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労働災害事例

アルミインゴットを注水して冷却中、溶湯が飛散し火傷を負う

アルミインゴットを注水して冷却中、溶湯が飛散し火傷を負う
業種 その他の非鉄金属製造業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 金属材料
災害の種類(事故の型) 高温・低温の物との接触
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 不適当な機械、装置の使用
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.101127

発生状況

 この災害は、アルミ線材の製造工場で、アルミインゴットを注水して冷却中、溶湯が飛散し、作業者が火傷を負ったものである。
 災害発生当日、作業者A〜Dの4人は、アルミの溶解工程で、原料の溶解炉への投入、アルミ溶湯の成分調整、連続鋳造機への流し込みのほか、インゴットを製造する作業に従事していた。このインゴットは連続鋳造機へ流し込む際にあふれた余剰アルミを後で再使用するためのもので、アルミ溶湯を専用のバケットに注いで冷やし、固まったインゴットに注水して、さらに冷やして搬出するというものであった。
 AとBは、1回目のインゴット製造を終え、2回目の作業で、容量400Lのバケットにアルミ溶湯を注ぎ、表面が固まってきたのを見計らって注水を開始した。
 注水は、バケツで運んだ水をバケットにゆっくりと注ぎ、バケット内のアルミを冷やしていくものであったが、4杯目の水を入れ始めたところ、突然、アルミが破裂し、アルミ溶湯が周囲に飛散した。このとき、注水作業を行っていたAは、飛散した飛沫を浴び、休業1ヶ月となる火傷を負った。災害発生時、バケット内のアルミ溶湯は内部に高熱を保ったまま、表面のみが冷却されて収縮し、このため内圧が上昇し、いったん固まった表面が割れて、内部のアルミ溶湯が飛び出して水と接触し、水蒸気爆発が起こり、飛散したものであった。
 A〜Dは、綿の作業服上下を着用しており、飛散したアルミ溶湯による火傷を防止するための防護面、耐熱手袋、耐熱服等の保護衣は使用していなかった。
 バケットに注いだアルミ溶湯は、もともとは自然冷却のみで冷却していたが、アルミが固まるまで時間がかかるため、作業者のグループが話し合い、1年ほど前から注水により冷却していた。
 この工場では、アルミの線材を製造する溶解、鋳造、圧延および巻き取りの一連の工程については、作業手順書を作成していたが、インゴット製造作業については、作業手順書を作成していなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  高熱のアルミインゴットに注水して冷却したこと
 直接、大量の水を注水したため、バケット内の高熱のアルミ溶湯の表面のみが急速に冷却されて収縮し、アルミ溶湯の内圧が上昇し、表面が割れて、内部のアルミ溶湯が飛び出して水と接触し、水蒸気爆発が起こり、飛散した。
2  作業者に高熱作業に対応した服装をさせていなかったこと
 作業者が従事していた作業は、高熱のアルミ溶湯を取り扱うものであったが、作業者に飛散したアルミ溶湯による火傷を防止するための防護面、耐熱手袋、耐熱服等の保護衣を使用させていなかった。
3  作業手順を定めずに作業を行わせていたこと
 災害が発生した作業は、定常的に行われる危険な作業であったが、作業手順書を作成していなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  高温の金属を注水により冷やすのではなく、安全な冷却方法を採用すること
 作業のすべてについて、リスクアセスメントを実施し、作業中の危険の予測を評価し、安全な作業方法や設備を検討する必要がある。
 アルミ溶湯の冷却作業を安全なものとするには、アルミ溶湯の全量を連続鋳造工程に流し込むことができるよう設備を改善すること、注水による冷却をやめて自然冷却とするため容量の小さなバケットにすること等が考えられる。
2  高熱作業に対応した作業服装とすること
 アルミ溶湯等の高熱物を取り扱う作業者に対しては、防護面、耐熱手袋、耐熱服等の保護衣を使用させ、火傷の防止を図るとともに、作業中は監督者が使用状況を確認する。
3  作業手順書を作成すること
 付随発生的な作業であっても、作業手順書を作成する。さらに、作業手順書の内容を作業者に周知徹底することが必要である。
4  安全衛生教育
 溶融金属に水をかけるなど、行ってはならない基本的な事項を作業者に教育すること。