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労働災害事例

船体内部の塗装作業中の有機溶剤中毒

船体内部の塗装作業中の有機溶剤中毒
業種 造船業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.838

発生状況

被災者Aの所属する甲社は、乙社の構内下請業者として船舶の塗装作業を請負っていた。
 災害発生当日、Aは、同僚のBとともに、新造船の船体内部の塗装を行うこととなっており、元請である乙社の作業者Cと甲社の有機溶剤作業主任者であるDと共に作業方法等の決定を行った。
 作業は、船体後部左側船底に設置されているスラッジタンク(内容積2.2m3)の内側と船体後部船底部分内側に防錆用の塗料(第二種有機溶剤を含有)をスプレーガンにより吹き付けて塗装するものであり、Aがスプレーガンを操作し塗装作業を行い、Bは塗料を調合してポンプを用いてスプレーガンに供給を行っていた。
 作業はまず、スラッジタンクから始められ、Aは、タンク側面の開口部(直径60cm)からスプレーガンを持って内部に入り、タンクの奥から徐々に後退しながら約15分かけてタンク内側全面の塗装を終えた。タンク内部の塗装終了後、引き続き船体後部船底部分について、船底および高さ1.5mまでの船体側面等の塗装作業を開始した。スプレーガンの操作はAが引き続き行い、Bは、船体後方から船尾に設けられたスクリュー軸用の孔にホースを通して、船体外部からポンプを用いてスプレーガンに塗料の供給を行っていた。
 船体後部船底部の塗装を始めてから約40分経ったころ、Aから作業が終了したとの報告があったため、Bはスプレーガンの片付けを行っていた。しかし、作業終了後10分ほど経ってもAが船外に出て来ないので、Bが船内に確認に行ったところ、Aが船底に倒れていたため、救出し病院へ収容した。
 保護具の着用について、Aはタンク内の塗装開始前に、新品の吸収缶を装着した直結式小型の有機溶剤用防毒マスクを着用していたが、船体後部船底部の塗装が終了するまで吸収缶の交換は行わなかった。また、当該作業場の環境状態は、タンク内について言えば、側面に一部開口部があるだけで、局所排気装置や全体換気装置等による強制換気は行われていなかった。また一方、船体後部船底部は、甲板が設けられる前のため上部のみが開放状態であったが、強制換気は行われていなかった。

原因

(1) タンク等の内部に通風が不十分な場所があるにもかかわらず、換気装置が設けられておらず、換気が全く行われていなかったこと。
(2) 有機溶剤用防毒マスクを着用してはいたが、有機溶剤濃度が高濃度であったため、短時間で破過に至ったわけで、吸収缶の交換がなされないなど呼吸用保護具の使用方法が適切でなかったこと。
(3) 有機溶剤作業主任者は選任されていたが、その職務である作業方法の決定、作業者の指揮、保護具の使用状況の監視等が不適切であったこと。
(4) 作業者に対する安全衛生教育が不十分であったため、有機溶剤の有害性、保護具の取り扱い方法等に関する知識が不十分であったこと。

対策

(1) 使用する有機溶剤の量等、作業条件に適応した全体換気装置による換気を行うこと。
(2) (1)の措置と併せて、送気マスクまたは有機溶剤用防毒マスクを着用すること(ただしタンク内においては、必ず送気マスクを使用すること)。なお、防毒マスクを使用する場合には、有機溶剤濃度に対する破過時間を超えて使用しないこと。
(3) 有機溶剤作業主任者に適切な作業方法の決定および作業者の指揮、保護具の使用状況の監視等を行わせること。
(4) 作業者を雇い入れまたは作業内容を変更したときは、原材料等の有害性および取り扱い方法、保護具の性能および取り扱い方法、また作業手順等に関する教育を行うこと。