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労働災害事例

地下室の清掃作業中に発生した有機溶剤中毒

地下室の清掃作業中に発生した有機溶剤中毒
業種 機械(精密機械を除く)器具製造業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.641

発生状況

本災害は、地下室の床にこぼれた潤滑油を有機溶剤を浸したウエスで清掃作業中、発散した有機溶剤の蒸気を吸入し中毒したものである。
 A工業所は機械部品等を製造している事業場である。熱処理工である被災者は、地下室に設置されている熱処理炉用真空ポンプが故障していることがわかったので補修することにした。被災者の依頼によって保全係が故障した真空ポンプを修理のために台座より取り外し、地下室から修理工場へ運んでいったが、このとき、真空ポンプ内の潤滑油が台座付近にこぼれ床が汚れた。
 このため被災者は汚れた床の掃除をしようとして、熱処理の前工程で使用するために1階の作業場の脱脂槽に入っているトリクロロエチレン約2lをバケツにすくい取り、備付けのウエスを持って地下室へ降り、1人で汚れた床の掃除を始めた。
 被害者はウエスをトリクロロエチレンに浸した後ゆるくしぼり、これを潤滑油のこぼれ落ちた床の上に広げて敷きつめてふき取っていた。また、真空ポンプが設置されてあった台座付近のパイプ類は、トリクロロエチレンを浸したウエスでふき取っていた。
 作業を開始して30分を経過したころ酒に酔ったような気分になったため、いったん1階に上がり事務室で2、3分ほど休んだが、再び地下室に戻って作業を再開した。その後約1時間経過したころ再び気分が悪くなったので、地下室に通じる階段の最上段に上がり腰をおろしてしばらく休みをとった。しかし、掃除がまだ終っていなかったため再び地下室内に下りて行ったところ、まもなく意識を失って倒れた。
 被災者は、この作業中活性炭入りガーゼマクスを使用していたが、換気は全く行われていなかった。なお、地下室の気積は23m3、使用したトリクロロエチレンの量は730gであった。

原因

[1] トリクロロエチレン(第一種有機溶剤等)を自然換気が行われない地下室内で使用していたにもかかわらず、強制換気を行わなかったため、高濃度のトリクロロエチレンの蒸気が滞留したこと。
[2] 被災者が作業中使用していた活性炭入りガーゼマスクは、この作業には不適切な呼吸用保護具であったこと。
 さらに、このような事態を招いた背景として、地下室のような場所に安易に有機溶剤を持ち込むなど、有害物に対する正しい認識が欠けていたことがあげられる。

対策

地下室のように自然換気の不十分な場所で有機溶剤を使用するときは、有機溶剤の蒸気が滞留しないように十分に換気するとともに、作業の性質に応じて有機ガス用防毒マスクまたは送気マスクを使用すること。なお、有機ガス用防毒マスクを使用する場合にはその破過時間に十分注意をすること。
 さらに、有害物管理のための作業標準の整備と徹底、作業者に対する十分な安全衛生教育も重要である。