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安全データシート
二酸化塩素
作成日 2008年10月06日
改訂日 2016年3月31日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称二酸化塩素 (Chlorine dioxide)
製品コードH27-B-069
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限消臭剤、殺菌剤、防カビ剤、漂白剤 (パルプ・繊維・革・油脂)、食品添加物 (漂白剤;小麦粉、油脂、蜜ロウなど) (化学工業日報社)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H28.03.18、政府向けGHS分類ガイダンス(H25年度改訂版(ver1.1))を使用
GHS改訂4版を使用
健康に対する有害性急性毒性(吸入:ガス)区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2B
生殖毒性区分1B
追加区分:授乳に対する、又は授乳を介した影響、
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1 (呼吸器)
分類実施日
(環境有害性)
環境に対する有害性はH18.3.31、GHS分類マニュアル(H18.2.10 版)を使用
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」に該当する。なお、健康有害性については後述の11項に、「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」の記述がある。
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報眼刺激
吸入すると生命に危険
眠気又はめまいのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
授乳中の子に害を及ぼすおそれ
呼吸器の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
環境への放出を避けること
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
応急措置吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
直ちに医師に連絡すること。
気分が悪い時は医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
漏出物を回収すること。
保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性データなし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名二酸化塩素
別名過酸化塩素、塩素(IV)ジオキシド、アンチウムジオキシド
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)ClO2 (67.451)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号10049-04-4
官報公示整理番号
(化審法)
1-243
官報公示整理番号
(安衛法)
データなし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物データなし

4.応急措置
吸入した場合ガスを吸入した場合、新鮮な空気の場所に移し、安静、保温に努め、新鮮な空気を吸わせるか、酸素吸入を行なう。
呼吸が停止している場合には人工呼吸を行い、速やかに医師の手当てを受ける。
皮膚に付着した場合液化ガスによる凍傷を受けた場合は、直ちに患部を温水で暖めるともに、医師の手当てを受けること。
眼に入った場合噴出ガスが眼に入った場合、水で15〜20分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
飲み込んだ場合気体物質なので飲み込むことはないと考えられる。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咳、頭痛、息苦しさ、吐き気、息切れ、咽頭痛。
症状は遅れて現れることがある。
皮膚: 発赤、痛み。
眼: 発赤、痛み。
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項肺水腫の症状は2 〜 3 時間経過するまで現れない場合が多く、安静を保たないと悪化する。したがって、安静と経過観察が不可欠である。

5.火災時の措置
消火剤( 周辺の火災時) 大量の水、水噴霧
使ってはならない消火剤データなし
特有の危険有害性火災時、温度上昇等により爆発するおそれがある。
可燃性ではないが、他の物質の燃焼を助長する。
消火に用いる水により、有毒で腐食性の塩酸及び塩素酸が生じる。
特有の消火方法火災を増大させる危険性があるものを周囲から速やかに取り除く。
消火活動は、有効に行える十分な距離から行う。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
火災の種類に応じて適切な消火剤を用いる。
容器内に水を入れてはいけない。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な空気呼吸器を含め完全な防護服( 耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置作業者は適切な保護具( 「8 . ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
風上に留まる。
低地から離れる。
密閉された場所に入る前に換気する。
環境に対する注意事項環境中に放出してはならない。
河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
封じ込め及び浄化の方法及び機材ガスが拡散するまでその場所を隔離する。
危険でなければ漏れを止める。
蒸発を抑え、蒸気の拡散を防ぐため散水を行う。
漏洩物又は漏洩源に直接水をかけない。
換気する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行う。
安全取扱い注意事項容器は丁寧に取り扱い、衝撃を与えたり、転倒させない。
容器の取り付け、取り外しの作業の際は、漏洩させないよう、十分注意する。
使用後は、バルブを完全に閉め、口金キャップを取り付け、保護キャップを付ける。
作業着、作業靴は導電性のものを用いる。
作業時のどの時点でも、許容濃度( 天井値) を越えてはならない。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
ガスを吸入しないこと。
吸入すると、死亡する危険性がある。
眼、皮膚との接触を避けること。
取扱い後はよく手を洗うこと。
接触回避「10. 安定性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後はよく手を洗うこと。
ばく露の程度によっては定期健診が必要である。
保管
安全な保管条件容器は直射日光や火気を避け、4 0 ℃ 以下の温度で保管すること。
容器を密閉して換気の良いところで貯蔵すること。
施錠して貯蔵すること。
安全な容器包装材料高圧ガス保安法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会
(2015年度版)
未設定
ACGIH(2015年版)TLV-TWA: 0.1 ppm (0.28 mg/m3)
TLV-STEL: 0.3 ppm (0.83 mg/m3)
(二酸化塩素)
設備対策完全密閉系及び完全密閉装置でのみ取り扱うこと。
密閉された装置、機器又は局所排気装置を使用しなければ取扱ってはならない。
気中濃度を推奨された許容濃度以下に保つために、工程の密閉化、局所排気その他の設備対策を使用する。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸用保護具適切な呼吸用保護具を着用すること。
ばく露の可能性のあるときは、送気マスク、空気呼吸器、又は酸素呼吸器を着用する。
手の保護具適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具適切な眼の保護具を着用すること。
保護眼鏡( 普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)
皮膚及び身体の保護具適切な保護手袋及び眼、顔面用の保護具を着用すること。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状気体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
赤〜黄色 (Merck (15th、2013))
臭い不快臭 (ACGIH(7th, 2001))
臭いのしきい(閾)値0.1 ppm (ACGIH(7th, 2001))
pHデータなし
融点・凝固点-59℃ (ICSC (1999))
沸点、初留点及び沸騰範囲11℃ (ICSC (1999))
引火点不燃性 (ICSC (1999))
蒸発速度(酢酸ブチル=1)データなし
燃焼性(固体、気体)データなし
燃焼又は爆発範囲下限 10 vol% (空気中) (ICSC (1999))
蒸気圧101 kPa (20℃) (ICSC (1999))
蒸気密度2.3 g/cm3 (ICSC (1999))
比重(相対密度)1.6 (0℃; 液体) (ICSC (1999))
溶解度3.01 g/L 水 (25℃、34.5mmHg) (Merck (15th, 2023))
n-オクタノール/水分配係数データなし
自然発火温度不燃性 (ICSC (1999))
分解温度データなし
粘度(粘性率)データなし

10.安定性及び反応性
反応性燃焼はしないが、引火性物質と接触すると火災を生じるおそれがある。
衝撃や摩擦、振動、加熱により分解し、爆発を生じる。
ガスは空気より重い。
温度の上昇に対して不安定である。
加熱、日光へのばく露、衝撃や火花により、爆発することがある。
強力な酸化剤であり、可燃性物質や還元性物質と激しく反応する。有機物、リン、水酸化カリウム、イオウと激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす。
水と反応し、塩酸、塩素酸を生じる。
化学的安定性データなし
危険有害反応可能性熱水中で分解し、塩酸、塩素及び酸素を生じる。
避けるべき条件データなし
混触危険物質データなし
危険有害な分解生成物データなし

11.有害性情報
急性毒性
経口GHS分類: 分類対象外
GHSの定義におけるガスである。なお、本物質0.2%溶液のラットのLD50値として、94 mg/kg (OECD TG 401) (SIDS (2009)、CICAD 37 (2002)) との報告がある。
経皮GHS分類: 分類対象外
GHSの定義におけるガスである。なお、本物質5%溶液をラットに24時間閉塞適用したLD50値として、> 2,000 mg/kg (GESTIS (Access on Sptember 2015)) との報告がある。
吸入:ガスGHS分類: 区分1
ラットのLC50値 (4時間) (OECD TG 403) として、32 ppmとの報告 (SIDS (2009)、CICAD 37 (2002)) に基づき、区分1とした。
吸入:蒸気GHS分類: 分類対象外
GHSの定義におけるガスである。
吸入:粉じん及びミストGHS分類: 分類対象外
GHSの定義におけるガスである。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、マウスに本物質を含む水溶液 (9.7〜11.4 mg/L) を48時間適用した結果、刺激性はみられなかったとの報告 (ATSDR (2004)) がある一方で、ウサギに本物質 (80%) を24時間適用した結果、刺激性がみられたとの報告 (EPA Pesticide (2006)) がある。これらの報告は、低濃度の試験や24時間適用の試験であるため分類には用いなかった。なお、ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG404) において、本物質のナトリウム塩である亜塩素酸ナトリウム (CAS番号: 7758-19-2、34.5%) を適用した結果、刺激性はみられなかったとの報告がある (SIDS (2009))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性GHS分類: 区分2B
ウサギを用いた眼刺激性試験 (OPPTS 870.2400) において、本物質適用により軽度の刺激性がみられたとの報告がある (EPA Pesticide (2006))。また、ガス状の本物質にばく露された結果 (動物種不明)、 眼脂がみられたとの報告や (CICAD 37 (2002))、ヒトにおいて高濃度の単回ばく露により眼刺激性がみられたとの報告がある (CICAD 37 (2002))。ウサギを用いた眼刺激性試験において、軽度の刺激性が報告されていることから区分2Bとした。
呼吸器感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いた感作性試験 (OECD TG406、GLP準拠) において、本物質のナトリウム塩である亜塩素酸ナトリウム (CAS番号: 7758-19-2) を適用した結果、感作性は認められなかったとの報告がある (SIDS (2006))。
生殖細胞変異原性GHS分類: 分類できない
In vivoでは、ラット、マウスの優性致死試験で陰性、マウス骨髄細胞の小核試験で陽性、陰性の結果、マウス骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、マウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験で陰性である (SIDS (2009)、IRIS Summary (2000)、IRIS Tox. Review (2000)、ATSDR (2004)、CICAD 37 (2002)、ACGIH (7th, 2001))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、染色体異常試験で陽性、陰性の結果である (IRIS Summary (2000)、IRIS Tox. Review (2000)、ATSDR (2004)、SIDS (2009)、CICAD 37 (2002))。SIDS (2009) ではin vivoで多くの陰性結果があり、本物質は遺伝毒性 (変異原性) を有する可能性は低いと評価している。以上より、ガイダンスに従い、分類できないとした。
発がん性GHS分類: 分類できない
ヒトでの発がん性に関する情報はない。実験動物では水を本物質で消毒後濃縮し、本物質残渣を含む水濃縮物を3回/週、2週間マウスに強制経口投与後、既知発がん物質のTPA (12-tetradecanylphorbal-13-acetate) を20週間経皮適用した2段階発がん性試験において、皮膚腫瘍数の有意な増加はみられなかった (SIDS (2009))。また、本物質ナトリウム塩 (亜塩素酸ナトリウム) をマウスに250、500 mg/L (36、71 mg/kg/day 相当) の用量で80週間飲水投与した発がん性試験では、高用量群で肺腺腫の頻度増加 (5/43 (12%) vs 対照群: 0/35 (0%)) がみられたものの、用量相関性を欠き、かつ悪性腫瘍がみられていないことから、SIDSは亜塩素酸ナトリウムはマウスでは発がん性を示さないとの著者らの結論を記述している (SIDS (2009))。国際機関による発がん性分類結果としては、EPAが1986年ガイドラインの基準ではD (Not classifiable as to human carcinogenicity) に、1996年ガイドラインの基準ではCBD (Carcinogenic potential cannot be determined) に該当するとした (IRIS Summary (2000)) が、他の機関による分類はなされていない。
以上より、分類ガイダンスに基づき、本項は分類できないとした。
生殖毒性GHS分類: 区分1B
追加区分:授乳に対する、又は授乳を介した影響、
米国の複数の病院で1940〜1955年に生まれた新生児の疾病率と死亡率との記録を調べた遡及的疫学研究の結果、本物質が混入した水道水を摂取した近隣の病院患者の集団では、本物質を含まない水道水を摂取した病院患者の集団と比べて、早産の発生率が有意に高いと報告されたが、早産の判定は医師の評価によるもので客観的な判断基準を欠いており、また、早産の頻度は病院間で大きく異なっていた。さらに、本物質へのばく露の程度についても情報がなく、交絡因子についての解析も不十分なため、本結果から結論を導くことはできないと報告されている (CICAD 37 (2002))。この他、ヒトでの生殖影響に関する有用な知見はない。
一方、実験動物ではラットに本物質の水溶液を雄に交配前8週間、雌には交配前2週間、及び交配、妊娠期間を経て哺育5日まで、最大10 mg/kg/day を強制経口投与した1世代試験において、親動物の生殖能に影響はなく、児動物にも同腹児数、離乳までの生存率、離乳時の生殖器官重量に対照群と差異はみられず、親動物、児動物に対するNOAELはともに10 mg/kg/dayであったと報告されている (SIDS (2009)、IRIS Tox. Review (2000)、CICAD 37 (2002))。しかしながら、発生毒性影響としては、ラット (SD系) に交配2週間前から児動物が離乳する生後21日まで、本物質を経口 (飲水) 経路で投与した試験において、100 ppm (約14 mg/kg/day) では、児動物に離乳時までの体重の低値推移、自発運動の減少、離乳時の小脳DNA含量の減少、及び離乳時の血清T4値の減少がみられ、母動物への飲水を介した本物質ばく露による神経行動影響に対するLOAELは14 mg/kg/day、同NOAELは3 mg/kg/dayと設定されている (SIDS (2009)、IRIS Tox. Review (2000)、CICAD 37 (2002))。 なお、別系統 (Long-Evans) のラット母動物に対し、14 mg/kg/dayを強制経口投与 (分娩後、新生児の生後0〜21日相当日 (離乳時) まで) し、新生児を生後35日まで観察した試験においても、児動物の体重の低値推移、離乳時及び生後35日における大脳の絶対重量、DNA含量、タンパク含量の減少がみられたとの報告がある (SIDS (2009)、IRIS Tox. Review (2000)、CICAD 37 (2002))。
以上、実験動物では本物質水溶液を妊娠期、又は授乳期に経口経路で投与されたラットでは、児動物の生後の成長及び脳神経系発達障害を示唆する所見が示され、甲状腺ホルモンなど内分泌系の関与を介した影響の可能性が想定されている (SIDS (2009)、ATSDR (2004))。ただし、SIDSは上記の複数の発生毒性試験がGLP対応のガイドライン試験でなく、限定的なプロトコールの試験であること、本物質ナトリウム塩 (亜塩素酸ナトリウム) を用いたラット2世代生殖毒性試験ではF1児動物の生後25日の検査において、血清T3及びT4値に変化はなく、本物質を用いた発生毒性試験結果と矛盾することを指摘し、以上の発生毒性試験はキースタディとは扱えないと慎重な判断を下している (SIDS (2009))。これに対し、ATSDRでは本物質経口ばく露による神経発達毒性影響を重視し、SIDSが引用した上記の亜塩素酸ナトリウムを用いたラット飲水投与による2世代生殖毒性試験において、中用量投与 (6 mg/kg/day) した親動物から生まれたF1児動物の聴覚驚愕刺激に対する反応性低下 (生後24日) を発達神経毒性影響として扱い、この所見を基に最小リスクレベル (経口MRL) の算出根拠としている (ATSDR (2004))。以上より、妊娠期・授乳期への本物質ばく露は低用量から新生児に神経系発達障害を及ぼす可能性があることから、本項は区分1Bとし、授乳影響を追加した。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)GHS分類: 区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用)
本物質は腐食性ガスであり、気道刺激性がある (SIDS (2009)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2004)、CICAD 37 (2002))。ヒトでは、花を漂白作業中に吸入ばく露された事例で、咳、頭痛、咽頭刺激、頻呼吸、頻脈、ラ音、呼吸困難、肺機能低下の報告がある (IRIS Tox Review (2000)、ATSDR (2004))。実験動物では、ラットの吸入ばく露 (区分1相当の用量) で活動低下、腹呼吸、呼吸雑音、努力呼吸、呼吸困難、肺胞壁の崩壊、肺水腫 (SIDS (2009)、IRIS Summary (2000)、ATSDR (2004)、CICAD 37 (2002))、ラットの経口投与 (区分1相当の用量) で活動低下、円背位、鎮静、中枢神経抑制、あえぎ、呼吸器症状 (ラ音、赤色鼻汁) の報告がある (SIDS (2009))。
以上より、本物質は呼吸器への影響及び麻酔作用があり、区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)GHS分類: 区分1 (呼吸器)
ヒトについては、職業ばく露で呼吸器への影響 (気管支炎、肺気腫) がみられている (ACGIH (7th, 2001)、CICAD 37 (2002)、ATSDR (2004))。
実験動物では、ラットを用いた2ヶ月間吸入毒性試験において1 ppmで肺への影響 (うっ血、細気管支周囲の水腫)、ウサギを用いた45日間吸入毒性試験において2.5 ppmで肺への影響 (肺胞の出血、うっ血) がみられている (CICAD 37 (2002)、ATSDR (2004)、IRIS Tox. Review (2000))。また、ラットを用いた90日間飲水投与毒性試験において、1.9 mg/kg/dayで鼻腔の粘膜の杯細胞の過形成、扁平上皮化生、炎症反応がみられている。この所見は飲水中の塩化水素ガスによるものと考えられている (IRIS Tox. Review (2000))。
以上、ヒトにおいて呼吸器への影響がみられ、動物実験においても区分1の範囲で呼吸器への影響がみられた。
したがって、区分1 (呼吸器) とした。
吸引性呼吸器有害性GHS分類: 分類対象外
GHSの定義におけるガスである。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)GHS分類: 区分1
魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50 = 0.02-0.17 mg/L(CICAD 37、2002)他から、区分1とした。
水生環境有害性(長期間)GHS分類: 区分1
急性毒性が区分1、水中での挙動及び生物蓄積性が不明であるため、区分1とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
高圧ガスを廃棄する場合は、高圧ガス保安法一般高圧ガス保安規則に従うこと。
汚染容器及び包装空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。
高圧ガスの容器を廃棄する場合は、製造業者等専門業者に回収を依頼すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号-
国連品名-
国連危険有害性クラス-
副次危険-
容器等級-
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法に従う。
航空規制情報航空法に従う。
陸上規制情報消防法、道路法に従う。
特別安全対策移送時にイエローカードの保持が必要。
輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号-

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
航空法輸送禁止
道路法車両の通行の制限
外国為替及び外国貿易管理法輸出貿易管理令別表第1の16の項
高圧ガス保安法液化ガス
毒性ガス

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。