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労働災害事例

灯油による急性中毒

灯油による急性中毒
業種 ビルメンテナンス業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.758

発生状況

ホテルの厨房内には、ガスコンロ等の火気を扱う箇所の上部にフードがあり、調理の際の熱気や煙は天井裏に設置されているダクトを通って、室外に排気される。空調機器メンテナンス業者はホテル内の厨房の排気設備清掃作業を、8人で2日間の日程で行った。作業手順は、
1 フードに中性洗剤を吹き付けた後、布で水拭きをする
2 ダクトの点検口からダクト内部に入り、へらでダクト内部に付いた油汚れをはつり落とす
3 缶に入れた灯油に、ナイロンタワシを浸し、油をはつり落とした後を磨き、布で拭いて仕上げる
 となっており、1日目で1が終わり、2日目に2、3が行われた。
 2日目の作業において、被災者は自分の担当として指示されたダクト内部(幅55cm、高さ30cm、長さ850cm)に入り、灯油に浸したナイロンタワシでダクト内部を磨いていたが、作業開始後30分程度経過したとき、灯油を入れた缶を倒してしまい、中の灯油がこぼれてダクト内に広がった。
 このダクトはフード側と反対側の端が他のダクトと合流する形で接続されているため、幅が約半分となっており、また、ダクト自体も被災者の体で一杯となってしまう大きさであったため、作業中はほとんど通風のない状態であった。
 被災者は、灯油をこぼした際、匂いが強くなったことを感じたが、そのまま作業を続けた。
 被災者は、作業開始から6時間で作業を終えたが、後片付けをしている際に、気分が悪くなり、何度も嘔吐したため、救急車によって病院に運ばれ、急性薬物中毒と診断され、入院することとなった。
 この空調機器メンテナンス業者はダクト内部を清掃するとき、暑い場合や、非常に空気の通りが悪い場合には、移動式の簡易換気装置を例外的に使用することがあるが、今回のような場合は通常使用することはなかった。
 また、防毒マスク等の呼吸用保護具を使用することもなかった。
 使用した灯油は清掃用として一般に市販されているもので、メーカーによる注意書には蒸気を吸入すると、めまい、頭痛、倦怠、嘔吐等の中毒症状を起こすこと、必要に応じて有機ガス用マスクを使用すること等が記されているものであった。(この灯油は炭化水素油100%の製品)

原因

(1) 灯油の入った缶を倒してしまい、狭いダクト内に灯油の蒸気が充満してしまったこと。
(2) 換気装置を使用する等により、作業環境管理を適切に行っていなかったこと。
(3) 灯油の蒸気を吸入してしまう状態であったのに、有効な呼吸用保護具(防毒マスク等)を使用していなかったこと。
(4) 関係作業者に対して、灯油の有害性に関する教育が実施されていなかったこと。

対策

(1) 灯油に代わる無害なものを使用すること。
(2) 換気装置を使用する等により、作業環境管理を適切に行うこと。
(3) 灯油の蒸気の吸入を予防するための有効な呼吸用保護具(防毒マスク等)を使用すること。
(4) 作業に使用する物質の有害性等に関する教育を関係作業者に対し、十分に実施すること。
※一般に市販される灯油は有機溶剤としての労働安全衛生法上の適用は受けないが、労働安全衛生規則第577条(ガス等の発散の抑制)、第593条(有害業務での保護具の使用)の規定は遵守して取扱う必要がある。