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安全データシート
4,4'-メチレンジアニリン
作成日 2002年11月27日
改訂日 2006年11月02日
改訂日 2018年03月16日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称4,4'-メチレンジアニリン (4,4'-Methylenedianiline)
製品コードH29-B-113
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアナート)(MDI)・ポリメリックMDIの合成原料、エポキシ樹脂・ポリウレタン樹脂の硬化剤、染料中間体、エポキシ樹脂硬化剤

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(経皮)区分3
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
皮膚感作性区分1
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (中枢神経系、肝臓、腎臓、心臓、視覚器)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1 (心臓、肝臓、腎臓)
区分2 (血液系)
分類実施日
(環境有害性)
環境に対する有害性はH26年度、
政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)

を使用
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」又は「分類できない」に該当する。なお、これらに該当する場合は後述の11項に記載した。
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
皮膚に接触すると有毒
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
強い眼刺激
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
中枢神経系、肝臓、腎臓、心臓、視覚器の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による心臓、肝臓、腎臓の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による血液系の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
漏出物を回収すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
 保管施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名4,4'-メチレンジアニリン
別名4,4'-ジアミノジフェニルメタン
4,4'-メチレンビスベンゼンアミン
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C13H14N2 (198.27)
化学特性 (示性式又は
構造式)
構造式
CAS番号101-77-9
官報公示整理番号
(化審法)
4-40
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び
安定化添加物
情報なし

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させる。医療機関に連絡する。
皮膚に付着した場合多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
飲み込んだ場合口をすすぐこと。気分が悪いときは医師に連絡すること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:吐き気、嘔吐、腹痛、発熱
皮膚:吸収される可能性あり。他の症状については「吸入」参照。
経口摂取:黄疸。他の症状については「吸入」参照。
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。

5.火災時の措置
消火剤水噴霧、粉末消火剤、泡消火剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性加熱により分解すると、非常に有毒なヒューム(アニリン、窒素酸化物)を放出する。
特有の消火方法火元への燃焼源を断ち、消火剤を使用して消火する。
延焼の恐れのないよう水スプレーで周囲のタンク、建物等の冷却をする。
消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び
緊急措置
関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(?給式呼吸器付完全保護衣等)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての着火源を取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
この物質を環境中に放出してはならない。
こぼれた物質を密閉式の容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉じんを避けるために湿らせてから掃き入れる。
残留分をに注 意深く集め、地域規則に従って保管及び処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
裸火禁止。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
接触回避「10.安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件施錠して保管すること。
強酸化剤、?品や飼料から離しておく。
密封して保管する。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
安全な容器包装材料国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会(2017年度版)0.4 mg/m3、経皮吸収
ACGIH(2017年版)TLV-TWA: 0.1 ppm、0.81 mg/m3 (Skin)
設備対策粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器又は局所換気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具換気(粉末でない場合)、局所排気又は呼吸用保護具を使用する。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具安全眼鏡又は顔面シールドを着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色〜淡黄色の薄片 (ICSC (J) (2013))
臭いかすかなアミン臭 (HSDB (2017))
臭いのしきい(閾)値情報なし
pH情報なし
融点・凝固点91.5〜92℃ (ICSC (J) (2013))
沸点、初留点及び沸騰範囲398〜399℃ (102 kPa) (ICSC (J) (2013))
引火点220℃ (c.c.) (HSDB (2017))
蒸発速度(酢酸ブチル=1)情報なし
燃焼性(固体、気体)可燃性 (ICSC (J) (2013))
燃焼又は爆発範囲情報なし
蒸気圧2.03×10-7 mmHg (25℃) (HSDB (2017))
蒸気密度6.8(空気= 1) (HSDB (2017))
比重(相対密度)1.1 (NFPA (14th, 2010))
溶解度水:1.25 g/L (20℃) (GESTIS (2017))
n-オクタノール/水分配係数1.59 (HSDB (2017))
自然発火温度> 500℃ (GESTIS (2017))
分解温度> 270℃ (HSDB (2017))
粘度(粘性率)8.3 cP (100℃) (HSDB (2017))

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性空気に触れると茶色になる。
危険有害反応可能性弱塩基である。強酸化剤と激しく反応する。
避けるべき条件空気、混触危険物質との接触
混触危険物質強酸化剤
危険有害な分解生成物加熱により分解すると、非常に有毒なヒューム(アニリン、窒素酸化物)を放出する。

11.有害性情報
急性毒性
経口GHS分類: 区分4
ラットのLD50値として、335 mg/kg (ATSDR (1998))、355 mg/kg、475 mg/kg、547 mg/kg (DFGOT vol. 7 (1996))、830 mg/kg (DFGOT vol. 7 (1996)、ATSDR (1998)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮GHS分類: 区分3
ラットのLD50値として、1,000 mg/kg (EU-RAR (2001)、SIDS (2002)) との報告に基づき、区分3とした。
吸入:ガスGHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミストGHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、ラットを用いた本物質粉じんの4時間吸入ばく露試験で、区分3に該当する0.837 mg/Lで死亡例はなかったとの報告がある (EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性GHS分類: 区分外
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、適用時間は不明だが軽度の紅斑がみられ、本物質は軽度の刺激性を示すとの記載 (SIDS (2002)) があることから、ガイダンスの軽度の刺激性に該当する区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は
眼刺激性
GHS分類: 区分2
ウサギを用いた眼刺激性試験で軽度の眼刺激性を示し、適用後3〜7日で回復したとの記載 (SIDS (2002)) があり、SIDS (2002) は軽度から中等度の刺激性を示すとしていることから、区分2とした。
呼吸器感作性GHS分類: 分類できない 
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性GHS分類: 区分1
日本産業衛生学会において、4,4'-メチレンジアニリン (MDA) として皮膚感作性物質第1群に分類されている (産衛学会勧告 (2017))。ポリマーの硬化剤として本物質を取扱うポリウレタン成形工場労働者に、作業開始後1〜3週間で衣服に覆われていない部位 (顔、首、前腕) に発疹がみられ本物質 (1%溶液) に対するパッチテストが強陽性となったが、衛生工学的改善 (フードでの作業、保護具の着用、汚染衣服の交換) で皮膚炎は発生しなくなったという事例のほか、本物質の感作性を示す複数の事例報告 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1995)、SIDS (2002)、NITE初期リスク評価書 (2007)) がある。よって、区分1とした。
生殖細胞変異原性GHS分類: 区分2
In vivoでは、マウスの骨髄細胞及び末梢血を用いた小核試験、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、ラットの肝臓細胞を用いたDNA損傷試験で陽性、ラット及びマウスの肝臓細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1998)、DFGOT vol. 7 (1996)、EU-RAR (2001)、環境省リスク評価第10巻 (2012)、NTP DB (Access on September 2017))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いたマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1998)、EU-RAR (2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1995)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 7 (1996)、NTP DB (Access on September 2017))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。
発がん性GHS分類: 区分1B
本物質の二塩酸塩 (CAS番号 13552-44-8) をラット、又はマウスに2年間飲水投与 (濃度: 150、300 ppm) した発がん性試験において、ラットでは雄に肝臓の腫瘍性結節、甲状腺の濾胞細胞がん、副腎の褐色細胞腫の頻度増加が、雌に甲状腺の濾胞細胞腺腫の頻度増加と甲状腺のC細胞腺腫の用量依存的な増加がみられた。マウスでは雌雄に肝細胞がん、雄に甲状腺濾胞細胞腺腫、雌に悪性リンパ腫の頻度増加、及び肝細胞腺腫の用量依存的増加がみられた (NTP TR248 (1983)、IARC 39 (1986)、ACGIH (7th, 2001)、SIDS (2002))。この他、ラットに本物質20 mg/匹を約8ヵ月間強制経口投与し生涯観察した試験で、雄1/8例に18ヵ月後に肝がん及び腎臓の血管腫様の腫瘍、雌1/8例に24ヵ月後に子宮の腺がんがみられたとの報告などがある (IARC 39 (1986)、ACGIH (7th, 2001))。IARCは本物質の発がん性の証拠は実験動物では十分あるとして、グループ2Bとした (IARC 39 (1986)、IARC Suppl. 7 (1987))。一方、EUはラット及びマウスの長期試験で、本物質の経口投与と甲状腺及び肝臓の腫瘍発生との関連性が示され、本物質は動物実験からヒトでの発がん性の懸念があるとして、カテゴリー2に分類した (SIDS (2002))。このEU分類は旧DSD分類であり、現行CLP分類ではCarc. 1Bとなる (ECHA CL Inventory (Access on August 2017))。この他、NTPでR (NTP RoC (14th, 2016))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2001))、日本産業衛生学会で第2群Bに (許容濃度の勧告 (2017): 1995年提案) それぞれ分類されている。
以上、実験動物2種で悪性腫瘍を含む多臓器発がんがみられていること、及びEUの分類結果を根拠として、本項は区分1Bとした。
生殖毒性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、妊娠ラット (n= 5ないし10) に本物質の塩酸塩を妊娠7〜20日に300 mg/kg/dayの用量で、又は妊娠14〜20日に50 mg/kg/dayの用量で強制経口投与した結果、前者では母動物1/5例が低活動の異常児を出産し (母動物毒性の記述なし)、後者では母動物、胎児ともに肝臓に異常所見 (母動物に胆管及び門脈域の増生、胎児に肝臓実質の脂肪浸潤) がみられたとの記述があるが、本試験を含め現行の催奇形性試験の要求基準を満たす試験はないと記載されている (DFGOT vol. 7 (1996))。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)GHS分類: 区分1 (中枢神経系、肝臓、腎臓、心臓、視覚器)
ヒトでは本物質で汚染された小麦粉で作られたパンを食べた84人の中毒例が報告されている。症状として強い右上腹部痛と、黄疸、発熱、肝臓腫大、肝酵素活性上昇が認められ、肝生検では門脈域の炎症と胆汁うっ滞がみられたと報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、DFGOT vol. 7 (1996)、ATSDR (1998)、EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。また、本物質が混入したアルコール飲料を飲んだ男性5人、女性1人が、腹部疝痛、急性黄疸、血中ビリルビンと胆汁うっ滞を示す肝酵素活性の上昇、発熱、筋肉と関節の痛みを示し、そのうち男性1人では蛋白尿と血尿もみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1998)、EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。更に、本物質 (含量不明)、カリウム炭酸塩及びブチロラクトンを含む溶液を飲んだ男性で、黄疸、血清アミノトランスフェラーゼ、ビリルビン値の上昇、血尿、糖尿、心筋への影響 (心電図変化、徐脈、低血圧)、眼網膜損傷が認められたとの症例が1例報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2002)、EU-RAR (2001)、、ATSDR (1998)、DFGOT vol. 7 (1996))。更に、本物質を扱う工場で、エアフィルターの不調が原因で、本物質を含む粉じんを経口、経皮、吸入ばく露した男性1人が、ばく露翌日に上腹部の激しい痛み、上腕部の発疹、黄疸、及び心筋傷害を示すと考えられる心電図の異常を示したとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2002)、EU-RAR (2001)、ATSDR (1998)、DFGOT vol. 7 (1996))。
実験動物では、ラットの単回経口投与試験において、100 mg/kgで出血と中程度の好中球浸潤を伴う肝細胞壊死がみられたとの報告及び100 mg/kg以上でみられる最も顕著な影響は肝臓と腎臓の傷害であるとの報告がある (EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。また、ネコでは25〜100 mg/kgの単回経口投与で、網膜の萎縮による失明が生じたとの報告がある (EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。経皮経路では、ラットに1,000 mg/kgの単回経皮ばく露で、無関心、着色涙、黄疸が認められ、10例中5例が7日以内に死亡したとの報告がある ((EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。吸入経路では、ラットに本物質の粉じん0.837 mg/Lを4時間吸入ばく露した試験で、眼球突出、振戦、円背位、粗毛がみられたが、死亡例はなく、2日後には回復したとの報告がある (SIDS (2002))。以上の実験動物で影響がみられた用量は全て区分1に相当する。
以上の情報から、本物質は中枢神経系、肝臓、腎臓、心臓、視覚器に影響を示すと考えられる。ヒトで網膜の傷害がみられた症例は1例のみであるが、実験動物でも網膜の萎縮がみられていることから視覚器も標的臓器として採用した。したがって、区分1 (中枢神経系、肝臓、腎臓、心臓、視覚器) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)GHS分類: 区分1 (心臓、肝臓、腎臓)、区分2 (血液系)
ヒトについては、本物質を取り扱っていた男性労働者12人に作業開始後1〜2週間で上腹部痛や発熱、悪寒、黄疸を主な症状とした経皮吸収が主要なばく露経路と考えられる急性肝炎が発生し、いずれも7週間以内に回復している。また、液状のエポキシ樹脂に本物質を含んだ粉末を混合し、スプレーガン又は手作業で壁に塗布する作業に従事していた労働者300人のうち、6人に急性肝炎を発症したが、全員が作業開始から2日〜2週間以内の発症であった。この作業では吸入、経口、経皮のいずれのばく露経路もあったと考えられたとの報告がある (環境省リスク評価第10巻 (2012))。また、急性影響であるが経口、経皮、吸入によりばく露され、ばく露の翌朝、両腕に斑点、発疹、黄疸、心筋障害を示す心電図異常がみられ、心電図の異常は 1年後に正常になったとの報告がある (環境省リスク評価第10巻 (2012)、NITE初期リスク評価書 (2007))。
実験動物については、ラットを用いた13週間飲水投与試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である400 ppm (雄: 25.7 mg/kg/day、雌: 20.4 mg/kg/day) 以上で体重増加抑制、胆管過形成、甲状腺濾胞上皮細胞過形成、800 ppm (雄: 38.7 mg/kg/day、雌: 44.4 mg/kg/day) で脳下垂体好塩基性細胞肥大がみられ、ラットを用いた3ヵ月間飲水投与試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である80 ppm (雄: 7.5 mg/kg/day、雌: 8 mg/kg/day) 以上で腎石灰化、甲状腺濾胞上皮細胞変性、区分2のガイダンス値の範囲内である400 ppm (雄: 23 mg/kg/day、雌: 22 mg/kg/day) 以上で
体重増加抑制、貧血、血清アルカリ性ホスファターゼ・ALT・AST・尿素窒素・胆汁色素・コレステロール濃度の上昇、甲状腺濾胞上皮細胞の巣状結節性過形成、800 ppm (雄: 31 mg/kg/day、雌: 32 mg/kg/day) で白血球増加、好中球増加、プロトロンビン時間延長、肝臓小胆管の過形成、甲状腺濾胞胞上皮細胞肥大がみられ、ラットを用いた103週間飲水投与試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である150 ppm (雄: 9 mg/kg/day、雌: 10 mg/kg/day) 以上で脂肪肝、甲状腺濾胞上皮細胞の嚢腫及び過形成、区分2のガイダンス値の範囲内である300 ppm (雄: 16 mg/kg/day、雌: 19 mg/kg/day) の腎臓の鉱質沈着 (雄) がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
このほか、モルモットに440 mg/m3 のエアロゾルを2週間 (4 時間/日、5 日/週) 鼻部ばく露し、その2週間後に皮膚及び気管での誘発試験を行った結果、皮膚や呼吸器への刺激やアレルギー反応はみられなかったが、眼の視細胞及び網膜色素上皮細胞の退行性変化がみられ、肺で軽度の肉芽腫性炎が認められたとの報告がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1995)、環境省リスク評価第10巻 (2012))。
以上、ヒトでは主に急性肝炎がみられ、心臓に対しても影響を及ぼすものと考えられる。実験動物については、区分1のガイダンス値の範囲から甲状腺、肝臓、腎臓、区分2のガイダンス値の範囲から血液、脳下垂体に対する影響がみられている。また、眼や呼吸器に対する影響の可能性もある。このうち、下垂体好塩基性細胞の肥大は、甲状腺刺激ホルモンの産生亢進を示したものと考えられ、甲状腺の所見は肝臓による代謝亢進に対する二次的所見と考えられた。また、眼や呼吸器に対する影響がみられたモルモットの試験はばく露期間が10回と短いこと、反復ばく露後に感作誘発のための経皮投与あるいは吸入ばく露を行っていることからガイダンス値への換算ができないため分類根拠としなかった。
したがって、区分1 (心臓、肝臓、腎臓)、区分2 (血液系) とした。
吸引性呼吸器有害性GHS分類: 分類できない 
データ不足のため分類できない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)甲殻類 (オオミジンコ)の48時間EC50 = 0.105 mg/L (NITE 初期リスク評価書 (2007)) から、区分1とした。
水生環境有害性(長期間)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (BODによる分解度:0% (既存点検 (1982)))、甲殻類 (オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.00525 mg/L (環境省生態影響試験 (2001)、環境省リスク評価第10巻 (2012)、NITE初期リスク評価書 (2007)) であることから、区分1となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (BODによる分解度:0% (既存点検 (1982))、魚類 (メダカ)の96時間LC50 = 20.6 mg/L (環境省生態影響試験 (2001)、環境省リスク評価第10巻 (2012)) であることから、区分3となる。 以上の結果を比較し、区分1とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号2651
国連品名4,4'-DIAMINODIPHENYL-METHANE
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級L
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及び
IBCコードによるばら積み
輸送される液体物質
該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策イエローカード携行が望ましい。
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*153
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2008 Emengency Response Guidebook (ERG 2008)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
化審法旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)
旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)
海洋汚染防止法個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)
労働基準法感作性を有するもの(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号、平8労基局長通達、基発第182号)
疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。