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労働災害事例

接着剤中のテトラヒドロフランを吸入して中毒

接着剤中のテトラヒドロフランを吸入して中毒
業種 プラスチック製品製造業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.859

発生状況

本災害は、第2種有機溶剤であるテトラヒドロフランを含有する接着剤を使用して接着作業を行っている際に、その蒸気を吸入して有機溶剤中毒となったものである。
 災害の発生した事業場は、プラスチック製の看板、ディスプレイ製品等を製造する従業員数名の小規模事業場であり、本災害はプラスチック看板を製造するため、プラスチック製の板にプラスチック製の箱文字を接着している時に発生した。
 災害発生当日、被災者は、午前11時ごろから約20分間接着作業を行い、昼食および板の切断等の他の作業を間にはさんで午後2時30分ごろから再び接着作業を行ったが、作業を再開して約1時間後、吐き気、腹痛を感じたので、事業者にその旨申し出た。直ちに病院で診察を受けたところ、有機溶剤中毒と診断された。
 被災者は入社後2カ月目であり、この接着剤を使用して接着作業を行うのはこれが3回目であった。過去2回の作業では、作業1回(約1時間)当たり接着剤を約50g使用したが、身体の異常は感じなかった。災害発生当日は、午前と午後の合計約1時間20分の作業に接着剤を約200g使用した。これらの作業の際、呼吸用保護具は使用されていなかった。
 この事業場において、プラスチックの接着作業は週に数回行われるものであるが、この作業を行う作業台には局所排気装置は設置されていなかった。作業室の大きさは、縦10m、横16m、高さ5.5mであり、室の2カ所に換気扇が設置され、災害発生時にはこれが稼働していた。
 接着に用いられた接着剤は、接着成分としてメタクリル樹脂を35%、溶剤としてテトラヒドロフランを65%含有するものであり、金属製チューブ(容量100g)に入っていた。なお、この事業場では、従来は接着用ボンドを使用しており、この接着剤に変更してから日が浅かった。
 事業者は、新たに導入した接着剤について、ラベル表示や使用説明書に記載されている成分、取り扱い上の注意事項等を把握しておらず、これを用いた接着業務が有害業務であるという認識をもっていなかった。

原因

災害発生原因としては、テトラヒドロフランを含有する接着剤を使用する場所に局所排気装置が設置されておらず、全体換気装置のみにより換気が行われており、かつ、被災者が呼吸用保護具を使用していなかったために、高濃度のテトラヒドロフランを吸入したことが考えられる。
 なお、作業室は出入口はわずかに開いていたが窓が閉まっていたため、開口率が3%以下であり通風が不十分な「タンク等の内部」に該当し、第2種有機溶剤であるテトラヒドロフランについて、有機溶剤中毒予防規則第2条第1項第2号に規定する作業1日当たりの「有機溶剤等の許容消費量」を計算すると60gである。テトラヒドロフランの実際の消費量は、被災者の過去2回の接着作業ではこれ以下であったが、本災害に係る作業についてはこれを超えていたため、気中のテトラヒドロフラン濃度が高くなり、有機溶剤中毒が発生したと考えられる。
〔テトラヒドロフランの消費量の計算式〕
 1日当たりの許容消費量=2/5×気積=2/5×150=60(g)
 実際の消費量=接着剤の使用量×接着剤中のテトラヒドロフランの含有率
 過去2回の作業:50(g)×0.65=32.5(g)
 災害時の作業:200(g)×0.65=130(g)
 (注:許容消費量の計算における気積は、作業室において床面4m以下の部分の気積が150m3を超えているので、有機則第2条第1項第1号の規定により150m3とする。)

対策

(1) あらかじめ接着剤に含有される有機溶剤の種類、含有量を確認し、接着剤の使用量に応じて必要な換気を行うこと。特に第1種または第2種有機溶剤を含有する接着剤について、許容消費量を超えて使用する場合には、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備を設置するかまたは局所排気装置による換気を行うこと。
(2) 有機溶剤の消費量が許容消費量を超える場合には、有機溶剤作業主任者を選任し、この者に換気、呼吸用保護具の使用について必要な指示を行わせること。
(3) 第1種または第2種有機溶剤の消費量が許容消費量を超えない場合で、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備の設置または局所排気装置による換気を行わない場合には、換気の状況を考慮し、必要に応じて作業者に呼吸用保護具を使用させること。