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労働災害事例

キュポラで鋳物原料鉄を溶解中、羽口水冷部が溶損し水蒸気爆発で被災

キュポラで鋳物原料鉄を溶解中、羽口水冷部が溶損し水蒸気爆発で被災
業種 鋳物業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 炉、窯
災害の種類(事故の型) 爆発
被害者数
死亡者数:− 休業者数:4人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 作業手順の誤り
発生要因(人) コミュニケーションなど
発生要因(管理) 確認しないで次の動作をする

No.101251

発生状況

 この災害は、キュポラ(毎時7トン)により鉄くずなどを溶解して溶湯をつくる作業中、[1]溶湯の温度が低く、[2]湯口で凝固し詰り、[3]溶湯が羽口まで上昇し、[4]羽口冷却部を破損したため、冷却水が炉内に入り、水蒸気爆発が発生し、作業者4名が熱傷を負ったものである。
 キュポラの主な構造は、[1]材料投入口(鉄くずなどの原料鉄、溶解用のコークスの投入口)、[2]炉体(材料を余熱する余熱帯、材料をコークスの燃焼熱で溶解する溶解帯、溶湯が一時溜まる湯溜まり帯から構成)、[3]湯口(溶湯の取出し口)、[4]羽口(炉内への空気と酸素の送風口で総数8箇所、ステンレスパイプに銅製外筒を溶接により取付け水冷する)、[5]シャワー式水冷装置(溶解帯の炉体外壁に水を掛け流す)から構成している。
 発生災害当日の作業は、おおよそ次のとおりであった。リーダーのAと作業者のBが[1]午前8時に作業を開始し、9時30分に1回目のコークス240Kgを投入し、灯油バーナーで加熱を開始した。[2]20分後の9時50分にコークスの赤熱状態を投入口から確認し、さらに480Kgのコークスを2回に分けて投入した。[3]さらにコークスの温度を上げるため90m3/min.の空気と1.2m3/min.の酸素をいっしょに8ヵ所の羽口から送風を開始し、[4]再び投入口から赤熱状態を確認し、[5]原料鉄とコークスを交互に投入口いっぱいまで投入した。[6]午前11時、鋳物原料の投入が完了したので送風量を105m3/min.に上げて一気に溶解することとし、また、湯桶を取付けた。
 その時、羽口から送風を開始して12分後に開栓するよりも早く溶湯が湯口から流れ出してきたがすぐに湯口で固まり流れは止まった。
 一方、注湯担当のCは取鍋ピット前で待機していたが、Aがランス棒を湯口から入れ、開栓したが溶湯は流れ出てこなかったため、トラブルが発生したものと思い、工場長のDを呼んでくるよう同僚に依頼し、C自身は状況確認のためA、Bのいる作業デッキにあがった。その間もAはランス棒で湯口が塞がらないよう作業を続けていた。
 11時40分頃、工場長Dが作業デッキにかけつけて間もなく、キュポラ内で爆発音が発生した。爆発の衝撃で炉蓋を固定していた締め付けボルトが破断して、溶湯、スラグ、コークスとともに大量の水蒸気が飛散した。
 4名は、高熱の蒸気を吸い込んだことなどにより気道や身体に熱傷を負った。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  炉内から羽口の状態を調査したところ、孔食や腐食などの著しい損傷が認められた。羽口の漏水状態を試験したところ8ヵ所の羽口のうち5ヶ所に漏水が確認された。このことから冷却水が炉内に流れ込み水蒸気爆発に至ったものと推定される。
2  投入したベッドコークスの高さ不足などから低温度の溶湯が予定時間より早く炉底部たまったこと。
3  湯口の栓止めが不十分であったため、湯口が開き、溶湯が自然に流れ出てきて湯温の低下とともに凝固して湯口を塞いだこと。
4  湯口を開けようとして作業をしている間に、羽口まで溶湯の液面が上昇したこと。
5  操炉作業については、メーカーの作業手順書が事業場に示されていたが、炉の運転操作従事者には周知されていなかった。このため、ベッドコークスの高さをチェーンメジャーにより計測することになっていたが、作業者たちはこのことを知らず計測していなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  異常時に溶湯を湯口以外の別ルートでも排出できるようドレン口等を設けること。
2  操炉従事者に対して、メーカーの作業手順書を周知徹底し、確実に励行させること。
3  湯口の栓止め等の施工技術を必要とする作業については、十分な技術、知識、経験を有する者に行わせること。
4  キュポラについて、「鉄鋼業における水蒸気爆発の防止に関する技術指針」に基づき、検査点検基準の整備、点検表を定める等定期検査、日常点検を確実に実施すること。
5  爆発、火災事故等の緊急事態が発生した場合の対応、措置基準を定め、定期的に緊急事態を想定した訓練を実施すること。
6  安全衛生管理規定を整備し、工場長、各班リーダー等の各級管理者に対する職務権限を明確にすること。
7  危険予知活動を実施し、安全意識の高揚を図るとともに、安全衛生推進者を選任し、日常の安全衛生管理活動を行わせること。