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労働災害事例

汚水処理槽内部を塗装中、有機溶剤中毒

汚水処理槽内部を塗装中、有機溶剤中毒
業種 その他の建築工事業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類 その他の建設工事
災害の種類 中毒
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.966

発生状況

本災害は、汚水処理槽内部を塗装中、塗装工Aが有機溶剤の蒸気を吸引して意識を失い、さらに救出に向かった塗装工Bも意識を失って倒れたものである。
 被災者A、Bの所属する甲塗装会社は、医薬品を製造する乙会社より、その製造工程で排出される汚水を処理するためのタンク(汚水処理槽)にサビ止めの塗装を施す作業を請負った。
 汚水処理槽の構造
[1] 大きさ 高さ5.65m 直径4.18m 内部気積77.5m3
[2] 開口部は上部全周(約9.0m2)のみであった。上部には、雨天用にテントが張られていた。
[3] 塗装箇所は、汚水処理槽の内側全体であった。汚水処理槽の内部には、図−1のように、塗装作業用の丸太足場が設置されていた。
 災害発生状況の詳細
[1] 災害発生当日、AとBはサビ止め塗装材料の準備を済ませ、午前9時頃から汚水槽内側のサビ止め塗装作業にとりかかった。
[2] 最初にBが内側を上から下にローラーで、約1時間塗装作業を行った。午前10時頃、Bは気分が悪くなったので、汚水処理槽の上部の外で塗装作業を見ていたAと交替した。Bは汚水処理槽の上部の外に出た。
[3] Aは汚水処理槽の内部に入り、丸太足場の1段目で塗装作業を始めた。しばらくして、Aは丸太足場の1段目より、よろけるようにして、約1.5m下の汚水処理槽下面へ墜落した。
[4] 汚水処理槽の上部の外で塗装作業を見ていたBは、Aを救助するために内部に入ったが、Bもその場に倒れた。
[5] サビ止め塗装作業開始から、A・Bが倒れるまでの間に、塗布した量は約10lであった。
[6] サビ止め塗料の成分等
 エポキシ樹脂
・ トルエン 10〜20%
・ メチルイソブチルケトン 5〜10%
 硬化剤
・ キシレン 20〜30%
 シンナー
・ トルエン 60〜70%
・ メチルイソブチルケトン 5〜10%
・ 1−ブタノール 5〜10%
[7] A・Bは、塗料から蒸発した有機溶剤を換気する設備をせず、また送気マスクや有機ガス用防毒マスクを着用していなかった。

原因

[1] 汚水処理槽の開口部が上部のみであったがテントが張られていたため、自然換気がほとんどなかった。この状況にもかかわらず、換気装置が設置されていなかったこと
[2] 送気マスクや有機ガス用防毒マスクを着用していなかったこと。
[3] A・Bが有機溶剤の有害性について、知識が乏しく、既に軽度の中毒症状が現れているにもかかわらず、何らの防止措置もとらずに作業を続行したこと。
[4] 救助にあったBが、事故が発生したにもかかわらず、二次災害防止措置を何もせずに汚水処理槽内に入ったこと。
[5] 有機溶剤作業主任者を選任していなかったこと。

対策

[1] 汚水処理槽の内部のように塗装面が広く、局所排気装置の設置が困難である場合には、全体換気装置を設け、かつ、送気マスクを使用すること。
[2] 汚水処理槽の内部における塗装作業のように、有機溶剤の蒸気が発生するおそれがある場合には、次の事項を含む適正な作業標準要領を作成して、これに基づき作業を行わせること。
 イ、 作業手順
ロ、 全体換気の方法及び送気マク又は、有機ガス用防毒マスクの使用方法。
ハ、 事故発生時の対応
[3] 有機溶剤作業主任者を選任し、その者に作業者を直接指揮させること。