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労働災害事例

飲料缶を製造する機械の点検中、シートリフターとガイドの間にはさまれ死亡

飲料缶を製造する機械の点検中、シートリフターとガイドの間にはさまれ死亡
業種 その他の金属製品製造業
事業場規模 300〜999人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の一般動力機械
災害の種類(事故の型) はさまれ、巻き込まれ
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 防護・安全装置がない
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.101051

発生状況

 この災害は、ロール鋼板等からコーヒー缶などの飲料缶を製造するラインの点検調整中に発生したものである。
 災害発生当日は、棚卸と工場の機械設備の点検作業のため、ラインの運転を停止していた。作業者AとBの2人は、朝礼でNo1〜12のパレタイザーラインのシートキャリッジ(シートリフターの上に設置されていて、吸盤によりセパレートシートを吸引してつり上げ、ベルトコンベアに載せる装置)等のボルトの締め付け点検作業を命じられた。
 この点検作業は、通常2人作業で実施されていたが、AとBの話し合いで作業時間を短縮するため、BがNo1、2、3ラインの順で、AがNo12、11、10ラインの順で、それぞれ単独で行うことにし、別れて作業を開始した。作業開始から約3時間経ったとき、近くで別の作業を行っていた他の作業者が、シートリフターとガイドとの間にはさまれているAを発見したが、すでに死亡していた。
 シートキャリッジ等のボルトの締め付け点検作業は、機械の振動によりボルトが緩んだり、外れて缶の中に混入したりするのを防止するため、月に1回程度の頻度で行われているもので、通常は、シートリフターの横に設置されているはしごの上またはセパレートシートが載っていないシートリフターに乗って行っていた。
 しかし、Aはリフターの上昇スイッチを押してから、木製パレット(厚さ12cm)とセパレートシート60枚(厚さ約2cm)を載せたシートリフター上に乗り移ろうとして間に合わず、上昇を続けていたシートリフターとガイドとの間にはさまれたものである。
 災害が発生したシートリフターには、セパレートシート搬入口に扉が、シートリフターの可動範囲の周囲には覆いが設置されていたが、搬入口の扉が開放されリフターの可動範囲に人が入ったときに機械が停止する安全装置や直ちに停止させる非常停止装置は設けられていなかった。
 さらに、シートキャリッジ等の点検作業の作業手順書は作成されておらず、当日の朝礼でも、点検方法や手順についての指示はなく、点検作業に当たっての作業前打合せやKY活動は実施されていなかった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  シートリフターに安全装置等がなかったこと
 シートリフターには、人がリフターの可動範囲に入ったときに機械を停止する安全装置が取り付けられていなかったため、危険区域への出入りを自由に行うことができた。
 また、非常停止装置も設けられていなかったため、非常時に停止することができなかった。
2  作業手順が定められていなかったこと
 災害が発生した点検作業は、月1回程度行われていたが、この作業を安全に行うための作業手順書は作成されていなかった。
3  作業指示の内容が具体的でなかったこと
 朝礼で、AとBの2人で点検作業を行うことが指示されたが、点検方法や手順、2人の役割等、具体的な指示がなく、通常2人作業として行われるものが単独作業として行われた。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  リスクアセスメントを実施し、必要な安全対策を講じること
 自動生産方式で行う場合においても、機械設備の点検整備、調整、清掃等は、人手によらなければならず、作業者が危険区域内に立ち入ることがあるので、このような非定常作業を含め機械設備に係る作業についてリスクアセスメントを実施し、危険を把握するとともに危険回避のための必要な措置を講ずる。
 シートリフターについては、インターロックを設ける等により、危険区域に立入ったときに機械設備が起動されないように措置することが重要である。
2  作業手順書を作成し、作業者に周知徹底すること
 点検作業について、作業手順書を作成し、これをもとに関係作業者に安全衛生教育等を行う。
 特に、作業手順書については、通常の作業に関するものだけではなく、非定常作業についても作成することが必要である。
3  作業方法の指示を明確に行うこと
 繰り返し行われる作業の指示では、作業開始前に担当者のみ指名し、作業内容、作業方法については省略することが少なくないが、作業開始前に作業の責任者から当日の作業内容、作業方法、複数作業者の役割分担を明確に指示するとともに、KY(危険予知)活動等により、その日の作業の安全の急所を相互確認する。
 また、現場での作業開始に当たっては、指差し呼称により安全の確認を行うことを徹底する。