職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

ゴム精錬工場の除じん装置から廃カーボンの除去作業中、落下したカーボンの下敷となり死亡

ゴム精錬工場の除じん装置から廃カーボンの除去作業中、落下したカーボンの下敷となり死亡
業種 ゴム製品製造業
事業場規模 5〜15人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の材料
災害の種類(事故の型) 崩壊、倒壊
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 防護・安全装置がない
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.100941

発生状況

 この災害は、ゴム精錬工場の除じん装置において発生したものである。
 このゴム精錬工場の屋上には、除じん装置が設置してあり、中には回収された廃カーボンが堆積していた。しかし、20年近く使用していなかったため、近々解体撤去することになり、その前段階として中に溜まっていた廃カーボンの除去作業を被災者が所属する会社が受注した。
 当日、現場責任者である被災者と2名の作業者は、現場に集合して10分程度、KY活動を行った。その後午前8時30分頃より作業の準備としてバキュームカーに廃カーボンを回収するための吸引ホースを屋上まで引き上げる作業や作業に必要な道具のセッティングを午前中に行った。
 午後は、さらに1名の作業者が加わって作業方法について相談をした。この際、被災者は発注者から指示のあった装置上部にある窓部分からの吸引では時間と手数がかかると判断した。そこで装置の下側をふさいでいた4枚の鉄板を取り外して廃カーボンをいったん下に落とし、それを吸引する方が効率的であると考え作業者に指示した。
 そこで、一人の作業者が、装置の下に入って鉄板を支えていた縦1本、横2本のアングルをバールでこじ開けようとしたがうまくいかなかったので、長さ5m、直径5cmの鉄パイプにポータブルグラインダーをくくりつけて、アングルの手前の方を切断した。
 しかし、奥の方のアングルを切断できなかったので、被災者が代わって装置の真下に入り、作業者の一人に投光機の保持を、一人にパイプ脚立の保持を、一人に鉄パイプで鉄板の保持を行うよう指示した。被災者がポータブルグラインダーをアングルに触れたところ、鉄板が外れて装置内の廃カーボン約14m3が一気に落下し、下敷きとなった。
 なお、作業者3名は、廃カーボンが落下したときの風圧で跳ね飛ばされたため、廃カーボンに埋まることはなく、また、ケガもなかった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 崩落危険のある場所に立ち入ったこと
 除じん装置内の廃カーボンを支えていた4枚の鉄板は、縦1,830mm、横920mm、厚さ3.2mmのものであった。これらの鉄板はアングルには固定されておらず、廃カーボンの重さで中央部分が約50cmたわんでいて、少しの衝撃等が加わるとアングルから外れて中の廃カーボンが一気に落下するような状況にあった。
 このような危険な状況のもとで真下に入って、鉄板を支えていたアングルを切断したため、廃カーボン(雨水等により湿った状態にあった)が一気に落下したものである。
2 指示された作業方法を変更したこと
 発注者から指示された作業方法は、除じん装置の上部にある窓部分からホースを中に入れてバキュームカーで吸引するものであった。しかし、作業期間が3日と短かったことから初日である当日になって、装置の下部をふさいでいた4枚の鉄板を取り外して廃カーボンをいったん下に落とす方法に変更した。なお、このことは、発注者に連絡せずに行った。
3 作業手順を検討せずに作業を行ったこと
 作業方法の変更は、当日の午後の打ち合わせのときに被災者の発案で決定したが、その変更について所属の会社にも発注者にも連絡しなかった。また、作業の変更に伴う手順の再検討や崩壊防止措置等の検討も行ってはいなかった。
 なお、朝のKY活動で打ち合わせた事項は、ホース等へのつまづき注意、吸引ホースや機材の地上への落下防止、高所からの墜落注意で、当初に行う予定であった作業方法に関するものばかりであった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業環境に対応した作業方法を定めること
  全ての作業は、あらかじめ作業場所の環境を詳細に調査した上で安全な作業方法を決定する必要がある。堆積物の崩壊危険のある場所ではとくに慎重に行う必要がある。
 この作業のように、長年にわたり使用されていない装置や設備では、鉄板、支えのアングル等が自然劣化していたり、あるいは内部に放置していた廃カーボンの状態の変化も想定される。したがって作業計画を策定する前に必ずその状況を十分に調査する。
 なお、発注する側においては、これらについて予備調査を行ったうえで、作業方法、工期等を定め発注する。
2 作業責任者教育を実施すること
 作業責任者は、作業の適切な遂行の責任者であるとともに、部下の安全衛生を確保する責任があるので、責任者に対してはあらかじめそれらを含めた教育を十分に行う。
 また、やむをえず作業方法を変更する場合、所属の会社及び発注者との連絡調整等の手順、方法等を明確に定めておき責任者に徹底する。
3 安全衛生教育等の安全衛生管理を実施すること
 作業者に対しては、あらかじめ安全衛生に関する基本的な知識を付与する教育を実施する。飛来や崩壊の危険のある作業等については、その防止対策を現場における打ち合わせ等において具体的に指示する。
 また、本社においては、安全衛生を担当する者を指名し、定期あるいは随時に作業現場を巡視させて作業の実態を把握するとともに、必要に応じ追加教育訓練を実施する。