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労働災害事例

特別高圧送電線を停電作業中、並行する送電線からの誘導現象により感電

特別高圧送電線を停電作業中、並行する送電線からの誘導現象により感電
業種 電気通信工事業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 送配電線等
災害の種類(事故の型) 感電
建設業のみ 工事の種類 電気通信工事
災害の種類 電気工事作業
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.533

発生状況

本件災害は変電所内において、77kV送電線に接続された機器を取り外す作業に従事していた作業者が、感電により死亡したものである。
 当該電力線は、電力保安用の通信線にも兼用されており、電力用電流に通信用搬送波が畳重して流されていたものである。変電所において、通信信号と電力とが分離されることになるが、これは電路の端部にブロッキング・コイル(搬送波を通さず商用電力を通す機器)や結合コンデンサ(商用電力を通さず搬送波を通す機器)を接続することによって行っている。このブロッキング・コイルが経年劣化により性能が低下してきたので、これを取り外し、整備・調整の上、再度取り付ける一連の工事がなされていた。なお、取り外した部分はリード線で短絡し、ブロッキング・コイルの整備期間中も電力用回路としての機能を保つこととしていた。
 災害発生当日は、ブロッキング・コイルを取り外す作業を行うことにしており、しゃ断器、断路器で電路を停電させた後に検電し、断路器に設置されている接地装置で短絡・接地した。また、ブロッキング・コイルを取り外した後は、電路と断路器との接続が切れ、リード線で短絡するまでの間は断路器における短路・接地が電路側にとっては無効になるので、碍子のアークホーンを利用して電路そのものにもアース棒を取り付けて3線おのおのを接地した。すなわち、作業の準備として、ブロッキング・コイルの両側を接地したのである。
 一連の準備後、被災者を含む3名の作業者が1人1相ずつを担当して、同時にブロッキング・コイルの取り外しを始めた。作業中に被災者が悲鳴を上げたので、他の2名が見たところ、被災者は電路側に接続済のリード線を握って感電死していた。
 直ちに救出するとともに、保安措置を点検したところ、被災者が担当していた相の電線に取りつけてあったアース棒が外れてしまっていた。
 この77kV送電線とほぼ並行して、同一方面に向かう154kV送電線が敷設されており、鉄塔約40基の間にわたって並行している。並行している部分での両送電線の間隔は10m弱である。154kV送電線の電位による静電誘導および同線を流れる電流による電磁誘導により、停電させていた77kV線に電圧が誘起されていたものである。アース棒によって、この誘起電圧は接地されて強制的にゼロとなっていたものが、アース棒が外れることによって、電圧が現れ、被災者に電撃を与えたものである。再現実験によると、災害時にはkVレベルの電圧が生じていたものと推測されている。

原因

[1] アース棒で各相ごとに接地したものの、相間を短絡していなかったこと。
[2] アース棒の電線への取付け方が不安定であったこと。
[3] 接地を1地点でしか実施していなかったこと。

対策

[1] 3本のアース棒を導線によって短絡し、3線を一体化して接地すること。
[2] アース棒の取付けは確実に行い、取付け後に揺すってみて、取付け状況を確認すること。
[3] 特別高圧線に並行する電線路の停電作業においては、電磁誘導・静電誘導による電撃の危険性があることは、一般に知られているところである。基本的には、電路の両端を接地するとともに、作業地点直近での接地を行うことが必要である。本件のアース棒による接地は、作業地点からみて電路と反対側に取り付けられていた。
 アース棒が外れなくとも、停電電路にサージ電圧が発生して進行してきた場合には、作業地点を通過した後にアース棒に達することとなり、作業者は電撃を受けるおそれがあった。電撃による危険の防止のためには、作業箇所では、その両側で接地することが必要である。電磁誘導による起電力を軽減する観点では、各鉄塔ごとに接地することが望ましい。
[4] 活線作業車を使用すること。