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労働災害事例

ウレタンシート熱成型作業で発生したトリレンジイソシアネートによる呼吸器障害

ウレタンシート熱成型作業で発生したトリレンジイソシアネートによる呼吸器障害
業種 プラスチック製品製造業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.895

発生状況

本災害は、ウレタン製品を製造する工場においてウレタンシートの熱成型作業中に発生した。
 作業は、ウレタンシートを熱プレス機にセットして熱圧縮成型した後、ウレタンシートを取り出し、取置台に乗せるものである。熱プレス機による圧縮の際にはガスが発生するが、これは熱プレス機に設置された局所排気装置によって排気されるしくみになっていた。しかし、成型されたウレタンシートを取り出し、取置台に乗せる際にも同じガスが発散することがあり、これに対するばく露防止のための設備対策は特に施されておらず、また作業者は呼吸用保護具を着用していなかった。
 被災者は、当該作業に従事して2カ月ほどしたところで咳が出始めたにもかかわらずそのまま作業を続けた。そして、さらに1カ月ほど後に咳がとまらなかったため医師の診察を受けたところ、呼吸器障害と診断された。この原因として、ウレタンシート熱成型工程において発散するガスが考えられたため、このガスの成分を調べたところ、ウレタンの原料として使用されるトリレンジイソシアネートが含まれていることがわかった。ウレタンは、熱分解によってトリレンジイソシアネートが発生することが知られているが、当該作業工程では、その温度に達しないため、有害ガスが発生しているという事実は、事業者も作業者も認識していなかった。
 なお、当該作業に従事して咳が出た者は他にもいたが、治療を受けた者はこれまでいなかった。また、被災者は、当該作業に従事する5カ月前に一般健康診断を受けているが、異常は認められていない。

原因

[1] 事業者および作業者が、有害な物質が含まれていることを認識していなかったこと。
[2] 局所排気装置を設置しておらず、また呼吸用保護具を着用していないなど有害ガスに対するばく露防止対策が不十分であったこと。
[3] 被災者やその他の作業者に、咳が出る等の身体の異常が現われたにもかかわらず、健康診断を実施せず、このため健診の結果に基づいた配置転換等の適切な措置を講じなかったこと。

対策

[1] 工程において発生する物質の有害性について十分把握すること。
[2] 局所排気装置を設置するとともに有効に稼働させること、呼吸用保護具を着用させること等、有害ガスに対するばく露防止対策を徹底させること。
[3] 当該作業に従事する作業者に、咳が出る等の身体の異常が現われた時は、健康診断を実施し、必要に応じて配置転換等の措置を講じること。
[4] 当該作業に従事する作業者に対して、適切な作業方法、発生する物質の有害性等について安全衛生教育を実施すること。