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労働災害事例

内装作業中 接着剤蒸気に引火

内装作業中 接着剤蒸気に引火
業種 建築設備工事業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 引火性の物
災害の種類(事故の型) 火災
建設業のみ 工事の種類 建築設備工事
災害の種類 その他の爆発・火災等
被害者数
死亡者数:− 休業者数:5人
不休者数:4人 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.678

発生状況

レストランに附属する食品材料保管用冷凍倉庫の新築作業現場で、内装用の断熱材を床に接着する作業中、接着剤に含有するノルマルヘキサンの蒸気に引火し、火災となったものである。
 この倉庫は軽量鉄骨造り、平屋建て、床面3.9×8.4m、天井高さ2.25mで窓はなく、開口部は入り口扉(80×186cm)と換気孔(17cm四方)だけであった。
 当日は、作業者10名で、午前8時頃から、倉庫の天井および壁に断熱材を接着剤を用いて二重に貼る作業を開始した。
 使用した接着剤は、断熱材専用のゴム系接着剤で、ゴム揮発油としてノルマルヘキサンを15〜20%含有している。通常は断熱材の裏面に「田」の字形に塗るが、この工事では、裏全面に塗っていた。
 作業は、倉庫内でまず断熱材(91×182cm)の裏面に接着剤を塗る。次いで、これを10分間程度放置して、接着剤に含有するノルマルヘキサンを蒸発させた後、天井面等に接着させる方法で行っていた。
 午後3時頃、天井および壁に断熱材を貼り終えたので、30分間の休憩の後、床面に断熱材を三重に貼る作業を同じ作業方法で始めた。午後5時頃、およそ半分程度貼り終えたところで、突然、入り口から1mほどの所に置いた投光器付近から炎が上がり、その直後、倉庫内一面に火が燃え広がり、作業していた作業者9名が火傷を負った。
 倉庫内は風通しが悪く、ノルマルヘキサンの引火点がマイナス22℃と極めて低いにもかかわらず、換気等は行っていなかった。
 また、災害発生後の調査では、接着剤の18l入り缶2個を蓋を開けた状態で倉庫内に置いて作業していたこと、使用されていた投光器は防爆構造のものではなく、コードに損傷があったことが確認された。

原因

[1] 極めて通気の悪い倉庫内で、換気を行わずに有機溶剤を含有する接着剤を用いた塗布・乾燥・接着の作業を連続して行っていたこと。
[2] 防爆構造ではない投光器を使用していたこと。さらに、コードに損傷のあるものを使用していたこと。
[3] 使用していた接着剤が「危険物」に該当し、また、作業主任者を選任すべき作業であったにもかかわらず、危険物取扱作業指揮者および有機溶剤作業主任者が選任されておらず、適切な管理が行われていなかったこと。
[4] 作業者に対し、有機溶剤の有害性、危険性に関する教育を行ってなく、作業マニュアルの作成・周知もされていなかったこと。

対策

[1] 有機溶剤を含有する接着剤の塗布・乾燥の作業は屋外で行うとともに、通気の悪い屋内で行う際には、屋内での連続作業を避け、換気を行う等、有機溶剤蒸気の濃度が高くならないようにすること。
[2] 使用する電気器具は、防爆構造のものとし、作業前にコード等の異常の有無をよく点検すること。
[3] 危険物取扱作業指揮者および有機溶剤作業主任者を選任し、作業の指揮をさせるとともに、作業者に対し、有機溶剤の有害性、危険性に関する教育を実施すること。
 また、作業時には、作業者に対し有機ガス用防毒マスク等の保護具を着用させること等が必要である。