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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
ベンジルアルコール
作成日 2009年03月30日
改訂日 2020年03月13日
改訂日 2020年11月12日
改訂日 2022年03月15日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称ベンジルアルコール
化学品の英語名称Benzyl alcohol
製品コードR03-C-016-MHLW
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限香料、塗料・インキ・エポキシ樹脂溶剤、合成繊維染色助剤、医薬・化粧品防腐剤 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)※一部JIS Z7252:2019(GHS 6版準拠)を採用
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(経皮)区分4
急性毒性(吸入:蒸気)区分3
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
皮膚感作性区分1A
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(中枢神経系、腎臓)、区分3(麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(中枢神経系)
分類実施日
(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)※一部JIS Z7252:2019(GHS 6版準拠)を採用
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分2
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合は有害
強い眼刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
中枢神経系、腎臓の障害
眠気またはめまいのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系の障害
水生生物に毒性
注意書き
 安全対策粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
口をすすぐこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名ベンジルアルコール
慣用名又は別名α−ヒドロキシトルエン
フェニルカルビノール
ベンゼンメタノール
英語名Benzyl alcohol
alpha-Hydroxytoluene
Phenyl carbinol
Benzenemethanol
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C7H8O (108.14)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号100-51-6
官報公示整理番号(化審法)3-1011
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
医師に連絡すること。
気分が悪い時は医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咳。めまい。頭痛。
皮膚:発赤。
眼:充血。
経口摂取:腹痛。下痢。嗜眠。吐き気。嘔吐。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤粉末消火薬剤、AFFF(水性膜泡消火薬剤)、泡消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
火災時の特有の危険有害性可燃性。
火災の場合、有害物質(一酸化炭素)が放出される可能性がある。
特有の消火方法周囲の容器を水噴霧で冷却する。
安全にできるのであれば、危険区域から損傷していない容器を移動する。発火源を遮断する。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置呼吸器用保護具を着用すること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
環境に対する注意事項環境汚染を引き起こすおそれがある。
漏出物が地面や河川や下水に流出することを避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
残留液を、砂または不活性吸収剤に吸収させる。
地域規則に従って保管・処理する。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
安全取扱注意事項粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
裸火禁止。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。
容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
強酸化剤から離しておく。
安全な容器包装材料消防法で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度等
日本産衛学会(2021年版)最大許容濃度: 25 mg/m3
ACGIH(2022年版)未設定
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
作業場では全体換気を行う。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を着用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度に対応した有機ガス用吸収缶を使用する
-作業者が粉塵に暴露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色透明
臭い特異臭、かすかな芳香臭
融点/凝固点-15 ℃(ICSC(2000))
-15.2 ℃(PubChem(2022))
-15.3 ℃(危険物災害等支援システム(2022))
沸点、初留点及び沸騰範囲205 ℃(ICSC(2000))
206 ℃(GESTIS(2022))
205.3 ℃(PubChem(2022))
可燃性可燃性(ICSC(2002))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界1.3〜13 vol%(空気中)
1.22 vol.%(55 g/m3)(GESTIS(2022))
引火点93 ℃(Closed cup)(ICSC(2000))
94 ℃(Closed cup)(GESTIS(2022)、危険物災害等支援システム(2022))
96 ℃(Closed cup)(PubChem(2022))
自然発火点436 ℃(ICSC(2000)、PubChem(2022))
435 ℃(GESTIS(2022))
分解温度≧870 ℃(GESTIS(2022))
pH中性(PubChem(2022))
動粘性率データなし
溶解度水: 4 g/100 ml(20℃)(GESTIS(2022)、ICSC(2000))
ベンゼン、メタノール、クロロホルム、エタノール、エーテル、メタノール、クロロホルム、アセトンに可溶(PubChem(2022))
n-オクタノール/水分配係数Log Kow: 1.1(ICSC(2000)、PubChem(2022))
Log Kow: 1.05(GESTIS(2022))
蒸気圧13.2 Pa(20℃)(ICSC(2000))
0.07 hPa(20℃)(GESTIS(2022))
0.125 hPa(25℃)(GESTIS(2022))
密度及び/又は相対密度1.04 g/cm3(20℃)(GESTIS(2022))
1.0419 g/cu cm(24℃)(PubChem(2022))
1.046 (20/4℃)(危険物災害等支援システム(2022))
相対ガス密度3.7 (空気=1)(ICSC(2000))
3.72 (GESTIS(2022))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性推奨される保管条件下で安定。
危険有害反応可能性可燃性。強酸化剤と反応する。ある種のプラスチックを侵す。燃焼すると、有毒なガス(一酸化炭素など)を生成する。空気にさらされると、ベンズアルデヒドと安息香酸に徐々に酸化される。加熱分解すると、刺激的な煙を放出する。
避けるべき条件熱、空気
混触危険物質強酸化剤
危険有害な分解生成物一酸化炭素

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(7) より、該当する件数の多い区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50:1,200 mg/kg (JECFA FAS48 (2001))
(2) ラットのLD50:1,230 mg/kg (SIDS (2004)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012))
(3) ラットのLD50:1,600 mg/kg (JECFA FAS48 (2001))
(4) ラットのLD50:1,610 mg/kg (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012))
(5) ラットのLD50:1,660 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013))
(6) ラットのLD50:2,080〜2,100 mg/kg (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012)、JECFA FAS48 (2001))
(7) ラットのLD50:3,100 mg/kg (JECFA FS48 (2001)、PATTY (6th, 2012))
経皮【分類根拠】
(1) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 2,000 mg/kg (SIDS (2004)、環境省リスク評価第11巻 (2013))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、旧分類で採用したデータはエアロゾルによる試験との記載があることから、ミストの基準値を適用し、旧分類を変更した。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1) のGLP準拠データは、4.178 mg/Lで死亡例がないことから、区分に該当しないとした。(1) のデータはエアロゾルによる試験との記載があることから、ミストの基準値を適用し、旧分類を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間):> 4.178 mg/L (SIDS (2004))、 (OECD TG 403、GLP準拠)

【参考データ等】
(2) ラットのLC50 (8時間):> 1,000 ppm (4時間換算値: 8.1 mg/L) (PATTY (6th, 2012))
(3) ラットのLC50 (4時間):8.9 mg/L (SIDS(2004))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で非刺激性 (not irritating) と報告されている (SIDS (2004))。
(2) ウサギの皮膚刺激性試験の2報告で、皮膚一次刺激性インデックス (PII値) は、それぞれ、1.56、1.83と報告されている (ECETOC TR66 (1995))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で、中等度の刺激性 (moderately irritating) と報告されている (SIDS (2004))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)〜(6)より、区分1Aとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。産衛学会 (2019)にて感作性知見が公表されたため、旧分類から皮膚感作性項目のみ見直した(2021年)。

【根拠データ】
(1)日本産業衛生学会では感作性物質皮膚第2群に分類している(産衛学会感作性物質の提案理由書 (2019))。
(2)接触性皮膚炎が疑われた患者5,202名に対するパッチテストでは、全患者のうち48名(0.9%)が、また、化粧品へのアレルギー反応のみを示した156名のうち2名(1.3%)が、本物質に感作されていた。(産衛学会感作性物質の提案理由書 (2019))。
(3)健常ボランティア19名、皮膚炎患者31名に対するオープンテストにおいて、健常者15名、患者17名に即時型反応として皮膚蕁麻疹が生じた。また、パッチテストでは、本物質による遅延型アレルギーとしてのアレルギー性接触性皮膚炎は健常者、患者ともに全員陰性であった(産衛学会感作性物質の提案理由書 (2019))。
(4)香粧品香料原料安全性研究所(RIFM)はヒトボランティアを対象にマキシマイゼーションテストを行った結果、全員陰性であり、ワセリン中10%の本物質によるによる刺激性や感作性の根拠はないとした。ヒトボランティアを対象とした皮膚繰り返し感作誘導試験では、本物質の20%溶液では56名中5名、15%溶液では46名中5名、7.5%溶液では10名中3名、5%溶液では101名中2名に感作がみられ、3%溶液では107名全員に感作はみられなかった(産衛学会感作性物質の提案理由書 (2019))。
(5)感作及び誘発濃度3〜20%(3,543 μg/cm2〜23,622 μg/cm2)の用量を用いたヒト反復侵襲パッチテスト(HRIPT)の結果から、本物質の弱〜中程度の皮膚感作性の傾向が示唆される。本物質の8,858 μg/cm2 (7.5%) から23,622 μg/cm2 (20%)の高用量では、感作された被験者数の増加がみられたとの報告がある(EU REACH CoRAP Substance Evaluation Conclusion (2020))。
(6)本物質に対して様々な程度の陽性反応が示されたとの多数の症例報告がある(EU REACH CoRAP Substance Evaluation Conclusion (2020))。

【参考データ等】
(7)マウス(n = 4)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は1(2.5%)、0.9(5%)、0.5(10%)、0.6(25%)、1.2(50%)であったとの報告がある(CLH Report (2020)、EU REACH CoRAP (2020)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、専門家判断に従い、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) In vivoでは腹腔内投与によるマウス骨髄細胞の小核試験で陰性である (環境省リスク評価第11巻 (2013)、SIDS (2004))。
(2) In vitroでは細菌の復帰突然変異試験で陰性である。また、マウスリンフォーマ試験及び染色体異常試験では代謝活性化系存在下で陽性だが、極めて高濃度かつ細胞毒性濃度での反応であり、in vitro小核試験では陰性であった (NTP TR343 (1989)、NTP DB (Access on May 2019)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012)、SIDS (2004)、JECFA FAS48 (2001)、DFGOT vol.3 (2018))。

【参考データ等】
(3) DFGOT vol.3 (2018) 及びSIDS (2004) では、染色体異常試験陽性の結果は極めて高濃度や細胞毒性を示す濃度で得られたものであり、本物質の遺伝毒性の懸念はないと結論している (DFGOT vol.3 (2018) 、SIDS (2004))。
発がん性【分類根拠】
国内外の分類機関による分類結果はない。利用可能なヒトを対象とした報告はない。(1) よりガイダンスの分類できないに相当し、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットおよびマウスに2年間強制経口投与した発がん性試験で、両種の雌雄ともに発がん性の証拠なし (no evidence) と結論された (NTP TR343 (1989))。
生殖毒性【分類根拠】
(1)、(2) より、発生毒性は母動物毒性発現用量で軽微な影響がみられたのみで区分に該当しないが、性機能及び生殖能に関する情報がなく、データ不足のため分類できない。

【根拠データ】
(1) 雌マウスの妊娠6〜15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性(1/50例の死亡)がみられたが発生影響はみられていない (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012) 、環境省リスク評価第11巻 (2013))。
(2) 雌マウスの妊娠7〜14日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性(19/50例の死亡、チアノーゼ、振戦、衰弱、運動失調等)がみられ、児の出生時体重の減少、その後の体重増加抑制がみられた (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012) 、環境省リスク評価第11巻 (2013))。

【参考データ等】
(3) 旧分類で引用された「ラットの4世代経口投与試験」は本物質ではなく安息香酸 (benzoic acid) のデータである。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分1 (中枢神経系、腎臓)、区分3 (麻酔作用) とした。新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質を34.8%含有する塗膜剥離剤を吸入した45歳男性が、意識障害を来して昏睡状態で緊急搬送され、血圧低下、進行性の代謝性アシドーシスと尿細管障害による多尿を示し、急性ベンジルアルコール中毒と診断された (伊藤ら、日救急医会誌. vol. 29, p.254 (2018))。事故原因となった剥離剤の他の成分 (及び含有量) は、製品のSDSには水 (50%以上)、リン酸 (1〜5%)、ナフタリン及び過酸化水素 (いずれも1%未満) と記載されており、上記の影響は本物質によると考えられる。
(2) 本物質は、皮膚に塗布、又は1%溶液の皮下注射により局所麻酔に使用された経緯がある (環境省リスク評価第11巻 (2013))。
(3) ラットの単回経口投与試験において、抑うつ状態、興奮、昏睡がみられた。影響がみられた用量の記載はないが、LD50値である1,230 mg/kg付近でみられたとすると、区分2に相当する (SIDS (2004))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)、(2) より、ヒト小児への静脈内投与により中枢神経系への影響がみられていることから、区分1 (中枢神経系) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質は、血管内カテーテル洗浄液の保存剤として使用され、低体重児に神経系の阻害及び致死を引き起こした (PATTY (6th, 2012))。
(2) 本物質0.9%を含有する液体の静脈内投与により、低出生体重児に中毒症状 (あえぎ呼吸、アシドーシス、神経機能低下等) が発現した (PATTY (6th, 2012))。

【参考データ等】
(3) ラットあるいはマウスに50〜800 mg/kg/dayを13週間経口投与した結果、800 mg/kg/day (区分2超) で神経毒性の兆候 (よろめき歩行、努力性呼吸、嗜眠) がみられ、さらにラットでは、脳、胸腺、骨格筋、腎臓の病変等がみられた (NTP TR343 (1989)、SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第11巻 (2013))。
(4) ラットに200、400 mg/kg/day、マウスに100、200 mg/kg/dayを2年間経口投与した結果、投与による非腫瘍性病変の発生はみられなかった (NTP TR343 (1989))。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)魚類(ブルーギル)96時間LC50 = 10 mg/L(環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分2とした。
水生環境有害性 長期(慢性)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(BODによる分解度:94%(既存点検, 1991))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 51 mg/L(環境庁生態影響試験, 1997、環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分に該当しないとなる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、魚類(ブルーギル)の96時間LC50 = 10 mg/L(環境省リスク評価第11巻, 2013)であるが、急速分解性があり(BODによる分解度:94%(既存点検, 1991))、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow= 1.1(PHYSPROP Database、2019))ことから、区分に該当しないとなる。
以上の結果から、区分に該当しないとした。
残留性・分解性化審法分解度試験:良分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性情報なし
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号-
品名(国連輸送名)-
国連分類-
副次危険-
容器等級-
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*該当しない
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)該当しない
毒物及び劇物取締法該当しない
消防法第4類 引火性液体 第三石油類 非水溶性(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)
海洋汚染防止法有害液体物質(Y類同等の物質)(環境省告示第148号第2号)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」