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労働災害事例

油圧プレスで鋼板を曲げ加工中、上金型が落下し作業者が下敷きとなり死亡

油圧プレスで鋼板を曲げ加工中、上金型が落下し作業者が下敷きとなり死亡
業種 その他の金属製品製造業
事業場規模 5〜15人
機械設備・有害物質の種類(起因物) プレス機械
災害の種類(事故の型) 飛来、落下
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 設計不良
発生要因(人)
発生要因(管理) 危険場所に近づく

No.101207

発生状況

 この災害は、造船所に納入する鋼板の曲げ加工を行っているZ社において、発生した。
 災害発生当日、Z社の社長Aおよび作業者B〜Dの4人は、午前中に1,500t油圧プレスを使用して幅が約2m、長さが約3mの鋼板10枚の曲げ加工を行った。このとき、油圧プレスの操作をAが行い、BおよびCは油圧プレスの鋼板を供給する側に立ち、加工中の鋼板の保持を、Dは鋼板を排出する側に立ち加工した鋼板の曲がり具合のチェックを、それぞれ行った。
 午後は、幅が約30cm、長さが約2.5mの鋼板の曲げ加工を行うため、金型を交換した後、午前中と同じ役割で1枚目の鋼板の曲げ加工を開始した。油圧プレスのスライド部が降下して鋼板を加工し、再び上昇したとき、スライド部に取り付けられていた上金型(重量約1.2t)が突然落下し、逃げ遅れたBが上金型の下敷きになった。Bは直ちに救出されたが、即死状態であった。
 上金型は、油圧プレスのスライド部に8本のボルトで固定されていたが、そのすべてが破断していた。ボルトが破断した原因は、8本それぞれの締め付け具合がばらつき一部のボルトにより大きな荷重がかかったこと、長い期間使用したことで金属疲労が生じていたこと、金型上下の取付け位置にずれがありボルトに無理な力が繰り返し加わったこと、等の要因が複合的に作用したものであった。
 また、金型交換を行ったB〜Dの3人は、いずれも動力プレスの金型の取付け・取外し・調整の業務に係る特別教育を受講していなかった。
 さらに、Z社では、油圧プレスの作業開始前点検や年1回の特定自主検査を行っておらず、金型交換時に金型固定ボルトを点検することも行っていなかった。
 なお、Z社のプレス機械は、災害が起きた油圧プレスを含め2台であったため、Z社ではプレス機械作業主任者を選任していなかった。そのため、プレス機械やその安全装置の点検、異常を認めたときの措置の実施、金型交換作業の指揮等、プレス機械を安全に使用するための安全管理が不十分であった。

原因

この災害は、ボルトが破断し上金型が落下したことによるが、その原因として次のようなことが考えられる。

1  上金型の8本すべてのボルトが破断した原因は、次のような要因が複合的に作用したものであった。
  [1]  8本それぞれの締め付け具合がばらついていたため、一部のボルトにより大きな荷重がかかったこと
  [2]  長期間、ボルトを使用したため、ボルトに金属疲労が生じていたこと
  [3]
 金型上下の取付け位置がずれていたため、ボルトに無理な力が加わったこと
2  金型交換を行った作業者が動力プレスの金型の取付け・取外し・調整の業務に係る特別教育を受講しておらず、これらの業務に関する十分な知識がなかったこと
3  油圧プレスの作業開始前点検や特定自主検査を行っていなかったこと
4  油圧プレスを安全に使用するための安全管理が不十分であったこと

対策

  同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  上金型をスライド部に固定するボルトの破断を防止する措置を講じること
 ボルトの破断による上金型の落下を防止するため、次の事項に留意して金型交換を行う。また、留意事項を盛り込んだ金型交換の作業手順書を作成し、関係者に周知徹底することが望ましい。
  [1]  すべてのボルトの締め付け具合が均一になるよう、インパクトレンチ等により必要なトルクで確実にボルトを締め付けること
  [2]  ボルトを取り外した際、劣化状況等を確認すること
  [3]  金型上下の取付け位置がずれないよう、上金型の位置に合わせて下金型を固定すること
2  金型交換を行う作業者に動力プレスの金型の取付け・取外し・調整の業務に係る特別教育を受講させること
3  プレス機械を安全に使用するために適切な安全管理を行うこと
 プレス機械を用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、クラッチ及びブレーキの機能、急停止機構や非常停止装置の機能、金型やボルスターの状態等について点検を行う必要がある。
  また、使用するプレス機械について、法定の特定自主検査を1年以内ごとに1回、資格を有する社員や専門の検査業者に依頼して行う必要がある。
4  プレス機械を安全に使用するために適切な安全管理を行うこと
 プレス機械が4台以下でプレス機械作業主任者を選任する必要がない事業場であっても、次の事項を担当者を決めて行い、プレス機械を安全に使用するために適切な安全管理を実施する。
  [1]  プレス機械およびその安全装置を点検すること
  [2]  プレス機械およびその安全装置に異常を認めたときは、直ちに必要な措置をとること
  [3]  プレス機械およびその安全装置に切替えキースイッチを設けたときは、当該キーを保管すること
  [4]  金型の取付け、取外しおよび調整の作業を直接指揮すること