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労働災害事例

薬品を加熱乾燥中に乾燥設備が爆発

薬品を加熱乾燥中に乾燥設備が爆発
業種 医薬品製造業
事業場規模 100〜299人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 乾燥設備
災害の種類(事故の型) 爆発
被害者数
死亡者数:− 休業者数:2人
不休者数:4人 行方不明者数:−
発生要因(物) 設計不良
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 安全装置の調整を誤る

No.100391

発生状況

 この災害は、医薬品製造工場の調剤生産ラインにおいて、調合したビタミン剤の顆粒を乾燥する作業中、乾燥設備が爆発し、工場内にいた作業者が被災したものである。
 災害発生当日、午前 8時40分頃から、調剤班長A以下4 名の作業者は調合室においてビタミン剤の製造作業を行った。作業はエタノールで溶解したビタミン剤を吸着剤により顆粒状とし、乾燥設備で乾燥するものである。まず、エタノール約40%含有する原材料90kgをステンレス製容器で練り合わせ、造粒機により棒状の顆粒としたものを網皿17枚にのせた。
 午前10時過ぎ、17枚の網皿を移動式台車に乗せて、乾燥室の乾燥設備(内容積1.5m3)に搬入し、乾燥設備を起動させ、同時に排気装置のスイッチを入れた。
 午前11時過ぎ、作業者Bが乾燥室からのエタノールの臭いが普段より強く感じたので、製品乾燥設備を調べると排気装置が稼働していないことを発見し、同装置のスイッチをオンにした。
 暫くすると、突然、乾燥室で爆発が起こり、乾燥室の天井、扉等が吹き飛び、直後に火災が発生し工場内にいた作業者6名が負傷した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 排気装置が故障していた危険物乾燥設備を使用したこと。
 乾燥設備について、使用開始時の点検が行われていなかった。
2 排気装置が故障していたので、加熱されて気化したエタノールが乾燥設備の内部で短時間で爆発範囲に達したこと
3 乾燥設備の操作盤には、自動温度調節するために電磁開閉器を内蔵しており、電気火花を発する構造の開閉器であったこと
4 危険物乾燥設備から引火性の物の蒸気が漏洩した場合、それを感知する仕組みとして、可燃性ガス警報システムが設けられていないこと
5 危険物乾燥設備の上部が、軽量な材料で造られていないこと。
6 この作業は、危険物乾燥作業であるが法令で定める乾燥設備作業主任者の選任がなく、その職務が行われていないこと
 使用する乾燥設備が、危険物乾燥設備であるという認識がなかった。
7 安全管理体制が整備されていなくて、安全管理が不徹底であったこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 危険物乾燥設備を設ける部分の建物は、平屋とし、危険物乾燥設備の上部は、軽量な材料で造り、又は有効な爆発戸、爆発孔等を設けること
2 危険物等の物を乾燥設備外に排気する装置が稼働しない場合には、乾燥設備の熱源も起動しないシステムとすること
 また、使用開始に当たっては、システムが機能していることを確認すること
3 危険物乾燥設備に付属する電気設備は、危険物等の種類に応じた防爆性能を有する防爆構造の器具を使用するとともに、静電気帯電防止の対策も講じること
4 危険物乾燥設備から危険物等の蒸気が漏洩した場合、それを感知する仕組みとして、可燃性ガス警報システムを設けること
5 危険物乾燥作業を行わせるときは、資格を有する乾燥設備作業主任者を選任し、その作業主任者に法令で定める職務を行わせること。
6 安全衛生管理体制の整備充実を図るとともに、安全教育を行うこと