原石粉砕設備のホッパー内で詰まった石を除去する作業中、ドラグ・ショベルの操作を誤り、近くの作業者に石が激突
業種 | 採石業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 掘削用機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | 激突され | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 分類不能 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101013
発生状況
本災害は、プラント工場内の粉砕設備のホッパー内で詰まった石を除去するため、合図に従ってドラグ・ショベルを操作していたときに発生したものである。被災者はホッパー内で作業していたところ、突然スパイダーキャップと呼ばれる球状の大きな石(約1t)が動いて激突し被災した。 当プラント工場では、原石山で採掘した原石を破砕・選別し、その採石を製品として出荷している。原石の破砕にはジャイレトリクラッシャという破砕機を用いていたが、災害当日にプラント系統の故障によりホッパー内や破砕機内に原石が貯まって破砕機が稼働しなくなった。そのため、ドラグ・ショベルを用いてホッパー内の原石を除去することとした。ドラグ・ショベルの運転席からはホッパー内が見渡せなかったため、アームとバケットをホッパー内に入れて、合図者の指示で原石の除去を行っていた。当該作業中、バケットを下に降ろすつもりが、操作を誤りバケットを上げたため、一瞬、バケットの爪に引っかかったスパイダーキャップが浮き上がった。直後にスパイダーキャップが落下しホッパー内にいた被災者に激突し、被災者は死亡した。 |
原因
この災害の原因として次のようなことが考えられる。 | |
1 | ドラグ・ショベルの運転者からバケットが見えないにもかかわらず、合図者の指名及び合図方法の定めが明確にされていなかったこと。 |
2 | ドラグ・ショベルのバケット、ブーム、アーム等作業装置の可動範囲内かつ不安定な石が落下するおそれのある範囲内に作業者を立ち入らせたまま、ドラグ・ショベルを用いた作業を行ったこと。 |
3 | 車両系建設機械の運転にかかる作業について、作業標準が策定されていなかったこと。 |
4 | 車両系建設機械の運転にかかる作業安全について、安全教育が徹底されていなかったこと。 |
5 | プラントにおけるトラブル発生後に必要な復旧作業について、作業標準が策定されていなかったこと。 |
6 | プラントの故障に気づかずに、ホッパー内へ原石が供給されつづけていたことが、「ホッパー内に原石が堆積し、破砕機が動かなくなる」というトラブル発生につながったのであるが、故障が発生した時に、原石供給を停止させる機構がなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | ドラグ・ショベルのバケット、ブーム、アーム等作業装置の可動範囲内には作業者を立ち入らせないようにすること。そのために、当該作業を行う際の退避場所(例:張り出された通路上)を関係者に周知徹底すること。 |
2 | 誘導者を配置してドラグ・ショベルを用いた作業を行わせる場合は、一定の合図を定め、関係者にその合図の内容を周知徹底すること。また、ドラグ・ショベルの運転者が誘導者の出す合図内容を明確に判別できなかった場合の対処方法もあわせて周知徹底すること。 |
3 | 車両系建設機械の運転作業に従事する作業者に対し、労働安全衛生法第60条の2の規定に基づく指針にしたがって、当該作業に従事する作業者に対し教育を実施するとともに、技能講習を終了していない者に対しても、同様の教育を行うこと。 |
4 | プラントの故障を感知できるような設備を設けること。異常が発生した場合に、速やかに、原石を供給する者に対し原石の供給を停止することができる連絡体制の確立、警報装置等の設置を検討すること。 |