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安全データシート
2,4-トルエンジアミン(別名:2,4-ジアミノトルエン)
作成日 2008年10月06日
改訂日 2016年03月31日
改訂日 2019年03月15日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称2,4-トルエンジアミン(別名:2,4-ジアミノトルエン) (2,4-Toluenediamine)
製品コードH27-B-058
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限ポリウレタン樹脂原料 (TDI) の合成原料,染料・顔料合成中間体 (NITE初期リスク評価書)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H28.03.18、政府向けGHS分類ガイダンス(H25年度改訂版(ver1.1))を使用
GHS改訂4版を使用
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分3
急性毒性(経皮)区分4
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
皮膚感作性区分1
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (中枢神経系、肝臓、血液系) 、区分3 (気道刺激性)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1 (免疫系、肝臓、精巣)
分類実施日
(環境有害性)
環境に対する有害性はH18.3.31、GHS分類マニュアル(H18.2.10 版)を使用
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分2
水生環境有害性 (長期間)区分2
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」に該当する。なお、健康有害性については後述の11項に、「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」の記述がある。
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有毒
皮膚に接触すると有害
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
強い眼刺激
呼吸器への刺激のおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
中枢神経系、肝臓、血液系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による免疫系、肝臓、精巣の障害
水生生物に毒性
長期継続的影響によって水生生物に強い毒性
注意書き
安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
気分が悪い時は医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
口をすすぐこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
漏出物を回収すること
保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性データなし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名2,4-トルエンジアミン
別名2,4-ジアミノトルエン、m-トルイレンジアミン、4-メチルベンゼン-1,3-ジアミン
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C7H10N2 ( 122.171 )
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号95-80-7
官報公示整理番号
(化審法)
3-126
官報公示整理番号
(安衛法)
データなし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物データなし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
症状が続く場合には、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合大量の水で洗うこと。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
眼に入った場合水で15〜20分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
飲み込んだ場合水で口をすすぎ、直ちに医師の診断を受けること
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状データなし
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項データなし

5.火災時の措置
消火剤小火災: 二酸化炭素、粉末消火剤、散水
大火災: 散水、噴霧水、泡消火剤
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性火災によって刺激性、又は毒性のガスを発生するおそれがある。
熱で容器が爆発するおそれがある。
特有の消火方法危険でなければ火災区域から容器を移動する。
移動不可能な場合、容器及び周囲に散水して冷却する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
大火災の場合、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。これが不可能な場合には、その場所から避難し、燃焼させておく。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
容器内に水を入れてはいけない。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣( 耐熱性) を着用
する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
作業者は適切な保護具( 「8 . ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
風上に留まる。
低地から離れる。
環境に対する注意事項環境中に放出してはならない。
河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
封じ込め及び浄化の方法及び機材乾燥した土、砂あるいは不燃性物質で吸収し、あるいは覆って容器に移す。
危険でなければ漏れを止める。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。
容器内に水を入れてはいけない。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気装置、全体換気を
行なう。
安全取扱い注意事項使用前に使用説明書を入手すること。
すべての安全注意を読み理解するまで取扱わないこと。
火気注意
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行うこ
と。
眼に入れないこと。
粉じん、ヒュームの吸入を避ける。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
取扱い後はよく手を洗うこと。
接触回避「10. 安定性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件混触危険物質から離して保管すること。
施錠して保管すること。
安全な容器包装材料国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会
(2015年度版)
未設定
ACGIH(2015年版)未設定
設備対策高熱工程で粉じん、ヒュームが発生するときは、空気汚染物質を管理濃度・許容濃度以下に保つために換気装置を設置する。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸用保護具適切な呼吸器保護具を着用すること。
手の保護具適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具適切な眼の保護具を着用すること。
保護眼鏡( 普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)
皮膚及び身体の保護具必要に応じて適切な保護衣、保護面を使用すること。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色 (HSDB (2015))
臭いアンモニア臭 (GESTIS (2015))
臭いのしきい(閾)値データなし
pHデータなし
融点・凝固点99℃ (ICSC (2014))
沸点、初留点及び沸騰範囲292℃ (ICSC (2014))
引火点149℃ (98% / 密閉式) (NITE総合検索 (2015))
蒸発速度(酢酸ブチル=1)データなし
燃焼性(固体、気体)データなし
燃焼又は爆発範囲データなし
蒸気圧0.13 kPa (106.5℃) (ICSC (2014))
蒸気密度4.2 (空気 = 1) (ICSC (2014))
比重(相対密度)データなし
溶解度水:3.5 g/100mL (20℃) (ICSC (2014))
n-オクタノール/水分配係数log Pow = 0.35 (ICSC (2014))
自然発火温度475℃ (ICSC (2014))
分解温度データなし
粘度(粘性率)データなし

10.安定性及び反応性
反応性引火性固体。
水に可溶。
化学的安定性データなし
危険有害反応可能性光に反応する。
強酸化剤、酸、酸無水物、ハロゲン酸と危険な反応を生じる。
避けるべき条件データなし
混触危険物質データなし
危険有害な分解生成物加熱による分解で窒素酸化物を生じる。

11.有害性情報
急性毒性
経口GHS分類: 区分3
ラットのLD50値として、73 mg/kg、136 mg/kg (EU-RAR (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008))、179〜212 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008))、230 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008)、DFGOT vol. 6 (1993))、270 mg/kg (EU-RAR (2008)、DFGOT vol. 6 (1993)、EHC (1987))、300 mg/kg (EHC (1987))、73〜300 mg/kg (NITE有害性評価書 (2006)) との報告に基づき、区分3とした。
経皮GHS分類: 区分4
ラットのLD50値として、1,200 mg/kg (EU-RAR (2008)、NITE有害性評価書 (2006)、DFGOT vol. 6 (1993)、EHC (1987))、ウサギのLD50値として、> 5,750 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008)) との報告がある。ラットのデータの基づくと区分4に、ウサギのデータに基づくと区分外に該当する。ラットの区分とウサギの区分とを比較し、より厳しい区分である区分4とした。情報源の更新でウサギのLD50値が変更されたことにより、区分を見直した。
吸入:ガスGHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミストGHS分類: 区分外
本物質単体のデータはないが、本物質80%と2,6-トルエンジアミン20%との異性体混合物のラットのLC50値として、> 5.57 mg/L (EU-RAR (2008))、> 0.916 mg/L (NITE有害性評価書 (2006)) との2件の報告がある。1件は区分を特定できないが、1件が区分外に該当するので、区分外とした。本件では、異性体混合物の毒性データを本物質のものとして評価できる (EU-RAR (2008)) として分類を行った。なお、試験は蒸気-粉塵の混合物で行われたとの記載、及び被験物質が固体であるため、粉じんの基準値を適用した。今回の調査で入手した新たな情報を追加し、区分を見直した。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性GHS分類: 区分外
ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG 404) において、本物質適用による刺激性はみられなかったとの報告がある (EU-RAR (2008)、NITE初期リスク評価書 (2008))。また、具体的な情報ではないが本物質は皮膚を刺激するとの記載がある (環境省リスク評価第6巻 (2008))。以上より、テストガイドラインに従った試験の情報をもとに、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性GHS分類: 区分2
ウサギの眼に本物質100μgを適用した結果24時間以内に重度の刺激性がみられたとの報告がある (EHC (1987))。また、ウサギを用いたドレイズ試験において本物質100 mg適用した結果、軽度の結膜発赤がみられたが、7日以内に回復したの報告 (EU-RAR (2008)) や、ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG405) において本物質適用による刺激性はみられなかったとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)) がある。さらに、ウサギを用いた他の眼刺激性試験において軽度の結膜炎を生じたとの記載がある (DFGOT vol.6 (1994))。以上より、区分2とした。
呼吸器感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性GHS分類: 区分1
モルモットを用いたマキシマイゼーション試験 (OECD TG 406) で感作性を示したとの報告や (EU-RAR (2008)、DFGOT vol.6 (1994)、NITE初期リスク評価書 (2008))、モルモットを用いた別の感作性試験において供試動物の35%に感作性がみられたとの報告がある (EHC (1987))。以上から区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
生殖細胞変異原性GHS分類: 区分2
In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、小核試験ではラットの骨髄細胞を用いた試験で陽性、ラット、マウスの骨髄細胞及びマウスの末梢血赤血球を用いた試験で複数の陰性結果、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性、トランスジェニック動物 (Big Blueマウス) の肝臓を用いた遺伝子突然変異試験で陽性、マウスの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性、ラットの肝臓を用いた不定期DNA合成試験で陽性、ラット、マウスのコメットアッセイではラットの胃、腎臓、脳、結腸、マウスの肝臓、腎臓、胃、肺で陽性、ラットのDNA付加体形成試験では肝臓、腎臓、乳腺で陽性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、EHC (1987)、EU-RAR (2008)、DFGOT vol. 6 (1993)、NTP DB (Access on October 2015))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験では陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験では陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験では陽性の結果である (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、EHC (1987)、EU-RAR (2008)、DFGOT vol. 6 (1993)、NTP DB (Access on October 2015))。以上より、本物質は哺乳類を用いるin vivo体細胞変異原性試験、哺乳類を用いるin vivo生殖細胞遺伝毒性試験で陽性結果があるため、区分2とした。
発がん性GHS分類: 区分1B
本物質に限定したばく露とヒト発がん性との相関性に関して、評価が可能な疫学研究報告はない (NTP RoC (13th, 2014))。
実験動物では、ラット、又はマウスに経口経路 (混餌) で2年間投与した発がん性試験が実施され、ラットの投与群では体重低下が顕著なため途中で用量を減じて継続し、対照群及び低用量群は103週間後に、高用量群は79〜84週間後にそれぞれ屠殺剖検した。しかし、ラット、マウスの雌雄いずれにも用量依存的な肝臓腫瘍 (肝細胞がん、又は肝臓の腫瘍性結節) がみられ、加えてラットには乳腺腫瘍 (がん又は線維腺腫) が雌に、マウスでは肺及び造血系組織の腫瘍が雄に認められた (EU-RAR (2008)、NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008))。経皮経路では、マウスの皮膚に本物質の6%溶液を0.05 mLを1回/週の頻度で2年間以上塗布した試験において、皮膚局所の腫瘍の発生頻度は対照群と差がなかったが、雌雄ともに投与群では肺の腺腫、及び腺がんの頻度に有意な増加がみられた (EU-RAR (2008))。その他、ラットに皮下投与した試験でも、8ヶ月後に生存した9例全例の皮下に肉腫の形成がみられた (IARC 18 (1978)) との記述がある。
国際機関による発がん性分類結果としては、IARCが1987年に「グループ2B」に (IARC 16 Supl. 7 (1987))、NTPが1981年に「R」に (NTP RoC (13th, 2014))、日本産業衛生学会が「2B」に (許容濃度の勧告 (2015))、EUが「Carc. 1B」 に (EU-RAR (2008))、それぞれ分類されている。EU以外の分類結果に基づけば、区分2に該当するが、EUは本物質は遺伝毒性発がん物質であるとし、かつ実験動物では肝細胞壊死後に細胞増殖の亢進が生じることが肝臓腫瘍誘発機序に関連していると考察した上で、この発がん機序は実験動物に限定的ではなく、ヒトでも生じる可能性があると考え、「Carc. 1B」 (当時はDSD分類のCategory 2) に分類した根拠を明示している (EU-RAR (2008))。
以上より、分類に利用可能なヒトの疫学知見はないが、EUの分類根拠についての見解を支持し、本項は区分1Bとした。
生殖毒性GHS分類: 区分2
米国の数箇所のジアミノトルエン製造施設に従事した男性作業者を対象とした複数の疫学研究において、ばく露された作業者の集団では、精子形成障害の発生率の増加と彼らの妻の間では自然流産の発生率の増加がみられたとする報告がある一方で、ばく露群と対照群との間で、精液の分析値、及び流産の発生頻度に差異はないと結論した報告がある。ただし、いずれの報告も、本物質以外に異性体や他の化学物質を含む複合ばく露であること、コホートの規模が限定的であること、調査対象者が志願者のためバイアスを含む可能性があるなど、本物質の生殖影響評価に利用するには適切なデータではないとされた (EU-RAR (2008))。この他に、ヒトの生殖影響に関して利用可能なデータはない。
実験動物では、雄ラットに本物質を9週間混餌投与 (1,000 ppm: 約50 mg/kg/day) 後に、無処置の雌と交配させたが、投与群の雄全例が雌を妊娠させることができず、雄性不妊が示唆された (EU-RAR (2008))。追試でも、雄ラットに本物質を10週間混餌投与 (100, 300 ppm (約 5、15 mg/kg/day)) 後に、無処置の雌と交配させた結果、300 ppm群では投与期間中に体重増加抑制、及び摂餌量減少がみられ、雄5/10例が交配したが、雌を妊娠させることができなかった (交配14日後の着床痕の観察時)。また、同群では交配指数 (精子検出雌数/交尾雌数)、繁殖指数 (妊娠雌数/精子検出雌数) のいずれの指標も有意な低下を示し、病理組織学的検査の結果、精巣の精細管内の精母細胞形成の低下、及び精巣上体尾部内の精子数の減少が認められた (EU-RAR (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008))。この他の関連知見も併せて、EUは実験動物では本物質は精巣毒性を介して、雌を妊娠させる受胎能の低下を引き起こし、雄性不妊に対するLOAEL及びNOAELは各々15 mg/kg/day及び5 mg/kg/dayと結論し、カテゴリー3 (CLP分類で「Repr. 2」に該当) に分類した (EU-RAR (2008))。この他、催奇形性を含む発生毒性に関して、分類に利用可能な情報はない。
以上、実験動物での雄性不妊の知見に基づき、本項は区分2とした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)GHS分類: 区分1 (中枢神経系、肝臓、血液系) 、区分3 (気道刺激性)
本物質は気道刺激性がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、EHC (1987))。ヒトにおいては、吸入ばく露で咳、咽頭痛、頭痛、眩暈、吐き気、嘔吐、錯乱、痙攣、意識喪失、チアノ−ゼ、経口摂取では、さらに腹痛を生じる。また、肝臓や血液に影響を及ぼし、肝障害やメトヘモグロビン生成の原因となる (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、EHC (1987))。
実験動物では、ラット、マウスの経口投与 (区分1相当用量) で、努力性呼吸、鎮静、活動低下、協調運動失調、呼吸数増加、立毛、眼瞼下垂、振戦など顕著な中枢神経系抑制、下痢、多尿、胃腸管の出血及び炎症、腹水、肺充血、肺水腫、肝臓の変色、黄疸、チアノーゼ、メトヘモグロビンの生成、ラット、マウスの吸入ばく露 (区分1相当用量) で努力性呼吸、メトヘモグロビンの生成が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、EHC (1987)、EU-RAR (2008)、DFGOT vol. 6 (1993))。
以上より、本物質は気道刺激性があるほか、中枢神経系、肝臓、血液系に影響を与えることから、区分1 (中枢神経系、肝臓、血液系) 、区分3 (気道刺激性) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)GHS分類: 区分1 (免疫系、肝臓、精巣)
ヒトではロシアの本物質製造工場の作業者59人を対象とした調査で、頭痛、咳、胃痛、胸部痛の症状を各々2〜4人が訴えた以外に異常は報告されず (環境省リスク評価第6巻 (2008))、この報告を含め標的臓器を特定可能な情報はない。
実験動物では雄ラットに3〜10週間混餌投与した複数の試験において、精巣毒性として精巣相対重量の増加、精巣上体精子数の減少、セルトリ細胞の変性、血清テストステロンの低下及び血清LHの上昇がみられている (EU-RAR (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008))。これらは主として区分1の用量範囲 (ガイダンス値換算用量: 3.8〜11.5 mg/kg/day) でみられている。
また、ラットに7〜103週間混餌投与した複数の試験、及びマウスを用いた14日間強制経口投与試験で、肝臓への影響 (肝細胞の変性、壊死、線維化、肝硬変、胆管増生、血清中肝由来酵素活性の上昇) がみられ、これらは区分1ないし区分2の用量範囲 (ガイダンス値換算用量: 5.8〜45 mg/kg/day) での影響であった (EU-RAR (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008))。さらに、本物質をマウスに14日間強制経口投与した試験では、25 mg/kg/day (ガイダンス値換算: 3.9 mg/kg/day) 以上で、脾臓のマクロファージ貪食能の低下、ヒツジ赤血球に対する抗体産生能の低下、細菌に対する宿主抵抗性の低下、NK活性の低下、白血球数及びリンパ球比率の増加、遅延型過敏反応など (EU RAR (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008))、液性免疫の抑制及び細胞性免疫の亢進を示唆する免疫系影響がみられたため、免疫系も標的臓器と考えられた。ラット15ヶ月間混餌投与試験において、約28 mg/kg/dayで認められた白血球増加、脾臓の顕著な萎縮 (EU RAR (2008)、環境省リスク評価第6巻 (2008)) は免疫系への影響を支持する所見と思われた。
以上より、実験動物での有害性知見に基づき、本項は区分1 (免疫系、肝臓、精巣) とした。
なお、本分類では旧分類が採用した血液系及び脾臓を併せて「免疫系」と判断し、腎臓はラットの15ヶ月以上の長期投与試験において、腎盂炎、慢性腎傷害の所見が存在するものの、亜急性影響として腎臓を標的臓器とみなす所見が得られていないことから、今回は標的臓器に含めなかった。
吸引性呼吸器有害性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)GHS分類: 区分2
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50=1.6mg/L(CERI・NITE有害性評価書(暫定版)、2006)から、区分2とした。
水生環境有害性(長期間)GHS分類: 区分2
急性毒性が区分2、生物蓄積性が低いものの(BCF<50(既存化学物質安全性点検データ))、急速分解性がない(BODによる分解度:0%(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分2とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄の前に、可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行って危険有害性のレベルを低い状態にする。
廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
可燃性の溶剤等と共に、アフターバーナ及びスクラバ付き焼却炉の火室へ噴霧し、焼却する。
低濃度の廃水は活性汚泥処理装置で処理する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号1709
国連品名2,4-TOLUYLENEDIAMINE,SOLID
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級L
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法に従う。
航空規制情報航空法に従う。
陸上規制情報消防法、道路法に従う。
特別安全対策移送時にイエローカードの保持が必要。
輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号151

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
化審法旧第2種監視化学物質
労働安全衛生法変異原性が認められた既存化学物質
名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
航空法毒物類・毒物
毒物及び劇物取締法劇物
船舶安全法毒物類・毒物
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質
海洋汚染防止法有害液体物質
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第1種指定化学物質
外国為替及び外国貿易管理法輸出貿易管理令別表第1の16の項

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。