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硝酸槽の中でスチール板のメッキ部分の剥離中に二酸化窒素が発生し中毒

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発生状況
 この災害は、プリント基板メッキの表面処理薬品の研究開発中に発生したものである。
 災害発生当日、被災者の課長Aは、研究員Bと2人で、前日に失敗した無電解ニッケルメッキ(電気分解ではなく化学反応によるもの)のメッキ液の交換寿命を延ばす実験をやり直すため、1号室の実験槽のメッキ液を排出し、槽内の攪拌用気泡管等の設備を取り外して隣の2号室の剥離処理用硝酸槽に漬けて表面に付着したニッケルとリンのメッキの剥離を行った後、再び実験槽にセットした。
 次いで、薬品庫から搬出したメッキ液を水で希釈した後、添加物を加えて調整し、実験槽に入れたが、実験に使用するスチール板が不足していたので前日に使用したメッキ板の表面の異常析出部分だけを硝酸槽に漬けて剥離して使用することにした。
 Aは2号室の硝酸槽にスチール板10枚を漬けて剥離作業を開始した後、1号室でBと打ち合わせを行っていたが、15分ほど経過したとき、硝酸槽のある2号室から刺激臭のある黄褐色の気体が天井を這うように流れ込んできたのに気付き、二酸化窒素(NO2 )であることを直感し、2号室に駆け込み排煙窓を開けた。次いで、Aが硝酸槽の蓋を外すと、NO2 が急激に立ち昇り、槽の中では気泡が出ていたので、槽の中につり下げていたスチール板を引き上げ、隣の水洗槽に移したが、このとき、NO2 を吸い込んでしばらく咳き込んだ。
 約10分後、室内にはNO2 がまだ残っていたが、AとBは手袋をはめ、防じんマスクを着用して、硝酸槽から床に吹きこぼれた硝酸を布と吸収剤を用いて収集除去する作業を1時間程行い、後始末をしてからシャワー室でシャワーを浴びた。
 その後、デスクワークに従事したが、午後4時頃になって、Aが身体のだるさと動悸を訴えはじめたので、同室にいた技術部長がAとBを連れて病院へ行き、診察を受けさせた結果、Bに異常は無かったが、Aは肺水腫と診断されて入院加療した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 硝酸槽で急激に多量の二酸化窒素が発生したこと
 この災害は、前日に使用したスチール板10枚を硝酸槽の中に付け、メッキ部分を剥離しようとしたことで、部分的にスチール板のところで局部電池が形成され、それが引き金となって槽内で急激な化学反応が起って多量の酸化窒素(特に二酸化窒素)が発生し、それをかなりの時間にわたって吸入したことによるものと推定される。
2 有害環境の中で硝酸等の除去作業を行ったこと
 被災者は、硝酸槽でのメッキ剥離作業で一酸化窒素が発生し、空気中で酸素と直ぐに結合して二酸化窒素となることを承知していたのに、防毒マスク等有効なマスクを使用することなく、槽からこぼれた硝酸等の処理作業等を行った。
3 実験の作業手順を明確に定めずに作業を進めたこと
 実験に先立って、作業方法、作業手順、局所排気装置の性能の検討、防毒マスク等の準備等について検討しなかった。
4安全衛生管理が不十分であったこと
 この会社では、安全管理者、衛生管理者、産業医(嘱託)の選任も行ってはいたが、実験に伴って有害環境が形成されることが十分に想定されたのに、有効な局所排気装置等の設置、防毒マスクの準備等について必要な労働衛生管理を実施していなかった。
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 実験等で使用する物質等について有害性の情報を収集すること
 試験研究で使用する物質等については、少量であっても異常反応等により爆発火災や生成物が生ずる場合も少なくないので、MSDS(化学物質等安全データシート)等を活用して、あらかじめその危険有害性について十分に検討する。
2 実験作業の手順等も明確に定めること
 試験研究にともなう危険有害性をあらかじめ検討のうえ、適切な作業手順、必要な安全装置、緊急時の場合の取扱要領等を含めた作業手順等を定め、関係の研究者等に周知徹底する。
3 局所排気装置の整備と性能の確保を行うこと
 試験研究中の化学反応等により有害なガス・蒸気の発生が予測される場合には、十分な吸入能力を有する局所排気装置を設置し、常にその能力の維持に努める。
4 有効な呼吸用保護具等を必要数整備しておくこと
 特定化学物質等のガス、蒸気又は粉じんを吸入することによる労働者の健康障害を防止するため、それぞれのガス、蒸気等に対応した防毒マスク、防じんマスク等を必要数備え付けておき、確実に使用させる。(特化則第43〜45条関連)
5 安全衛生管理体制を整備し安全衛生管理を十分に行うこと
 安全管理者、衛生管理者、産業医、作業主任者等の選任による安全衛生管理体制を整備し、それぞれの職務を確実に履行させる。(安衛法第11,12,13条等、特化則第27条等関連)
 また、特定化学物質等のうち、第3類物質については定期の特殊健康診断は義務づけられてはいないが、万一事故が発生し、それにばく露した場合には緊急の健康診断を実施する必要があるので、身体の異常の訴えを待つことなく専門の医師の診断を受けるよう関係の労働者等に周知徹底しておく。(特化則第42条関連)
 なお、試験研究に従事する者に対して安全衛生に関する基本的な知識の付与、MSDS等による危険有害情報の収集と活用方法、試験研究設備等の保守・点検要領、呼吸用保護具の選定と使用方法等について教育訓練を実施する。(安衛法第59条関連)
業種 その他の教育研究業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 設計不良
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 保護具の選択、使用方法の誤り
NO.100754
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