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労働災害事例

消波ブロックをホイールクレーンでつり上げ中、クレーンが転倒し、運転者が負傷

消波ブロックをホイールクレーンでつり上げ中、クレーンが転倒し、運転者が負傷
業種
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 移動式クレーン
災害の種類(事故の型) 転倒
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 防護・安全装置が不完全
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 安全装置をはずす、無効にする

No.101154

発生状況

 この災害は、既存の消波堤を延長する工事で発生したものである。
 消波堤の延長工事は、[1]消波堤の上に設置してある消波ブロックを撤去する、[2]消波堤先端まで行く仮設道路を造る、[3]延長部分にブロックを設置する、[4]いったん撤去したブロックを元に戻す、という作業計画であった。
 災害発生当日、作業者Aは、トラックで運搬されてきたブロックを、ホイールクレーン(つり上げ荷重45t)で仮置場に運ぶ作業を行っていた。作業開始当初は仮置場のスペースに余裕があり、ホイールクレーンのアウトリガーを4本とも最大張り出しにしていたが、約40個のブロックを運搬した頃から仮置場が狭くなったので、Aはホイールクレーンを狭い場所に移動しなければならなくなった。そのため、アウトリガーの最大張り出しができなくなり、Aはアウトリガー3本を中間張り出しに、1本を最大張り出しにして作業を行うことにした。その状態で最初のブロックを問題なく仮置場に移動できたことから、Aは過負荷防止装置を解除し、次のブロックを移動しようとつり上げて、クレーンの真横まで旋回したところ、クレーンが側方に転倒し、Aはつぶれた運転席にはさまれて負傷した。
 このとき、ホイールクレーンのジブは通常より下がっており、作業半径は工事計画書の約6mに対し約10mと大きかった。そのため、10tのブロックをつり上げた状態では定格荷重を大幅に超えていた。
 また、クレーンが転倒した側のアウトリガーの張り出し箇所は砂地であったが、鉄板を敷設する等の措置を講じていなかった。工事計画書では、ホイールクレーンのアウトリガーは常に最大張り出しとするようになっていたが、仮置場の周囲に平坦な場所が少なく、砂地もあったことから、ブロックを移動するにつれて、アウトリガーを4本とも最大張り出しにすることが困難な状況であった。工事を請け負ったZ社では、工事計画書の作成時に仮置場周辺をよく確認していなかった。
 なお、作業者Aは、リース契約によるホイールクレーンの運転者としてZ社に派遣されていたが、リース業者もZ社もAに安全衛生教育を実施していなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  定格荷重を大幅に超えていたこと
 工事計画書よりもジブを下げて旋回したため、10tのブロックのつり上げが過負荷となった。
2  アウトリガーを最大張り出しにしていなかったこと
 ホイールクレーンの設置場所が狭く、アウトリガーを最大張り出しにすることができなかった。また、アウトリガーを張り出した地面が砂地であったにもかかわらず、鉄板等を敷設していなかった。
3  過負荷防止装置を解除していたこと
4  現地の状況を確認しないまま工事計画書を作成したこと
 工事計画書ではホイールクレーンのアウトリガーを最大張り出しで行うこととなっていたが、計画書作成時に仮置場周辺の確認をしておらず、一部に砂地があったことや地形的状況から実際には最大張り出しで作業を行うことができなかった。
5  クレーン運転者に対し、リース業者も派遣先も安全衛生教育を行っていなかったこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  ホイールクレーンの定格荷重を超える荷重をかけないこと
 ホイールクレーンを用いて荷をつり上げるときは、荷の重さ、作業半径等を確認し、定格荷重を超える状態で使用しないようにする。
2  ホイールクレーンのアウトリガーは最大張り出しの状態で作業を行うこと
 ホイールクレーンのアウトリガーは、常に最大張り出しの状態で作業を行うようにする。また、アウトリガーの張り出し箇所が砂地等の軟弱な地面である場合には、鉄板敷設等の措置を講じて、アウトリガーが地面に埋まらないようにする。
3  過負荷防止装置等の安全装置は作業中、解除しないこと
4  工事計画書は、作業内現場状況を確認して作成すること
 工事計画書は、作業内容のみならず作業する場所の状況等を確認して作成する。また、使用する機械等は、現場の状況を考慮して作業を安全に行うことができるものを選定する。
 なお、ホイールクレーンの運転者は、工事計画書に関わらず周囲の状況等から安全な作業ができないと判断した場合は、現場責任者の判断を仰ぐことが大切である。
5  クレーンリース業者及び派遣先はそれぞれの立場から、クレーン運転者に対して安全衛生教育を行うこと