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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
キノリン
作成日 2008年09月16日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称キノリン (Quinoline)
製品コードR02-B-024
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限農薬・界面活性剤原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分3
急性毒性 (経皮)区分3
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (神経系)
区分3 (麻酔作用、気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分2 (鼻腔、肝臓)
分類実施日
(環境有害性)
平成27年度、政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有毒
皮膚に接触すると有毒
皮膚刺激
強い眼刺激
呼吸器への刺激のおそれ
眠気又はめまいのおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による鼻腔、肝臓の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名キノリン
別名ベンゾピリジン
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C9H7N (129.16)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号91-22-5
官報公示整理番号
(化審法)
5-794
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合口をすすぐこと。医師に連絡すること。
コップ1、2杯の水を 飲ませる。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咳、咽頭痛。
皮膚: 発赤。
眼: 充血、痛み。
経口摂取: 咽頭痛。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項この物質にばく露したときの健康への影響は、十分に調べられていない。
ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、泡消火薬剤、粉末消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性可燃性。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
101℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に有機ガス用吸収缶付き防毒マスクを使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材この物質を環境中に放出してはならない。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
残留液を、砂または不活性吸収剤に吸収させる。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件容器を密閉しておくこと。
強酸化剤、酸、酸無水物および食品や飼料から離しておくこと。
乾燥した暗所に保管すること。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵すること。
安全な容器包装材料消防法、国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)未設定
ACGIH (2020年版)未設定
設備対策101℃以上では、閉鎖系設備で換気を使用する。
取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
適切な局所排気装置・換気装置等を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に有機ガス用吸収缶付き防毒マスクを使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。(ICSCには、安全眼鏡を着用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い特徴的な臭気
融点/凝固点-15℃ (ICSC (2008))
沸点、初留点及び沸騰範囲238℃ (ICSC (2008))
可燃性可燃性 (ICSC (2008))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界1.2〜7 vol% (空気中) (ICSC (2008))
引火点99℃ (c.c.) (HSDB (Access on April 2020))
自然発火点480℃ (NFPA (14th, 2010))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率2.997 cP (30℃) (HSDB (Access on April 2020))
溶解度水:0.61 g/100 mL (20℃) (ICSC (2008))
エタノール、エチルエーテル、アセトン、二硫化炭素に可溶 (HSDB (Access on April 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Pow=2.06 (ICSC (2008))
蒸気圧0.06 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020))
密度及び/又は相対密度1.09 (水=1) (ICSC (2008))
相対ガス密度4.5 (空気=1) (ICSC (2008))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性加熱や燃焼により、分解する。
窒素酸化物などの有毒なフュームを生じる。
強酸化剤、酸および無水物と反応する。
避けるべき条件加熱、混触危険物質との接触
混触危険物質強酸化剤、酸、無水物
危険有害な分解生成物窒素酸化物などの有毒なフューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分3とした。新たな情報源(1)、 (4) の使用により、旧分類から区分を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50 (OECD TG 401と同等の試験と記載): 262 mg/kg (AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Access on April 2020))
(2) ラットのLD50: 331 mg/kg (MOE初期評価第11巻 (2013)、AICIS IMAP (2015)、HSDB (Access on April 2020))
(3) ラットのLD50: 331〜460 mg/kg (Patty (6th, 2012))
(4) ラットのLD50: 460 mg/kg (AICIS IMAP (2015)、HSDB (Access on April 2020)、REACH登録情報 (Access on June 2020))
経皮【分類根拠】
(1)、(2) より、区分3とした。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 0.54 mL/kg (590 mg/kg又は593 mg/kgと記載) (AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2020)、MOE初期評価第11巻 (2013)、Patty (6th, 2012))
(2) ラットのLD50: 1,377 mg/kg (AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Access on April 2020))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。(1) のデータがあるが、このデータのみでは区分を特定できないため、分類できないとした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (79 ppm) の90%より低いため、ミストのほとんど混在しない蒸気としてppmを単位とする基準値を適用した。

【参考データ等】
(1) ラットに飽和蒸気 (約17 ppm) を8時間吸入ばく露した試験で、死亡例なし (4時間換算値: 24 ppm、区分1範囲) (AICIS IMAP (2015)、Patty (6th, 2012))。
(2) 本物質の蒸気圧: 0.06 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 79 ppm)
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。(1) のデータがあるが、このデータのみでは区分を特定できないため、分類できないとした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (79 ppm) よりも高いため、ミストと判断した。

【参考データ等】
(1) ラットに過飽和蒸気 (約4,000 ppm、21.1 mg/L) を5.5時間吸入ばく露した試験で、全例が死亡 (4時間換算値: 29 mg/L) (AICIS IMAP (2015)、Patty (6th, 2012))。
(2) 本物質の蒸気圧: 0.06 mmHg (25℃) (飽和蒸気圧濃度換算値: 79 ppm) (HSDB (Access on April 2020))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 本物質は眼、皮膚を刺激し、皮膚に付くと発赤、眼に入ると発赤、痛みを生じる (MOE初期評価第11巻 (2013))。
(2) 本物質 (100 mg) をウサギに24時間適用した皮膚刺激性試験 (ドレイズ法) で中等度の刺激性を示す (AICIS IMAP (2015))。
(3) 本物質はヒト皮膚に対して刺激性を有し、眼に対しては強度の刺激性を有し、角膜に持続性の損傷を与え、網膜色素変性症を引き起こす可能性がある (AICIS IMAP (2015))。
(4) ウサギの皮膚や眼へのばく露は中等度から重度の刺激性を示す (Patty (6th, 2012))。
(5) ウサギを用いた皮膚刺激性試験において適用24時間後に軽度の発赤が認められ、刺激性は軽微である (GESTIS (Access on April 2020))。
(6) CFR Title 16, section 1500.41に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験において、24/72時間の紅斑及び浮腫の平均スコアは 0.9及び1.5であった (REACH登録情報 (Access on June 2020))。

【参考データ等】
(7) EU-CLP分類でSkin Irrit. 2 (H315) に分類されている(EU CLP分類 (Access on July 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分2Aとした。

【根拠データ】
(1) 本物質は眼、皮膚を刺激し、皮膚に付くと発赤、眼に入ると発赤、痛みを生じる (MOE初期評価第11巻 (2013))。
(2) US CFR Title 16, section 1500.42に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験 で24/72 時間後のスコアは角膜混濁 0.8/1、虹彩 0.5/1、結膜発赤 2/3、結膜浮腫 2.2/3であり、7日後までには回復せず、重度の眼刺激性と判定された (AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
(3) 本物質は人皮膚に対して刺激性を有し、眼に対しては強度の刺激性を有し、角膜に持続性の損傷を与え、網膜色素変性症を引き起こす可能性がある (AICIS IMAP (2015)、GESTIS (Access on April 2020))。
(4) ウサギの皮膚や眼へのばく露は中等度から重度の刺激性を示す (Patty (6th, 2012))。

【参考データ等】
(5) EU-CLP分類でEye Irrit. 2 (H319) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2020))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA)においてSI値は3を上回らず、陰性と判定された (AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) in vivoにおいて、lac Z トランスジェニックマウスの遺伝子突然変異試験で肝臓のみ陽性、骨髄、精巣、肺、腎臓、脾臓では陰性、ラット骨髄細胞小核試験で陽性、陰性の結果、ラット肝臓小核試験で陽性、陰性の結果、マウス骨髄細胞小核試験で陽性、マウス肝臓小核試験で陽性、陰性の結果、ラット肝臓染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、マウス骨髄染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陰性、ラット肝臓不定期DNA合成試験で曖昧な結果 (equivocal) の報告がある (IRIS Summary (2001)、MOE初期評価第11巻 (2013)、IARC 121 (2019))。
(2) in vitroにおいて、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、小核試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、不定期DNA合成試験でいずれも陽性の報告がある (IRIS (2001)、MOE初期評価第11巻 (2013)、IARC 121 (2019))。

【参考データ等】
(3) EU-CLP分類でMuta. 2 に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2020))。
発がん性【分類根拠】
既存分類は、(1) のとおり分類されているものの、適切な試験ガイドラインとGLP基準に準拠して実施された厚労省のがん原性試験 (3) 及び (4) において、動物種2種に悪性腫瘍を含む明らかな発がん性の証拠が認められ、有害性評価小検討会の審議を経てヒトにおける懸念から同省が指針を出したことを重視し、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 121 (2019))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2018年提案))、EPAでL (likely to be carcinogenic to humans) (IRIS (2001))、EU CLPで1B (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。
(2) 本物質は労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための改正指針の対象物質である (令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号)。
(3) 雌雄のラットに本物質を雄は96週間、雌は104週間飲水投与した発がん性試験において、雌雄とも全ての投与群で肝細胞腺腫、肝細胞がん、肝臓の血管肉腫の有意な発生率の増加が認められた。鼻腔では、雄で神経上皮腫の有意な発生率の増加が認められ、雌雄で肉腫の発生がみられた。これらは自然発生が稀な腫瘍であった。また、少数例ではあるが、血管腫や血管肉腫の発生は肝臓以外 (雄で脂肪組織、腸間膜、腹膜、肺及び鼻腔、雌で脂肪組織、腹膜、後腹膜、肺及び卵巣) でもみられた (厚労省委託がん原性試験結果 (2003)、MOE初期評価第11巻 (2013)、IARC 121 (2019))。
(4) 雌雄のマウスに本物質を104週間飲水投与した発がん性試験において、雌雄とも全ての投与群で多くの動物に血管腫又は血管肉腫の発生がみられた。雄では後腹膜、腸管膜及び肝臓に血管肉腫の有意な発生率の増加がみられ、雌では皮下組織の血管腫及び血管肉腫、後腹膜、腸管膜及び腹膜の血管肉腫の有意な発生率の増加がみられた。これらの腫瘍は他臓器への転移が多くみられた。その他、雄では肝臓の組織球性肉腫と肝細胞がん及び腎臓の腎細胞がん、雌では肝臓の組織球性肉腫の発生増加もみられた (厚労省委託がん原性試験結果 (2003)、MOE初期評価第11巻 (2013)、IARC 121 (2019))。
(5) 雄のラット (Wistar又はWKY) に本物質を最大20週間又は32週間混餌投与した試験 (1用量のみ) では、肝臓の血管肉腫の発生率の有意な増加が認められた (IRIS Tox. Review (2011)、IARC 121 (2019))。


【参考データ等】
(6) 新生児マウス (生後1、8、15日) に本物質を腹腔内投与した試験で、肝腫瘍 (腺腫及び肝細胞がん) の発生が認められた (IRIS Tox. Review (2011)、IARC 121 (2019))。

生殖毒性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(5) より区分1 (神経系)、区分3 (麻酔作用、気道刺激性) とした。情報の再検討により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質は呼吸筋を麻痺させる (HSDB (Access on April 2020)、GESTIS (Access on April 2020))。
(2) 本物質は吐き気、腹痛、嘔吐、高熱、めまい、頻脈、失神を引き起こす可能性がある (AICIS IMAP (2015)、HSDB (Access on April 2020))。
(3) 本物質は嗜眠、呼吸困難及び昏睡につながる衰弱を引き起こす (HSDB (Access on April 2020))。
(4) 本物質の経口摂取や吸入によって咳、吐き気、嘔吐、息苦しさ、息切れ、喘鳴、脱力感を生じる (MOE初期評価第6巻:暫定的有害性評価シート (2008))。
(5) 本物質を吸入すると咳や咽頭痛、経口摂取すると咽頭痛を生じる (MOE初期評価第11巻 (2013))。

【参考データ等】
(6) 本物質はヒトの網膜や視神経に毒性を示すとの報告がある (HSDB (Access on April 2020)) が、原典はPatty (3rd, 1981-1982) であり、Patty (6th, 2012) では該当する記述が見当たらない。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
本物質のヒトでの反復ばく露に関する報告はない。実験動物への経口投与において、区分2の用量で (1) から鼻腔への影響、(2)〜(4) から肝臓への影響がみられていることから、区分2 (鼻腔、肝臓) とした。新たな情報 (1) の追加により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットの13週間混水投与試験において、158 ppm (雄/雌: 10.3/11.5 mg/kg/day相当、区分2の範囲) 以で肝臓及び腎臓の重量増加、237 ppm (雄/雌: 14.3/15.5 mg/kg/day相当、区分2の範囲) 以上で雄でヘモグロビン減少、355 ppm (雄/雌: 19.1/24.4 mg/kg/day相当、区分2の範囲) 以上で嗅上皮の嗅腺の導管の顕在化、雄で赤血球数及びヘマトクリット値の減少、肝細胞の単細胞性空胞変性、533 ppm (雄/雌: 27.9/30.8 mg/kg/day相当、区分2の範囲) 以上で鼻腔の支持細胞の多核様変化、嗅上皮の萎縮、800 ppm (雄/雌: 39.9/42.6 mg/kg/day相当、区分2の範囲) の雄でMCVの減少、網状赤血球比の増加がみられた (厚労省委託がん原性試験結果 (1999))。
(2) 雄ラットの16〜40週間混餌投与試験において、0.05% (25 mg/kg/day相当、区分2の範囲) 以上で肝臓重量増加、肝臓の脂肪変性、胆管増生、卵円形細胞の浸潤、0.1% (50 mg/kg/day相当、区分2の範囲) の肝臓で結節性過形成がみられた (MOE初期評価第6巻:暫定的有害性評価シート (2008))。
(3) ラット、マウス、ハムスター及びモルモットの30週間混餌投与試験において、0.20%で全ての動物種で肝臓相対重量の増加がみられた。肝臓については、ラット、マウス、ハムスターでは卵円形細胞の形成、ラット、マウスでは胆管増生もみられ、さらにラットでは結節性過形成や脂肪変性もみられた。ラット雄に30週間0.075% (37.5 mg/kg/day 相当、区分2の範囲) 混餌投与した結果においても、肝臓重量増加、肝臓で卵円形細胞形成、軽度な胆管増殖、脂肪変性、巨大細胞の出現及び結節性過形成がみられた (MOE初期評価第6巻:暫定的有害性評価シート (2008)、IRIS (2001)、IRIS Tox. Review (2001))。
(4) 雄ラットの40週間経口投与試験において、0.05% (25 mg/kg/day相当、区分2の範囲) 以上で肝臓相対重量増加、卵円形細胞浸潤、胆管増生、脂肪変性、結節性過形成がみられた (MOE初期評価第11巻 (2013)、IRIS (2001)、IRIS Tox. Review (2001))。

誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、(1)より、動粘性率は30℃で2.8 mm2/secと算出され、40℃の動粘性率が14 mm2/s以下であるが、その他の情報は得られなかった。

【参考データ】
(1)動粘性率が30℃で2.8 mm2/s(30℃での粘性率2.997 mPa・s(HSDB (Access on April 2020)) と密度 (比重) 1.09 g/cm3 (HSDB (Access on April 2020)) から算出)である。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)魚類 (ファットヘッドミノー) 96時間LC50 = 0.44 mg/L (環境省リスク評価第11巻 (2013)) であることから、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (難分解性、14日間でのBOD分解度=0.2%、TOC分解度=1.7%、GC分解度=5.2%、UV-VIS分解度=2.4% (通産省公報 (1978))) 、甲殻類 (オオミジンコ) の21日間NOEC = 0.8 mg/L (ECETOC TR91 (2003) 、環境省リスク評価第11巻 (2013)) であることから、区分2となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、魚類 (ファットヘッドミノー) の96時間LC50 = 0.44 mg/L (環境省リスク評価第11巻 (2013)) であることから、区分1となる。 以上の結果を比較し、区分1とした。
オゾン層への有害性データなし

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号2656
国連品名QUINOLINE
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級III
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報毒物及び劇物取締法、消防法、道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策毒物及び劇物取締法、消防法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*154
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達)【44 キノリン】
健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項・厚労省指針公示)【キノリン及びその塩】
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【81 キノリン】
毒物及び劇物取締法劇物(指定令第2条)【22の4 キノリン及びこれを含有する製剤】
化学物質審査規制法旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号1004 キノリン(平成23年4月1日をもって廃止)】
消防法第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1)【5 第三石油類非水溶性液体】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【3 キノリン】
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2656 キノリン】
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2656 キノリン】
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【44 キノリン】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用