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労働災害事例

鋳込み工程において、鋳型に注湯中、溶湯が吹き出し火傷

鋳込み工程において、鋳型に注湯中、溶湯が吹き出し火傷
業種 鋳物業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の装置、設備
災害の種類(事故の型) 高温・低温の物との接触
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:2人
不休者数:1人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 防護・安全装置が不完全
発生要因(人) 場面行動
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.101160

発生状況

 この災害は、鋳物工場において印刷機のフレームを鋳造中に発生したものである。  災害発生当日、作業者AおよびBは、鋳型(主型)に中子を挿入した後、型合わせを行った。その後、2人は、溶湯を取鍋から鋳型内に注湯する作業を10分ほど行ったが、その直後、ガス抜き穴から湯漏れが生じた。
 そこで、AおよびBは、ガス抜き穴に砂を掛けて湯漏れを止め、さらに湯漏れした分の溶湯を補充するため、取鍋の中に残った溶湯を柄杓で汲み出して注湯した。そこへ隣の作業場にいた作業者2人が駆けつけ、4人で鋳型の中の溶湯が固まりだす前に急いで注湯作業を行っていたところ、突然、鋳型のガス抜き穴の周囲が崩れて、大量の溶湯が吹き出し、注湯作業をしていた作業者4人が溶湯を浴びて火傷を負った。このとき、4人の作業者は、綿製の作業服、安全長靴、皮手袋、保護帽および保護眼鏡を着用していた。
 鋳込みが行われた鋳型および中子は前日に造型されていたものであるが、鋳型に挿入された中子は乾燥が不十分で多少の湿り気があった。そこに高温の溶湯が注ぎ込まれたために鋳型の内部で発生した水蒸気がガス抜き穴から鋳型の外へ出る際、一緒に溶湯が漏れた。このときAおよびBが砂を掛けたため、ガス抜き穴が塞がり、いったんは湯漏れが止まったが、鋳型の内部でたまった水蒸気の圧力が高まって鋳型を壊し、大量の溶湯とともに吹き出した。
 AおよびBは、以前にもガス抜き穴からの湯漏れを経験しており、そのときも砂を掛けて湯漏れを止めていたことから、同じように砂を掛けたものである。鋳込み工程でガス抜き穴から湯漏れすることは度々生じていたが、工場の中で共通の措置方法は定めておらず、作業者がそれぞれの判断や経験に基づいて対応していた。
 また、工場では、作業者に対する安全衛生教育を実施しておらず、水蒸気爆発等溶湯を取り扱うときの危険性についての作業者の知識は乏しかった。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  鋳型に挿入した中子が湿っていたこと
 鋳込みが行われた鋳型に挿入されていた中子は、乾燥が不十分で多少の湿り気が残っていたため、注湯により加熱されて発生した水蒸気が溶湯とともに吹き出した。
2  湯漏れを止めるために砂を掛けたこと
 工場では今回と同様の湯漏れが度々起きていたが、工場として注湯時の発生した異常への安全な対処法を検討してはいなかった。そのため、最初にガス抜き穴から湯漏れが生じたときに、AおよびBは、それぞれの経験から砂を掛けたところ、穴が塞がれ、密閉状態となった鋳型の内部で水蒸気の圧力が上昇し、その結果、水蒸気爆発に近い現象が起き、鋳型が崩れて水蒸気とともに溶湯が噴出した。
3  作業者に対し、安全衛生教育が実施されていなかったこと
 工場では、作業者に対し、安全衛生教育を実施していなかったため、鋳造作業において、水蒸気爆発等溶湯を取り扱うときの危険性についての作業者の知識は乏しかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  鋳型および中子は、十分に乾燥させること
 高温の溶湯を取り扱う鋳込み作業では、水蒸気爆発等による災害を防止するため、鋳込み工程では水分の除去が特に重要であり、鋳型および中子は、十分に乾燥させ、湿り気がなくなってから鋳込み作業を行う必要がある。また、作業場所に水が溜まっているときは作業開始前に完全に拭き取る、雨水等が入り込まないようにする等の措置も必要である。
2  作業手順書を作成すること
 鋳込み工程では、1,500℃程度の溶湯を鋳型に注ぎ入れることから、通常の状態でも溶湯が飛び散る危険があるが、溶湯が水分と接触すると瞬時に高温の水蒸気が発生してその体積が数千倍に膨脹し、大きな災害となることがある。
 したがって、これらの危険性も十分に認識したうえで、鋳込み工程で溶湯が大量に吹き出すような異常発生時に講ずべき措置等も盛り込んだ作業手順書を作成し、関係作業者にその内容を周知徹底する。
3  作業者に対し、安全衛生教育を実施すること
 鋳造作業に従事する作業者に対しては、あらかじめ作業行動の教育訓練を十分に行うとともに、鋳造作業に伴い予想される水蒸気爆発、火災、火傷等の危険性とその防止対策についての安全衛生教育を行う。