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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
p-ジビニルベンゼン
作成日 2008年10月09日
改訂日 2020年03月13日
改訂日 2023年3月31日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称p-ジビニルベンゼン
化学品の英語名称p-Divinylbenzene
製品コードR04-C-060-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限イオン交換樹脂・合成ゴム・イオン交換膜・ABS樹脂・MBS樹脂・不飽和ポリエステル樹脂などスチレン系樹脂架橋剤 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R5.3.31、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)、JIS Z7252:2019(GHS 6版準拠)を採用
物理化学的危険性-
健康に対する有害性皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
生殖細胞変異原性区分2
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分3(麻酔作用、気道刺激性)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(呼吸器)
分類実施日
(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)※一部JIS Z7252:2019(GHS 6版準拠)を採用
環境に対する有害性-
GHSラベル要素
絵表示感嘆符健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報皮膚刺激
強い眼刺激
遺伝性疾患のおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
呼吸器への刺激のおそれ
眠気またはめまいのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害
注意書き
 安全対策取扱い後は手をよく洗うこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
 応急措置皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
 保管施錠して保管すること。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名p-ジビニルベンゼン
慣用名又は別名p−ビニルスチレン
英語名p-Divinylbenzene
1,4-divinylbenzene
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C10H10 (130.19)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号105-06-6
官報公示整理番号(化審法)3-14
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させる。気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
以上、GHS分類結果参照。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗う。皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
以上、GHS分類結果参照。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GHS分類結果参照。
飲み込んだ場合気分が悪いときは医師に連絡すること。
以上、GHS分類結果参照
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状情報なし
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤粉末消火薬剤、泡消火薬剤、二酸化炭素
以上、GESTIS参照。
使ってはならない消火剤情報なし
火災時の特有の危険有害性火災の場合、有害物質(一酸化炭素、二酸化炭素)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。
特有の消火方法周囲の容器を水スプレーで冷却する。可能であれば、容器を危険区域外に持ち出す。加熱により圧力が上昇し破裂する恐れがある。着火源となるものを遮断する。
以上、GESTIS参照。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護具を着用すること。
以上、GESTIS参照。
環境に対する注意事項水域に対する危険性がある。水、排水、下水、または地中への浸透を防ぐ。多量の場合は、自治体に連絡する。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材こぼれた液体を吸収剤(例:珪藻土、バーミキュライト、砂)で吸収し、規則に従って廃棄する。その後、換気し、漏出した場所を洗浄する。
以上、GESTIS参照。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項容器を開けたままにしない。こぼれないようにする。使用前に取扱説明書を入手する。すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わない。
機器類は防爆構造とし、設備は静電気対策を実施する。
周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
以上、GESTIS、GHS分類結果参照。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策皮膚や眼への接触を避ける。接触した場合は洗浄する。粉じんの吸入を避ける。汚染された衣服は慎重に交換、洗浄しなければならない。休憩前や作業終了時には石鹸と水で皮膚を洗い、洗浄後は脂肪分の多いスキンケア製品を塗布する。使用するときには飲食、喫煙をしないこと。
以上、GESTIS、GHS分類結果参照。
保管
安全な保管条件施錠して保管する。容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管すること。推奨保管温度:2〜8 ℃。光、熱源は避ける。
以上、GESTIS、GHS分類結果参照。
安全な容器包装材料消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度等
日本産衛学会(2022年版)未設定
ACGIH(2022年版)TLV-TWA: 0.5 ppm(Divinylbenzene-ethylstyrene mixtures, as total divinylbenzene isomers [69011-19-4; 7525-62-4; 108-57-6; 105-06-6])(DSEN; A3)
設備対策作業場所には換気設備を設置する(特に高温時)。取り扱い場所の近くに洗眼及び身体洗浄のための設備を設けること。床に排水溝を設けないこと。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具緊急時(例:意図しない物質の放出)には、呼吸保護具を着用する。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度に対応した・・・用吸収缶を使用する
注) ”…”は、物質に対応した吸収缶を記載します。SDS作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
-作業者が粉じんにばく露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
以上、GESTIS参照。
手の保護具保護手袋を着用する。フッ素ゴムが適している。天然ゴム、クロロプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、PVCは適さない。
以上、GESTIS参照。
眼の保護具サイドガード付きの保護眼鏡を着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具必要に応じて適切な保護衣または化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体または固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
データなし
臭いデータなし
融点/凝固点31 ℃(GESTIS(2022))
沸点、初留点及び沸騰範囲95〜96 ℃(24 hPa)(GESTIS(2022))
可燃性データなし
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界1.1〜6.2 vol.%(GESTIS(2022))
引火点69 (GESTIS(2022))
自然発火点データなし
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: (不溶)(GESTIS(2022))
n-オクタノール/水分配係数データなし
蒸気圧データなし
密度及び/又は相対密度0.914 g/cm3(25℃)(GESTIS(2022))
相対ガス密度データなし
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性火災の場合、有害物質が放出される可能性があります。
一酸化炭素
避けるべき条件情報なし
混触危険物質情報なし
危険有害な分解生成物一酸化炭素

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1) ラットのLD50 (異性体混合物): 5 mL/kg (4,570 mg/kg) (環境省リスク評価書第14巻 (2016))
(2) ラットのLD50 (異性体混合物): > 2,000 mg/kg (環境省リスク評価書第14巻 (2016))
経皮【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1) より、区分2とした。なお、本物質は異性体別のデータは確認できなかったため、異性体混合物のデータで分類した。

【根拠データ】
(1) 本物質の異性体混合物は皮膚及び眼に対して、中等度の刺激性を有する (PATTY (6th, 2012))。

【参考データ等】
(2) EU-CLP分類でSkin Irrit. 2 (H315) に分類されている (EU CLP分類 (Access on November 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。なお、本物質は異性体別のデータは確認できなかったため、異性体混合物のデータで分類した。

【根拠データ】
(1) 本物質の異性体混合物は皮膚及び眼に対して、中等度の刺激性を有する (PATTY (6th, 2012))。
(2) 本物質の異性体混合物 (0.1mL) のウサギの眼への適用は適用30秒以内に中等度の痛み、不快感を呈すが、これらの症状は1時間以内に消失するが、結膜の発赤は適用8日後まで持続した (ACGIH (7th, 2001) Divinyl Benzene (異性体混合物))。

【参考データ等】
(3) EU-CLP分類でEye Irrit. 2 (H319) に分類されている (EU CLP分類 (Access on November 2019))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。ACGIH (2022)で新たに評価されたため本項目を見直したが、分類結果に変更はない(2022年度)。

【参考データ等】
(1)本物質を含む、ジビニルベンゼンとエチルスチレンの混合物について、マウス(n=5/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)において、刺激指数(SI値)は4.09(25%)、5.00(50%)、6.78(100%)であり、EC3値は10.9%と算出されたとの報告がある(ACGIH (2022))。
(2)本物質を含む、ジビニルベンゼンとエチルスチレンの混合物について、ACGIHではDSENに分類されている(ACGIH (2022))。
(3)(1)のジビニルベンゼンとエチルスチレンの混合物は、ジビニルベンゼンとエチルスチレンの混合物(ジビニルベンゼン異性体類55%、エチルスチレン異性体類38〜43%)である(ACGIH (2022))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。なお、本物質は異性体別のデータは確認できなかったため、異性体混合物のデータを用いて分類を行った。そのため旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ジビニルベンゼン異性体混合物 (CAS番号 1321-74-0) について、in vivoでは、マウスの小核試験で陰性と陽性、染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験で陽性の報告がある (NTP TR534 (2006)、PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価書第14巻 (2016))。
(2) ジビニルベンゼン異性体混合物について、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験及びマウスリンフォーマ試験で陰性の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価書第14巻 (2016))。
発がん性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。本物質を含む異性体混合物の発がん性試験結果 (1)、(2) を用いた場合は、分類できないとなる。

【参考データ等】
(1) ラットに本物質を含む異性体混合物DVB-80 (m-ジビニルベンゼン60.3%、p-ジビニルベンゼン (本物質) 21.6%) を2年間吸入ばく露させた試験で、雄で尿細管がん及び脳に悪性神経膠細胞腫瘍 (2匹が星状膠細胞腫、1匹が乏突起膠細胞腫) がみられ、これらは自然発生率の範囲を超えていた。これより、NTPは雄ラットには発がん性の曖昧な証拠 (equivocal evidence) があると結論した (NTP TR534 (2006)、環境省リスク評価書第14巻 (2016)、PATTY (6th, 2012))。
(2) マウスに本物質を含む異性体混合物DVB-80 (m-ジビニルベンゼン60.3%、p-ジビニルベンゼン (本物質) 21.6%) を2年間吸入ばく露させた試験で、雌で肺腫瘍の発生率が自然発生率の範囲を超えていた。これより、NTPは雌マウスには発がん性の曖昧な証拠 (equivocal evidence) があると結論した (NTP TR534 (2006)、環境省リスク評価書第14巻 (2016)、PATTY (6th, 2012))。
生殖毒性【分類根拠】
(1) より、異性体混合物であるジビニルベンゼン (CAS番号 1321-74-0) では、親動物毒性がみられる用量で生殖毒性がみられており、区分2に分類される。異性体別の情報はなく異性体毎の分類は困難であることから、異性体混合物のデータを用いて分類を行った。したがって旧分類から分類結果が変更となった。

【根拠データ】
(1) 異性体混合物であるジビニルベンゼン (CAS番号 1321-74-0) のラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、1,000 mg/kg/dayで親動物の一般毒性として雌雄で体重増加抑制、雄でALT、GGT増加等、雌で死亡あるいは瀕死 (各1例)、腎臓の皮髄境界部尿細管の変性・壊死等がみられ、乳腺の発育不良及び巣作り不良、7/9例で新生児が全例死亡、黄体数及び着床痕数の低値がみられ、また総出産児数、哺育0日の新生児数、出生率、哺育4日の生存児数及び生存率の低値、分娩率及び児の産出率の低値傾向がみられている (厚労省 既存化学物質毒性データベース (Access on November 2019))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
異性体混合物であるジビニルベンゼン (CAS番号 1321-74-0) に関する (1)、(2) の情報から、区分3 (麻酔作用、気道刺激性) とした。 (3) でみられた死亡例での肝臓傷害の所見に関しては、原典情報がなく詳細確認不能であることから根拠としなかった。異性体別の情報がなく各異性体毎の分類は困難であることから、異性体混合物のデータを用いて分類を行った。したがって旧分類から分類結果が変更となった。

【根拠データ】
(1) 異性体混合物であるジビニルベンゼン (各異性体の混合比不明) に急性吸入ばく露された労働者で呼吸器に対して軽度の刺激症状がみられ、皮膚および眼への接触により軽度の刺激症状がみられた (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価書第14巻 (2016))。
(2) ジビニルベンゼン (各異性体の混合比不明) をラットに3,312 ppmで7時間単回吸入ばく露した試験で、鼻汁、鼻炎、体重減少と嗜眠がみられた (ACGIH (7th, 2001))。

【参考データ等】
(3) 本物質とm-ジビニルベンゼン (CAS番号 108-57-6) を各々約21%及び約60%含有するジビニルベンゼンをマウスに400 ppmで6時間単回吸入ばく露した結果、全例が死亡した。剖検により肝臓の傷害 (変性、壊死) が認められた。200 ppmの単回ばく露では、死亡例はなかった (GESTIS (Access on October 2019))
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
異性体混合物であるジビニルベンゼン (CAS番号 1321-74-0) に関する (1)〜(4) の情報から、区分1 (呼吸器) とした。異性体別の情報がなく各異性体毎の分類は困難であることから、異性体混合物のデータを用いて分類を行った。したがって旧分類から分類結果を変更した。

【参考データ等】
(1) 本物質を約21%含むジビニルベンゼンを用いたラットの14週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、100 ppm (ガイダンス値換算: 0.4 mg/L、区分2の範囲) 以上で嗅上皮の基底細胞過形成、200 ppm (0.8 mg/L、区分2の範囲) で嗅上皮の変性がみられた (NTP TR534 (2006))。
(2) 本物質を約21%含むジビニルベンゼンを用いたマウスの14週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、全てのばく露群 (12.5〜200 ppm (ガイダンス値換算: 0.05〜1.1 mg/L、区分1の範囲〜区分2超) の雌雄で鼻腔側壁、嗅上皮と嗅腺の壊死がみられ、雌では嗅上皮と嗅腺の萎縮を伴っていた。200 ppm (ガイダンス値換算: 1.1 mg/L、区分2超) の雄全例 (10/10) と雌9/10例が死亡し、死亡例では肝臓と腎臓の壊死がみられた (NTP TR534 (2006))。
(3) 本物質を約21%含むジビニルベンゼンを用いたラットの105週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、100 ppm (ガイダンス値換算: 0.5 mg/L、区分2の範囲) 以上の全ばく露群で鼻腔嗅上皮の変性及び再生様変化、400 ppm (2.1 mg/L) の雄では肺の限局性慢性炎症の増加、腎尿細管の過形成及び腎症の頻度増加がみられた (NTP TR534 (2006))。
(4) 本物質を約21%含むジビニルベンゼンを用いたマウスの105週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、10 ppm (ガイダンス値換算: 0.05 mg/L、区分1の範囲) 以上の雌雄の異型性の細気管支過形成の増加、30 ppm (ガイダンス値換算: 0.16 mg/L、区分1の範囲) 以上の雌で肺胞上皮の過形成の程度と頻度の増加がみられた (NTP TR534 (2006))。
誤えん有害性*【分類根拠】
本物質は炭化水素であるが、本物質自体の動粘性率のデータがないため、分類できないとした。

【根拠データ】
(1)炭化水素である。

【参考データ】
(2)異性体のm-ジビニルベンゼン (CAS番号 108-57-6) は、区分1である。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)本物質単独での毒性データは得られなかった。m-体との混合物(純度80.2%、混合比不明)の急性毒性データを用いた場合、藻類(セレナストラム)72時間ErC50 = 1830 mg/L、甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 1870 mg/L、魚類(ヒメダカ)96時間LC50 = 4160 mg/L(いずれも環境省リスク評価第14巻, 2016)であることから、区分に該当しないとした。
水生環境有害性 長期(慢性)本物質は急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(通産省公報, 1988))、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow = 3.8(KOWWIN))が、単独での毒性データは得られなかった。
m-体との混合物(純度80.2%、混合比不明)の慢性毒性データを用いた場合、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 353 mg/L(環境省リスク評価第14巻, 2016)であることから、区分に該当しないとなる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対してm-体との混合物(純度80.2%、混合比不明)の急性毒性データを用いた場合、魚類(ヒメダカ)96時間LC50 = 4160 mg/L(環境省リスク評価第14巻, 2016)であることから、区分に該当しないとなる。
以上の結果から、区分に該当しないとした。
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法分解度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号3532
品名(国連輸送名)重合性物質(液体)、n.o.s.(安定剤入りのものに限る。)
国連分類4.1
副次危険-
容器等級V
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策該当しない
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*149P
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)、リスクアセスメント対象物(法第57の3)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)(令和4年度までの対象)
毒物及び劇物取締法該当しない
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)
船舶安全法可燃性物質類・可燃性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法可燃性物質類・可燃性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
R5.3.31: 皮膚感作性項目を見直した。