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労働災害事例

フレキシブルコンテナからトルエンを含んだ原料を乾燥タンクに投入中、爆発が発生

フレキシブルコンテナからトルエンを含んだ原料を乾燥タンクに投入中、爆発が発生
業種 無機・有機化学工業製品製造業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 引火性の物
災害の種類(事故の型) 爆発
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 接地なし、不十分
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) その他

No.101217

発生状況

 この災害は、化学品中間体を製造している工場で、トルエンを含んだ粉状の原料をフレキシブルコンテナ(フレコン)から乾燥タンクに投入する作業中に発生したものである。
 災害発生当日、作業者Aは、前日に引き続き原料をフレコンから乾燥タンクに投入する作業を行っていた。乾燥タンクは全部で5基あり、前日の作業では、No.1タンクとNo.2タンクを原料で満杯にし、No.3タンクの途中まで原料を投入しており、この日はNo.3タンクに残りの原料を投入することから開始した。投入作業を始めて間もなく、No.3タンク内が突然爆発し、火災が発生した。火災は、周辺の作業者により消火されたが、Aの作業服が燃えており、Aは病院に搬送されたが、翌日、死亡した。
 乾燥タンクへ原料を投入する作業は、タンク内を窒素パージした後、タンク内に窒素を流しながらタンクの投入口を開け、ホイストクレーンで運んできたフレコンの底部をカッターナイフで開封し投入していた。乾燥タンクに投入した原料は3日間かけて乾燥し、トルエンを除去していた。
 Aが前日にNo.1タンクとNo.2タンクへの投入作業を行ったときに、用意していた窒素ボンベはほぼ空になっており、No.3タンク内の窒素パージは十分ではなかった。そのため、No.3タンク内は前日に投入した原料から蒸発したトルエン蒸気とタンク内に残っていた空気が混合して爆発性雰囲気となっていた。さらに、災害発生当日には窒素ボンベは空になっており、窒素配管のバルブを開けても窒素は流れていなかったが、Aは流量計での確認をしないまま投入作業を開始していた。
 また、原料が入っているフレコンは外側がポリプロピレン、内側がポリエチレンで静電気が帯電しやすい材質でできていたが、静電気を逃がすためのアース等はなかった。そのため、原料投入時に、フレコン内で発生した静電気が帯電し、これがNo.3タンクの投入口との間で放電した際の火花が着火源となり、タンク内で形成されていた爆発性雰囲気に火がつき、爆発したものである。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  乾燥タンク内が十分に窒素パージされていなかったこと
 窒素ボンベがほぼ空の状態であったため、乾燥タンク内の窒素パージが十分行われず、前日に投入した原料から蒸発したトルエンがタンク内に残留していた空気と混合し、爆発性雰囲気が形成されていた。
2  乾燥タンク内への窒素流量を確認しないまま、原料投入作業を始めたこと
 Aは窒素配管のバルブを開けた際、流量計の確認をしないまま、原料投入作業を開始したため、空の窒素ボンベから窒素が供給されていないことに気が付かなかった。
3  フレコンに帯電した静電気を逃がすためのアース等がなかったこと
 フレコンがポリプロピレンとポリエチレンで帯電しやすい材質でできていたが、帯電した静電気を逃がすためのアース等がなかったため、原料投入時にフレコン内で発生した静電気が乾燥タンクの投入口に放電した際の火花が着火源となった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  乾燥タンク内の窒素パージと原料投入中の窒素供給が確実に行われるよう設備を改善すること
 窒素ガスの供給が停止した場合は警報を発する、乾燥タンク内が窒素で満たされていないときは投入口が開かない等の構造に改善し、窒素雰囲気下でなければ原料投入作業ができない設備にすることが必要である。
2  フレコンに帯電した静電気を逃がすためのアース等を設置すること
 ポリプロピレン、ポリエチレン等の帯電しやすい材質でできているフレコンには、内部で帯電した静電気を逃がすためのアース等をつけて投入作業を行うようにする。