空気 = 1) (ICSC (2014))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性熱、光の影響下で重合する。
ヒドロキノンの安定化品質は60日に限定される。長期保存には、ジフェニルアミンのような他の抑制剤が推奨される。
危険有害反応可能性熱、光の影響下で重合し、火災又は爆発の危険を生じる。
強酸化剤、酸及び塩基と 激しく反応する。
避けるべき条件熱、光、混触危険物質との接触
混触危険物質強酸化剤、酸、塩基
危険有害な分解生成物情報なし

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 2,920 mg/kg (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)、PATTY (6th,2012)、HSDB (Access on September 2019))
(2) ラットのLD50: 3,470 mg/kg (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)、DFGOT vol.21 (2005)、EU-RAR (2008))
(3) ラットのLD50: 2,900 mg/kg (環境省リスク評価第2巻 (2003))
(4) ラットのLD50: 1,600 〜3,480 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))
経皮【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 8.0 mL/kg (7,440 mg/kg) (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)、DFGOT vol.21 (2005)、EU-RAR (2008))
(2) ウサギのLD50: 2,335 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on September 2019))
(3) ウサギのLD50: 2.5 mL/kg (2,325 mg/kg) (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992))
(4) ウサギのLD50: 2,335〜7,470 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分4とした。
なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (118,693 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 3,680 ppm (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992)、PATTY (6th,2012)、HSDB (Access on September 2019))
(2) ラットのLC50 (4時間): 4,490 ppm (ACGIH (7th, 2018)、ATSDR (1992))
(3) ラットのLC50 (4時間): 15.8 mg/L (4,487.3 ppm)、14.1 mg/L (4,004.5 ppm) (EU-RAR (2008))
(4) ラットのLC50 (4時間): 3,200〜4,490 ppm (NITE初期リスク評価書 (2005))
(5) ラットのLC50 (4時間): 11,400 mg/m3 (3,237.7 ppm) (環境省リスク評価第2巻 (2003))
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、ヒトの事例を優先し、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 作業者の事例では本物質へのばく露による刺激性がみられてお入り、長期のばく露では水疱を生じる (ATSDR (1992)、HSDB (Access on September 2019))。
(2) 本物質 (0.5 mL) をウサギの適用により軽度の浮腫が観察された (ATSDR (1992))。
(3) ウサギを用いた皮膚刺激性試験で軽度の刺激性が認められた (EU-RAR (2008)、NITE初期リスク評価書 (2005)、PATTY (6th, 2012))。
(4) 本物質は粘膜・皮膚を刺激し、高濃度では皮膚脱脂作用がある (環境省リスク評価第2巻 (2003))。

【参考データ等】
(5) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で24/48/72hの平均スコアは全て<0.67 であり、72時間後には全ての反応は消失した (REACH登録情報 (Access on October 2019))。
(6) ウサギに本物質 (適用量不明) を5〜15分適用した皮膚刺激性試験で軽度の紅斑、20時間適用では1日後に軽度の紅斑と浮腫がみられている (DFGOT vol.21 (2005))。
(7) Draize法に従い、ウサギに本物質0.5 mLを24時間適用した皮膚刺激性試験で浮腫 (スコア4)、皮下出血が適用除去 4/24/72 hにみられている (DFGOT vol.21 (2005))。
(8) ウサギに本物質を 8 mL/kgを24時間 適用した実験では動物は 2日以内に死亡し、適用部位は壊死していた (DFGOT vol.21 (2005))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(5) より、ヒトの事例を優先し、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 本物質はヒトにおいて21.6 ppmで眼と喉への刺激が報告されている (ACGIH (7th, 2018)、HSDB (Access on September 2019))。
(2) ウサギを用いた眼刺激性試験で軽度の刺激性が認められた (EU-RAR (2008)、PATTY (6th, 2012))。
(3) 本物質は高濃度で結膜に刺激性を有する (DFGOT vol.5 (1993))。
(4) 気化した本物質及び直接のばく露は眼に刺激性を示す (ATSDR (1992))。
(5) 本物質 (1〜2滴) をウサギの眼に適用した眼刺激性試験で角膜混濁、結膜発赤、重度の結膜浮腫が24時間後にみられたが、8日以内に回復した (DFGOT vol.21 (2005))。

【参考データ等】
(6) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で24/48/72hの角膜、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫の平均スコアは結膜発赤のみ0.33であったが、他は全て0であった (REACH登録情報 (Access on October 2019))。
(7) 本物質 (0.5 mL) のウサギの眼への適用は重度の刺激性を示す (ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) OECD TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA) において、SI値は3未満であり、陰性と判定された (REACH登録情報 (Access on November 2019) 、ACGIH (7th, 2018)、EU-RAR (2008))。

【参考データ等】
(2) 本物質はモルモットの感作性試験 (ビューラー法) において中等度の感作性を示す (ACGIH (7th, 2018)、DFGOT vol.21 (2005)、(EU-RAR (2008))、NITE初期リスク評価書 (2005))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、腹腔内投与又は吸入ばく露による多くのマウス、ラットの骨髄及びマウス精原細胞の小核試験で陰性の報告があるが、腹腔内投与のラット骨髄小核試験は証拠の重み付けにより、総合的に陽性と評価される。また、ラット骨髄の染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験では陽性の報告がある (ATSDR (1992)、DFGOT vol.5 (1993)、IARC 63 (1995)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.21 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2008))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験及びマウスリンフォーマ試験で陽性の報告がある (ATSDR (1992)、DFGOT vol.5 (1993)、IARC 63 (1995)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.21 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2008)、PATTY (6th, 2012))。

【参考データ等】
(3) EU-RAR (2008) では、in vivo試験の結果について、大部分が信頼性が低い試験であり、最も重要なマウス骨髄小核試験の陽性結果は高毒性の腹腔内投与の場合に限定されていることから、本物質の遺伝毒性がヒト生殖細胞で発現することは考えにくいと結論づけられている (EU-RAR (2008))。
(4) NITE初期リスク評価書 (2005) では、in vivo、in vitroの試験結果より、本物質は遺伝毒性を有すると判断されている (NITE有害性評価書 (2005))。
発がん性【分類根拠】
ヒトでの発がん性の情報は、(6) に限られている。
適切な試験ガイドラインとGLP基準に準拠して実施された (1) 及び (2) において、動物種2種に悪性腫瘍を含む明らかな発がん性の証拠が認められたことから、区分1Bとした。
既存分類は、(4) のとおり分類されているものの、適切な試験ガイドラインとGLP基準に準拠して実施された厚労省のがん原性試験 (1) 及び (2) において、動物種2種に悪性腫瘍を含む明らかな発がん性の証拠が認められ、有害性評価小検討会の審議を経てヒトにおける懸念から同省が指針を出したことを重視した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いたがん原性試験 (2年間飲水投与) で、雄投与群に口腔の扁平上皮がんと扁平上皮乳頭腫、雌投与群に口腔と食道の扁平上皮がんの発生増加がみられた (厚労省委託がん原性試験結果 (Access on September 2019))。
(2) マウスを用いたがん原性試験 (2年間飲水投与) で、雌雄の投与群に口腔と胃の扁平上皮がん、扁平上皮乳頭腫、食道と喉頭の扁平上皮がんの発生増加が認められた (厚労省委託がん原性試験結果 (Access on September 2019))。
(3) ラットに2年間吸入ばく露した試験で、鼻腔の扁平上皮がん、扁平上皮乳頭腫、上皮内がんの発生が認められた (IARC 63 (1995)、EU-RAR (2008)、ACGIH (7th, 2018)、厚労省初期リスク評価書 (2010)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
(4) 国内外の分類機関による既存分類としては、IARCがグループ2B (IARC 65 (1995))、EU CLPでCarc. 2、日本産業衛生学会が2B (1998年提案)、ACGIHがA3 (ACGIH (7th, 2018)) にそれぞれ分類している。なお、IARCの評価には (1) 及び (2) の結果は含まれていない。
(5) 本物質は労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための改正指針の対象物質である (平成24年10月10日付け健康障害を防止するための指針公示第23号)。

【参考データ等】
(6) ヒトの発がん性に関して、本物質を含む19種類の物質に1942〜1973年にばく露された男性作業者のコホート調査で未分化大細胞肺がんが本物質への累積ばく露がわずかに高いことに関連するという報告 (IARC 63 (1995)、EU-RAR (2008)、ACGIH (7th, 2018))、2化学品製造施設の従業員の非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、リンパ性・非リンパ性白血病による1940〜1978年の死亡と本物質ばく露との関連性を示唆した米国のコホート内症例対照研究の報告がある (IARC 63 (1995)、EU-RAR (2008)、ACGIH (7th, 2018)、環境省リスク評価第2巻 (2003))。
(7) マウスの雌雄とそのF1に78週間飲水経口投与した継代試験で、食道、前胃に上皮性悪性腫瘍の増加がみられた (ACGIH (7th, 2018))。
(8) 3系統の雌雄ラットとそのF1に104週間飲水経口投与した継代試験で、F1に口腔、食道、前胃などのがんが増加した。F344ラットは死亡が多くばく露期間は100週までだが、新生物の増加がみられた (ACGIH (7th, 2018))。
生殖毒性【分類根拠】
(1)〜(3) より、生殖毒性について評価書での評価に差がみられるが総合的に判断して分類できないとした。データを見直したことから旧分類から分類結果が変更となった。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた飲水投与による2世代生殖毒性試験において、親動物に嗜好性による飲水量の低下とそれに起因した体重増加抑制がみられる用量で、わずかな妊娠率低下と児動物の体重増加抑制がみられている。なお、妊娠率の低下は交叉交配の結果、雄動物の生殖能に関係し、受胎の障害ではなく雄動物の交尾能が劣っていることが原因と考えられるが、精巣の病理組織学的検査では正常であることが報告されている (EU-RAR (2008))。なお、ATSDR (1992) では、同じ試験と思われる試験結果について、妊娠率低下は有意差がなく背景データの範囲内であるとしている。また、児動物の体重増加抑制は母動物の成長遅延に起因した可能性があり、胎児に対する直接的な毒性影響ではない可能性が高いとしている。
(2) 雌ラットの妊娠6〜15日に飲水投与した発生毒性試験において、影響はみられていない (EU-RAR (2008))。
(3) 雌ラットの妊娠6〜15日に吸入ばく露した発生毒性試験において、1,000 ppmで母動物に体重増加抑制がみられ、胎児に体重減少、頭臀長短縮、骨化遅延がみられている (EU-RAR (2008))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)、(2) より、区分3 (麻酔作用、気道刺激性) とした。

【根拠データ】
(1) ボランティアによる試験で、本物質72 ppm、30分の吸入ばく露で4人の被験者全員が喉粘膜の刺激を訴えたとの報告がある (ATSDR (1992)、ACGIH (7th, 2018))。
(2) 本物質は粘膜・皮膚を刺激し、高濃度では皮膚脱脂、麻酔作用があるとの記載がある (環境省リスク評価第2巻 (2003))。

【参考データ等】
(3) ラットの単回経口投与試験において、LD50値は約3,500 mg/kg (区分2超) であり、局所刺激と中枢神経系障害の症状 (下痢、息切れ、振戦、無反応 (apathy)) がみられたとの報告がある (EU-RAR (2008)、GESTIS (Access on September 2019))。
(4) ウサギに本物質7〜142 ppm を40分間、単回吸入ばく露した試験で、71 ppm 群に中枢神経系の抑制、142 ppm 群に中枢神経系の亢進がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、ACGIH (7th, 2018))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)、(2) より、実験動物への吸入ばく露において区分2の用量で呼吸器への影響がみられていることから、区分2 (呼吸器) とした。

(1) マウスを用いた2年間の吸入毒性試験の結果、200 ppm以上 (ガイダンス値換算: 0.7 mg/L、区分2の範囲) で鼻腔の嗅上皮の萎縮、粘液分泌腺の萎縮、600 ppm (ガイダンス値換算: 2.1 mg/L、区分2超) で気管支上皮の剥離又は扁平化、肺に色素貪食マクロファージの集簇等がみられた (ACGIH (7th, 2018)、EU-RAR (2008)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
(2) ラットを用いた2年間の吸入毒性試験の結果、200 ppm以上 (ガイダンス値換算: 0.7 mg/L、区分2の範囲) で鼻腔嗅上皮の扁平上皮化生と萎縮、基底細胞の過形成、600 ppm (ガイダンス値換算: 2.1 mg/L、区分2超) で気管支上皮の剥離又は扁平化、肺に色素貪食マクロファージの集簇等がみられた (同上)。

【参考データ等】
(3) 本物質にばく露された工場作業者で、進行性心筋症、不整脈、心電図の振幅の減少、心筋ジストロフィー、失神、胸痛、死にそうな感覚 (sensation of dying) がみられた (PATTY (6th, 2012)) との報告があるが、この報告については、複数の物質への職業ばく露であり、酢酸ビニルの濃度の記載がない情報とされている (Acute exposure guideline levels for selected airborne chemicals, vol 14 (National Research Council, 2013)。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)魚類 (ヒメダカ) での96時間LC50 = 2.39 mg/L (NITE初期リスク評価書 (2005)) であることから、区分2とした。
水生環境有害性 (長期間)急速分解性があり (BODによる分解度: 90% (既存点検 (1988)))、かつ生物蓄積性が低いと推定される (log Kow = 0.73 (PHYSPROP Database (2009))) ことから、区分外とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号1301
国連品名VINYL ACETATE, STABILIZED
国連危険有害性クラス3
副次危険-
容器等級II
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する(Y)
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*129P (P:爆発的な重合を起こすおそれ)
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)【4の2 その他の引火点−30℃以上0℃未満のもの】
健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項・厚労省指針公示)【酢酸ビニル】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【180 酢酸ビニル】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【180 酢酸ビニル】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【134 酢酸ビニル】
毒物及び劇物取締法該当しない
化学物質審査規制法旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号1040 酢酸ビニル(平成23年4月1日をもって廃止)】
優先評価化学物質(法第2条第5項)【28 酢酸ビニル】
消防法第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)【2 第一石油類非水溶性液体】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【5 第一石油類非水溶性液体】
航空法引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】1301 酢酸ビニル(安定化されたもの)】
船舶安全法引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】1301 酢酸ビニル(安定剤入りのもの)】
港則法その他の危険物・引火性液体類(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2ロ 酢酸ビニル(安定剤入りのもの)】
海洋汚染防止法危険物(施行令別表第1の4)【11 酢酸ビニル】
有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)【155 酢酸ビニル】
大気汚染防止法揮発性有機化合物(法第2条第4項)(環境省から都道府県への通達)【揮発性有機化合物】
有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【61 酢酸ビニル】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用