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労働災害事例

汚水処理プラントでの硫化水素中毒

汚水処理プラントでの硫化水素中毒
業種 産業廃棄物処理業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.743

発生状況

この災害は、汚水処理施設のピット内において、作業者1名が硫化水素中毒により倒れ死亡、また救出に行った他の1名も低酸素脳症により、意識不明の重体となったものである。
 災害が発生した事業場は、産業廃棄物最終処分場の汚水処理プラントである。産業廃棄物埋立て地から浸み出してきた汚水は、まず地下1階のピット(容積60m3)にある浸出水バルブ槽(容積約3m3)に入り、スクリーンでごみ除去された後、地下2階の原水槽に流入する。災害は、浸出水バルブ槽で発生した。災害発生の3日前、浸出水バルブ槽に注ぎ込む水位調節用の自動弁が故障したため、プラント運転工Bは地下ピットへ行き、手動弁を閉じ、汚水の流入を止めた。
 連休を挟んだ災害発生当日の8時10分頃、Bは1人で手動弁を開いた。出勤してきた現場責任者のAが、事務所二階の中央制御盤で自動弁を操作してみたが作動せず、原水槽に汚水が流入し続けオーバーフローの恐れがあったことから、8時40分頃、AはBに命じて地下ピットの手動弁を閉じに行かせた。Aはその後、計器等の点検をしていたがBの姿が見えないことに気付き、地下ピットに降りると、浸出水バルブ槽内でBが倒れていた。AはBを助け起こしたが息が苦しくなり、1階へ戻ってプラント運転工CにBが倒れたことを告げ、2階から救急車を呼んだ。地下ピットに戻ると、Bを助けようとしたとみられるCが、Bの側で意識を失っていた。救急車で運ばれたBは4時間後に死亡、被災者Cは8カ月の入院を要し、後遺症が残った。
 なお、地下ピットには出入口以外に直接外気に換気する設備はなく、直上の1階に排気用換気扇が設けられているのみである。また、事業場には空気呼吸器等の保護具はなく、酸素濃度計はあるが、硫化水素濃度計はなく、酸素濃度測定の記録も残っていなかった。

原因

[1] 作業を行わせるにあたり、硫化水素等の濃度測定を行っていなかったこと。
[2] 地下ピットに換気に必要な設備がなく、事前に作業場の換気を行っていなかったこと。
[3] 空気呼吸器等の備え付けがなかったこと。
[4] 第二種酸素欠乏危険作業主任者を選任していなかったこと。
[5] 作業者に対し、酸素欠乏、硫化水素中毒予防のための特別教育を実施していなかったこと。

対策

[1] 作業を行う設備の内部について硫化水素濃度の測定を行い、作業者が硫化水素中毒にかかる恐れのあるときは、換気、マスクの着用その他必要な措置をとること。
[2] 作業の方法・順序を決定し、あらかじめ作業者に周知させること。
[3] 作業指揮者を選任し、その者に作業を指揮させること。
[4] 地下ピットの内部に立ち入る際は内部から硫化水素を確実に排出し、設備に接続している配管から硫化水素が流入しないようバルブ、コック等を閉止・施錠をし、開放してはならない旨を見やすい個所に表示すること。