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安全データシート
エチレンクロロヒドリン
作成日 2002年03月12日
改訂日 2006年05月15日
改訂日 2018年03月16日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称エチレンクロロヒドリン (Ethylene chlorohydrin)
製品コードH29-B-018
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限医薬品、農薬、染料などの中間体、重合調整剤、架橋剤

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性引火性液体区分3
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分3
急性毒性(経皮)区分2
急性毒性(吸入:蒸気)区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
生殖細胞変異原性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (中枢神経系、心血管系、呼吸器)
区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分2 (膵臓、全身毒性)
分類実施日
(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分2
水生環境有害性 (長期間)区分2
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」又は「分類できない」に該当する。なお、これらに該当する場合は後述の11項に記載した。
GHSラベル要素
絵表示炎どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性液体及び蒸気
飲み込むと有毒
皮膚に接触すると生命に危険
強い眼刺激
吸入すると生命に危険
眠気又はめまいのおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
中枢神経系、心血管系、呼吸器の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による膵臓、その他の臓器の障害のおそれ
水生生物に毒性
長期継続的影響によって水生生物に毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地すること/アースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
眼、皮膚、衣類につけないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
注)【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用できます。
 応急措置飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
直ちに医師に連絡すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
漏出物を回収すること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名エチレンクロロヒドリン
別名2-クロロエタノール
2-クロロエチルアルコール
グリコールクロロヒドリン
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C2H5ClO (80.51)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号107-07-3
官報公示整理番号
(化審法)
2-2002
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び
安定化添加物
情報なし

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させる。半座位をとる。人工呼吸が必要な場合がある。医療機関に連絡する。
皮膚に付着した場合直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
飲み込んだ場合口をすすぐ。意識がある場合のみ、吐かせる。直ちに医師に連絡すること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咳、めまい、頭痛、吐き気、咽頭痛、嘔吐
皮膚:吸収される可能性あり。「吸入」参照。
眼:発赤、痛み、重度の熱傷
経口:「吸入」参照。
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
消火剤粉末消火薬剤、水溶性液体用泡消火薬剤、水噴霧、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性きわめて燃えやすい。熱、火花、火炎で容易に発火する。
蒸気は空気と爆発性混合気を形成する。
蒸気が着火原まで達し、発火するおそれがある。
火災時に刺激性もしくは有毒なヒュームやガスを放出する。
特有の消火方法引火点が極めて低い:消火の効果がないおそれがある場合は散水を行う。
火元への燃焼源を断ち、消火剤を使用して消火する。
延焼の恐れのないよう水スプレーで周囲のタンク、建物等の冷却をする。
消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び
緊急措置
関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(自給式呼吸器付完全保護衣等)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
漏れた液やこぼれた液を密閉式の容器に出来る限り集める。
残留液を砂又は不活性吸収剤に吸収させて安全な場所に移す。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
火や高温面の近くで、又は溶接作業中に使用してはならない。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地すること/アースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
眼、皮膚、衣類につけないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
呼吸用保護具を着用すること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い涼しい場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること(毒劇物)。
耐火設備で保管する。
強塩基、酸化剤、食品や飼料から離しておく。
安全な容器包装材料消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会(2017年度版)未設定
ACGIH(2017年版)TLV-Ceiling limit: 1 ppm、3.3 mg/m3 (Skin)
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄剤のための設備を設ける。
高温下や、ミストが発生する場合は換気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具呼吸用保護具を着用する。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具安全ゴーグル、顔面シールド、又は呼吸用保護具と眼用保護具を併用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色の液体 (HSDB (2017))
臭いかすかなエーテル臭 (HSDB (2017))
臭いのしきい(閾)値情報なし
pH6〜7 (GESTIS (2017))
融点・凝固点-67.5℃ (HSDB (2017))
沸点、初留点及び沸騰範囲129℃ (GESTIS (2017))
引火点55℃ (c.c.) (GESTIS (2017))
蒸発速度(酢酸ブチル=1)情報なし
燃焼性(固体、気体)該当しない
燃焼又は爆発範囲4.9%〜15.9% (HSDB (2017))
蒸気圧0.65 kPa (20℃) (ICSC (J) (2003))
蒸気密度2.78(空気 = 1) (HSDB (2017))
比重(相対密度)1.197 (20℃/4℃) (HSDB (2017))
溶解度水と混和 (ICSC (J) (2003))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = - 0.06 (HSDB (2017))
自然発火温度425℃ (HSDB (2017))
分解温度情報なし
粘度(粘性率)0.0343 P (20℃) (HSDB (2017))

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性60℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。
燃焼すると分解し、有毒で腐食性の気体(塩化水素、ホスゲン)を生じる。酸化剤と激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす。水や水蒸気と反応し、有毒で腐食性のヒュームを生成する。強塩基と反応してエチレンオキシドを生成し、中毒及び火災の危険をもたらす。
避けるべき条件裸火、高温、混触危険物質との接触
混触危険物質強塩基、酸化剤
危険有害な分解生成物燃焼すると分解し、有毒で腐食性の気体(塩化水素、ホスゲン)を生じる。

11.有害性情報
急性毒性
経口GHS分類: 区分3
ラットのLD50値として、71 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、71.3 mg/kg (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))、72 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))、77 mg/kg (DFGOT vol. 5 (1993))、95 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) の5件の報告がある。これらに基づき、区分3とした。
経皮GHS分類: 区分2
ウサギのLD50値として、68 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、ラットのLD50値として84 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、モルモットのLD50値として70 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) の報告に基づき、区分2とした。
吸入:ガスGHS分類: 分類対象外
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気GHS分類: 区分1
ラットの4時間吸入LC50値として、33 ppm (PATTY (6th, 2012)) の報告に基づき、区分1とした。なお、LC50が飽和蒸気圧濃度 (6,436 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミストGHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性GHS分類: 区分外
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、わずかな紅斑がみられたとする報告や有意な刺激性はみられないとの報告 (NTP TR275 (1985)、DFGOT vol. 5 (1993), PATTY (6th, 2012)) から、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性GHS分類: 区分2A
本物質を取扱う労働者において眼刺激性がみられたとする報告 (AGCIH (7th, 2001))や、ウサギを用いた眼刺激性試験で中等度の刺激性を示すとの報告 (PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 5 (1993)、NTP TR275 (1985)) から区分2Aとした。
呼吸器感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性GHS分類: 分類できない
モルモットを用いた皮膚感作性試験において感作性はないとの記述 (PATTY (6th, 2012)、NTP TR275 (1985)) があるが、試験条件や反応率などが不明のため、分類できないとした。
生殖細胞変異原性GHS分類: 区分2
In vivoでは、マウスの優性致死試験、相互転座試験、マウスの骨髄細胞及び末梢血を用いた小核試験、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陰性、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陽性である (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on May 2017))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on May 2017))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。
発がん性GHS分類: 分類できない
A社の本物質製造部門 (クロロヒドリン部門) に2年間以上配置された男性作業者278名を対象とした疫学研究において、膵がんによる死亡6例 (期待値0.7例) と白血病による死亡3例 (期待値0.4例) が報告された。クロロヒドリン部門への配置期間と両疾患との間に統計学的に有意な傾向がみられた。クロロヒドリン部門ではエチレンと塩素から本物質を主に製造し、副生物としてエチレンジクロリド (1,2-ジクロロエタン) と ビスクロロエチルエーテルが生成する。10年後の追加調査では、膵がん2例が追加され、膵がん死亡は合計8例 (期待値1.6例) で標準化死亡比 (SMR) は492となった。白血病による追加死亡例はなかったが、リンパ系及び造血系腫瘍が8例 (期待値2.7例、SMR = 294) にみられた。大部分は1930年代に始めてこの部門に配置された作業者で、当時は製造初期でばく露に対する制御も十分ではなかった。産業衛生学的に膵がん死亡例の一部はエチレンジクロリドと恐らく他の塩素化炭化水素との複合ばく露による事故的な過剰ばく露による可能性が示唆されている。
一方、B社のエチレンクロロヒドリン及びプロピレンクロロヒドリン製造工程に配置された作業者1,361名を対象とした調査では膵がん、リンパ系及び造血系がんのリスク増加はみられなかった。両者の違いとして、本物質からエチレンオキシドを製造する工程の差異が指摘されている (PATTY (6th, 2012))。以上のように、疫学研究としては相反する報告があり、本物質がヒトで発がん性を示すという証拠が十分にあるとは言えない。
実験動物ではラット及びマウスに2年間経皮適用した発がん性試験、マウスに70週間皮下投与した試験、及びラットに2年間飲水投与した試験でいずれも発がん性の証拠は示されなかった (NTP TR275 (1985)、PATTY (6th, 2012))。ただ、ラットに1年間皮下投与 (2回/週) し、6ヵ月後に観察した試験において、下垂体腺腫の頻度増加が雌にみられたとの報告がある (PATTY (6th, 2012))。既存分類ではACGIHがA4に分類しているだけである (ACGIH (7th, 2001))。
以上、ヒトの疫学調査で膵がん及びリンパ系・造血系がんの増加がみられたとの報告もあるが、否定的な報告もあること、動物試験の多くで陰性の結果であったことから、本項は分類できないとした。
生殖毒性GHS分類: 分類できない
妊娠マウスの器官形成期 (妊娠6〜16日) に強制経口投与した結果、母動物に体重低下がみられた100 mg/kg/dayで胎児に体重及び肝臓重量の低値がみられただけであった。また、妊娠マウスの器官形成期に飲水投与した試験では200 mg/kg/dayまでの用量で、母動物、胎児ともに影響はみられなかった (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))。一方、妊娠マウスに静脈内投与した試験では、母動物に死亡、体重増加抑制が生じた用量 (120 mg/kg/day) で胎児に胚/胎児毒性 (妊娠4〜6日、及び同10〜12日)、又は催奇形性 (妊娠8〜10日) がみられたが、妊娠ウサギに静脈内投与 (妊娠6〜14日、最大36 mg/kg/day) した試験では、母動物、胎児ともに影響はみられなかった (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))。
以上、妊娠動物を用いた経口又は静脈内投与による発生毒性試験では、マウス静脈内投与で母動物毒性用量における胎児毒性又は催奇形性がみられた以外に発生影響はない又は軽微であった。したがって、本物質は発生毒性を示す可能性は低いと判断された。しかしながら、本物質の生殖能及び性機能への影響に関する情報はなく、本項はデータ不足のため分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)GHS分類: 区分1 (中枢神経系、心血管系、呼吸器)、区分3 (麻酔作用)
ヒトでは本物質の急性吸入ばく露により、初期に頭痛、めまい、眼の焼灼感、吐き気、嘔吐、手指のしびれを生じ、その後に錯乱、呼吸困難、意識喪失、循環虚脱を起こして、心循環器不全と肺浮腫により死亡した例が複数報告されている (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))。剖検の結果、多臓器の充血、脳浮腫、肺浮腫、肝臓及び心筋の脂肪性変性、腎臓の腫脹が認められたとの報告がある (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))。また、本物質の誤飲による死亡例が2例報告されており、症状は吸入ばく露の場合と同様であったとの記述がある (DFGOT vol. 5 (1993))。更に本物質は上気道を刺激するとの記載がある (HSDB (Access on June 2017))。以上より、本物質は中枢神経系、心血管系、呼吸器に影響を与え、また麻酔作用を有すると考えられる。したがって、区分1 (中枢神経系、心血管系、呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)GHS分類: 区分2 (膵臓、全身毒性)
ヒトに関する情報はない。
実験動物については、ラットを用いた強制経口投与による90日間反復経口投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である67.5 mg/kg/dayで成長の抑制、死亡がみられ (PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 5 (1993)、ACGIH (7th, 2001)) 、ラットを用いた混餌による220日間反復経口投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である0.12% (ガイダンス値換算: 60 mg/kg/day) 以上で成長抑制、区分2のガイダンス値の範囲を超える0.24% (ガイダンス値換算: 120 mg/kg/day) で死亡率増加がみられている (PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 5 (1993))。また、 ラット、マウスを用いた13週間経皮投与試験が実施されており、ラットでは区分2のガイダンス値の範囲内である125 mg/kg/day以上で膵臓の腺房細胞の空胞化、区分2のガイダンス値の範囲を超える250 mg/kg/day以上で死亡がみられ、死亡又は切迫屠殺例で肺のうっ血又は水腫がみられている。マウスでは区分2のガイダンス値の範囲を超える用量で死亡、急性腎症、肝細胞の脂肪化、膵臓の腺房細胞の壊死の報告 (NTP TR275 (1985)) がある。
このほか、ラットを用いた4ヵ月間吸入毒性試験 (4時間/日) において、区分1のガイダンス値の範囲内である0.31 ppm (ガイダンス値換算: 0.0007 mg/L) 以上で体重減少、肝臓、肺の病理組織学的影響、神経系への影響の報告があるが影響の詳細は不明であった (PATTY (6th, 2012))。
以上、膵臓以外には標的臓器を特定し得ず、死亡がみられているため区分2 (膵臓、全身毒性) とした。
吸引性呼吸器有害性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)藻類 (セネデスムス)の72時間ErC50 = 5.6 mg/L (IUCLID, 2000)から、区分2とした。
水生環境有害性(長期間)急性毒性が区分2、生物蓄積性が低いと推定されるものの(log Kow = 0.03 (PHYSPROP Database, 2005)) 、急速分解性が不明であることから、区分2とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号1135
国連品名ETHYLENE CHLOROHYDRIN
国連危険有害性クラス6.1
副次危険3
容器等級J
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及び
IBCコードによるばら積み
輸送される液体物質
該当する(Y)
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報消防法、道路法、毒物及び劇物取締法の規定に従う。
特別な安全上の対策消防法、道路法、毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*131
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2008 Emengency Response Guidebook (ERG 2008)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
毒物及び劇物取締法劇物(法第2条別表第2)
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)
消防法第4類引火性液体、第二石油類水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)
航空法輸送禁止(施行規則第194条)
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)
海洋汚染防止法有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。